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新型コロナウイルス感染症による事業者への影響と対応

研究員  藤本 迪也

1.新型コロナウイルス感染症の拡大のこれまで(※2020年5月末まで)

2019年12月、中国湖北省武漢市当局が最初に新型コロナウイルス感染患者を確認した頃、日経平均株価は年初来高値を更新し、2万4千円台を回復した。世界貿易の下押し材料であり続けた米中貿易協議が「第一段階の合意」に達する見込みとなり、世界経済の減速に底打ちの兆しも見られ始めていた。ところが、1月中旬に、新型コロナウイルスが人から人に感染することが明らかとなり、世界保健機関(WHO)は緊急会議を開催、23日には武漢市が公共交通機関の運行を停止し、都市封鎖を行い、WHOは30日に緊急事態を宣言した。 

それ以降の世界的な感染拡大と世界主要都市における都市封鎖、世界的な経済活動の停滞については、図表1に記載する通りである。

図表1 新型コロナウイルスに関する主な出来事(※2020年5月末まで)
図表1 新型コロナウイルスに関する主な出来事

(資料) 筆者作成

2.新型コロナによる経済活動への影響(東京商工リサーチ調査を参考に)

○事業活動に「すでに影響が出ている」事業者は全国で75.9%(5月前後時点)

今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大が国内事業者に与える影響について、株式会社東京商工リサーチは、2月上旬以降、4回にわたって「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査を実施している(5月末時点)。以降では、この調査結果をもとに、新型コロナによる経済活動への影響を見ていきたい。

図表2は、新型コロナウイルスの発生が事業活動に影響を及ぼしているかについて質問した結果である。調査時期は4月23日〜5月12日となっており、5月14日の39県を対象とした緊急事態宣言解除前であり、東京駅や大阪駅で平日であれば7割、休日であれば9割程度平時に比べて人出が減少していた時期に当たる。[*1]

図表2 新型コロナによる事業活動への影響について
新型コロナによる事業活動への影響について

(資料)東京商工リサーチ「第4回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査」

取引先からの受注減、日本人の外出機会減少や訪日外国人客減少に伴う売上減、世界的な物流網の寸断などが具体的な影響として想定される。東京商工リサーチによると、業種別では「宿泊業」、「飲食店」、「道路旅客運送業」、「娯楽業」、「繊維・衣服等卸売業」などで「すでに影響が出ている」とする回答が多くなっている。

○4月の売上高が「50%以上減少」が16.9%(宿泊業では93.2%、飲食店では75.2%)

売上高などの業績への影響を見ると(図表3)、4月の売上高水準(前年比)「0〜29」(7割以上減)が8.8%、「30〜49」(5〜7割減)が8.1%となっており、合わせると16.9%を占める。4月7日の緊急事態宣言を受けて、11日以降、東京都・神奈川県を筆頭に指定業種に対する休業要請が出されることとなり、対象となった宿泊業、飲食店、娯楽業では、「0〜29」、「30〜49」の事業者がそれぞれ93.2%、75.2%、54.2%を占めた。

図表3 2〜4月の売上高の水準(前年同月比、前年並みなら100)
2〜4月の売上高の水準(前年同月比、前年並みなら100)

(資料)東京商工リサーチ「「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査」

○和歌山県内においても観光関連産業を中心に影響は深刻

和歌山県については、4月16日から県外からの訪問客の受け入れ自粛を要請し、25日にはパチンコ店やバー、カラオケボックスなどの遊興施設・遊戯施設、映画館などに対して休業を要請した。ただし、それ以前にも、アドベンチャーワールド(白浜町)が2月29日から臨時休園となり、4月7日の緊急事態宣言の前後からは宿泊施設、飲食店で営業を自粛する動きが広がった。このことから、観光関連産業、飲食業、娯楽業を中心に、全国と同様、深刻な影響を受けているものと考えられる。[*2]

3.資金繰りが大きな経営課題に

○1〜2か月後に決済に支障が生じる事業者が2割弱(※5月時点)

前出の東京商工リサーチによる調査では、新型コロナの影響が継続した場合、何カ月後の決済(仕入・給与などの支払い)が懸念されるかを質問しており、その結果が図表4である。「4〜6カ月後」とする事業者が34.7%で最も多いものの、「1か月後」が6.1%、「2か月後」が12.9%と、短期間で支払いに支障が生じるとする事業者も少なくない(特に小売業、不動産業、サービス業に多い)。

図表4 現在の状況が続いた場合、何か月後の決済(支払い)が懸念されるか
※調査時期は4月23日〜5月12日
現在の状況が続いた場合、何か月後の決済(支払い)が懸念されるか

(資料)東京商工リサーチ「第4回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査」

○資金繰り支援策の活用

このような状況に対して、政府は、政府系金融機関だけではなく民間金融機関を通じた無担保・無利子融資を用意している。さらに、事業者にとって負担の大きい家賃支払いに対する給付金制度が5月に閣議決定されるなど、前述の資金繰り支援策、持続化給付金(営業自粛による業績悪化事業者を対象とする給付制度)と合わせて、事業者の資金繰りの一助となる支援制度が用意されており、活用が望まれる。

4.今後の経済回復を見据えた準備をいち早く

5月25日、安倍首相は新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が50人を下回り、入院患者数も低い水準になったことから、緊急事態宣言を解除した。ただし、感染拡大の第2波への懸念は強く、解除後はじめての休日となった5月30日(土曜)の東京駅周辺の人出は前年同時期の3割程度にとどまっており[*3]、飲食店、娯楽業、小売業をはじめ多くの事業者の業績への影響は引き続き大きいものと考えられる。

このような状況にあっても、様々な取り組みを行い、現状を乗り越えようとする事業者は数多い。飲食店による持ち帰りサービスをはじめ、タクシー・運送事業者による飲食等のデリバリーサービス、青果卸売事業者によるドライブスルー形式での野菜販売、学習塾によるオンライン学習指導、カラオケ店や飲食店による在宅勤務者向けの個室提供サービスなど、感染予防の中で新たに生まれた需要を少しでも取り込もうとする動きが目立つ。さらに、就職活動、求職活動においても、インターネットを介した企業情報の収集、面接などが増えている。これまで、大都市圏の学生、転職希望者の採用に対して、大きなコストをかけてきた地方事業者にとっては、良い機会と捉えることができる。いずれ経済活動が回復軌道に戻った際、いち早く事業活動を本格始動するためにも、さまざまな視点から準備を進める必要がある。

参考情報

  • [*1]
    「NTTドコモ モバイル空間統計」による周辺の人口増減データを参照。

  • [*2]
    白浜温泉旅館協同組合によると、4月の加盟施設宿泊者数は7,691人で前年同月比9割以上の減少となった。

  • [*3]
    「NTTドコモ モバイル空間統計」による周辺の人口増減データを参照。

(2020.8)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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