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コロナ禍における今夏の和歌山県経済
 〜 県内個人消費は一部に持ち直しの動きも見られるが、勢いを欠く 〜

研究員  藤本 迪也

1.新型コロナウイルス感染症の拡大の影響

○ 4〜6月期の日本のGDPは前年比28.1%減少

2019年12月、中国湖北省武漢市当局が最初に新型コロナウイルス感染患者を確認した。その約1か月後には、日本人初の感染者が確認され、1月30日にはWHOが緊急事態を宣言した。2〜3月にかけて、欧米主要各国での感染拡大により都市封鎖が行われ、日本国内においても4月7日に緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出の自粛、カラオケ店、スポーツジム、劇場などに対する休業要請が発出された。このことによる経済的な影響は極めて大きく、4〜6月期の国内総生産(GDP)は前四半期に比べて、実質年率28.1%の減少(過去最悪の落ち込み)となった。

2.県内経済への影響

日本国内のGDPが大きく落ち込む中で、県内経済にはどのような影響が見られているのだろうか。ここでは、特に個人消費について現状を整理する。

○ JR和歌山駅前の人出は回復に向かっている

JR和歌山駅周辺(500mメッシュ)における平日・休日15時時点の人口を前年と比べた場合(図表1)、緊急事態宣言が発令されていた5月上旬は40%減の水準となっていたが、その後は大きく改善し、6月30日時点には前年比1.7%減の水準まで回復した。ただし、7月に入ると、再び国内での感染者数が増加に転じたため、人出は再び減少し、お盆休みには、帰省自粛の動きもあり、前年比10.1%減となった。その後は、国内の感染者数が減少傾向を示したこともあり、緩やかながら人出は持ち直しており、10月5日には前年比0.6%増とコロナ禍以降では初めてのプラス水準を記録した。

図表1 JR和歌山駅前の人出の状況(前年同月比)
図表1 JR和歌山駅前の人出の状況(前年同月比)

(注1)JR和歌山駅周辺500mメッシュ内の平日・休日15時の人口をもとに算出
(注2)前年との曜日の違いを考慮し、各日の比較対象は前年同月の平均値
(資料) NTT「モバイル空間統計」

○ 百貨店、地元商店の販売額が大きく減少

JR和歌山駅周辺の人出が回復に向かう中、百貨店、コンビニや地元商店(衣料品店、食料品店、電気店など)の販売額は減少が続いている。百貨店は3密(密閉、密集、密接)を避けるため、物産展などの催事を見送り、来客数が大きく減少している。コンビニについては、オフィス街などで、在宅勤務者の増加などを背景に、客数が減少している可能性がある。地元商店については、従前より人口減少による販売額減少が進んでおり、そこに、コロナ禍の影響が直撃したものと考えられる。

図表2 県内商業販売額の状況1(8月)
図表2 県内商業販売額の状況1(8月)

(注)「地元商店」については、弊所「景気動向調査」における小売業の平均値を掲載
(資料) 経済産業省「商業動態統計調査」、近鉄百貨店ウェブサイト「2020年8月売上高報告」
和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

○ 巣ごもり需要・内食需要の伸びが顕著

百貨店販売額が厳しい状況にある中で、家電量販店やドラッグストア、ホームセンターなどの売上高は前年を上回る状況が続いている。外出自粛の意識が強まる中で、家庭内での調理機会が増加し、調理器具需要などが高まった。また、感染対策のための衛生用品、消毒剤などの需要が伸びている。このような点を背景に、関連する店舗の販売額が伸びていると考えられる。スーパーについても、詳細な販売額は不明であるが、家庭で調理し食事する「内食」需要が伸びていることから、販売額は増加していると考えられる。

図表3 県内商業販売額の状況2(8月)
図表3 県内商業販売額の状況2(8月)

(資料) 経済産業省「商業動態統計調査」

○ 外食希望者は増加しているが

飲食店は、緊急事態宣言が発令された際、営業時間の短縮を要請されるなど、コロナ禍の影響を最も大きく受けた業種の一つである。和歌山社会経済研究所の「景気動向調査」によると、4月の飲食業の売上高は事業者平均で前年比86.1%減、5月は同70.1%減、6月は同52.0%減と大幅な減少となった。ただし、飲食店情報サイト「Retty」における県内飲食店の情報サイト閲覧数の推移(前年比)を見たところ(図表4)、5月の第1週目には前年比78%減まで落ち込んだが、その後は回復に向かい、4連休を含む9月の第4週目には前年比19%増となっている。

図表4 県内飲食店情報の閲覧数(前年比)
図表4 県内飲食店情報の閲覧数(前年比)

(資料)Retty株式会社 Food Data Platform

○ 新型コロナへの感染懸念が強く、飲食業の売上高はなかなか回復せず

売上高の回復が期待される飲食業だが、前述の「景気動向調査」によると、県内飲食業の7月の売上高は事業者平均値で前年比33.8%減、8月は同32.4%減、9月は同32.1%減となっており、前年水準に遠く及ばない。飲食店情報の検索数は回復しているものの、新型コロナウイルスへの感染への懸念は大きく、来店につながっていない可能性が高い。特に、一般社団法人日本フードサービス協会による「外食産業市場動向調査」(8月度)によると、居酒屋業態の販売額(全国)が、前年比57.7%減となっており、極めて厳しい状況にある。

政府は、消費喚起策である「Go Toイートキャンペーン(プレミアム付食事券の販売と飲食予約によるポイント付与)」を10月から開始しており、今後は売上高の持ち直しが一定程度期待される。

図表5 県内飲食業の売上高(前年売上高=100)
図表5 県内飲食業の売上高(前年売上高=100)

(注)回答事業者の平均値を算出
(資料) 和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

○ 旅館・宿泊業の売上高は4〜6月期に比べて持ち直すも低水準

飲食業を上回る売上高の減少に直面した業種が旅館・宿泊業である。白浜町、田辺市をはじめ、那智勝浦町、串本町、新宮市など紀南地域に事業者が多いため、悪影響は紀南地域で特に大きい。観光予報プラットフォーム推進協議会によると、県内宿泊者数は5月(前年比99%減)を底として増加傾向にあるものの、8月においても前年比22%減となっている。ただし、県が実施した「わかやまリフレッシュプラン」(県民が県内宿泊施設を利用した場合に、宿泊費を一定額割引きする制度)の効果により、県民による県内宿泊数は6月の前年比75%減から、7月は同36%増、8月は同195%増となった。県外からの宿泊者についても、緩やかながら回復傾向にある。

このような状況の中で、和歌山社会経済研究所による、県内旅館・宿泊事業者の売上高の平均値は、4月に前年比86.1%減、5月に同95.6%減、6月に同83.2%減と大きく減少した後、7月は同49.1%減、8月は同41.4%減、9月は同40.2%減と、減少幅は縮小した(図表6)。今夏は海開きを見送る海水浴場が多い中で、白良浜海水浴場が感染防止対策を徹底したうえで、海開きを行い、多くの観光客を誘客した。また、政府による「Go Toトラベルキャンペーン」(旅行代金の割引制度)を活用した県外客・県内客の宿泊が減少幅縮小に寄与したものと考えられる。ただし、カップル・夫婦や男性グループの宿泊者数が大きく持ち直す一方で、子ども連れのファミリー層の宿泊者数は、持ち直しの動きがやや鈍い。今夏は夏休みを短縮する学校が多く、これにより、ファミリー層の宿泊者数が減少したものと考えられる。

図表6 県内旅館・宿泊業の売上高(前年売上高=100)
図表6 県内旅館・宿泊業の売上高(前年売上高=100)

(注)回答事業者の平均値を算出
(資料) 和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

3.劇的に変化する「個人消費」のニーズをつかむ

本レポートでは、コロナ禍における県内個人消費の状況変化をいくつかのポイントに絞って見てきた。その結果、JR和歌山駅前の人出がようやく回復する状態になりながらも、一部の小売業、飲食業、旅館・宿泊業の業況は依然として厳しい状況にあることがわかった。街中にはマスク姿の人々があふれ、店舗・事業所にはアクリル板が当然のように設置されている。新型コロナウイルス感染症対策を行うことが日常化する中で、「個人消費」の日常も様変わりしている。感染防止の観点から屋外レジャー・屋外スポーツの人気が高まり、在宅勤務の増加で自宅内に仕事をするためのスペースを設ける家庭も増えている。自宅でいる時間が長くなった結果、内装やインテリアにこだわる消費者も増加しており、県内でもホームセンターの売上高は増加している。

このような個人消費の変化を見逃すことなく、その変化したニーズを的確につかみ取る取り組みが県内事業者にとって重要になってきている。

(2020.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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