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2013年における和歌山県の景気動向
   〜県経済は、景況感・業績の改善の動きを加速させながら2014年へ〜

研究委員  藤本 迪也

1.はじめに 〜2013年の県内外経済の概況〜

1.1 日本経済は堅調な内需のもと、中小企業の景況感も含めて全体的に改善

安倍内閣の発足から1年が経過し、日本経済は、個人消費の持ち直し、製造業の生産増加、企業の景況感改善、非製造業を中心とした設備投資の持ち直し、脱デフレの動きなど、景気回復が進んでいる。外需がけん引する形での景気回復とは異なり、今回の景気回復では、高額品需要などを代表とする内需がけん引していることが特徴であり、日銀短観調査などでは、大企業・中堅企業のみならず中小企業においても景況感に持ち直しの動きが見られるなど、広い分野で景況感の改善が見られた。

1.2 県内景況感は業績とともに改善基調

以上のような日本経済にあって、和歌山県経済においても景況感は改善の動きを見せた。当研究所が県内事業者の協力のもと、四半期ごとに実施している「景気動向調査」によると、県内事業者の景況感を示すBSI値は2012年10〜12月期の−13.7ポイントから10ポイント超上昇し、2013年10〜12月期は+0.9ポイントとなった(図表1)。BSI値がプラス水準となるのは、現行調査と同形式となった2001年7〜9月期以降で初めてのことである。

また、景況感のみならず、売上高や収益などの事業者業績においても、BSI値の改善が見られるなど、良い調査結果が多く見られた(図表2、3)。

このような結果を受けて、以下では、建設業、製造業、商業、サービス業の4産業それぞれについて、どのような分野で改善が進み、どのような分野では改善があまり進んでいないのか、詳細を明らかにする。

図表1 県内の自社景況BSI値の推移
図表1 県内の自社景況BSI値の推移

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

図表2 県内の売上高BSI値の推移
図表2 県内の売上高BSI値の推移

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

図表3 県内の収益BSI値の推移
図表3 県内の収益BSI値の推移

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

2.産業別に見た2013年の県内景況感・業績

2.1 建設業 〜足下、見通しともに順調〜

県内建設業に関しては、図表4の通り、2012年(平成24年)10〜12月期には既に景況感、売上高のBSI値がプラス水準にあるなど、高い水準にあった。さらに、2013年に入り、旺盛な公共工事の発注額に加え、消費増税前の駆け込み需要等による新築住宅着工数の増加があり、一般土木建築工事業だけでなく、建築工事業、管工事業などでも景況感・業績に改善の動きが見られた。その結果、2013年10〜12月期には、景況感BSI値が40に迫り、収益BSI値もプラス水準まで浮上した。

仕入価格の上昇、高まる人手不足感、電気工事業における景況感・業績の低い水準など、懸念される点も見られるが、県内建設業は2014年においても、引き続き堅調な公共工事に支えられながら、景況感・業績は高水準で推移するものと考えられる。

図表4 建設業の景況感・業績BSI値の推移
図表4 建設業の景況感・業績BSI値の推移

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

2.2 製造業 〜改善基調のまま2014年へ〜

県内製造業に関しては、図表5の通り、2013年(平成25年)7〜9月期に景況感・業績における改善の動きに一服感が見られたものの、10〜12月期には再び大きく改善し、2012年10〜12月期からは、景況感で20ポイント超、売上高で30ポイント超、収益で20ポイント近い大幅上昇となった。

業種別に見ると、食料・飲料、木材・木工、化学、鉄鋼・金属加工などでは景況感・業績に改善の動きが見られる一方で、繊維、機械ではその動きがあまり見られない。食料・飲料に関しては、2013年下期以降、梅加工品製造業を中心に景況感・業績の改善が進んだ。猛暑による特需に加え、梅の豊作に伴う仕入価格の下落、国内内需の持ち直し等が寄与したものと考えられる。木材・木工については、住宅市場の活況を受けた材木・家具需要の持ち直しが寄与し、化学に関しては、円高修正に伴う輸出環境の改善等が寄与した。さらに、鉄鋼・金属加工に関しては、2013年前半までは、自動車関連、繊維機械関連、建築金物関連の部品を製造する事業者に景況感・業績に改善の動きが見られたが、後半以降は一服感が見られる。

このように、さまざまな業種で景況感・業績の改善が見られた製造業であるが、繊維、機械においては依然として景況感・業績が低い水準で推移し、仕入価格の上昇が製造業全体で見られるなど懸念材料もある。さらに、4月以降の消費増税は、これまで改善を続けてきた食料・飲料、木材・木工を中心に悪影響を与えることが予想されており、2014年の県内製造業の動向には注意が必要である。ただし、このような先行き見通しの中で、県内製造事業者に今後の事業展開などについて、アンケート調査を実施したところ、事業展開では「製品改良・製品開発」を実施するとの回答が4割、販路拡大の方向性については、「県内での売上高を増やす」とする回答が6割ほどあり、いずれの質問でも「現状維持」とする回答は1割程度にとどまった。

県内製造業にとって、2014年は、仕入価格のさらなる上昇、消費増税など経営における負の条件が控えるが、製品差別化や販路拡大の取り組みを実施するなど、逆風に立ち向かう事業者も数多く見られる。

図表5 製造業の景況感・業績BSI値の推移
図表5 製造業の景況感・業績BSI値の推移

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

2.3 商業 〜仕入価格上昇の影響大きく、改善幅は他産業に比べて弱め〜

県内商業に関しては、図表6の通り、2013年(平成25年)の景況感BSI値はマイナス10を挟んで一進一退の状況で、売上高・収益に関しては、4月〜9月にかけて下降が見られた後、持ち直しを見せた。この結果、県内商業に関しては、建設業、製造業とは異なり、2013年は景況感・業績ともに5ポイント前後の改善にとどまった。

緩やかな改善にとどまった商業であるが、業種別に見ると、その動きには違いが見られる。卸売業、小売業で景況感・業績の改善の程度(2013年における)を見ると、小売業の方がわずかながら改善幅は大きくなっているが、景況感・業績のBSI値の水準は卸売業が上回っている。さらに詳細に見ると、2013年においては、建築関連卸売業が県内建設業と同様に改善が続き、景況感BSI値は近年の最高水準で、機械器具卸売業に関しても、県内外における設備投資の持ち直しに伴い、景況感・業績の改善が見られた。ただし、その他の卸売業では一部に景況感・売上高に改善は見られるものの、仕入価格の上昇により、収益改善はあまり進んでいない。小売業においては、2012年10〜12月期にエコカー補助金終了に伴う反動があった自動車小売業で、景況感・業績に改善の動きが見られた。低燃費の新車を各社が投入したことに加えて、2014年4月以降の消費増税を前に駆け込み需要等があったものと考えられる。その他の小売業に関しては、一部に改善の動きも見られるが、仕入価格上昇に直面する燃料小売業、飲食料品小売業など、景況感・業績に厳しさが見られる。

このように、商業は、景況感・業績の改善が一部にとどまったため、全体での改善についても、他産業に比べて弱いものとなった。さらに、仕入価格の上昇が他産業以上に収益を圧迫している可能性も高く、このことも、改善の動きを抑制したと考えられる。

このような状況にある県内商業にとって、2014年は、仕入価格のさらなる上昇、消費増税などが控える。厳しい経営環境が続くと考えられる商業ではあるが、製造業と同じく、今後の事業展開、販路拡大の方向性について、「現状維持」するとの回答は2割弱にとどまり、「価格競争力の強化」、「取扱商品の見直し・商品開発」を行いながら、県内外で販路を拡大しようとする事業者が数多く見られる。

図表6 商業の景況感・業績BSI値の推移
図表6 商業の景況感・業績BSI値の推移

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

2.4 サービス業 〜県内景況感の改善が各種サービス業に波及〜

県内サービス業に関しては、図表7の通り、景況感BSI値は2013年(平成25年)に一時下降したものの、概ね改善基調となった。また、売上高・収益に関しては、一貫してBSI値が上昇し、売上高はプラス水準まで浮上した。

業種別に見ると、景況感・業績が大きく改善したのは、設計、測量業等の土木建築サービス業である。同業者間の競争激化などを課題とする事業者が多いものの、2014年1〜3月期の見通しにおいても、さらなる改善を予想する。不動産業は建設機械リース業や住宅関連不動産業などで改善が見られた。荷動きが活発化していると考えられる運輸業では、食品、鋼材等を取り扱う事業者で改善の動きが見られた。燃料価格の高止まりで収益改善はまだ弱いが、所定外労働時間などにおいても改善の動きが見られる。2013年における県内主要観光地の夏季観光客入込状況で、宿泊に関しては2010年水準をほぼ回復した県内観光であるが、旅館・ホテル業の景況感は、昨年同時期からほぼ横ばいで推移した。繁忙期の7〜9月期からの反動や2011年9月の台風12号災害からの持ち直しがひと段落したことなどが影響していると考えられる。

医療・福祉に関しては、景況感が下降基調ではあるが、売上高・収益は持ち直しており、雇用者数の不足感も依然として強く、業績には堅調さが見られる。教養・娯楽、生活関連サービス業は、景況感は依然として弱めではあるが、売上高にはこれまでの減少傾向に下げ止まりの兆しも見られる。人材派遣業、ビルメンテナンス業、警備業等の対事業所サービス業に関しては、県内事業者の景況感改善を受けて、雇用者数の増加を伴う持ち直しの動きが見られた。

このように、県内サービス業では、土木建築サービス業を中心に、景況感・業績ともに改善基調にある。県内景況感の改善を受けて、対事業所サービス業でも改善の動きが見られたことは好材料で、今後は、県内個人消費の動向に左右される教養・娯楽、生活関連サービス業においても、景況感・業績が改善することが期待されるが、4月に消費増税を控えることから、先行き見通しは楽観視できない。

以上のことを踏まえると、2014年は、様々な観光イベントを控える旅館・ホテル業や、改善の続く土木建築サービス業、対事業所サービス業の動向が県内サービス業の動向を大きく左右すると考えられる。

図表7 サービス業の景況感・業績BSI値の推移
図表7 サービス業の景況感・業績BSI値の推移

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

3.おわりに 〜2014年の県内経済について〜

2013年の県内経済の景況感・業績は、これまで述べてきたように、全産業で改善の動きが見られた。特に、建設業、製造業、サービス業で改善幅は大きく、これらの産業を中心に売上高・収益等の業績にも改善の動きが見られたことは、2013年の1〜3月期に見られていた「景況感のみの改善」からは状況が好転したことを示している。

県内経済にとって、2014年は消費増税に加え、電気料金や仕入価格のさらなる上昇など経営環境に悪影響を与える事象も想定されるが、法人税減税や公共投資の堅調さに加え、各種観光イベント(和歌山デスティネーションキャンペーン、高野山開創1200年)も予定されるなど、県内経済を下支えする事象も多い。また、数多くの県内事業者が製品・サービスの差別化や価格競争力の強化、県内外販路の拡大などの取り組みを、自社内人材の育成、即戦力人材の採用などを通じて実施することを計画しており、積極的な事業者の取り組みが期待される。

当研究所では、変化が予想される2014年の県内経済動向について、景気動向調査などの実施を通じ、引き続き詳報していきたい。

(2014.3)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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