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和歌山県内における「働き方改革」の現状
〜約半数の事業者が改革に取り組むも、生産性向上に向けて課題残る〜

研究員  藤本 迪也

1.「働き方改革」について

○「働き方改革関連法」が4月から施行

4月、「働き方改革関連法」が施行された。主な施行内容としては、年次有給休暇の取得義務化、時間外労働の罰則付き上限規制、同一労働同一賃金の原則適用、時間外60時間超の賃金割増率見直しなどが挙げられる。適用開始時期は大企業・中小企業によって異なるが、年次有給休暇の取得義務化は全事業者に対して4月から適用されている[*1] (図表1参照)。

図表1 「働き方改革関連法」の主な改正事項と適用開始時期
図表1 「働き方改革関連法」の主な改正事項と適用開始時期

(資料) 日経MOOK『中堅・中小企業の「働き方改革」』(日本経済新聞出版社)を参考に筆者作成

○「働き方改革」が求められる理由

「働き方改革」が必要とされる背景には、急速に進む生産年齢人口の減少と働き方の多様化がある。少子高齢化に伴い、15歳から64歳までの生産年齢人口は減少が続いており、総人口に占める割合は6割を切っている(2018年10月時点)。「人手不足」に悩む事業者が増加し、人手不足を理由とした倒産も増加傾向にある。長時間労働による過労自殺や精神疾患者の増加も社会問題となっている。また、育児・介護をしながら働く就業者も増加しており、短時間勤務など多様な働き方へのニーズが高まっている。

○「働き方改革」が目指すもの

「働き方改革」により、長時間労働の是正、非正規雇用の処遇改善、柔軟な働き方が可能な労働環境の整備が進めば、育児・介護などを理由に働くことができなかった人たちの労働参加が促されると同時に、限られた時間内でいかに生産性の高い仕事を行うかという意識が高められ、労働生産性が上昇する。このことにより、人口減少社会においても、事業者は必要な人材を確保することが可能となり、就業者も賃金上昇などの恩恵を受けることができる。
人口減少が避けられない日本において、できる限り多くの人が、それぞれの生活スタイルにあった形で活躍できる環境を整備することこそ、「働き方改革」が目指すものといえる。

図表2 「働き方改革」の概要
図表2 「働き方改革」の概要

(資料) 働き方改革実現会議「働き方改革実行計画」(2017年3月決定)を参考に筆者作成

2.県内事業者による「働き方改革」の現状

和歌山県は、全国以上に人口減少が進んでおり、当研究所が実施している「景気動向調査」(2018年12月実施)では、県内事業者の約4割が人手が「不足」と回答している。「働き方改革」は県内事業者にとっても、重要な取り組みテーマとなっている。

○県内事業者の約半数が「働き方改革」を実施

2018年12月に実施した「景気動向調査」では、県内事業者に「働き方改革」の実施状況を質問した。長時間労働の是正、休日取得の推進、勤務時間・制度の多様化などの「働き方改革」を実施していると回答とした事業者は48.7%と約半数を占めた(図表3)。従業員10人未満の事業者において、「実施していない」とする回答が多く、理由としては、「必要性を感じない」をとする事業者が多く見られた。その一方で、従業員20人以上の事業者では、「業務多忙により取り組めない」とする回答が一定数見られた。

図表3 県内事業者の「働き方改革」実施状況(単一回答)
図表3 県内事業者の「働き方改革」実施状況(単一回答)

(資料) 和歌山社会経済研究所「景気動向調査」(2018年12月実施)

○県内事業者の「働き方改革」の主目的は従業員の働きやすさ向上

「働き方改革」を行う主な目的では、「従業員のモチベーション向上」、「従業員の心身の健康」、「人材の定着」、「人材確保」など、従業員の働きやすさの向上に関連する回答が多くを占めた(図表4)。人手不足が深刻化する中で、県内事業者が人材確保に苦心していることがうかがえる。その一方で、「生産性向上」を主な目的とする事業者は6.9%と極めて少ない。

図表4 県内事業者における「働き方改革」の主な目的(単一回答)
図表4 県内事業者における「働き方改革」の主な目的(単一回答)

(資料) 和歌山社会経済研究所「景気動向調査」(2018年12月実施)

○「働き方改革」の効果を実感している事業者は現時点では半数にとどまる

「働き方改革」を行っている事業者に、何らかの効果が得られたかを質問したところ、「効果あり」とする事業者は現状では49.3%と約半数にとどまり、「効果なし」(50.7%)を下回っている(図表5)。改革に取り組んで間もない事業者も多いことから、効果が実感できるようになるには、取り組みの継続・改善が必要と考えられる。

図表5 県内事業者の「働き方改革」による効果の有無(単一回答)
図表5 県内事業者の「働き方改革」による効果の有無(単一回答)

(資料) 和歌山社会経済研究所「景気動向調査」(2018年12月実施)

3.「働き方改革」のさらなる推進に向けて

上述の通り、県内事業者による「働き方改革」は、改革の効果を実感できない事業者が多いものの、全体の約半数が改革に取り組んでおり、今後、改革の効果が顕現することが期待される。現時点においても、女性を中心に就業率は上昇しており、県内就業者は増加傾向にある。改革が進み、県内事業者における労働環境が改善されれば、就業者はさらに増加し、人手不足の解消に寄与するものと考える。

○「生産性向上」を目指した改革も重要

ただし、「働き方改革」のもう一つの目標である「労働生産性の向上」については、課題が多い。生産性向上を目的に改革に取り組む県内事業者が少なく、「効率化のためのIT・システム導入」、「業務の集約化・業務プロセス改善」を行う事業者は全体の1割に満たない。
和歌山県が2019年1月に実施した「県内企業の経営実態調査」を見ると、売上高営業利益率の低い事業者が年々増加傾向にあり(図表6)、その要因として「人件費」を挙げる事業者が多くなっている。
従業員の労働環境の改善に加えて、労働生産性の向上を主眼とした「働き方改革」が、県内事業者にとって重要な取り組み課題となっている。

図表6 県内事業者の売上高営業利益率
図表6 県内事業者の売上高営業利益率

(資料) 和歌山県「平成30年度県内企業の経営実態調査」(2019年1月実施)

参考情報

  • [*1]
    年次有給休暇日数が10日以上の者に対して、事業者側に5日の休暇取得を義務づけている。事業者は有給休暇の管理簿を作成することが義務化されており、違反した場合は、罰則が科される可能性もある。

(2019.8)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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