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「非建設業」の景気動向調査指数に見る和歌山県経済の現状
    〜建設業に劣らない「非建設業」の景況感・業績改善〜

研究委員  藤本 迪也

1.はじめに 〜「非建設業」指数の必要性〜

前回は、県内家計消費の現状について、「全国消費実態調査」を活用し報告を行い、県内世帯の高齢化と小規模化が進む中で、家計消費の中身に変化が生じている点を指摘した。今回は、家計消費などの需要面ではなく、県内事業者における景況感・業績などの供給面・生産面にスポットを当てて、県経済の現状を見ていきたい。

当研究所では、四半期ごとに、県内1,000社(回収率は平均して約50%)を対象に県内景況感を調査している。それによると、県内事業者の自社景況BSI値(景気動向調査指数) [*1] は2012年1~3月期以降7期連続で上昇しており(図表1)、売上高・収益などの業績にも改善の動きが見られる。

図表1 自社景況BSI値の推移(業種別)
図表1 自社景況BSI値の推移(業種別)

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

改善の要因について見ると、図表1の通り、2012年に関しては、建設業・商業が全体をけん引している。建設業では台風12号災害復旧工事の本格化に加え、紀の国わかやま国体関連工事などの公共工事の発注量増加が景況感上昇に寄与した。商業ではエコカー補助金効果の恩恵を受けた自動車小売業や、コンクリートや鋼材などの建築材料を取り扱う事業者で景況感・業績が改善した。そして、2013年には、安倍政権による経済政策(量的・質的金融緩和、2012年度補正予算等)の効果などもあり、製造業やサービス業でも景況感は上昇に転じている。

このように、県内景況感は2012年以降、いずれの業種でも改善の動きを見せており、13年10〜12月期の見通しでは、1986年の調査開始以来初めて、景況感を「良い」とする事業者数が「悪い」とする事業者数を上回る見込みとなっている。ただし、9月に実施した景気動向調査によると、業績に良い影響を与えた安倍政権の経済政策として、多くの事業者が「公共工事の増加」を挙げている。業種別に見ても、建設業だけではなく、商業、サービス業で回答が多く見られた。さらに、2012年における県内景況感の上昇が、建設業や建築材料を取り扱う事業者の寄与によることを踏まえると、これまでの県内景況感の改善は、総じて建設業や建設関連産業の貢献が大きく、建設業との関連性の低い事業者では、景況感・業績にそれほど大きな改善が見られない可能性も考えられる。

そこで、本稿では、建設業や建設関連産業を除いた「非建設業」のBSI値を算出し、公共工事の発注量に大きく左右されない「非建設業」においても景況感・業績が改善しているのかを検証する。

2.「非建設業」BSI値の算出方法について

前述の分析目的を考慮して、本稿では建設業ならびに建設業を主な得意先とする業種(窯業・土石品製造業、測量・設計業等)を「広義の建設業」とし、それ以外の業種を「非建設業」とする。[*2] 「広義の建設業」に該当する業種は、図表2の通りある。

当研究所では、景気動向調査を実施する際、研究所保有の県内企業名簿を参照し、調査票を送付している。この企業名簿では、各事業者に対して日本標準産業分類に準拠した業種区分(細分類)を設定しており、業種ごとに景況感、売上高、収益についてどのように回答しているかを見ることができる。そこで、先ほど定義した「広義の建設業」と「非建設業」の区分を、過去の調査結果に適用し、「広義の建設業」と「非建設業」の景況感、売上高、収益に関するBSI値がどのように推移しているのかを確認する。推移を把握する期間に関しては、自社景況BSI値が改善に転じた2011年10〜12月期から、13年10〜12月期(見通し)とした。

図表2 「広義の建設業」に該当する業種(日本標準産業分類準拠)
図表2 「広義の建設業」に該当する業種(日本標準産業分類準拠)

(資料)筆者作成

3.「非建設業」BSI値の推移

3.1 景況感

2013年に入り、建設業が高水準を維持する中
「非建設業」が大きく改善

景況感では、2012年に建設業、「広義の建設業」の改善が大きく進む一方で、「非建設業」は概ね横ばいで推移した。

2013年に入ると、「非建設業」での景況感改善が大きく進んだ。化学工業、生産用機械器具製造業などの製造業に加え、運輸業、旅館・ホテル業、対事業所サービス業(ビルメンテナンス、廃棄物処理等)などが改善に寄与している。また、公共工事の発注額は2013年4〜9月期において、前年同期を上回る水準となっており、[*3] 建設業、「広義の建設業」ともに高水準を維持している。

図表3 自社景況BSI値の推移(建設業と非建設業)
図表3 自社景況BSI値の推移(建設業と非建設業)

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

3.2 売上高

2013年に入り、「非建設業」が大きく改善し
建設業の水準に接近

売上高 [*4] では、2012年に建設業、「広義の建設業」の改善が大きく進む一方で、「非建設業」は概ね横ばいで推移した。

図表4 売上高BSI値の推移(建設業と非建設業)
図表4 売上高BSI値の推移(建設業と非建設業)

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

2013年に入ると、「非建設業」での売上高改善が大きく進む一方、「広義の建設業」はBSI値が下降し、「非建設業」と接近している。「非建設業」における改善は、景況感と同様、化学工業、生産用機械器具製造業などの製造業に加え、運輸業、旅館・ホテル業、対事業所サービス業などの貢献が大きい。「広義の建設業」におけるBSI値の下降は、窯業・土石品製造業や建築材料卸売業におけるBSI値下降が響いた。[*5]

3.3 収益

「非建設業」は依然低水準で、改善の動きは緩やか

収益 [*6] では、2012年に建設業、「広義の建設業」の改善が大きく進む一方で、「非建設業」はわずかな改善にとどまった。

2013年に入ると、化学工業、生産用機械器具製造業などの製造業に加え、対事業所サービス業等の改善により、「非建設業」での収益改善が進んだ。また、建設業では改善が見られるが、「広義の建設業」では1〜3月期の高水準からは下降しており、売上高と類似する推移となった。

図表5 収益BSI値の推移(建設業と非建設業)
図表5 収益BSI値の推移(建設業と非建設業)

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

4.おわりに 〜建設業だけにとどまらない景況感・業績改善の動き〜

以上のように、2012年以降の和歌山県内事業者の景況感・業績に関しては、まずは「広義の建設業」が2012年に改善したのち、2013年以降は「非建設業」においても、「広義の建設業」に劣らない改善の動きを見せている。

総務省「平成24年経済センサス-活動調査」[*7] によると、「広義の建設業」に従事する従業者数は県内の事業所に従事する総従業者数の10.0%(全国は9.2%)にとどまり(図表6)、残りの9割の従業者は「非建設業」に従事している。そして、この9割を占める「非建設業」において、製造業やサービス業の一部ではあるが、景況感・業績に鮮明な改善の動きが見られたことは、これまでの県経済の持ち直しの動きが、公共事業の増加による建設関連産業の改善だけではないことを意味し、さらなる県経済の回復を期待させる結果と考えられる。

図表6 「広義の建設業」と「非建設業」の従業者数(和歌山県)
図表6 「広義の建設業」と「非建設業」の従業者数(和歌山県)

(注)( )内の数値は、各列の合計値に対する割合
(資料)総務省「平成24年経済センサス−活動調査」

今後、和歌山県では、2014年のデスティネーションキャンペーン、[*8] 「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録10周年、2015年の高野山開創1200年、紀の国わかやま国体などのイベントが続く。さらに、2014年4月には消費税増税が控えるものの、14年度の実質国内総生産は外需の寄与でプラス成長が予想されており、国内経済も緩やかな成長が期待される。[*9] 当研究所では、このような状況下で、県内事業者の景況感・業績が今後どこまで回復していくのかを、今回算出した「非建設業」BSI値なども活用しながら、引き続き調査・発表していきたい。

参考情報

  • [*1]
    BSI値は景況感であれば、「良い」と答えた事業者の割合から「悪い」と答えた事業者の割合を引いた値であり、売上高・収益であれば、「増加」から「減少」を引いた値のことで、県内事業者の景況感や業績の改善・悪化を判断するための指標である。Business Survey Index(景気動向調査指数)の略称。

  • [*2]
    ただし、建設業の中には、木造建築工事業や電気工事業など公共工事との関連性の低い業種も含まれることから、「広義の建設業」が公共工事と関連性の高い業種だけで構成されているわけではないことに注意が必要である。

  • [*3]
    西日本建設業保証株式会社調べ。

  • [*4]
    売上高に関しては、前四半期と比較して売上高が「増加」、「変わらない」、「減少」のいずれであるかを質問している。したがって、売上高BSI値は「増加」と回答した事業者の割合から「減少」と回答した事業者の割合を引いて算出する。

  • [*5]
    売上高と収益に関しては、前四半期との比較による増減を調査し、BSI値を算出するため、2012年7〜9月期のように著しく下降するなど、振れ幅が大きい。このことから、売上高・収益のBSI値の推移に関しては、中長期的に判断する必要がある。

  • [*6]
    収益に関しては、前四半期と比較して収益が「増加」、「変わらない」、「減少」のいずれであるかを質問している。したがって、収益BSI値は「増加」と回答した事業者の割合から「減少」と回答した事業者の割合を引いて算出する。

  • [*7]
    農林漁家に属する個人経営の事業所、家事サービス業、外国公務、国及び地方公共団体に属する事業所を除くすべての事業所・企業を対象とした調査で、平成24年(2012年)2月1日現在の従業者数、売上金額、経常収益等を調査している。

  • [*8]
    JRグループ旅客6社と選定された自治体・市町村・観光関係団体等が協同で実施する大型観光キャンペーン。実施期間は、2014年9月14日〜12月13日まで。

  • [*9]
    2014年度の実質国内総生産の見通しについては、日本銀行が1.5%増、日本政府は1.0%増、ESPフォーキャスト調査(民間エコノミスト41人の予測集計)が0.7%増と予測している(2013年11月1日現在)。

(2013.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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