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和歌山県における“地域の暮らしやすさ”(市町村別)
    〜経済産業省「生活コストの「見える化」システム」より〜

研究員  藤本 迪也

1.テーマについて

昨年5月、日本創成会議・人口減少問題検討分科会が2040年までに20〜39歳の女性の人口が5割以上減少し、人口減少がとまらず、存続が危ぶまれる自治体が896に上ると発表した。和歌山県では、30市町村中、23市町村がその中に含まれている。

このような状況に対して、昨年11月、政府は、地方の人口減少抑制を目的にその基本理念を定めた「まち・ひと・しごと創生法」を施行、12月には具体的な施策の方向性を示した総合戦略が示され、今後は、日本全国の自治体で同様の総合戦略が策定されることとなっており、その動きは「地方創生」との言葉として紹介されるようになった。

この「地方創生」においては、都市圏から地方への人の流入を促すことが重要な方向性の一つとされている。そして、この動きを後押しするために、経済産業省は地域別の「暮らしやすさ」を貨幣価値として算出する「生活コストの「見える化」システム」を発表した。

そこで、今回は、このシステムを活用して、和歌山県における「地域の暮らしやすさ」について考察を行う。

2.「生活コストの「見える化」システム」について

加藤久和(明治大学)「生活コストの「見える化」について」では、「生活コスト」として、食費、光熱費、住居費などの「金銭的」なものと、地域での働きやすさ、教育・子育て環境、医療・福祉環境などの「非金銭的」なものがあるとしている(図表1参照)。

図表1 「非金銭的」生活コスト(暮らしやすさに関わる項目)

・ショッピングセンターへの距離
・飲食店の集積度
・バス停までの距離
・鉄道駅までの距離
・通勤・通学時間
・求人倍率
・小中学校までの距離
・最寄の病院又は診療所までの距離
・空気のきれいさ
・水のきれいさ
・今後30年間に、震度6以上の揺れが発生する確率
・治安の良さ          等

(資料) 経済産業省「生活コストの「見える化」システム」

「金銭的」な「生活コスト」については、既存の各種調査(「賃金構造基本調査」、「家計調査」など)などから算出可能であるが、地域での働きやすさといった「非金銭的」なものについては、貨幣価値として算出することが難しい。そこで、経済産業省の「生活コストの「見える化」システム」では、約1万人を対象にしたアンケート調査を実施し、住む地域を選定する際に重視する項目、そして、それらの項目の原単位が1変化した時(例えばショッピングセンターまでの距離が1km近くなった時)の支払意思額を質問し、その回答結果をもとに、各地域の「非金銭的」な「生活コスト」を算出している。

3.和歌山県における”地域の暮らしやすさ”について

上述の「生活コストの「見える化」システム」では、「家族構成」、「年代」、「居住地を選ぶ際の好み(志向)」別にコストが算出されるようになっている。ここでは、冒頭で述べた「地方創生」を鑑み、和歌山県への移住促進という視点から、子育て世代の人たち[*1] にとっての”暮らしやすさ”を考察する。

図表2 地域の暮らしやすさ(和歌山県)

図表2 地域の暮らしやすさ(和歌山県)

(注) 各指標の単位は千円。総合評価は各指標を合計したものであり、各指標の
上位3市町村(松江市除く)は網掛け表示となっている。各指標については、図表3を参照。

(資料) 経済産業省「生活コストの「見える化」システム」

図表3 地域の暮らしやすさに関する指標

図表3 地域の暮らしやすさに関する指標

(資料) 経済産業省「生活コストの「見える化」システム」

○子育て世代における”暮らしやすさ”1位は岩出市

図表2によると、和歌山県における”暮らしやすさ”の貨幣価値が最も高い地域は、岩出市となっており、紀の川市、紀美野町、上富田町、橋本市が続いている。和歌山県1位の岩出市は、その他の市町村と比べて、「生活利便性」、「災害」の評価額(貨幣価値)が高い。「生活利便性」については、ショッピングセンターへの距離、飲食店の集積度への評価額が高く、「災害」については、内陸部であることから、津波の危険性がないことが高く評価されている。

○全国1位の松江市と比べた時の和歌山県の特徴

評価額が全国1位の松江市と和歌山県の平均評価額を比較した場合、津波避難対策地域に該当する市町村の多い和歌山県は、「災害」において、評価額が極めて低い。また、「働きやすさ」においては、通勤・通学時間(※都道府県指標)が松江市よりも長く、「生活利便性」では、ショッピングセンターへの距離、飲食店の集積度において県の評価額が松江市を下回る。そして、「医療・福祉」についても、高度な救命措置が可能な救命救急センターまでの所要時間において、県の評価額が松江市を下回っている。

その一方で、水のきれいさ、空気のきれいさ、緑の多さといった「自然環境」や、地域で採れた食材の入手のしやすさでの評価額は高い。

以上のような、全国1位と和歌山県平均の比較だけではなく、「生活コストの「見える化」システム」では、全国のさまざまな地域との比較が可能であり、県内自治体における移住促進において、一つの参考資料になるものと考える。

参考情報

  • [*1]
    具体的には、夫婦と子供(小中高生)からなる世帯で、世帯主の年齢は30代、居住地を選ぶ際には、「郊外・農村志向」を抱く人たちを想定している。

(2015.8)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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