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コロナ禍において業績が改善した事業者の特徴

研究員  藤本 迪也

1.コロナ禍における県内事業者の業績状況

○県内事業者の景況感の推移

2020年1月、世界保健機関(WHO)は、新型コロナウィルス感染症について「緊急事態」を宣言した。それから、2年半以上が経過する中で、世界各国でワクチン接種の普及、行動制限の緩和が進んでいる。

この間の県内事業者の景況感の推移を見ると(図表1)、2020年4〜6月期に大幅な悪化が見られた後、持ち直しの動きを見せた。ただし、2022年1〜3月期には、オミクロン株の感染拡大で、再び景況感は大きく悪化した。2月には和歌山県内に初めて「まん延防止等重点措置」が適用され、1日の新規感染者数は約600人の水準にまで増加した。その後は、感染状況に落ち着きが見られたこともあり、景況感は改善に向かっている。

図表1 和歌山県内景況感(景況BSI)の推移
図表1 和歌山県内景況感(景況BSI)の推移
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(注)(注)景況BSIは景況感を「良い」と回答した事業者割合から「悪い」とした事業者割合を引いて算出。
(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

○小売業、個人向けサービス業の景況感が極めて悪い

業種別に2022年1〜3月期の県内事業者の景況感(景況BSI)を見た場合(図表2)、建設業や製造業の一部業種では、景況感に底堅さが見られるものの、コロナ禍の影響を大きく受けている「旅館・ホテル業」、「飲食業」、「小売業」の景況感は極めて悪い。

図表2 業種別に見た2022年1〜3月期の景況感(景況BSI)
図表2 業種別に見た2022年1〜3月期の景況感(景況BSI)

(注)景況BSIは景況感を「良い」と回答した事業者割合から「悪い」とした事業者割合を引いて算出。
(資料)和歌山社会経済研究所「景気動向調査」

○コロナ禍でも業績改善の事業者は多い

2008年のリーマンショック時に並ぶほどの景況感悪化となったコロナ禍で、県内事業者の業績(売上高・営業利益)状況については、どのような変化が見られたのだろうか。毎年、和歌山県は県内事業者3,000社を対象に「県内企業の経営実態調査」(以下、経営実態調査と略記)を実施し、当該年度における県内事業者の業績状況を調査している。ここでは、公表されている経営実態調査の結果を活用し、コロナ禍における県内事業者の業績状況の変化を明らかにする。

コロナ禍前の2019年度(令和元年度)と、直近の2021年度(令和3年度)の経営実態調査の双方に回答している342の事業者を対象に、業績変化を確認した(図表3)。その結果、売上高が増加し、売上高営業利益率が上昇した「増収」×「利益率UP」の事業者が33.0%を占めることがわかった。

図表3 コロナ禍における業績変化
図表3 コロナ禍における業績変化

(注)令和3年度調査ならびにコロナ禍前の令和元年度調査の双方に回答した事業者について集計。
(資料)和歌山県「県内企業の経営実態調査」(令和3年度・令和元年度)

○「増収」×「利益率UP」の事業者は建設業、サービス業でやや多い

産業別に見た場合、「増収」×「利益率UP」の事業者は建設業で46.6%と約半数を占め、サービス業で38.5%、卸売業で36.8%を占めた。その一方で、「減収」×「利益率DOWN」の事業者は製造業で34.9%、小売業で34.9%と他産業に比べてやや多くなっている。

業種別に見た場合(図表4)、「増収」×「利益率UP」の事業者は不動産業や生活・文化用品小売業(医薬品・衛生品販売)、化学製品製造業の他、職別工事業や総合工事業などの建設業で多い。コロナ禍における医薬品・衛生品の需要増大や県内における公共工事受注額の増加が業績改善の一要因になっているものと考えられる。その一方で、「減収」×「利益率DOWN」の事業者は、コロナ禍に伴う不要不急の外出自粛の影響を受けた旅館・ホテル業、繊維製品製造業、飲食業、燃料小売業などで目立った。

図表4 コロナ禍における業績変化
図表4 コロナ禍における業績変化

(資料)和歌山県「県内企業の経営実態調査」(令和3年度・令和元年度)

2.コロナ禍における業績状況別に見た「自社の人事労務評価」

ここでは、本題である「コロナ禍において業績が改善した事業者の特徴」について、さらに分析を進めるべく、経営実態調査で質問した「自社の人事労務に関する評価」について、「増収」×「利益率UP」事業者と「減収」×「利益率DOWN」の事業者とで回答に違いが見られるのかを整理した(図表5)。

図表5 自社の人事労務について「評価している」事業者割合(業績状況別)
図表5 自社の人事労務について「評価している」事業者割合(業績状況別)

(注)各項目について「評価している」と回答した事業者割合を表示している。
(資料)和歌山県「県内企業の経営実態調査」(令和3年度)

その結果、「増収」×「利益率UP」の事業者の方が、「仕事内容・やりがい」、「職場の人間関係、「賃金水準」、「人事評価・処遇」、「高齢者の働きやすさ」の全ての項目において、自社を「評価している」事業者が多いことがわかった。つまり、従業員にとって望ましい人事労務環境となっている事業者ほど、コロナ禍でも業績が改善している場合が多く、その要因としては、従業員のモチベーション向上、組織力向上による生産性アップなどが考えられる。

3.不確実性が高まる中で求められる対応

今回の調査結果が示唆するように、コロナ禍といった前代未聞の経済環境においても、業績改善を果たした事業者の特徴としては、コロナ特需や公共工事受注額増加の恩恵を受けたという点の他に、従業員の「働きがい」、「働きやすさ」、「賃金水準」に関して自社に対する評価が高いという点が確認できた。性別や年齢に関わりなく、その人の能力が評価されること、育児・介護との両立が可能な勤務体制の構築など、一朝一夕で実現できるものではないが、まずは、他社の事例などを参考に、自社への適用を検討することが求められる。厚生労働省はウェブサイト内に「働き方改革特設サイト 中小企業の取り組み事例」を掲載しており、参考になる事例が豊富に紹介されているので、参照されたい。

(2022.8)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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