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コロナ禍における和歌山県内事業者の取り組み
 〜 「コスト削減」、「非接触・オンライン」の取り組みが進む 〜

研究員  藤本 迪也

1.持ち直しの兆しを見せていた県内経済

「新型コロナウイルス感染症対策」という言葉が、日常生活の一部となって1年以上が経過した。新規感染者数の動向を注視しつつ、「人流抑制」と「経済活動の正常化」のバランス調整をどのようにとるか、行政、事業者に限らず、各個人が試行錯誤を繰り返してきた。その中で、後述する2020年10〜12月期は、1度目の緊急事態宣言(20年4〜5月)で休止を余儀なくされた経済活動に持ち直しの兆しが見られた時期だった。

○県内事業者の売上高水準は10月にかけて持ち直す

当研究所で3か月ごとに実施している「景気動向調査」では、県内事業者に対して、各月の売上高水準を質問している(前年同月の売上高を100として)。全回答事業者の平均値の推移を示したものが、図表1である。

図表1によると、20年6月の75.3を底に、10月にかけて持ち直しの動きが見られた(9月については、前年同月に消費増税前の駆け込み需要が見られたため、その反動減が見られた)。

図表1 県内事業者の売上高水準(前年同月を100とした全事業者の平均値)
図表1 県内事業者の売上高水準(前年同月を100とした全事業者の平均値)

(注)前年同月の売上高を100とした場合の売上高水準を質問し、回答事業者の平均値を算出。
(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」(2020年12月実施)

○昨夏から昨秋にかけての経済活動の再起動

新型コロナ感染の第2波(20年7月〜8月)により、お盆の帰省自粛が見られたが、それ以降は、1日の新規感染者数が1,000人を下回る日が11月初旬まで続いた。9月以降には、観光需要・外食需要の喚起策「GOTO」キャンペーン事業が開始され、図表2に示す通り、JR和歌山駅前の人出状況も10月にはほぼ前年並みの水準まで持ち直した。

図表2 JR和歌山駅前の人出の状況(前年同月比)
図表2 JR和歌山駅前の人出の状況(前年同月比)

(注1)JR和歌山駅周辺500mメッシュ内の平日・休日15時の人口をもとに算出
(注2)前年との曜日の違いを考慮し、各日の比較対象は前年同月の平均値
(資料)NTT「モバイル空間統計」

コロナ禍を受けて、米国、中国等で実施された大規模経済対策を背景に、4〜6月期には大きく落ち込んでいた生産活動も急激な回復を見せ、日本国内では自動車工業、半導体関連産業を中心に持ち直しの動きが見られた。この結果、県内においても、製造業、機械器具卸売業などで景況感、業績に改善が見られた。

ただし、留意点として、図表3に示す通り、売上高水準が極めて低い状態にとどまる事業者が、旅館・ホテル業、生活関連サービス業(冠婚葬祭業等)、生活・文化用品小売業(宝石・貴金属小売業等)で複数あり、業況は業種、事業者間で差が見られる。

図表3 2020年10〜12月期の売上高水準が前年比50%以上減の事業者の割合
図表3 2020年10〜12月期の売上高水準が前年比50%以上減の事業者の割合

(注)10〜12月の各月における前年比50%減の事業者割合を平均した値
(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」(2020年12月実施)

2.コロナ禍に対する県内事業者の取り組み1「コスト削減」

○再びの緊急事態宣言発令

以上のように、10月にかけて県内経済活動は4〜6月期の最悪期を脱し、総じて持ち直しの動きを見せていた。ただし、11月に入ると、再び新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、12月中旬には「GOTOトラベル」キャンペーンの全国一斉停止が決定された。年末年始には、「初売り」、「初詣」の自粛(分散訪問)が呼びかけられたが、感染者数の拡大は止まらず、政府は東京都、大阪府などの11都府県に対して緊急事態宣言を再発令する事態となった。

この結果、和歌山県内においても、JR和歌山駅前の人出状況(図表2)は、11月以降、再び悪化している。図表1の県内事業者の売上高水準についても、12月の値は下降している。

○売上高水準が低下する中、県内事業者の6割強が「コスト削減」に取り組む

コロナ禍の収束が見通せず、売上高水準も回復できていない状況の中で、県内事業者はさまざまな取り組みを実施している。中でも、「コスト削減」に取り組む事業者は62.2%と多く、具体的な内容としては、「出張費の削減」、「労働時間の削減」といったものに加えて、「事業内容の見直し(取扱い品目・サービスの見直し)」、「仕入先・仕入品の見直し」等が見られた。

また、その効果の有無について質問したところ、図表4に示した通り、「効果が見られる」と回答した事業者が52.8%と過半数を占めた(見込み含む)。

図表4 実施しているコスト削減の効果の有無
図表4 実施しているコスト削減の効果の有無

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」(2020年12月実施)

3.コロナ禍に対する県内事業者の取り組み2「非接触・オンライン」

○一部の事業者でICT(情報通信技術)の活用が進んでいる

「コスト削減」の他にも、感染防止対策として「非接触」、「オンライン・リモート」に関する取り組みを進める事業者が1〜3割程度見られた。「オンライン取引(営業)の拡大」については、衣料品小売業(44.4%)、機械器具卸売業(33.3%)などで回答が多く見られた。「テレワーク環境の整備」については、化学製品製造業(43.8%)などの製造業で回答が多い。また、「ICT活用促進・デジタル化(生産性向上)」については、旅館・ホテル業(32.0%)、医療・福祉(29.7%)で回答が多くなっている。

図表5 「非接触・オンライン」に関する取り組みを行う事業者の割合
図表5 「非接触・オンライン」に関する取り組みを行う事業者の割合

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」(2020年12月実施)

4.コロナ禍に対する県内事業者の取り組み3「ニーズの変化への対応」

○この1年で社会の「ニーズ」は大きく変化

コロナ禍が長期化する中で、個人の生活、企業活動は変化を余儀なくされており、その結果として、それぞれの「ニーズ」は大きく変わりつつある。在宅勤務の機会が増え、外出自粛の動きが強まる中で、家庭での調理機会(内食)が増加したり、居室空間を快適にするためのリフォーム需要(自身で行う改修を含む)が伸びている。このような「巣ごもり需要」は白物家電(エアコン等)、黒物家電(液晶テレビ等)などにおいても見られる。飲食業界では、テイクアウト・デリバリーに対応する事業者が増え、自宅でお店の味を再現できるミールキット(レシピと食材のセット販売)を販売する事例も全国では見られた。

デジタル技術やインターネットを活用することで、これまでにないサービスも生まれている。インターネット上での講演会・セミナーはこれまでにも実施されていたが、その機会は大きく増加した。学習塾やフィットネスジムがインターネット上で利用者を指導・サポートする事業も拡大している。観光業界では、インターネットを使って、専門家の解説を聞きながら、海外・国内の観光地をパソコン等の画面越しに旅行するオンラインツアーが販売されている。

コロナ禍で生まれた新たな商品・サービスは事業者間の競争の中で、洗練されていき、さらなる市場の拡大と関連産業の創出をもたらすだろう。

○「ニーズの変化への対応」を行う事業者は15.3%

このような「ニーズ」の変化に対して、取り組みを進めている県内事業者を前述の「景気動向調査」(2020年12月実施)で確認したところ、15.3%の事業者が商品・サービスの開発などにより、「ニーズの変化への対応」を進めていることがわかった。「新規事業の展開」を行う事業者も10.3%見られる。

政府は今後の経済対策において、新分野展開や業態転換を図る事業者に対し、そのための設備費用、教育訓練費用などを支援する方針で、県内事業者は、このような支援策を有効に活用しながら、コロナ禍の環境変化に対応することが重要になっている。

(2021.4)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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