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和歌山県における家計支出の現状と見通し〜全国消費実態調査を参考に〜

研究員  藤本 迪也

1.本稿の目的

日本国内において個人消費が低調に推移している。平成28年(2016年)の春季労使交渉では3年連続で2%台の賃上げ率となったものの、家計の消費支出額は前年比でマイナス基調となっている(総務省「家計調査」)。年初以降の日経平均株価の大幅下落、円高進行に加えて、4月の熊本地震が消費者マインドを冷やしており、節約志向が強まっていることが一つの要因と考えられる。

和歌山県内においても、当研究所が四半期に一度実施している「景気動向調査」によると、県内商業事業者の景況感は低い水準で横ばいとなっており、持ち直しの動きがあまり見られない。

このように、日本国内、和歌山県内ともに個人消費に弱さが見られる状況について、本稿では5年に1度実施される「全国消費実態調査」(総務省)を参考に、世帯単位での収入、支出がどのように変化しているかに注目し、個人消費の弱さの背景を考察する。

2.「全国消費実態調査」について

総務省は5年に1度、国民生活の実態について、家計の収支及び家計資産、支出を調査している。和歌山県内でも約800の世帯を対象にこの調査が実施されており、世帯単位での収入額、支出額、貯蓄現在高などが把握できる。世帯全数を対象にした調査ではなく、また、実際の世帯分布に比べて単身世帯への調査数が少なくなっている点には注意が必要だが、どのようにして収入を得ているのか、どのような費目への支出が増加しているのかといったことを考察できる点で、非常に重要な調査となっている。

次節以降では、この「全国消費実態調査」(平成26年)を活用して、和歌山県内における世帯での収入、支出について、平成21年調査との比較をもとに、その変化を考察する。

3.世帯の年間収入の変化

和歌山県内における世帯の年間収入について、階級別の世帯数の割合を見ると(図表1)、平成26年時は200万円未満が17.6%、200〜300万円が17.6%となっており、平成21年時の13.2%、15.8%からそれぞれ上昇している。その一方で、300〜600万円の年間収入世帯では、平成21年に比べて平成26年の世帯割合は下降している。

図表1 年間収入階級別の世帯数割合(和歌山県)
図表1 年間収入階級別の世帯数割合(和歌山県)

(資料)総務省「全国消費実態調査」(平成26年、平成21年)

世帯主の就業形態別に見た世帯数割合を見ると(図表2)、無業者の世帯割合が29.4%から33.0%に上昇する一方で、正規の職員・従業員が43.2%から36.6%に下降している。定年退職者の増加が背景にあると考えられ、このことが、前述の世帯年収における200万円未満、200〜300万円の世帯数割合が上昇している要因と考えられる。また、世帯主がパート・アルバイトである世帯数割合が6.5%から8.8%に増加しており、この点も、比較的低い収入の世帯数割合が上昇している要因となっている。

図表2 世帯主の就業形態別に見た世帯数割合(和歌山県)
図表2 世帯主の就業形態別に見た世帯数割合(和歌山県)

(注)図表中の「その他」には、個人営業世帯、農林漁家世帯等が含まれる。
(資料)総務省「全国消費実態調査」(平成26年、平成21年)

さらに、和歌山県では、1世帯当たりの世帯員数は平成21年時に2.44人だったが、平成26年には2.31人まで減少している(和歌山県調査統計課「推計人口」)。この背景には、単身者世帯の増加があり、このこともまた世帯の年間収入を減少させている要因である。

4.世帯の月間消費支出額の変化

和歌山県内の世帯の年間収入について、300万円以下の世帯が大きく増加している状況下で、世帯の支出額にはどのような変化が見られるか。月間消費支出額の規模別に世帯数割合を見た図表3によると、10万円未満の支出額の世帯は平成21年の10.9%から平成26年には12.9%まで上昇し、10〜15万円の支出額の世帯は18.5%から19.4%に上昇している。年間収入と同様に、月間消費支出額についても、やや低い金額規模の世帯割合が上昇している。

図表3 月間消費支出額の規模別に見た世帯数割合(和歌山県)
図表3 月間消費支出額の規模別に見た世帯数割合(和歌山県)

(資料)総務省「全国消費実態調査」(平成26年、平成21年)

次に世帯数割合ではなく、二人以上の世帯全体における平均月間消費支出額を見ると、平成21年時は273,071円だったが、平成26年時には257,155円と15,916円の減少となっている。費目ごとの支出額を比較すると(図表4)、「教養娯楽」、「保健医療」、「住居」、「教育」、「その他の消費支出」などで支出が減少となる一方で、「交通・通信」、「食料」、「光熱・水道」は増加している。

図表4 二人以上の世帯における月間消費支出額の変化(和歌山県、平成21年〜26年)
図表4 二人以上の世帯における月間消費支出額の変化(和歌山県、平成21年〜26年)

(資料)総務省「全国消費実態調査」(平成26年、平成21年)、単位: 円

支出額が増加した「交通・通信」、「光熱・水道」については、平成26年における原油価格の高騰が背景にある。世界的な原油価格の指標とされるWTI原油価格は平成21年時には61.69ドル/バレルだったが、平成26年時には93.13ドル/バレルまで上昇しており、ガソリン価格、電気代上昇の要因となった。同じく支出額が増加した「食料」については、調理食品、外食での増加が目立っている(図表5)。共働き世帯や単身世帯の増加により、食料品スーパーでの調理食品の購入や外食機会の増加が背景にあると考えられる。

図表5 月間消費支出額の増減に寄与した費目(和歌山県、平成21年〜26年)
図表5 月間消費支出額の増減に寄与した費目(和歌山県、平成21年〜26年)

(資料)総務省「全国消費実態調査」(平成26年、平成21年)

支出額が減少した「教養娯楽」では、テレビ、携帯音楽プレーヤー、カメラなどの教養娯楽用耐久財での減少が目立ち、「その他の消費支出」では、理美容サービス、かばん・腕時計、たばこ等の諸雑費、交際費、仕送り金などで支出額が減少している(図表5)。「教育」についても支出額が減少しており、少子化の進行が、教育費や仕送り金などの支出額を減少させていると考えられる。さらに、世帯収入の減少、電気代やガソリン価格の上昇、調理食品、外食への支出増などを受けて、生活必需品ではない教養娯楽用耐久財[*1] 、たばこ等の諸雑費への支出への節約意識が高まっている可能性もあり、この点を含めた複数の要因が世帯の支出額を減少させていると考えられる。

これまでの考察を踏まえると、和歌山県内の二人以上の世帯における月間消費支出額が減少した要因には次の3点が挙げられる。

図表6 二人以上の世帯の月間消費支出額が減少した要因(平成26年と平成21年の比較)
図表6 二人以上の世帯の月間消費支出額が減少した要因(平成26年と平成21年の比較)

(資料)筆者作成

5.今後の県内家計消費について

少子高齢化は今後も進行することが予想され、各世帯の月間消費支出額は縮小する可能性が高い。単身世帯の増加は調理食品、外食等の「食料」への支出の増加要因となり、旅行などの教養娯楽サービスに積極的な高齢世帯の増加は「教養娯楽」への支出増加要因となるが、人口減少が影響し、「住居」や「教育」、「被服及び履物」などへの支出は減少傾向が続くと考えられる。また、定年退職に伴う無業者の増加は自家用車などを使った移動機会の減少等によりガソリン代などの「交通」への支出減少要因となる。さらに、平成27年国勢調査速報結果によると、平成27年における県内世帯数が昭和25年以降では初めて減少に転じており、県内家計消費の減少に拍車をかける可能性が高い。

ここ最近の足元の状況を見る限りでは、世帯の貯蓄現在高において「4000万円以上」の世帯数割合が平成21年時の5.9%から平成26年時には12.9%へ上昇する(平成26年全国消費実態調査)など、家計消費の基盤には底堅さも見られるうえ、原油価格・電気代は下降傾向にあり、家計への負担は軽減されている。この機を活用して、単身世帯、高齢世帯の増加といった世帯の構造変化に合わせた、潜在需要の掘り起しが重要と考える。

参考情報

  • [*1]
    消費税率が5%から8%に引き上げられた平成26年4月以降の9〜11月に調査が行われていることから、増税前の駆け込み需要に伴う反動減の可能性も考えられる。

(2016.8)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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