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和歌山県産の農産物における輸出戦略 Part3 「輸出コストの低減と物流の効率化」

研究部長  藤本 幸久

1.輸出コストの低減と物流の効率化

輸出コストには、輸出先の店頭に並ぶまでの腐敗や減耗などのロスはもちろんのこと、梱包料、輸送運賃(日本国内・国際・現地国内)、荷役料、関税、通関・検査・検疫手数料、保険料などが加算されるとともに、さらに流通マージンが上乗せされることとなる。 そこで、流通コストにかかる「商流」及び「物流」の構図を概略しながら、最近の傾向を探ってみることとする。

(1)農産物の輸出における商流

商流については以下(次頁の農産物の輸出における商流パターン図)のとおりであるが、流通コストの低減をめざして、市場経由型から、国内における流通機能を生産者自らが担う傾向が一部に見られるようになってきている。

2.航空輸出における物流とリードタイム

発注から納品までのリードタイムは、輸送コストと反比例の関係にあり、現状では航空便に優るものはないものの、予期せぬ通関遅延や流通トラブルによる延着などによる腐敗や廃棄の発生が青果物の輸出における最大の課題といえる。

輸出においては、長時間の国際輸送と複雑な輸出入通関業務に加え、輸出入業者、通関業者、船舶や航空会社、陸上輸送業者、港湾業者など関係者が多いうえに、輸送、保管、包装、荷役、流通、情報処理といった活動は、輸出先国の物流インフラ、社会制度などによって状況が変わってくるだけに、まさかの時の迅速な情報処理と対応が重要となってくる。

なお、農産物の輸出における物流パターン図は次頁のとおり。

農産物の輸出における商流パターン
農産物の輸出における商流パターン

農産物の輸出における物流パターン
農産物の輸出における物流パターン

3.輸出スケジュールと輸出コスト

航空輸出における物流とリードタイムの構図は前項のとおりであるが、ここでは、桃を例にとることとする。

輸出先国及び地域における小売価格は、輸出先による差はあるものの輸出にかかるコストを単純に加算すると、日本国内における小売価格のおよそ2から3倍の価格(飛行機便によるとおよそ3倍、船便だとおよそ2倍)となるものの、実勢価格としてはそれに留まることはなく、5から6倍に近い価格状況となっている模様である。

なお、以下の内容は、大阪中央卸売市場の卸売会社及び仲卸会社よりヒアリングしたものである。

(1)船便
・スケジュール
    1日目:収穫→選果・梱包・出荷→港到着
    2日目:輸出検査→船積
    3〜6日目:海上輸送(台湾:2日、香港:4日)
    6〜8日目:販売(台湾:6日目、香港8日目)



船
・輸出コスト(1,400箱の場合)
    輸出費用:約150円
    通関費用(台湾):約1,800円(関税:20%、営業税:5%、通関費用:450円)
(2)飛行機便
・スケジュール
    1日目:収穫→選果・梱包・出荷→大阪卸売市場到着
    2日目:大阪→関空→台湾・香港
    3日目:台湾・香港で販売



飛行機
・輸出コスト(140箱/2パレットの場合)
    輸出費用:約2,300円
    通関費用(台湾):約2,400円(関税:20%、営業税:5%、通関費用:450円)

4.物流の効率化

農産物輸出にかかるコストとしては、少なくとも通関・検査・検疫、保険、書類作成などに対する余分な時間と労力が必要であることはもちろんであるが、なかでも輸出コストに占める物流費の割合が大きいといえる。

物流にかかる費用は、輸送中の品質維持対策費を含め取扱商品や取引内容により状況は異なるものの、取引ロットが小さいことが高コスト要因になっていると思われる。

輸出総額が増加したといえども、生産者や輸出事業者の出荷ロットが小さく、単独で物流の効率化を図ろうとしても限界がある。また、農産物の輸出量が小ロットであることに加え、品目によって鮮度維持の条件が異なるため混載しにくいという特性があることから、小ロットでも鮮度を維持しながら、低コストで輸出できる物流システムを整備することが重要となってきている。

輸出時の必要情報(輸出先、品目、数量、出荷時期、商品特性など)のマッチングと、あわせて輸送容器と梱包資材の標準化や規格化をすすめることにより積載率を高めることができ、その分輸送コストを引き下げることが可能となるのである。

一方、わが国の輸入農林水産物については、商社や海外産地の輸出団体などが、効率的な大ロット取引により、低価格で日本国内で販売している状況にある。先に述べたとおり平成26年の農林水産物輸入総額9兆2,408億円に比べると、輸出はその6.6%の6,117億円に過ぎないものの、日本産農林水産物の輸出拡大をはかるためには、物流コストの削減に向けたさまざまな取り組みが必要となってきている。

すでに、A運輸会社では、香港向けにクール宅急便を開始し、日本と同様の保冷車両でエンドユーザーまで保冷輸送が可能であり、航空ネットワークを活用することで、全国の農水産物を翌日配達ができる。

同じく、B流通会社も海外事業者と共同で、台湾、香港、シンガポール、マレーシア向けにクール宅急便を開始するなど、国際クール宅配便とネット通販を連携させることで、海外消費者が直接日本の農水産品などを取り寄せることも可能となってきている。

いずれにしても、「日本の食」の強みを生かしながら農産物の輸出増加につなげるためには、集荷の集約や混載などで輸送ロットを確保し物流コストの低減を図るとともに、鮮度を保ち、速く、荷傷みが少ない「高品質な物流」で、生産地から海外販売先まで届けることが不可欠であろう。

ついては、農林水産物・食品の輸出に係る物流検討会資料より、輸出時の必要情報のマッチングや輸送容器の標準化などによる積載率の向上に基づく輸送コスト低減のイメージ図を次のとおりとした。

農産物輸出情報のマッチングによる物流の効率化
(農林水産物・食品の輸出に係る物流検討会資料より筆者作成)
農産物輸出情報のマッチングによる物流の効率化
コールドチェーンとは生鮮食品などを低温・冷蔵・冷凍の状態を保ったまま流通させる仕組み。

(2017.4)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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