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直近5年間における物価の変化

研究員  藤本 迪也

1.はじめに 〜物価はどのように変化してきたか〜

身の回りの商品価格が上がっている。特に、2017年は夏の長雨、冬の大寒波などの影響で、野菜を中心に生鮮食品価格が高騰すると同時に、原油価格の上昇を背景にガソリン価格も上昇した。商品価格の上昇は、経済の動きが活発になっている証拠とされる一方で、家計にとっては大きな負担となる。

商品価格、いわゆる「物価」は、第二次安倍内閣が「脱デフレ」を目指す政策を展開して以降、注目され続けてきた。2012年12月に誕生した第二次安倍内閣は「脱デフレ」を目標に、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」からなる「3本の矢」政策を打ち出した。日本銀行は、物価安定の目標を「前年比2%上昇」に設定し、金融政策を決定する際の判断基準とした。それ以降、2014年4月の消費税率の引き上げを挟んで、物価は上下動を繰り返しながら緩やかな右肩上がりの推移を見せている。

金融政策だけではなく、生活者の暮らし向きにも大きな影響をもたらす物価について、本稿では、変化の激しかった直近5年間に着目し、その変化を整理・確認する。

2.直近5年間における物価の推移とその背景

身の回りの商品の価格の上下動を示す「消費者物価指数」について、和歌山市におけるその推移を2010年〜2018年にかけて見ると、2013年を境にして動きが大きく変化していることがわかる(図表1)。

○2012年までは、物価は下落傾向(図表1内1の時期)

図表1の通り、2012年までの消費者物価指数は下落傾向が見られた。2011年の東日本大震災を受けて、国内の全ての原子力発電所が発電を停止したため、電気料金が引き上げられたが、それ以上に、技術進歩の速い液晶テレビ等の耐久財で価格が下落した。

2013年に入り、物価は上昇傾向を示す(図表1内2の時期)

2012年12月に発足した第2次安倍内閣は、「脱デフレ」を目指し、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」からなる「3本の矢」の経済・金融政策を展開した。その結果、円の対ドル為替レートは大きく円安方向に進み、輸入物価が上昇した。

図表1 2010〜2018年における消費者物価指数の推移
図表1 2010〜2018年における消費者物価指数の推移

(資料)総務省「消費者物価指数」

○2014年4月の消費税率のアップで物価は大きく上昇(図表1内3の時期)

最も大きな変化は、2014年4月前後における消費者物価指数の大幅上昇である。2014年4月は、消費税率が5%から8%に引き上げられた時期であり、この際、さまざまな商品価格が大きく上昇した。

○2014年夏以降は原油価格が大幅下落。物価は上昇の勢い鈍る(図表1内4の時期)

消費増税以降も、食料品価格や外食単価の上昇は続いたが、2014年夏以降の原油相場の大幅下落により、物価はそれまでの上昇の勢いに陰りが見られるようになった。ただし、エネルギー価格や食料(酒類を除く)価格を除いたコアコアCPIについては、その後も上昇傾向を維持した。

○2017年夏以降は、生鮮食品価格、エネルギー価格が上昇(図表1内5の時期)

2017年夏は東日本を中心に長雨となり、野菜を中心に生鮮食品価格が上昇した。さらに、秋には台風、冬には大寒波が野菜の供給量を抑えた結果、価格は高止まりした。需給調整が進んだ原油 については、夏場以降、価格が大きく上昇した。この結果、総合の消費者物価指数は上昇した。ただし、コアコアCPIについてはほぼ横ばいでの推移となっている。

3.直近5年間における物価の変化(和歌山市)

前述の通り、消費税率の引き上げ、原油価格の騰落、生鮮食品価格の上昇などを経ながら、上昇傾向を続けてきた消費者物価は、2018年4月には総合で100.9、コアコアCPIは100.5まで上昇。2012年4月における総合の96.9、コアコアCPIの97.8に比べると、それぞれ、4.0ポイント、2.7ポイントの上昇となった。

図表2 消費者物価指数の変化(2012年4月から2018年4月)
図表2 消費者物価指数の変化(2012年4月から2018年4月)

(資料)総務省「消費者物価指数」

以下では、この間における主要品目ごとの物価変動について整理を行う。これ以降は、身近な物価変動を把握するため、和歌山市における物価を取りあげる。

○「電気代」、「生鮮食品」、「被服及び履物」の価格が1割超上昇

2012年4月から2018年4月の期間における、主要品目別の物価変動を見ると(図表3)、「電気代」、「生鮮食品」、「被服及び履物」の物価変動率が極めて高い(1割超の上昇)ことがわかった。また、「エネルギー」、「交通」、「外食」についても1割程度の上昇となっている。その一方で、「家庭用耐久財」は31.2ポイントの下降、「教養娯楽用耐久財」は7.2ポイントの下降となった。

図表3 消費者物価指数の変化(2012年4月から2018年4月、和歌山市、主要品目別)
図表3 消費者物価指数の変化(2012年4月から2018年4月、和歌山市、主要品目別)

(資料)総務省「消費者物価指数」

主要品目ごとの物価変動について、さらに詳細な品目分類を使って、その物価変動を確認する(全国の値を使用)。

○電力会社による値上げにより電気料金は1割以上の上昇

電力会社による基本料金の引き上げ、原油価格上昇等に伴う燃料費調整単価の上昇、再生可能エネルギー発電促進賦課金の増加などもあり、1割以上の価格上昇となっている。

○生鮮肉、生鮮果物(グレープフルーツ等)、生鮮魚介(マグロ等)で価格上昇

生鮮食品については、グレープフルーツ、いちご、バナナなどの生鮮果物や、マグロ、さけ、さんま、いかなどの生鮮魚介の価格が上昇している。生鮮魚介については、世界的な不漁に加えて、養殖魚の需給がひっ迫していることが価格上昇の要因となっている。また、生鮮肉については、牛肉、豚肉、鶏肉のいずれについても、価格が大きく上昇している。消費量が増える一方で、農家数の減少などから供給量が減少しており、需給がひっ迫し、価格が上昇しているものと考えられる。

○海外からの輸入価格が上昇し、被服及び履物の価格が上昇

被服及び履物については、紳士服、婦人服ともに価格が1割程度上昇した。履物についても、価格が上昇している。海外生産地における人件費等のコスト上昇や円安進行に伴う輸入価格の上昇などが要因と考えられる。

○灯油、ガソリン価格は下落するも、電気料金が上昇

エネルギー価格については、灯油、ガソリン価格は1割程度下落している。2012年4月当時の原油価格は、代表的な指標であるWTI(月末終値)が104.87ドル/バレル、2018年4月の68.57ドル/バレルと比較して、5割程度高い。その一方で、電気料金については前述の通り、1割程度上昇している。

○割引制度終了で、高速道路料金が大きく上昇

交通については、鉄道料金、バス代等が2014年4月の消費増税時に引き上げられたことに加えて、ETC利用による時間帯割引制度が2014年3月で終了したため、有料道路料金が3割程度上昇した。

○外食はほぼ全ての品目で価格が上昇

外食については、ハンバーガー、牛丼、寿司、コーヒーなど主要品目全てで価格が上昇した。

○身近な食料品についても、価格が上昇

生鮮食品を除く食料については、小麦粉、牛乳・乳製品(バター、チーズ、卵等)、菓子、酒類(ビール、ウイスキー等)で価格上昇が目立った。

○行楽、趣味に関連するサービス価格が上昇

教養娯楽サービスについては、訪日外国人旅行客の増加を背景に、ホテル等の宿泊料金が上昇しており、また、日本人の外国人パック旅行価格も上がっている。ダンス、水泳、英会話等の月謝料も上昇しており、テーマパークやスポーツ観戦等の入場料も上がっている。

○通信料、家庭用耐久財・教養娯楽用耐久財の価格は下落

価格が上昇する品目もあれば、下落している品目もある。大手携帯通信各社が通話・通信料の低価格プランを導入したことで、通信料は下落した。技術進歩の速い耐久財価格についても大きく下落している。

4. おわりに

直近5年間における物価の変動は、和歌山市(総合)において、4.0ポイントの上昇となった。電気代、生鮮食品、衣類等をはじめ、多くの品目で物価が上昇している。その物価上昇の背景を見ると、原油価格の変動、円の対ドル為替レートの変動といった要因が、もちろん見られる。ただし、生鮮食品については、天候不良や生産者の減少に伴う供給不足(または世界的な需要増加)が、価格上昇要因となっている。また、衣類等については、海外生産拠点における人件費等のコスト高が価格上昇の要因となっている。

このように、足下で進む物価上昇については、人手不足(生産者減少)、海外生産拠点における人件費の増加も主な要因であり、引き続き物価は上昇していくものと考えられる。

(2018.8)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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