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和歌山県内におけるキャッシュレス決済の導入・活用状況
   〜小売業の8割強がキャッシュレス決済を導入〜

研究員  藤本 迪也

1.キャッシュレス決済について

○キャッシュレス決済とは

2019年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられた。政府は、消費税率引き上げ後の景気の冷え込みを抑えるため、「キャッシュレス・ポイント還元事業」を開始した。「キャッシュレス(決済)」とは、クレジットカードや交通系ICカード(SuicaやICOCA等)、決済機能のついたスマートフォンを活用することで(現金を使用せずに)、商品やサービスを購入することである。

○キャッシュレス決済を利用する人、利用できる店舗数は増加

「キャッシュレス・ポイント還元事業」では、対象の店舗において、消費者がキャッシュレスで支払いを行った場合、支払い金額の5%(または2%)相当のポイントが還元される。店舗側は、事前にキャッシュレス決済に対応するための機器の導入を行い、ポイント還元事業に申請・登録を行なわなければならないが、政府は機器導入費用に対して店舗側の負担をゼロにするよう、支援を行っている。

この結果、10月のポイント還元開始以降、キャッシュレス決済を利用する消費者[*1] および対象店舗数は大きく増加している。[*2] 本レポートでは、このような状況を踏まえ、和歌山県内におけるキャッシュレス決済の導入状況や活用の程度について、2019年12月に実施した県内事業者のアンケート結果をもとに、整理を行う。

消費者が利用する主なキャッシュレス決済
消費者が利用する主なキャッシュレス決済

2.和歌山県におけるキャッシュレス決済の導入状況

2019年12月に県内2,000社を対象にアンケート調査を実施し、キャッシュレス決済の導入事業等について質問を行った(有効回答数701社)。

○個人客を相手とする事業者のうち44.9%がキャッシュレス決済を導入

個人客を相手とする事業者のうち、29.1%が「以前から(キャッシュレス決済を)導入している」、15.8%が「ここ半年(2019年6月〜12月)の間に導入」と回答しており、合わせると44.9%となった。産業別では、小売業で85.6%と最も多く、サービス業は36.9%となっている。

図表1 キャッシュレス決済の導入状況(個人客相手の取引実績がある事業者だけに質問)


図表1 キャッシュレス決済の導入状況(個人客相手の取引実績がある事業者だけに質問)

(資料) 和歌山社会経済研究所「景気動向調査」(2019年12月実施)

○衣料品小売業と生活関連サービス業での導入率は100%

業種別の導入状況を見ると、衣料品小売業、生活関連サービス業(葬祭業、クリーニング、理美容等)では全ての事業者がキャッシュレス決済を導入している。生活関連サービス業については、ここ半年の間に導入を進めた事業者が多かった。飲食料品小売業、飲食業、旅館ホテル業はともに6割程度の導入率となっており、医療・福祉、教養・娯楽サービス業(ゴルフ場、ゴルフ練習場、テニススクール、パチンコ等)における導入率は3割弱にとどまった。

図表2 キャッシュレス決済の導入状況(業種別)
図表2 キャッシュレス決済の導入状況(業種別)

(資料) 和歌山社会経済研究所「景気動向調査」(2019年12月実施)

○導入しているキャッシュレス決済手段では「クレジットカード」が85.0%で最多

MMD研究所が全国の男女約5万人を対象に2019年12月に実施した調査によると、直近1か月で最も利用率が高いキャッシュレス決済は「クレジットカード」(50.2%)で、2位の「カード型電子マネー」(19.2%)、3位の「QRコード決済」(18.2%)を大きく上回っている。「クレジットカード」の利用者が多い状況の中で、県内事業者が導入しているキャッシュレス決済手段についても、「クレジットカード」が85.0%で最多だった。2番目に多かった手段は「QRコード」(61.3%)となっている。

図表3 県内事業者が導入しているキャッシュレス決済手段(導入事業者のみに質問)
図表3 県内事業者が導入しているキャッシュレス決済手段(導入事業者のみに質問)

(資料) 和歌山社会経済研究所「景気動向調査」(2019年12月実施)

○キャッシュレス決済割合(件数ベース)は”1割未満”が約半数

導入している事業者のうち、キャッシュレス決済割合(件数ベース)が「5割以上」とした事業者は10.0%、「1割未満」が36.3%、「ほぼなし」が10.0%となっている。業種別では、旅館・ホテル業、飲食業、生活関連サービス業(葬祭業等)、衣料品小売業などで決済割合の高い事業者が多く見られたが、その他の業種では総じて決済割合の低い事業者が目立った。

図表4 キャッシュレス決済割合(件数ベース)(導入事業者のみに質問)
図表4 キャッシュレス決済割合(件数ベース)(導入事業者のみに質問)

(資料) 和歌山社会経済研究所「景気動向調査」(2019年12月実施)

3.まとめ

和歌山県内におけるキャッシュレス決済の導入/活用状況を整理すると、以下のようになる。

1.個人客を相手とする事業者のうち44.9%がキャッシュレス決済を導入
  (小売業については、85.6%の事業者が導入しているが、サービス業は36.9%)

2.導入しているキャッシュレス決済手段では、「クレジットカード」が85.0%で最多
  (2番目に多いのは「QRコード」(61.3%)で、「電子マネー」は31.3%)

3.キャッシュレス決済割合(件数ベース)は ”1割未満”など低い事業者が多い
○日本政府はキャッシュレス決済比率を2025年までに40%まで引き上げることを計画

キャッシュレス・ポイント還元事業については、現時点では2020年6月をもって終了する予定となっているが、QRコード決済事業者を中心に、独自のポイントキャンペーンが展開されるなど、利用者の拡大を図る動きも見られる。また、経済産業省は2018年4月に「キャッシュレス・ビジョン」を発表し、2025年までに日本のキャッシュレス決済比率を40%まで引き上げるとしており、キャッシュレス決済を利用する消費者はさらに増加すると考えられる。[*3] 今後は、キャッシュレス決済を導入していることが、事業者にとっては当然の競争条件になる可能性が高い。

○導入済みの事業者は、決済比率を高め、より多くのメリットを得ることが望ましい

このような状況の中で、上述の通り、県内事業者のキャッシュレス決済導入比率は50%を下回っている。特に、消費者にとって身近な業種である飲食料品小売業や飲食業において、キャッシュレス決済導入比率が6割前後にとどまっている点は課題といえる。加えて、導入している事業者におけるキャッシュレス決済割合(件数ベース)についても、「1割未満」、「ほぼなし」とする回答が半数近くを占めており、導入はしたものの、利用者がなかなか増えていない状況がうかがえる。

決済手数料の負担、決済業務を担当する従業員の教育が必要になるなど、キャッシュレス決済導入にはデメリットを伴うが、新たな顧客層の掘り起こし、決済業務にかける時間、現金(釣銭)管理に費やす時間が短縮されるといったメリットがある。

既に導入している事業者については、導入済みであることを周知し、その利便性を来店客に伝え(または利用特典を提供し)、決済比率を高めることで、自社の決済業務の効率化を図るなど、導入メリットをより多く得ていくことが重要と考える。

参考情報

  • [*1]
    調査会社MMD研究所は、2019年12月にインターネット調査において、日本在住の20歳〜69歳の男女約5万人に質問を行った結果、約4割が「10月以降、キャッシュレス決済の支払いが増えた」と回答したと発表している。

  • [*2]
    経済産業省は、2月1日時点におけるキャッシュレス・ポイント還元事業の登録店舗数が約99万店となったと発表した。店舗数は、10月1日時点の49.6万店からほぼ倍増している。

  • [*3]
    経済産業省は「キャッシュレス・ビジョン」の中で、キャッシュレスに取組むメリットとして、実店舗等の無人化省力化、不透明な現金資産の見える化、流動性向上と、不透明な現金流通の抑止による税収向上、消費者の利便性向上などを挙げている。

(2020.4)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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