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「グラフで見る和歌山県経済指標」で活用する経済指標の検討

研究委員  藤本 迪也

1.はじめに 〜経済指標報告の目的と本稿の目標〜

財団法人和歌山社会経済研究所では、当研究所ウェブサイト(www.wsk.or.jp)にて、和歌山県の主要経済指標を「グラフで見る和歌山県経済指標」として毎月発表し、和歌山県経済の動向を報告している。

この月次での経済指標報告には、以下のような目的がある。
まず、第一点目は、直近における和歌山県経済の状況把握・認識から、当研究所が県経済について、何を調査・研究しなければならないかを導き出すきっかけとする点である。
二点目としては、県経済を構成する県内事業所、行政機関、産業支援機関、業界団体への情報提供機能である。自社景況と関連する経済指標の推移は、自社の状況を把握する際のツールとして重要となる。
三点目としては、県外への情報発信機能である。県経済の状況、好調な点、不調な点を県外に発信することは、県外の経済主体が和歌山県経済に関心を抱く契機となる。

以上のような目的を達成するために、当研究所では「グラフで見る和歌山県経済指標」として、図表を使いながら経済指標の推移を報告している。今後は、県内外の経済主体に対して、さらにわかりやすく、そしてより正確に県内経済状況を発信していくことが重要となる。

現在、当研究所では「グラフで見る和歌山県経済指標」において、鉱工業生産指数、有効求人倍率、大型小売店販売額、新車登録台数、公共工事請負額の推移を確認している。しかし、経済環境が大きく変化している中で、上記指標だけでは捉えきれない経済事象が起こり得る。

そこで、本稿では他の都道府県の研究機関において活用されている経済指標などを参考にしながら、本県の経済実態をより正確に把握するために、追加しうる経済指標について検証を行いたい。

2.全国で活用されている経済指標

一般社団法人全国地方銀行協会がウェブサイト上で発表している「地方経済の状況/各地の経済指標」(2012年7月26日閲覧)によれば、地方銀行の研究部門を中心に各地域の経済指標が月次で発表されている。各地域によって採用されている経済指標は多様であるが、表1のようにタイプ分けすることができる。

表1 経済指標のタイプ

表1 経済指標のタイプ

生産(供給)、消費、雇用といった経済活動の中心となるものに加えて、地域での人の動きやものの動き(貿易)、設備投資状況や物価動向、資金需要といったタイプが経済指標には存在する。各タイプには、複数の経済指標が存在し、経済状況の把握を複数の視点から行うことができる。例えば生産(供給)の状況を判断する際には、鉱工業指数、産業用大口電力需要など、複数指標での判断が可能である。

次に、全国においてはいかなる経済指標が採用されているかについて確認する。表2は全国で発表されている経済指標について、採用数の多い順番に並べたものである。表中において網掛け表示となっている指標は、当研究所が現在活用している指標を指す。

表2 全国において採用されている経済指標(採用数順)

表2 全国において採用されている経済指標(採用数順)

現在、当研究所で採用している経済指標を表1のタイプ分けに従って整理すると表3のようになる。

表3 和歌山社会経済研究所の採用経済指標

表3 和歌山社会経済研究所の採用経済指標

今後、さらに詳細な和歌山県経済の状況報告を行うためには、「人の動き」、「物価」、「資金需要」、「企業倒産関連」、「貿易」、「観光」などの指標タイプにおける経済指標の活用が必要と思われる。さらに、現在1つ以上の経済指標が採用されている指標タイプについても、複数の経済指標を補足的に参照できれば、より正確な状況認識が可能となることから、さらなる経済指標の追加を検討したい。

3.新たな経済指標についての検討

以上の視点から、全国で採用されている経済指標を参考に、今後追加を検討していく必要があると思われる経済指標(表5)について、指標タイプ別にみていきたい。ここでは、各指標の特徴やその指標を活用する目的などを確認する。

(1)人の動き

人の動きに関しては、追加検討指標として和歌山県の人口数世帯数をあげる。県内人口・世帯数は、労働力人口などの雇用や大型小売店販売額などの消費、新設住宅着工戸数などの建設と関連する経済指標である。現在、和歌山県では月次で人口数・世帯数が公表されている。

(2)生産(供給)

平成21年度経済センサスによると、和歌山県において多くの従業者数を抱える生産(供給)部門は、卸売・小売業、製造業、医療・福祉業、宿泊業・飲食サービス業、教育・学習支援業、サービス業(他に分類されないもの)、運輸業・郵便業、生活関連サービス業・娯楽業である(図1)。和歌山県にとって重要産業であるこれらの産業について、その業況把握を目標に、追加の経済指標を検討する(表4)。

図1 和歌山県において多くの従業者数を抱える産業・業種(日本標準産業分類準拠)

図1 和歌山県において多くの従業者数を抱える産業・業種(日本標準産業分類準拠)

出所)平成21年度経済センサスより筆者作成

卸売・小売業ならびに各種サービス業の業況については、現在活用している大型小売店販売額(経済産業省)に加えて、全国指標である商業販売額指数(経済産業省)第3次産業活動指数(経済産業省)特定サービス産業動態統計(経済産業省)を参考指標とすることが可能と考えられる。ただ、商業販売額指数、第3次産業活動指数、特定サービス産業動態統計は、各事業所の販売額や付加価値額をもとに指数化した全国指標であることから、これらの指標が県内業況の参考指標として活用できるかについて、詳細な分析が今後必要である。

製造業に関する指標としては、鉱工業生産指数(経済産業省)を現在活用している。この他にも、補足的な指標として、生産活動と関連する大口電力需要量(内閣府)や、鉄鋼業の経済指標である粗鋼生産量(日本鉄鋼連盟)がある。

また、生産活動とは直接関連はしないが、業種別の新規求人数(和歌山労働局)は各業種における業況と関連する指標である。ハローワーク和歌山では、卸売業・小売業、製造業、建設業などの業種別に新規求人数が公表されており、各業況の先行指標として活用することが可能と思われる。

表4 生産(供給)における追加検討指標

表4 生産(供給)における追加検討指標

(3)建設・設備投資

建設に関しては、現在活用している公共工事請負額や新設住宅着工戸数に加えて、設備投資の動きを反映した建築物着工床面積(国土交通省)がある。建設業には電気工事業や管工事業など設備投資に関連する業種も含まれるため、この指標の活用を考えていきたい。

設備投資についても、建築物着工床面積を検討する。この指標では、都道府県別、市区町村別、用途別(居住専用、製造業用、公務用など)に着工床面積や工事費予定額が算出されており、和歌山県に限らず、市町別にも設備投資の月次動向が確認できる。

(4)消費

ここでは、家計消費支出(総務省)を追加指標として検討する。家計消費支出は、世帯単位での家計消費金額(月次)や、食料、光熱費、住宅などのタイプごとの支出金額を集計したもので、和歌山県に関しては、和歌山市の指標が公表されている。この指標を活用することで、消費の実態を、消費者側からの指標で把握することが可能となる。

(5)物価

物価は経済活動が活発となり需給がひっ迫すると上昇率が高まり、経済活動が停滞し需給が緩むと上昇率が低下する傾向を持っているため、景気動向を示す指標として活用されている。和歌山県においては、和歌山市の消費者物価指数(総務省)が月次で公表されており、今後活用を検討していく必要があると思われる。そのほかにも、全国指標ではあるが、企業間取引における商品価格変動を示した企業物価指数(日本銀行)や企業間で取引されるサービスの価格の変動を示す企業向けサービス価格指数(日本銀行)があり、参考指標として検討していきたい。

(6)雇用

雇用に関連する県内経済指標は多数存在する。求人数と求職者数から算出される有効求人倍率(和歌山労働局)や、その先行指標とされる新規求人倍率(和歌山労働局)に加え、期間を特に定めていないか、1ヶ月を超える期間で雇用される常用雇用者の人数を指数化した常用雇用指数(厚生労働省)がある。各事業所での常用雇用者の増減は、景気の動きに対して遅く表れることから、遅行指標とされる。これらに加えて、早出や残業、休日出勤などを対象に算出された所定外労働時間(厚生労働省)や、賃金(厚生労働省)に関する指標がある。所定外労働時間は、事業所の生産活動の増減に関係し、現金給与総額や定期給与額などの賃金指標も景気動向と関連する指標である。

(7)資金需要

県内事業所の資金需要と関連する指標としては、和歌山県内の銀行における銀行勘定貸出金(和歌山銀行協会)がある。また、和歌山県信用保証協会における月次での信用保証承諾額も関連指標といえる。資金需要の動向は、県内事業所の生産活動と関連しており、参考にしたい。

(8)企業倒産関連

県内景況と関係する企業倒産関連の指標としては、企業倒産件数・負債額信用保証代位弁済件数・金額(和歌山県信用保証協会)がある。これらの指標はいずれも月次で公表されており、業種別の件数・金額についても算出されている。

(9)貿易

県外からの製品需要を示す経済指標としては、貿易統計(大阪税関)が挙げられる。和歌山県の輸出は、鉄鋼製品が圧倒的に多いが、事務用機器・繊維機械などの一般機械や化学製品もあり、その輸出総額は県内製造業の業況に関連している。

(10)観光

観光に関する経済指標では、県内主要観光地の入込客数が年次で報告されているが、月次での経済指標はなく、ほかの指標を参考指標としたい。主要旅行業者の旅行取扱状況(国土交通省)は、主要旅行業者58社の旅行取扱額を海外旅行、外国人旅行、国内旅行などに区分し月次公表している。全国指標であるため、和歌山県の観光と直接関連するとはいえないが、国内の旅行需要を図る1つの参考指標として今後検討したい。

表5 追加検討を行う新たな経済指標

表5 追加検討を行う新たな経済指標

4.おわりに

以上のように、本稿で今後県内景況を把握するためにどの経済指標を活用していけばよいかを検討してきた。今後は、検討を行った指標を中心に、その有効性についてさらなる検証を加えながら、「グラフで見る和歌山県経済」での活用を考えていきたい。

その上で、研究所独自の調査による経済指標の検討なども行いたい。全国の研究機関においては、このような独自指標を採用している例が少なくない。たとえば、(株)長崎経済研究所は、県内の主要旅行業者の旅行取扱額を集計しており、観光の経済指標として活用している。京都銀行は、大型小売店販売額などでは把握できない府内専門店街の販売状況を独自に集計している。和歌山県においても、観光やサービス業などに関しては、県内経済指標が不足しており、独自調査にもとづく経済指標の必要性は高い。当研究所が四半期で実施している県内の景気動向調査などの活用も今後検討する必要があると思われる。

以上のような検討を通じて、冒頭で述べた経済指標報告の3つの目的に、より一層適う「グラフで見る和歌山県経済指標」を当研究所では目指していきたい。

(2012.9)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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