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景気動向について

研究部長  大門 忠志

前回の「和歌山県の景気動向〜景気動向調査2011年〜」において、2011年の1年を通じた和歌山県内の景気動向について述べたが、今回は景気動向を表す指標に関しての説明と当研究所がおこなっているBSIについて話をしてみたい。

景気を表す一般的な指標としてよく言われるものは、内閣府が毎月発表する「景気動向指数」や「景気ウォッチャー調査」、4半期に一度日本銀行が発表する「日銀短観」や「さくらレポート(地域経済報告)」がある。その他にも、日本政策金融公庫が行っている「全国中小企業動向調査」や株式会社日本経済新聞社が行っている「日経BI(日経景気インデックス)」がある。以下、景気動向指数及び日銀短観について概説する。

景気動向指数

これは内閣府が毎月発表するもので、生産や雇用など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感な指標の動きを統合することによって、景気の現状把握及び将来予測に資するために作成された統合的な景気指標をいう。そして、景気動向指数には CI(コンポジットインデックス) とDI(ディフュージョンインデックス)の2つがある。

CI 景気変動の大きさやテンポ(量感、速さ)を測定とすることを目的としている。CIの動きと景気の転換点はおおむね一致する。
但し、単月の動きでは不規則な動きもあるため、3ヶ月や7ヶ月の後方移動平均を使って判断を行う。
DI 景気拡張の動きの各経済部門への波及度合いを見る。景気が良くなってきたら改善してくる指標の割合のことで、短期の特殊要因を避けるため3ヶ月前の指標と比較する。
50%を超えるかどうかが重要であり、良いか悪いかの判断材料にするもので、景気拡大の大きさやスピードを表すものではない。

CIとDIの運用としての違いは、CIが景気の山の高さや谷の深さ、景気の拡張・後退の勢いや量感を示すものであるのに対し、DIは景気の局面、好景気や不景気といった転換点の判断を行うものということである。

CI、DIとも算出の根拠となる指標はともに共通で、景気に対し先行して動く“先行指数”(11指標)、景気にほぼ一致して動く“一致指数”(11指標)、景気に遅れて動く“遅行指数”(6指標)がある。これらの指数は景気の循環毎に見直され、平成23年10月に改定された。過去においては景気の変換局面を重視していたためDIを公表数値としてきたが、最近では景気変動の大きさや量感を重視するようになってきたため、平成20年4月以降CIを中心とした公表形態に移行されている。

内閣府の発表する「月例経済報告」における基調判断はCIに基づいて策定され、CIを構成する指標の動きで、「足踏み状態である」「下げ止まっている」といった表現がなされている。

現在使用されている景気動向指数の指標は下表のとおり。

先行指数 (11指数) 一致指数 (11指数) 遅行指数 (6指数)
先行指数 (11指数)
最終需要財在庫率指数
鉱工業生産財在庫率指数
新規求人数(除学卒)
実質機械受注
 (船舶・電力除く民需)
新設住宅着工床面積
消費者態度指数
日経商品指数
長短金利差
東証株価指数
投資環境指数(製造業)
中小企業売上見通しDI
一致指数 (11指数)
生産指数(鉱工業)
鉱工業生産財出荷指数
大口電力使用量
耐久消費財出荷指数
所定外労働時間指数
投資財出荷指数(除輸送機械)
商業販売額(小売業)
商業販売額(卸売業)
営業利益
中小企業出荷指数
有効求人倍率(除学卒)

遅行指数 (6指数)
第3次産業活動指数
 (対事業所サービス)
常用雇用指数
実質法人企業設備投資
家計消費支出
法人税収入
完全失業率





平成17年以降のCIにおける先行指数、一致指数、遅行指数の動きをみると、下表のとおりとなっている。一般的に、先行指数は一致指数に半年程度先行し、遅行指数は一致指数に半年から1年程度遅行している。また、CI一致指数とDI一致累積一致指数の動きは、ほぼ同様の動きとなっている。

先行指数、一致指数、遅行指数の動き

CI一致指数とDI一致累積一致指数の動き

日銀短観

正式には「全国企業短期経済観測調査」であり、通称「短観」これは英語でも「TANKAN」と呼ばれるほど景気動向を代表する指標となっており、日銀の金融政策の適切な運営に資することを目的に 年4回 3月、6月、9月、12月に調査を実施している。昭和26年(1951年)に、日本興業銀行が企業活動全般を把握する観点から始めた調査を引き継ぎ、昭和32年(1957年)に「主要短観」としてスタート、その後平成16年(2004年)に大幅な改定を行い、現在にいたっている。

歴史があるうえに、調査から発表まで1か月弱と短く、国内のみならず各国のエコノミスト、経済、金融界から注目を浴びている指標である。特徴的なのは公表に際して、中立性を保つため、コメントは一切なしで数値だけの発表となっている点である。これは、集計後速やかに発表するためであり、もう一つには、日本銀行のコメントの重み、解釈や政策判断をくわえることの影響を考慮してのことである。

調査項目は、最近の状況や先行き(3か月後)の状況を調査する判断項目、半期や年度の実績計数、および計画計数等を調査する計数項目からなる。一般に言われるDI(Diffusion Index)は判断項目を集計したもので、業況判断DIは「良い」とした企業の割合から「悪い」とした企業の割合を引いて算出したものである。

日銀短観:業況判断DIの推移(近畿地区)

日銀短観:業況判断DIの推移(近畿地区)

県内自社景況BSIと日銀短観

和歌山社会経済研究所では、今日の激変する社会・経済情勢が和歌山県内の企業にどの様な影響を及ぼしているのか、更に今後の状況はどのようになると予想されるのか、県内の企業経営の実態と見通しを把握し、企業経営の参考資料として頂くことを目的に、短観同様4半期ごとにBSI調査を行っている。

BSIとは、ビジネスサーベイ・インデックス(景気動向調査指数)の略称で、企業経営者の自社企業の業況に関する実績判断や見通し、景気見通しについて「良い」と答えた企業から「悪い」と答えた企業の割合を引いたものである。

平成17年からのBSIと日銀短観(全国分)との推移は下表のとおりとなっており、同じような動きとなっている。ただ、全国的に景況観の良い時期に県内自社景況感はそれほど良くなかったものの、全国的に景況感が悪化している時期においても県内自社景況感の悪化の傾向はそれほど大きくなく、日銀短観に比べなだらかな曲線となっている。

県内自社景況BSIと日銀短観
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リーマンショック以前において、日銀短観の方が自社景況BSIより40ポイント前後高くなっており、国内全体では景況感はよかったものの、和歌山まではなかなか浸透してこなかった状況がうかがわれる。また、リーマンショック以降は、日銀短観との乖離幅が縮小してきており、景況感の悪化の影響が全国に比べて小さかったことがうかがえる。さらに、日経平均の動きと比較するとリーマンショック以後、しばらくは、日経平均との連動が見られたものの、平成22年に入ってからは逆の動きとなっている。これは、この時期の日経平均の動きと為替(対米ドル)の動きが類似しており、円高による企業業績の悪化懸念から日経平均株価が低下したものの、平成22年頃より、長引く円高及びその影響による景気悪化に対する企業抵抗力が高まったためと思われる。

BSI調査では、実績の状況と今後3カ月の見通しを調査しており、見通しとその結果(実績)の動きを比較したものが下表である。全体的には見通しと実績は同じように推移しているものの、製造業においては他の業種に比べて見通しと実績に若干のずれが生じている。

BSI(実績)

BSI(見通し)

以上 2つの代表的な経済指標と和歌山県におけるBSIについて説明を行ってきたが、統計指標から論理的に作成される内閣府の景気動向指数と企業経営者の感じる意識調査である日銀短観及びBSIはほぼ同じように推移している。

日銀短観やBSIを見る限り、半年程度先の景気動向については、企業経営者の感じている方向に動いていることがうかがえる。当然ながら、企業経営は財務諸表等により数値化され、管理・運営され、経営の結果が数字として表れ、動向指数として表れてくる。しかしながら、日銀短観やBSIが示すように、経営者のもつ感覚も短期的には同様の指標となって表れてきている。

景気の動向は自然災害等様々な要因によって左右されるが、その左右する一つの要因として企業経営者の心理的な要因もあるのではないだろうか。在庫が膨れ、海外需要が減少傾向であっても、先行きに対して成長が期待されると感じるならば積極的に投資し、そのことが誘因となって実際に景気が好転する。逆に、好景気が続き先行きに不安を感じ、縮小均衡を目指せば、景気は悪化していくであろう。

景気の動向が物理的要因により影響されるのは当然として、企業経営者の心理的要因も、先行きが読めない時勢においては、一つの要因のように思われる。他力ではない前向きな経営活動が景気回復のきっかけとなることを期待したい。

(2012.6)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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