ホーム | サイトマップ | リンク

ホーム > レポート > 経済 > 業務効率向上に向けた取り組み

業務効率向上に向けた取り組み
 〜 「人材不足」、「業務繁忙」が取り組む上での課題に 〜

研究員  藤本 迪也

1.コロナ禍の県内経済(2021年12月時点)

○「第5波」収束で人出状況は回復に向かう

新型コロナ変異株(デルタ株)の感染拡大による「第5波」は、2021年9月以降、収束に向かった。東京都・大阪府等に発出されていた緊急事態宣言が解除され、10月以降、県内商業施設への人出状況は回復した。

図表1 和歌山県内商業施設への人出状況(感染拡大前比)
図表1 和歌山県内商業施設への人出状況(感染拡大前比)

(注)前年との曜日の違いを考慮し、各日の比較対象は2020年1〜2月の平均値
(資料)Google 「Community Mobility Report」

○全ての産業で景況感が改善

県内事業者の景況感は、建設業からサービス業まで、いずれの産業においても改善した。ただし、コロナ禍前の水準までは回復できておらず、業種によっても景況感に差が見られる(総合工事業の景況BSIは+30.2、飲食業は▲60.0)。

図表2 和歌山県内景況感(景況BSI)の推移
図表2 和歌山県内景況感(景況BSI)の推移

(注)景況BSIは景況感を「良い」と回答した事業者割合から「悪い」とした事業者割合を引いて算出。
(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

○新たな変異株の感染拡大

22年1月以降、日本国内で新たな変異株(オミクロン株)の感染が拡大しており、和歌山県内においても、2月5日より、まん延防止等重点措置が適用されることになった。飲食店に対して時短営業が要請されることになり、商業施設等への人出は再び減少している。

オミクロン株の感染力は強く、学校、職場、高齢者施設等でのクラスター感染が数多く発生した。感染者のみならず、その濃厚接触者も急増したことから、出勤できない従業員が続出し、企業活動にも大きな支障をもたらした。

その後も、感染力がさらに強いとされるオミクロン株の派生型(BA.2)が複数の国で確認されており、コロナ禍の収束は依然として見通せない状況にある。

2.企業物価が歴史的水準まで上昇

県内事業者に悪影響をもたらしている要因はコロナ禍だけではない。事業者間で売買される物品の価格変動を示す指標「企業物価指数」(21年11月)は、前年比9.0%の上昇となり、オイルショックで物価が高騰した1980年12月以来の高い伸び率となっている。物価上昇の背景としては、1.原油等の資源価格の高騰、2.個人消費の急激な持ち直しに対する供給不足、3.輸送コンテナ不足に伴う輸送運搬コストの上昇、4.人手不足に伴う人件費上昇、5.円安進行に伴う輸入コストの上昇、6.天候不順による穀物の生育不良などが挙げられる。

1年間で1割近く物価が上昇したことで、事業者の収益性は悪化しており、コスト削減や業務効率向上などの対策が求められている。

図表3 企業物価指数(総平均)の推移
図表3 企業物価指数(総平均)の推移

(資料)日本銀行「企業物価指数」

3.業務効率向上に向けた県内事業者の動き

○35.9%の事業者が業務効率向上に向けた取り組みを実施

2年以上にわたるコロナ禍で、県内事業者は様々な取り組みを実施している。当研究所の調査によると、県内事業者の約1割が、コロナ禍で変化した販売先・顧客のニーズに対応するため、新たな商品・サービスの提供や新規事業の展開を行っている。また、仕入先・仕入品の見直し、不採算事業の廃止などを通じてコスト削減を進める事業者も多い。さらに、業務効率向上のため、業務内容・やり方・手順等の見直しを行う事業者は35.9%にのぼり、その結果として、多くの事業者が効率性を高めている。その一方で、29.4%の事業者が、業務内容・やり方・手順等を「見直したいが、できていない」と回答している。

図表4 業務内容・やり方・手順等の見直しについて(和歌山県)
図表4 業務内容・やり方・手順等の見直しについて(和歌山県)

(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」(2021年12月実施)

○「主導できる人材不足」、「業務繁忙」が業務効率向上に向けた取り組みの障害に

業内容等の見直しを実施できない理由としては、「見直しを主導できる人材がいない」との回答が47.7%で最多となっており、「見直しのための時間が取れない」が38.7%で2番目に多い。このことから、「人材不足」と「業務繁忙」が、県内事業者の業務効率向上の障害になっていると言える。

図表5 業務内容・やり方・手順等の見直しができていない理由(和歌山県)
図表5 業務内容・やり方・手順等の見直しができていない理由(和歌山県)

(注)複数回答可で質問。
(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」(2021年12月実施)

4.業務効率向上を目指して 〜「人材不足」、「業務繁忙」を乗り越えて 〜

「人材不足」、「業務繁忙」の状況下で、どのようにして業務効率向上を目指せばよいか、中小企業庁編「中小企業白書(2018年版)」を参考に方策を整理する。

 
○柔軟な勤務形態の整備

足下の人材不足(人手不足)については、女性・高齢者にとって働きやすい勤務形態を整備することが人材確保に有効である。ライフスタイルが多様化する中で、正規雇用を希望する人材もいれば、短時間での非正規雇用を希望する人材もいる。また、高齢者雇用が増える中で、短時間での勤務希望者はさらに増加する可能性が高い。子育て・介護との両立支援を含めて、従業員にとって勤務しやすい環境の整備が重要である。

○ITを活用した外部人材の活用

業務繁忙に関しては、外注やクラウドソーシング(インターネット上での業務発注)の利用、副業・兼業人材の活用が解決手法として考えられる。コロナ禍で対面接触が敬遠される中、ITを活用したリモートワークが普及し、インターネット上で業務を依頼したり、副業人材を活用できる環境が整備されている。

○業務効率向上に向けた手法

業務効率向上に関しては、1.業務改善活動、2.業務の棚卸し(必要性の精査)、3.業務のマニュアル化、4.スキルマップの作成、5.従業員の多能工化といった方策が効果的である。1では、従業員から現場の業務改善のアイデアを募集し、実際の改善行動につなげる。この活動を通じて、従業員同士のコミュニケーション機会が増加したり、日々の改善意識の向上につながる。2では、既存業務の必要性を改めて確認し、必要性の高い業務については、マニュアル化を進める(3)。このことにより、既存業務の実施に必要なスキルがどのようなものであるかを特定できるようになり、人材育成時の目標設定が容易となる(4)。営業職であれば、「顧客との効果的な折衝」、「顧客関係の維持」、「顧客に合った企画立案」などが具体的なスキルとして挙げられる。スキルの習熟度を人事考課に反映することで、従業員の意欲向上につなげている事業者もある。従業員に求めるスキルが具体的になれば、1つでも多くのスキルを身につけてもらえるよう従業員を育成(5)し、人手が足りていない部門・現場への人員配置を適正に行うことで、繁忙期においても業務効率を維持することができる。

以上に記載した手法については、新たな設備を必要とするものではなく、すぐにでも始められる内容である。コロナ禍において、先行き不透明感や閉塞感が強い状況ではあるが、経営者・従業員が一体となり、今後の事業の方向性を共有しながら、業務効率の向上や新規事業の展開に取り組んでいくことが求められている。

(2022.4)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

このページのトップへ