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人口減少社会において注目される和歌山県の経済指標(3)
    〜少子化対策に関連する指標について〜

研究委員  藤本 迪也

1.はじめに

○人口減少抑制を目指す「地方創生政策」

2014年11月、地方の人口減少を抑制し、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくことを目的に、その基本理念を定めた「まち・ひと・しごと創生法」が施行、12月には具体的な政策メニューを示した総合戦略が発表された。人口減少が続く和歌山県でも、県ならびに市町村において、同様の総合戦略が策定される計画となっており、今後は、その計画のもと、様々な施策・事業(このような施策・事業展開を本稿では「地方創生政策」として表記する)が展開されると考えられる。

○「結果重視」の地方創生政策は指標を使って効果を検証

策定が計画されている「総合戦略」では、具体的な政策に加えて、各政策に関する重要業績評価指標(KPI : Key Performance Indicator)を明記する必要がある(図表1)。

図表1 KPIの具体例
図表1 KPIの具体例)

(資料)筆者作成

策定されたKPIについては、定期的に進捗度を確認し、政策効果を検証することが求められており、これらの検証のもと、必要に応じて総合戦略は改訂される。このようなプロセスを通じて、「結果重視」の地方創生政策が進められることになっており、より効果的に政策を実施していくためにも、政策目標にあった適切なKPIを設定することが重要である。

○本稿の目的

そこで、本稿では、人口減少抑制において、重要課題の一つである「少子化」対策を取り上げ、少子化対策におけるKPIとして、どのような指標が活用できるかを考察すると同時に、これまでの少子化対策について整理を行う。

2.日本国内における少子化の現状と政府の取り組み

○少子化の現状

厚生労働省『少子化社会対策白書』(平成26年版)によると、日本の年間出生数は1991年以降は増加と減少を繰り返しながら、緩やかな減少傾向にあり、合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に生む子どもの数の推計値)も下降が続いている(図表2)。このような少子化の進行と合わせて、白書は、結婚年齢が高くなる晩婚化、出生したときの母親の平均年齢が高まる晩産化、生涯未婚率の上昇なども指摘しており、少子化対策では、結婚、妊娠・出産、子育てにおける、切れ目のない対策が重要になると考えられる。

図表2 日本における出生数と合計特殊出少率の推移
図表2 日本における出生数と合計特殊出少率の推移

(資料)厚生労働省「人口動態統計」より筆者作成

○日本政府による少子化対策の現状と今後

少子化に対して、日本政府は1990年の「1.57ショック」[*1] を契機に、仕事と子育ての両立支援など子どもを生み育てやすい環境づくりに向けての対策の検討を始め、2003年には「少子化社会対策基本法」が制定・施行され、少子化社会対策大綱や大綱に基づく具体的な実施計画のもと、施策が実施されている。現在は、2010年に制定された少子化社会対策大綱「子ども・子育てビジョン」のもと、女性が安心して子どもを生み・育てられるような環境を整備するとともに、生まれてきた子どもが安心して成長できるような環境を整備することを目指した政策が展開されている。[*2]

近年においては、都市部を中心に増加している待機児童の解消を目指した「待機児童解消加速化プラン」(2013)が策定されている。また、各地域の多様な子ども・子育て支援ニーズに対応することを目的とした「子ども・子育て支援新制度」が2015年4月に本格施行される予定となっており、少子化対策の重要性はますます高くなっている。

○和歌山県内の少子化対策の現状

和歌山県では、2005年の「次世代育成支援(前期)行動計画」(「紀州っ子元気プラン」)、2010年の「次世代育成支援(後期)行動計画」(「新紀州っ子元気プラン」)のもと、保育・子育て環境の整備に関する様々な施策が実施されてきている。

「新紀州っ子元気プラン」で設定された目標については、「病児・病後児保育事業を実施する市町村数・箇所数」、「放課後児童クラブを設置する箇所数」などにおいて、目標数値を達成しており、子育て環境の整備を中心に対策が進捗している。その一方で、父親の育児参加に対して積極的に取り組む市町村の割合や男女共同参画計画を策定する市町村の割合などでは目標未達(平成25年度時)となっており、家庭での男女の役割分担において女性負担が大きいという課題に対しては、さらなる施策展開が必要と思われる。

○県内の少子化対策の今後

2014年度においては、地域少子化対策強化交付金を活用した「わかやま結婚支援事業」や「要支援家庭へのアプローチ」を実施しており、結婚、妊娠・出産、子育てまでの切れ目のない支援を推進している。また、前述の「子ども・子育て支援新制度」の本格実施に先立ち、県では「和歌山県子ども・子育て会議」を2013年度に設置し、市町村と連携しながら、今後必要になる子育て支援について、計画的に進めることになっている。さらに、「まち・ひと・しごと創生法」において県ならびに各市町村での策定が努力義務とされる「地方版総合戦略」では、「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」との項目が基本目標の一つとなっており、各市町村でも少子化対策がさらに重点実施される可能性が高い。

○現在の少子化対策の概観

以上のような国内・県内の少子化対策を概観した時、その対策は図表3のように、結婚、妊娠・出産、子育て(教育)の各段階での対策に区分することができる。そして、各段階における対策を切れ目なく実施することで、結婚、出産・妊娠、子育てを希望する人が少しでも多く、その希望を実現できるように環境整備することこそ、少子化対策の目標であると考えられる。

図表3 少子化対策の概観 (「結婚」、「妊娠・出産」、「子育て(教育)」を「切れ目なく」支援)
図表3 少子化対策の概観 (「結婚」、「妊娠・出産」、「子育て(教育)」を「切れ目なく」支援)

(資料)筆者作成

○理想とする子ども数と予定する子ども数とのかい離

現状では結婚を希望する人は86.3%(男性)、89.4%(女性)となる一方で、生涯未婚率は女性で10.6%、男性では20.1%となっている。[*3] 同世代を対象にした調査結果ではないため、単純に比較はできないものの、男性を中心に結婚に対する希望と現実との間には差が見られている。同様の傾向は妊娠・出産においても確認でき、既婚の夫婦において理想とする子ども数(2.42人)と予定する子ども数(2.07人)との間には差が見られている(厚生労働省「第14回出生動向基本調査(夫婦調査)」(2011年))。

少子化対策では、この希望と現実との差を可能な限り埋めていくことが重要になる。次節では、この少子化対策が効果的に施行されるために、どのような数値目標を設定して、評価していくことが重要であるかについて、考察を行う。

3.少子化対策に関連する指標

○国および和歌山県で活用されている指標

少子化対策に関しては、国ならびに和歌山県において、さまざまな目標指標が設定されており、その目標達成度を定期的に確認しながら、少子化対策を検証している(図表4)。現状では、国においても和歌山県においても、保育サービスの受け入れ人数や拠点数など、子育て(教育)に関係する目標指標が目立つが、今後は、結婚、妊娠・出産に関する政策が増えてくるに従い、これらに関係する目標指標も増加すると考えられる。

図表4 少子化対策の数値目標として活用されている指標
図表4 少子化対策の数値目標として活用されている指標

(資料)内閣府HP内「「子ども・子育てビジョン」について」の「別添2 施策に関する数値目標」ならびに和歌山県HP内
「和歌山県の少子化対策」の「新紀州っ子元気プラン数値目標の進捗状況(平成22年度)」より筆者作成

○独自調査による「オリジナル指標」が欠かせない

各政策について目標が設定されていることは、政策の進捗管理としては効果的だが、政策が少子化対策として機能しているかどうかについては、さらに検証が必要となる。例えば、核家族化が進み、地域のつながりが希薄化する中で、子育てに不安を感じる親が増えていることに対して、親同士の交流を促進し、育児相談や情報提供機能を果たす「地域子育て支援拠点」の設置促進政策が実施されている。この政策の目標指標としては、設置拠点数が設定されており、和歌山県内においても拠点数は増加している。ただし、拠点数の増加が、親子の子育てに対する孤立感、不安を弱めることにつながらなければ、少子化対策として十分に機能しているとはいえない。結婚、妊娠・出産、子育てを希望する人が、一人でも多く、その希望を実現できることが少子化対策であると考えるなら、結婚、妊娠・出産、子育ての障害となっている要因を取り除くことができて初めて、少子化対策は機能したといえる。

このように考えるとき、今後の少子化対策の実施に際しては、図表4のような目標値の設定に加えて、結婚、妊娠・出産、子育ての各段階における意向調査を行うことが重要と考える。単身者に対しては「結婚することに対する不安」、結婚している人に対しては、「妊娠・出産に対する不安」、「子育てに対する不安」などについて質問し、「不安」を抱く回答割合が下降するかどうかで、少子化対策の効果を判断できないだろうか。[*4]

4.おわりに 〜 地方創生政策におけるKPIにも「オリジナル指標」を 〜

本稿では、日本が直面する重要課題である「少子化」について、その現状や対策の動向を確認したうえで、今後の対策を効果的なものにするために、どのような指標を目標設定に活用すればよいかについて考察を行った。その考察結果として強調したい点は、少子化対策をより効果的なものにするためには、政策の進捗管理としての目標設定だけではなく、実際に効果が出ているのかどうかを検証するために、独自調査に基づく「オリジナル指標」を活用することが重要であるという点である。

冒頭で記述した通り、「まち・ひと・しごと創生法」が施行され、努力義務ではあるものの、都道府県、各市町村においても、人口減少抑制を目指し、政策の実施計画を定めた「地方版総合戦略」の策定が求められている。この戦略の中では、実施を予定する政策に対して、個別に数値目標を設定する必要があり、目標に対する進捗状況を検証することが求められている。そして、本稿の考察に基づけば、目標設定に際して、政策をより効果的に実施するためにも、効果検証のための目標設定を行っていくことが重要になるのではないだろうか。

参考情報

  • [*1]
    合計特殊出生率が当時の過去最低値1.58(1966年)を下回る1.57となったことを厚生省(当時)が発表した。

  • [*2]
    これまでの国内における少子化対策の概要については、厚生労働省『少子化社会対策白書』(平成26年版)38頁参照。

  • [*3]
    結婚を希望する人の割合については、厚生労働省「第14回出生動向基本調査」において、18〜34歳未婚者に対して実施した「結婚する意思」に関する質問の回答結果を参照した。生涯未婚率については、総務省「国勢調査」(2010年)より、「45〜49歳」と「50〜54歳」の未婚率を単純平均し算出している。

  • [*4]
    調査実施に際しての質問項目の設定等については、厚生労働省と国立社会保障・人口問題研究所が5年に1度行っている「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」を参照されたい。

(2015.4)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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