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人口減少社会において注目される和歌山県の経済指標(2)
    〜県内人口の社会動態について〜

研究委員  藤本 迪也

1.はじめに

○2040年の和歌山県人口は約72万人

国立社会保障・人口問題研究所による「日本の地域別将来推計人口(都道府県・市区町村)」によると、和歌山県の人口は2040年には719,427人になると予測されており、先ごろ発表された2014年10月1日現在の推計人口970,903人からは約25年間で25万人が減少(1年間に1万人が減少)することになる。

このような予測を受けて、2014年6月24日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」と新成長戦略では、人口減少に対して、「50年後にも1億人程度の安定的な人口構造を保持する」との目標を設定し、地方における人口減対策について、その施策方針を打ち出した。また、 和歌山県においても、2014年度の新政策の基本的な考え方の一つとして「切れ目のない少子化対策の推進」を挙げており、結婚支援や保育の質・量の充実、第3子以降3歳未満児の保育料を無償化するなどの政策を展開している。

○今回の注目指標は「県内人口の社会動態」

以上のように、人口減少・少子化対策がますます重要視されるようになる中で、本レポートでは、「人口減少社会において注目される和歌山県の経済指標」と題して、人口減少に関連する経済指標を取り上げる。前回は、「労働参加率」を取り上げ、将来的な労働力不足に対して、女性・高齢者の就業促進を通じた労働参加率の上昇が必要とされる中、県内の労働参加率の推移を確認した。

今回は、県内人口を左右する「社会動態」を取り上げたい。「社会動態」とは、一定期間における当該地域への転入・転出を伴う人口の動きのことであり、和歌山県であれば、県外からの県内への転入人口、県内から県外への転出人口が該当する。

○県内への移住推進政策の目標指標として

和歌山県では、「田舎暮らし応援県わかやま推進会議」を設立し、民間及び行政が連携して、県外からの移住推進を目的に、受入体制づくりや情報発信を行っている[*1]。2014年度においては、さらに、県外からの移住者による起業を経済的に支援するために、「和歌山移住者起業補助金」の募集を行うなど、さまざまな政策を展開している。

これらの政策の効果を検証、または、今後の政策立案の参考資料としても、現状における和歌山県の「社会動態」を把握する意義は大きい。次節では、「社会動態」の現状を確認する。

2.和歌山県における「社会動態」について

○ここ最近の社会増減数は年間2,000〜2,500人程度の減少で推移

和歌山県の人口は2014年10月1日現在で推計ながら970,903人となっている。図表1はその人口の減少数ならびに社会減、自然減の内訳をみたものである。それによると、和歌山県の人口は2007年以降、2010年を除くと、毎年7千人前後の減少が継続している。減少数に占める自然減の割合は、2007年の44.2%から2014年には63.6%にまで上昇しており、県内人口減少の大きな要因となっている。社会減については、2007年から2010年にかけては減少傾向が見られたが、その後は増加傾向にある。2014年時において、県内人口減少数に占める社会減の割合は、29.8%となっており、2007年時の55.7%に比べて大きく下降している。この社会減の割合の変化については、高齢化が進む中で、県外に転出する世代層が減少する一方で、自然減の増加につながる高齢者割合の上昇が影響していると考えられる。

図表1 和歌山県の人口減少数(社会減と自然減の内訳)
図表1 和歌山県の人口減少数(社会減と自然減の内訳)

○転入者数、転出者数ともに減少傾向から底打ちに向かう

転入者数と転出者数の推移について見た図表2によると、転出・転入者数は2007年以降、減少傾向が続いていたが、2013年には底を打ち、2014年は増加に転じている。ただし、2007年以降の減少傾向に関しては、転出者数が転入者数の減少ペースを上回っており、両者の差は縮小している。

図表2 近年における転出者数と転入者数(和歌山県)
図表2 近年における転出者数と転入者数(和歌山県)

和歌山県が実施している移住推進政策の効果を見る上では、この「転入者数」の推移が重要となるが、現状としては、増加に転じる兆しが見られており、今後の動向については、注視する必要がある。

このように、転出者数・転入者数ともに増加に転じつつある和歌山県の社会動態だが、市町村別では、どのような動きが見られるのだろうか。市町村別の社会増減数について、2012〜2014年の3年間の累計数を見たものが図表3である。

図表3 市町村別に見た社会増減数(和歌山県、2012〜2014年累計)
図表3 市町村別に見た社会増減数(和歌山県、2012〜2014年累計)

○社会増は4市町のみで、市部を含め社会減の市町村が大半

それによると、社会増となっている市町村は4市町(上富田町、日高町、岩出市、太地町)となっている。社会減については、田辺市の1,026人、橋本市の947人をはじめ、紀の川市、海南市、新宮市、有田市、御坊市、和歌山市など多くの市部で社会減となっている[*2]

また、市町村人口(2014年4月1日時)に対する社会増減の割合では、高野町が5.7%の社会減で最も高い割合となっており、九度山町(4.1%の社会減)、由良町(3.3%の社会減)とともに、社会減が他市町村に比べて進んでいる。

○社会増の市町は、県内他市町村からの転入が増加

ただし、市町村別で見た社会増減については、県内他市町村との転出入と県外・国外との転出入が含まれている。県内他市町村との転出入差について見た図表4によると、和歌山市が1,494人増で1位、岩出市が514人増、上富田町が360人増、日高町が227人増、橋本市が107人増で続く。岩出市、上富田町、日高町は社会増となっていた市町であるが、その要因としては、県内他市町からの転入が大きいことがわかる。そして、県外・国外への転出入差を見た図表5を見ると、岩出市、上富田町、日高町はいずれも、転出超となっており、県外からの移住が進んだことによる社会増ではないといえる。

○県外・国外からの転入が転出を上回る市町村は3町村のみ

また、和歌山市、橋本市についても、県内他市町村からの転入数を、県外・国外への転出が上回っており、その他の市部に関しては、県内他市町村ならびに県外・国外のいずれにおいても転出超となっている。

図表4 市町村別に見た県内他市町村との転出入差(和歌山県、2012〜2014年累計)
図表4 市町村別に見た県内他市町村との転出入差(和歌山県、2012〜2014年累計)

図表5 市町村別に見た県外・国外との転出入差(和歌山県、2012〜2014年累計)
図表5 市町村別に見た県外・国外との転出入差(和歌山県、2012〜2014年累計)

3.おわりに

以上のように、和歌山県内への移住推進政策の参考指標として「社会動態」を取り上げ、和歌山県におけるその現状を見てきたが、近年において社会増が見られる県内市町村についても、その要因は、県内他市町村からの転入増であることがわかった。

今回取り上げた「社会動態」は4月と10月の年2回において、その動向を把握することができ、県・市町村の移住推進政策において、その政策効果などを考察する際の参考資料として活用することは可能と考える。

このように人口減少に関連する経済指標は、政策・施策の効果を測定する際に重要な参考資料となり得ることから、次号の「経済指標」においても、引き続きさまざまな経済指標を取り上げていきたい。

参考情報

  • [*1]
    田舎暮らし応援県わかやま推進会議ウェブサイト www.wakayama-inakagurashi.jp

  • [*2]
    市町村における社会増減は、県外だけでなく、県内他市町村への転出を含むため、市町村での社会減がそのまま、県民人口の減少につながるわけではない。

(2014.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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