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平成30年度 講演会 要旨
  「大規模災害への備え 〜家庭・地域・職場で必要な取組みとは〜」

株式会社レジリエンシープランニングオフィス 伊藤 毅 氏

皆さんこんにちは、伊藤でございます。今日のテーマが「大規模災害への備え」ということで、幅広く防災や災害に対しての知識を皆さんと共有させていただくことをテーマとして来ております。

先日の台風被害でご苦労されている方もまだまだたくさんいらっしゃるのではないかと思いますが、いま災害が起きないなんて思っている人は誰もいませんよね。災害というのは当然起きるものです。ちなみに今年、日本全国で大規模な災害と言われるものが幾つ起きたか覚えていますか。もうほとんど忘れていますよね。当たり前ですけれども、人の頭は忘れるようにできています。だから、そのことを前提として考えないといけません。

なぜ災害対策は必要なのかと考えたときに、今から30年の間に南海トラフの大地震が、皆さんの生活している場、あるいは仕事をしている場、非常に幅広いエリアに発生するという確率は70〜80%で、ほぼまちがいなく発生します。

わが国ではこれからますます少子高齢化が進展します。これは皆さんは当然ながら頭の中に入れて、いろいろなことをお考えになっているでしょう。だけど、30年以内に間違いなく大規模な地震が来て、非常に大きな被害がこのエリアに発生するという前提でそういうことを考えているかといえば、考えていませんよね。そこから目をそむけるのではなくて、立ち向かうことによって一歩先を見ていくという視点は絶対必要です。だから、そういう視点をもつことが本当の意味での防災が進むかどうか、地域の活性化につなげることができる防災活動ができるかどうかということの重要な分岐点なのです

災害がなぜ起こるのかという原因分析も必要ですが、それだけでは十分な対応はできません。自然環境が変化しているのと同時に、昔は水害が発生する場所なので田畑として使っていた土地も、今は開発されて住宅地となっています。つまり危ない場所に住むようになり、効率を追求することによって被害が発生したときの影響も大きくなっています。

我々の経済をよくし、生活を豊かにするために、ずっと努力をし続けたことが実は災害にはすごく脆弱な社会を築いてしまっているわけです。

ということは、実は自分たちの振る舞いを少し変えるだけでも、災害に対しての対応が変わり、結果としての被害は随分変わってくるということを最初に申し上げておきたいと思います。

和歌山の地震ですが、海の方だけが心配だということではなくて、和泉山脈に沿って走る中央構造線の直下型地震など、さまざまな危機が全域に横たわっているということは意識をしてください。現在、日本中で判明している断層は全体の2割くらいといわれているので、断層があるから揺れる、断層がないから揺れないということではなくて、判明していない断層が突然揺れるのです。それから、水害とか土砂災害に関しては、和歌山では例えば紀の川にしても過去には幾度となく氾濫し、被害をもたらしています。

地震と水害の一番大きな違いは、地震というのはいきなり発生します。例えば台風であれば少なくとも事前に進路予想などがわかります。危機管理、危機対応にとって予兆が明確になるというのは、ものすごく有難いことで、そのときにどれだけ一歩先を予測して行動できるかということが、人の命を救い、被害を小さくするかということにつながります。

また、我々の日頃の生活がすごく便利で、かつ快適になり過ぎたがゆえに、少しの不便も大変な事態だと思ってしまいます。生活が不便になるということをある程度覚悟しない限りは、本当の意味での災害対策は進まないのです。

それから、皆さんは災害対策として、ご家庭でどんなことをやっていらっしゃいますか。例えば防災用品だとか備蓄品みたいなものはそろえていますか。非常用の食料や水、トイレットペーパーなど、1日〜2日分は用意しておいた方がいいですね。飲料水は1人1日3リットルが目安です。あとラジオは非常に有用です。停電になっても情報が取れます。

建物の耐震補強、家具の転倒防止、家電の転倒防止、窓ガラスの飛散防止フィルム、食器棚の中のガラス食器。いろんなことを考えてやればやるほど、生活の不便が出てくるわけです。だから何でもかんでもやればいいということではありません。ただ、先ほど申し上げたように、災害に備えるということは、やはりある種の不便さを自分たちが受け入れるという覚悟が絶対必要です。

結局、最後に皆さんの命を守ってくれるのは何かというと、それぞれの方の想像力なのです。事前対策がどれぐらいできているとか、どこにどれだけお金をかけているとかいう問題ではなく、何かあったときに自分たちの身に何が起きるのだろうという想像力を一人ひとりが持っているということが一番大事なのです。自分の命は自分で守るしかないのですから。

ちなみに、建物の内部被害による怪我というのは、ほとんどが家具の転倒、落下、ガラスです。だから、この家具はこちらに倒れてくるとか、上からあれが落ちてくるとか、想像力を働かせて、それらを未然に防止する対策を立てるということをしてください。倒れてきて下敷きになって誰かに助けてもらおうと思っても、当面だれも来ないですからね。申しわけないですが、それは覚悟してください。

このあとは語句の解説みたいになりますが、例えば避難準備。高齢者等の避難開始という避難に関する情報があります。こういう場合には避難に時間を要する方はまず優先的に避難を開始する。その他の方は避難の準備をする。こういうメッセージですね。

避難勧告、こういう災害による被害が予想され、人的被害が発生する可能性が高まった場合、速やかな避難、できるだけ早め早めに動くということを考えていただきたいと思います。自治体が、そこに住んでいらっしゃる住民の方の命をどう守るかということを真剣に考えた結果として警告しているわけですから、お互いに信頼関係をしっかり持って指示にはしっかり従う。これは徹底していただきたいと思います。

あと、ハザードマップをごらんになったことがありますよね。赤いところが危ない。津波ハザードマップでは海沿いが危ないですが、土砂災害や水害などのハザードマップでは内陸部にも危ないところがたくさんあります。ハザードマップは市町村ごと、災害ごとに作られているので、自分たちの身の回りにある危険を認識するというためには非常にいいツールです。

ご存じでしょうか。阪神・淡路の大震災、救助された方の中の77%は近隣住民により救助されました。逆に消防、警察、自衛隊は、非常に努力をされて、自分たちの命をかけて一生懸命頑張っていらっしゃるのですが、助け出したのは23%です。これが現実ですよ。あえて誤解を恐れずに言うと、公助は頼れません。頼ってはいけないのです。何でも助けてくれるではなくて、まず自分の身の安全を守るということが大事だし、助けてもらう立場にできるだけならないということが大事で、助ける余裕があるのであれば近隣同士で助け合うということが本当に大事なことであるというのが、このパーセントの中にあらわれているのです。

だからこそ一人ひとりの命を守るための取り組みで、一番大事なのは自助です。自分で想像力を高め、自分の命を守る、家族の命を守るためには一体何をすればいいんだろうということに対しての責任と想像力をしっかり持つこと。

その上で、その次は共助です。周りにいる人たち同士で助け合う、そこにいる人たちの命をどういうふうに安全にするのかということを真剣に考え、できることをとにかく徹底的にやる。それを補うのが公助だという考え方をしないと実際の災害対策というのは本当に進まないし、いつまでたっても自治体任せ、公助任せということになってしまいます。

我々が立ち向かわないといけないのは南海トラフの大地震であり、中央構造線の直下型地震であり、台風被害や土砂災害など、今までとは比べものにならないほどの脅威に立ち向かわないといけない。当然ながら公助の力だけでは何ともならないです。共助の力を加えても十分ではない。だから自助が必要だという、この流れをしっかりと認識していただきたい、ということを最後のまとめとしてお話をさせていただきます。

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