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和歌山県における家計消費のトレンド変化
    〜県内世帯の少子高齢化が進む中で〜

研究委員  藤本 迪也

1.はじめに 〜少子高齢化が県内家計消費のトレンドに与える影響とは〜

前号掲載の「和歌山県における家計の現状」では、県内事業者の景況感が改善する中で、県内家計の状況はどのようになっているのかを確かめるために、国勢調査などを活用して、県内世帯構成の特徴を分析した。分析の結果、県内世帯構成の特徴は以下のような状況にあると整理した(図表1参照)。

  1. 60歳以上の世帯主から構成される世帯が増加している
  2. 単独世帯など世帯人員の少ない世帯類型が増加する一方で、子育て期にあると考えられる夫婦と子供(20歳未満)からなる世帯は減少している

このように、少子高齢化が進む中で、県内世帯もまた高齢化や世帯規模の縮小が鮮明になってきており、この世帯特徴の変化は県内消費の現場に大きな変化をもたらしていると考えられる。そこで、本稿では増加傾向にある世帯と減少傾向にある世帯の家計消費の特徴を比較し、県内消費のトレンドの変化を明らかにしたい。

2.世帯での少子高齢化が家計消費に与える影響

図表1に示した通り、2000年から2010年までにおいて、単独世帯(世帯主60歳以上)や夫婦のみから成る世帯(世帯主60歳以上)が大きく増加する一方で、三世代世帯(20歳未満の世帯員あり)や夫婦と子供から成る世帯(20歳未満の世帯員あり)が大きく減少している。このような世帯構成における少子高齢化の動きは日本全国においても同様に見られており、この動きが家計消費に与える影響について、各種調査研究が実施されている。

五味[2013] [*1]では、高齢世帯(世帯主が60歳以上)は可処分所得が減少する中、それまでの貯金を活用することで、消費支出額の減少を抑制させていることを明らかにし、高齢世帯の消費の堅調さが指摘されている。また、白木・中村[2012] [*2]は、家計所得が伸びない中にあって、国内個人消費が緩やかに増加している事象を取り上げ、若年層と比べて消費性向[*3] の高い高齢者の数が増加していること、高齢者の消費性向自体が近年さらに高まっていることを要因として挙げている。さらに、近年における高齢者の消費性向の上昇に関しては、介護保険制度の導入による将来不安の低下や「団塊の世代」(アクティブシニア層)の消費性向の高さが背景にあるとしており、この高齢世帯の需要に対して企業側が積極的に対応していくことが重要であるとした。

以上のように、高齢世帯の増加による個人消費への影響について、前向きな見解が見られる一方で、大和[2012] [*4]は、高齢世帯の所得の源泉が年金や貯蓄取り崩しなど、将来増加する可能性が小さいものであることから、基本的に高齢世帯の増加は個人消費の押し下げ要因であるとしている。

図表1 和歌山県の世帯数の推移(世帯類型別)
図表1 和歌山県の世帯数の推移(世帯類型別)
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(資料)総務省「国勢調査」(平成12、22年)

このように、高齢世帯の増加については、様々な調査が行われており、前向きに捉える見解や、悲観的に捉える見解が混交している状況にある。ただし、高齢世帯が抱える需要に対して、企業側が積極的に対応していくことで、新たな成長分野を創造していくことの重要性については、多くの研究で提起されている。

そこで、次節以降では、高齢世帯を含めて、近年世帯数が増加している世帯類型の消費の中身と減少している世帯類型の消費の中身を比較することで、家計消費のトレンド変化を分析し、企業側はどのような市場ニーズへの対応が重要であるかについて考察を行う。

3.県内家計消費のトレンド変化

県内家計消費のトレンド変化を分析するに当たり、世帯類型ごとの収入・支出金額を調査した「全国消費実態調査」(平成21年調査)を活用する。支出の中身について比較する世帯類型としては、(1)「全国消費実態調査」において支出の内訳が詳細に掲載されており、(2)和歌山県内における世帯数が相対的に多く、(3)2000年〜10年の間にその世帯数が顕著に増加、あるいは減少しているという、三つの条件に合致するものを選択した。以上の三つの条件に従い、比較対象として選択した世帯類型は、「単独世帯(世帯主60歳以上)」、「夫婦のみから成る世帯(世帯主60歳以上)」、「夫婦のみから成る世帯(世帯主60歳未満)」、「夫婦と子供から成る世帯(20歳未満の世帯員あり)」の四つである(図表1にて赤太線囲み)。2000年〜10年までの世帯数の増減を見ると、「単独世帯(世帯主60歳以上)」、「夫婦のみから成る世帯(世帯主60歳以上)」は大きく増加した世帯類型であり、「夫婦のみから成る世帯(世帯主60歳未満)」、「夫婦と子供から成る世帯(20歳未満の世帯員あり)」は減少した類型である。

以下では、これらの各世帯類型がどのような費目への支出が多く、あるいは少ないのかを確認する。

各費目への支出が消費支出合計に占める割合を世帯類型別に見た図表2によると、夫婦のみから成る世帯において、世帯主が60歳以上か、60歳未満かによって消費の中身に大きな違いが見られる。住居やその他の消費支出(特に仕送り)で60歳未満の割合が高く、食料、保健医療、教養・娯楽では60歳以上の割合が高い。また、2000年以降大きく世帯数が減少している夫婦と子供から成る世帯(20歳未満の世帯員あり)は、被服及び履物、交通・通信、教育で相対的に支出割合が高くなる一方、住居、保健医療、教養・娯楽等では割合が低くなっている。

図表2 各費目への支出が消費支出合計に占める割合(世帯類型別)
図表2 各費目への支出が消費支出合計に占める割合(世帯類型別)

(資料)総務省「全国消費実態調査」(平成21年)

以上のことから、和歌山県において2000年以降大きく世帯数が増加している世帯と、減少している世帯の消費の中身の違いは図表3のように整理できる。

図表3 世帯類型別に見た家計消費の特徴
図表3 世帯類型別に見た家計消費の特徴

(資料)総務省「全国消費実態調査」(平成21年)

図表3を踏まえて、世帯数が増加した世帯類型と減少した世帯類型の消費の特徴を比較したところ、次のようなことが明らかになった。

  1. 世帯数が減少した類型では、仕送りまたは教育費など、自らの子供に対する支出割合が高い一方で、世帯数が増加した類型では、自らの子供はすでに独立しているか、またはいないため、仕送りや教育費への支出割合は極めて低く、その代わりに保健医療や教養・娯楽への支出割合が高い。

  2. 60歳を超えて退職した場合、交通・通信への支出割合は低下するが、和歌山県においては、社会生活上、自動車の使用が欠かせないことなどから、世帯主が60歳以上の世帯と、60歳未満の世帯との間に、交通・通信への支出割合に大きな違いは見られない。

4.おわりに

2000年以降、和歌山県内では少子高齢化の流れの中で、世帯の特徴もまた、少子高齢化が進んだ。世帯主が60歳以上の世帯(夫婦のみの世帯、単独世帯ともに)が大きく増加する一方で、20歳未満の世帯員のいる世帯が大きく減少した。世帯数が大きく増加した夫婦のみから成る世帯(世帯主60歳以上)、単独世帯(世帯主60歳以上)の消費の特徴は、子供への支出(仕送り、教育費等)がほぼ皆無であることから、保健医療、教養・娯楽への支出(旅行や趣味などへの支出)割合が高い。

その一方で、世帯数が大きく減少した夫婦のみから成る世帯(世帯主60歳未満)、夫婦と子供から成る世帯(20歳未満の世帯員あり)の消費の特徴は、住居、教育等への支出割合が高く、教養・娯楽への支出割合は低い。

このような世帯構成の変化、世帯類型ごとの消費の特徴を踏まえて、近年の和歌山県における家計消費のトレンド変化を考察すると、以下の点が指摘できる。

  1. 旅行などの教養娯楽サービス、趣味に関係する教養娯楽耐久財への支出割合が高い世帯が増加しており、この市場分野への支出は底堅く推移すると考えられる。

  2. 単独世帯の増加に伴い、食料への支出は、調理食品や外食に支払われる金額が多くなっており、この分野への需要は拡大が予想される。

  3. 住宅、教育、被服及び履物への支出割合の高い世帯が減少しており、この市場分野の縮小が予想される。

以上のことを踏まえると、堅調に推移することが期待される旅行や趣味に関連する市場分野での、新商品・新サービスの創造や潜在需要を引きつける高付加価値商品、サービスの提供が重要になる。ただし、世帯数が増加基調にある夫婦のみから成る世帯(世帯主60歳以上)、単独世帯(世帯主60歳以上)は、世帯収入がその他の世帯類型に比べて低く[*5] 、可処分所得の金額は低下する。そのため、旅行や趣味に関連する市場分野への支出割合は高くとも、金額自体は先細りすることも否定できないが、先述の大和[2012]が指摘するように、教養・娯楽分野における商品・サービスの創造・提供を通じた経済活動の拡大は、雇用を域内に創出することで、減少傾向にある夫婦と子供から成る世帯(20歳未満の世帯員あり)のさらなる減少を抑制することも可能と考える。

本稿では以上のように、県内世帯の少子高齢化が進む中で、家計消費のトレンドに変化が見られることを確認し、その変化への対応の重要性を指摘した。ただし、トレンドの変化として挙げた教養・娯楽市場への消費性向の高まりについては、さらなる分析が必要であり、具体的にどのような商品・サービスにニーズがあるのか、顕在化していないニーズにはどのようなものがあるのかといった点を明らかにすることが重要と考える。この点に関しては、今後の研究課題とし、さらなる調査研究を進めていきたい。

参考情報

  • [*1] 五味[2013]
       五味麦大 [2013]、「家計調査からみた高齢世帯の家計」富国生命保険。

  • [*2] 白木・中村[2012]
       白木紀行・中村康治 [2012]、「最近の高齢者の消費動向について」日本銀行。

  • [*3] 消費性向
       消費性向は、可処分所得の中から消費に回した割合を意味する。

  • [*4] 大和[2012]
       大和香織 [2012]、「高齢者は個人消費の牽引役になったのか」みずほ総合研究所。

  • [*5] 
       「和歌山県における家計の現状」の図表6参照。

(2013.9)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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