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海洋再生可能エネルギー in WAKAYAMA

研究部長  大門 忠志

平成22年6月に「エネルギー政策基本法」の改訂が行われ、「総合的なエネルギーの安全保障の強化」、「地球温暖化対策の強化」、「エネルギーを機軸とした経済成長の実現」、これら3点を重視したものとなっていた。

しかしながら、これら基本方針に沿ってエネルギー政策に取り組まれてきたものの、平成23年3月11日に発生した東日本大震災により、原子力発電所の安全性問題、エネルギーの供給方法の問題等わが国のエネルギーを巡る環境に大きな変化がもたらされ、再生可能エネルギーの開発・普及の強力な推進が求められるようになってきた。

平成24年7月より始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の導入以降、国内では太陽光発電の普及が大きく進み、和歌山県においても、風力発電を始め、太陽光発電、バイオマスエネルギーなど再生可能エネルギーの普及が進められている。

しかし、まわりを海に囲まれた日本において諸外国に比べ有利な状況であると思われる、海洋再生可能エネルギーの開発利用は進んでいないのが現状である。

平成19年4月に海洋基本法が制定され、平成25年4月に新たな海洋基本計画が策定され、その中において海洋再生可能エネルギー開発の産業化が進められようとしている。

この和歌山県においても、総延長640qにわたる海岸線を持ちながら、海洋エネルギーに関してはほとんど未開発の状況にある。

本稿において、国内の海洋再生可能エネルギーの現状と和歌山県に潜在的に存在すると思われる海洋再生可能エネルギーの実態について概説する。

海洋再生可能エネルギー

(1)洋上風力発電

洋上風力発電とは洋上の安定した風力を利用する、国内では海洋再生可能エネルギーの中でも最も研究開発が進められているエネルギーである。風車自体は、陸上における風力発電と同様の形をしているが、安定した土地に設置する陸上風力とは異なり、躯体設置の方法やメンテナンス等全くことなり、設置費用も高額となる。

既に稼働しているものとしては、北海道・瀬棚港、山形県・酒田港、茨城県・鹿島港、現在実証実験中として、福島県・福島沖、福岡県・博多湾及び北九州沖、佐賀県・唐津沖、長崎県・五島沖と北海道から九州まで全国にわたり稼働している。海底着床式から浮体式、または海上は風力で海面下は潮流といったハイブリッド型まで様々な形式で取り組まれている。

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の調査によれば、北海道、北東北、九州などの沿岸地域が風速毎秒7m以上の風況に恵まれた地域となっている。和歌山県の状況をみると、内陸部では毎秒8m以上の強風地域が存在し、山上に多くの風力発電が設置され稼働しており、洋上においては県中部から南部にかけての御坊・すさみ沖において毎秒7m前後の風速が見られる状況となっている。(各地、沖合20q程度の海上地点)

〔地域別平均風速〕
地域別平均風速
(NEDO風況マップ(平成18年度改定版)より作成)

(2)波力発電

波力発電とは、波の上下するエネルギーを利用して発電する方法である。円筒状の筒を海面に連ねて浮かべ、蛇のような屈曲運動を利用する方法や既設防波堤に設置し流れ込む波を利用する方法、海面に中空状の筒を浮かべその中を上下する浮きの動きを利用して発電するパワーブイと呼ばれるものなどがある。実用化にむけて実験は行われているものの、実用としては海洋標識ブイの稼働に使われている程度である。

和歌山では、すさみ沖において神戸大学によるジャイロモーメントを利用した発電実験が行われた経緯があるが、波力発電に必要な波としては、有義波高で月平均1.5m以上の月が年間で3か月以上必要といわれており、和歌山県では、潮岬の沖合40q程度の地点においてその条件に適合する状況となっている。

(3)潮汐・潮流発電

潮の満ち引きによる潮位差や潮の流れを利用し発電する方法である(潮が一定方向へ流れる海流発電については後述する)。潮汐発電とは、干満の差が大きい湾内に堰等を設け、満潮時に堰を開いて湾内に海水を導入し、干潮時には堰を開いて海水を流出する際の海水の流れでタービンを回して発電する仕組みで、低落差の水力発電と同じようなものである。

また、鳴門海峡や津軽海峡、関門海峡のような潮流が激しい所において、タービンを回して発電するのが潮流発電である。潮の流れを利用するため、朝夕において、潮の流れが反転することになる。風力発電とはことなり、潮汐現象は一定の周期で起こるため、ある程度の出力予想が可能であり、また水密度が空気に比べ大きいためエネルギー量が大きいことがメリットと考えられる。しかしながら、潮の流れが激しい所は、交通の要所であったり、好漁場となっており、国内での適地は少なく和歌山においても同様である。

瀬戸内海の状況 AM6:00

瀬戸内海の状況 AM12:00
(2013/6/10 :瀬戸内海の状況 上AM6:00:下AM12:00  海上保安庁海洋情報部資料より)

(4)海洋温度差発電

海洋温度差発電とは、海洋表層と深海の水温の差を利用した発電である。アンモニアなどの気化しやすい動作流体を熱媒体に用い、表層の温かい海水で気化させてタービンを回し、温度の低い深層水で元の液体に戻すという、地熱発電におけるバイナリー発電と同じような仕組みで発電する。

表層と深層との温度差が月平均で20度以上必要とされており、現在、沖縄県において実験が行われている。 沖縄県では、冷温に使う深層水を発電のみならず、農業ハウスの冷却や養殖エビへの利用など、複合利用の研究も進められている。

和歌山県では潮岬沖合いにおいて、7月から10月にかけて表層と深層の海水温度差が20℃以上となる場合がある。ただ、海洋温度差発電では、陸上での大型発電設備が必要であり、用地確保とともに景観への配慮等が必要となってくる。

海洋温度差発電のしくみ
(四国電力HPより)

(5)海流発電

海流発電とは、海流の流れの中に発電タービンを設置し、そのタービンを海流の流れにより回転させて、発電するものである。

和歌山県潮岬沖合には黒潮が流れており、その流速は早い所では毎秒2m以上にも達し、強い流れの幅は100q〜250q、深さも200m〜1000mにも及ぶと言われており、膨大なエネルギーを有する。

黒潮の流路は一定ではないものの、四国の足摺岬沖合から潮岬沖合いにかけては黒潮が陸地に接近する場所であり、他県に比べて和歌山県は最も海流発電にふさわしい立地となっている。

水中浮遊式海流発電システム
(IHI HPより)

このように、様々な海洋再生可能エネルギーが検討されているものの、実用化には多くの技術的な問題があり、さらには海上、海中に設置するため、対象海域における漁業者やその他の海域利用者との調整、船舶航行における安全性の確保、自然環境や景観の保全等解決すべき課題は多い。

しかしながら、地球温暖化や原子力等今後エネルギー開発の問題は喫緊の課題であり、関係者全員が前向きに話し合いながら、早急に取り組んでいく必要がある。

(2014.3)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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