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付加価値を創造する新たな農業 Part2 6次産業化による高付加価値化

研究部長  藤本 幸久

IV.6次産業化による高付加価値化の取組

農林水産業・地域の活力創造本部が取りまとめた「農林水産業・地域の活力創造プラン」(2014年6月24日改訂)は、農林漁業者の取組を基本に、企業のアイデアやノウハウを活かした多様な事業者による地域資源を活用した地域ぐるみの6次産業化を推進することにより、6次産業化の市場規模を2020年までに10兆円に増加させることを目標としている。

1 6次産業化の基本的視点と意義

6次産業化は、農林漁業者が自ら、または2次産業事業者、3次産業事業者と連携して、農林水産物・景観・文化などの地域資源に付加価値を付けながら消費者・実需者に商品及びサービスを提供することで所得と雇用を確保し、活力ある地域づくりをめざす取組である。

そもそも、6次産業化とは、地域資源に付加価値を付けながら消費者・実需者につながっていく取組であり、まさに6次産業化は地域資源を活用した高付加価値型農業と言える。

農林水産業・地域の活力創造プラン

(農林水産省HPより)

「攻めの農林水産業」は、農林水産業を地域産業として強くする取組(産業政策)と多面的機能の発揮を図る取組(地域政策)を車の両輪として展開することとし、その中の一つである「需要と供給をつなぐバリューチェーンの構築」で、6次産業化を農林水産物・食品の付加価値向上をはかるための重要な取組として位置づけている。

この6次産業化の取組において重要なのは、地域資源に付加価値をつけ消費者・実需者につなげることであり、顧客(消費者・実需者)が必要としている機能・便益・付加価値(顧客価値)は何かを見極め、地域資源の活用による生産・供給を行うという視点が最も重要となってくる。

2 高付加価値化の取組状況
(1)農業生産関連事業を行う農業経営体数

農林業センサスによると、2015年の農業生産関連事業に取り組む農業経営体は、251,073経営体となっている。

農業経営体が取り組んでいる事業の多くは消費者への直接販売であり、2010年と比較して28.1%減少しているものの、2015年には236,655経営体で全農業経営体に対し94.3%を占める。

次に農産物の加工が多いが、2015年には25,068経営体であり、2010年に比べて26.6%の減少となっている。

貸農園・体験農園等、観光農園、農家民宿はいずれも全農業経営体に占める比率が低いうえに、経営体数も2010年に比較して2015年には減少している。

2015年の貸農園・体験農園等では2,117経営体(同36.3%減)、観光農園2,171経営体(24.8%減)、農家民宿256経営体(12.8%減)がそれぞれ減少しているが、農家レストランは、2010年に比べて56経営体経営体(4.5%増)0.5%の増加となっている。

農業生産関連事業を行う農業経営体数(全国)
農業生産関連事業を行う農業経営体数

(農林業センサスより)

2015年 農業生産関連事業を行う農業経営対数(全国)【複数回答】
2015年 農業生産関連事業を行う農業経営対数

(農林業センサスより)

(2)農業生産関連事業の業態別年間総販売金額

農業所得の向上や経営を安定化させるには、農産物の生産・販売はもちろん、農産物加工や観光農園開設などの農業生産関連事業に対する取組も重要である。

農林水産省の6次産業化総合調査によると、2014年度における全国の農業生産関連事業の年間総販売金額は1兆8,672億円となっている。

内訳をみると、農産物の加工が8,576億円で全体の45.9%を占め、農産物直売所での販売は9,356億円で全体の50.1%となっている。

前年の2013年度と比較すると、農業生産関連事業全体で498億円増加し、業態別には、農産物の加工170億円増、農産物直売所331億円増、農家レストラン等10億円それぞれ増加する一方、観光農園は13億円の減少となっている。

農業生産関連事業の業態別年間総販売金額
農業生産関連事業の業態別年間総販売金額

(農林水産省 6次産業化総合調査より作成)

農業生産関連事業の業態別年間総販売金額

(3)農業の高付加価値化

農産物の出荷先をみると、やはり卸売市場への出荷が主流であるが、インターネット販売などが手軽に出来るようになったことから、消費者に対して直接販売することが増えている。

ついては、農業の6次産業化の手法を大別してみると以下のようになると考えられる。

6次産業化による農業の高付加価値化の手法例
6次産業化による農業の高付加価値化の手法例

<1>消費者に対して農産品を直接販売する。また、<2>農産品を加工して販売する。この内容は次に詳しく述べることとする。<3>農家レストランにて、自ら作った農産物を使った料理を提供する。さらには、<4>農家が運営する宿(農家民泊)や田舎暮らし体験。また、<5>観光農園、農業体験。<6>果樹(例えば:柿の木、ミカンの木)などのオーナー制度、貸し農園。<7>海外へ農産物並びにその加工品を輸出する。

ア 直接販売の事例

〇 日本一小さい農家の農業経営(石川県能美市)
(農業ワールド セミナーより)

無農薬野菜風来

無農薬野菜風来

無農薬野菜風来

生産・加工・直売・家族農業で30a、1,200万円
借金、補助金、農薬、肥料、生産ロス、大農地、高額機械、宣伝費、農業経験は一切ない。しかも、初期投資は自己資金でおよそ140万円だが、年間売上1,200万円、所得(利益)600万円を上げている。
3万円の中古農機具などで、50品種以上の野菜を育て、野菜セットと漬物や手づくりお菓子などをインターネットなどで直売を行っている。主力商品は2,000円の野菜セットで、3週間待ちということもある模様である。
生産・加工・販売を夫婦2人でやりながら、3人の子どもたちと暮らす、まさに、「幸せに稼いでいる」人物が、石川県能美市の「菜園生活 風来(ふうらい)」代表の西田栄喜氏である。
サッカーコートの半分ぐらいのビニールハウス4棟、通常農家の10分の1程度の耕地面積、わずか30アールしかない「日本一小さい専業農家」と言える。稀有な存在だが、こんな生き方、やり方もあっても良いのではなかろうか。

・西田栄喜(にした・えいき)氏プロフィール(風来HPより)
大学卒業後バーテンダー。ビジネスホテルチェーンの支配人を3年間。その後帰郷し1999年に農業知識ゼロから起農。
借金なし、農薬散布なし、肥料なしなど、“ないないづくし”で、年間売上1,200万円、所得(利益)600万円を達成。
地域とお客さんとのふれあいを大切に、身の丈サイズで家族みんなが明るく幸せになる農業を行う。

イ 加工の事例

〇 柿の加工手法と商品例

柿の特徴としては、一般的に他の果物と比べて香りが少ないこと、酸味がないことが挙げられ、このことが商品開発のネックになっているとも言えるが、以下に現在考えられる開発方法とそれぞれの商品例を一部紹介することとする。

柿を素材とした加工の手法及び商品例
柿を素材とした加工の手法及び商品例

柿を生果実でそのまま販売するのではなく、柿を素材とした商品開発とりわけ加工食品の開発となると、先ず干して乾燥させて商品化する方法。次に冷蔵したり凍らせたりする方法。さらには練り物とする方法。飲み物に加工する方法。醗酵させる方法。次にお菓子として加工するなどの方法がある。

ウ 直売所・観光農園・レストラン等の事例(農業ワールド セミナーより)

〇 年間49万人が訪れるおおむら夢ファームシュシュ 6次産業で夢を形に農業に感動を
(有)シュシュ(長崎県大村市)

おおむら夢ファームシュシュ

山口成美代表は、おおむら夢ファームシュシュを拠点に、長崎の農業の楽しさと感動を全国に伝え続ける伝道師を自負している。
地元農協営農指導員を経て農業経営を開始し、食育体験、レストラン,6次産業化、ブライダル等々を展開している。
2000年4月に農業交流拠点施設おおむら夢ファームシュシュを地元専業農家8戸でオープンした。
農産物直売所をはじめ、レストラン、アイス工房、パン工房、洋菓子工房、農産物加工場、イチゴ狩り、なし狩り、ぶどう狩りなどの多彩な事業を展開し、年間49万人の来場者で地域農業の活性化に大きく貢献している。さらに、平成27年度に、全国直売所甲子園で優勝するなど数々の賞を受賞した。

〇 大型直売所 楽農ひろば(埼玉県日高市)

全国に2万か所以上の農産物直売所があり、およそ9,000億円を売り上げている。異業種からの新規参入も数多く地方経済活性化の切り札として期待されているが、形だけを作っても成功する確証は何もないのである。
青木隆夫代表は、1976年に(株)埼玉種畜牧場に入社し、地元農家50名と「大型直売所楽農ひろば」を1998年に新設するとともに、2001年9月に(有)ベネットを設立した。「楽農ひろば」は全国の大型農産物直売所の先駆けとなった。
さらに、農業書の出版およびコンサルティングを全国各地で手掛け、20か所以上の農産物直売所、道の駅等の新規立ち上げを支援している。
2005年3月には全国直売所研究会設立し、直売所甲子園開催するほか、直売所の学校、経営セミナーなど開催している。

養父市

〇 国家戦略特区と地方創生 〜“農”が拓く 養父市の未来〜(兵庫県)

平成26年5月に国家戦略特区の指定を受け、地方創生に向けてチャレンジを続けている。
第一次指定の国家戦略特別区域の中でも、非常に高い評価を受けている養父市である。
広瀬栄市長は、養父市を中山間農業改革特区として、様々な規制改革を推し進め、中山間地農業のモデルとなり、農を中心とした地方創生に取組んでいる。

エ 農業生産法人化の事例

〇 変わりゆく社会構造の中で求められる地域活性化
野村アグリプランニング&アドバイザリー(株)(千葉県、北海道)

野村和郷ファーム

(株)和郷と共同出資で農業生産法人「野村和郷ファーム(株)」(千葉県香取市)、(株)武蔵野種苗と共同で農業生産法人「野村ファーム北海道」(北海道江別市)を設立し、太陽光利用型植物工場での高糖度トマト栽培などを行っている。
六次産業化・地産地消法が施行され5年経過するなかで、6次産業化という言葉が市民権をもち広がりを見せているが、何故6次産業化が必要なのか。6次産業化を成功に導くポイントとは何か。
それは、如何に農産物に付加価値をつけるか。<1>リサーチ、<2>コンセプト・ストーリーづくり、<3>地域資源の最大活用、<4>如何にPRするか等が重要と考え行動している。

〇 グローバル競争時代を生き抜く農業
(株)浅井農園(三重県津市)

浅井農園

常に現場を科学する研究開発型の農業カンパニーを掲げており、全国から優秀な若者が集まる叶井農園となっている。大規模施設園芸において品種開発、農業ICTを活用した独自の生産技術、流通開発まで、川上から川下まで強いバリューチェーンを構築するための事業戦略が柱となっている。
津市にある家業(花木生産)継承の一方ミニトマト生産事業を開始。品種(種子)、生産管理技術、流通販売まで独自のサプライチェーンを構築しながら生産規模拡大に取組み、グループ全体で140名の雇用を創出、年間700トンを超えるミニトマトを生産、販売を行っている。

オ 輸出の事例

〇 農業をゼロからはじめて売上5億円! 〜未来型農業への挑戦と今後の展望〜
(有)大崎農園(鹿児島県大崎町)

大崎農園

鹿児島県大崎町の自然に魅せられた脱サラ同級生3人が、情熱・努力・感謝で農業生産法人を築いた。
農業未経験者がゼロからはじめて17年で約5億円を売上げる野菜生産法人に育てた。栽培品目は、葉ねぎ・キャベツ・大根・レタスが中心である。
情報を共有するため、農業経営の見える化に積極的に取り組み、農作業マニュアルの作成や生産工程管理・作業時間管理を行った。
なお、イスラエルやアジア各国視察、海外展開を模索しながら、マレーシアでの農業指導も実施している。

3 食品の新たな機能性表示制度と高付加価値の商品開発
(1)機能性表示食品とは

機能性を表示することができる食品は、これまで国が個別に許可した特定保健用食品(トクホ)と国の規格基準に適合した栄養機能食品に限られていた。

そこで、機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者がそうした商品の正しい情報を得て選択できるよう、2015年4月に、新しく「機能性表示食品」制度がはじまった。

機能性表示制度によって認められた機能性表示食品は、「機能性の表示ができる」保健機能食品の内の1つであり、事業者はエビデンス(科学的根拠)があれば、具体的な効果について商品や広告に記載できるようになる。

機能性表示食品

(消費者庁HPより)

(2)柿の機能性を追求した商品開発

県の和歌山県産食材機能性ガイドには、主な栄養成分と主な機能性とりわけカリウムによる高血圧予防、ビタミンCの美容と健康、タンニンの抗酸化作用などが記載されている。

また奈良県柿博物館 濱崎貞弘氏 柿タンニン研究によると、「柿渋(柿タンニン)は撥水効果があることから魚網や傘などに塗布したり、血圧を下げる作用や皮膚を保護する作用などから、高血圧の人が内服したり火傷のときに利用したりしてきた。

住宅の柱や床に塗ることで腐朽を防いだり、着物を染めたり、虫除けになるといわれ箪笥の中敷に使われたりもしてきた。

だが化学の発展や生活スタイルの変化に伴い清酒醸造の他はほとんど利用されなくなるなど衰退の一途であった。

ところが、近年の化学製品から天然素材への回帰が見られる中で、柿渋の魅力が再評価され利用場面が増えてきている。」

柿の機能性

(和歌山県産食材機能性ガイドより)

単なる加工品開発ということだけでなく、機能性に着目した商品開発ということになると薬事法対応が必要になるなどハードルが高くなるものの、医薬品や化粧品等応用範囲が一段と広くなってくる。あわせて、機能性を有することの研究成果公表が商品並びに産地のイメージ向上となることから販売拡大の一助となると思われる。

ただ機能性表示食品は、事業者の責任において科学的根拠を消費者庁に届ければ商品にその効能を表示できるとなっているが、「柿には高い抗酸化作用のあるβカロテンやβ−クリプトキサンチンが多く含まれており発がん抑制作用がある云々」の表示は薬事法に抵触しないのかなど充分なる事前チェックが必要である。

あわせて、科学的根拠となる臨床試験もしくは研究レビュー(システマティックレビュー)の提出を要することとなっている。

(3)みかんの機能性を追求した商品開発

2015年4月にスタートした「機能性表示食品」の認定商品の一部を次に掲載することとする。

機能性表示食品

(消費者庁HPより)

〇 三ヶ日町農協のブランド戦略 〜すべては売るために〜(農業ワールド セミナーより)

農協役員になる前約30年間みかん園の経営をしていた後藤組合長は、生産性の高い儲かる農業を目指し、辿り着いたのは「ブランド戦略」である。経営には三つの力が必要であるとし、<1>売れるものを作る力、<2>売る力、<3>マネジメントする力の強化に努めている。
作業の機械化、施設の充実、園地の拡大・集団化を図り、高品質の製品を大量につくるだけでなく、売るためにはマーケティング、ブランドが大事であるとし、特に機能性表示食品への取り組みは究極のブランディングと考えチャレンジを続けている。
平成27年8月に、「β‐クリプトキサンチンは骨代謝のはたらきを助け、骨の健康に役立つ」で、機能性表示食品の認証を取得し、11月5日に機能性表示食品のみかんとして日本で初めて流通がはじまった。
機能性表示への取組は究極のブランド戦略と位置づけ、<1>生果実販売に軸足、<2>パブリシティの有効活用、<3>農・食・健康のトライアングル、<4>ブランド力の活用、<5>チャレンジ精神で取組んでいる。

商品紹介:三ヶ日みかんハイボール、オフィスみかん、氷美柑(こおりみかん)
三ヶ日みかんハイボール

〇 早和果樹園「味一しぼり」が機能性表示食品に認証

味一しぼ

(株)早和果樹園 秋竹新吾代表取締役会長は、みかん一筋54年、バラ色の人生ならぬ、みかん色の人生で、みかんの大産地におけるリ−ディングカンパニ−として地域活性化に貢献している。
マルドリ方式やICTなどの先端技術を駆使し、こだわりの有田みかんを、生産・加工・販売まで一貫して手掛け、全国並びに海外にも販路を展開している。
2016年12月28日付で、100%みかんジュース「味一しぼり(720ml)」が、骨粗しょう症の予防に効果的な機能性表示食品として認定され、和歌山県内初の機能性表示食品となった。
みかんの生産から加工・販売まで手がける「早和果樹園」(有田市)は、2016年12月28日付で、100%みかんジュース「味一しぼり(720ml)」が、骨粗しょう症の予防に効果的な機能性表示食品として認定された。
みかんの色素で、骨の代謝の働きを助けるカロテノイド成分「β−クリプトキサンチン」が、味一しぼり180mlあたり、1日に必要な3.0mgのβ−クリプトキサンチンが含まれていることが証明された。なお、和歌山県内初の機能性表示食品となった。
温州(うんしゅう)みかんのだいだい色の色素として多く含まれる「β−クリプトキサンチン」が、骨粗しょう症の予防などに有効なことから、これらを多く含む「味一しぼり」のみかんジュースが骨の健康維持に役立つと考え、2016年に国の研究機関に成分分析を依頼していた。
その結果、味一しぼり180mlの中に、1日に必要な3.0mgのβ−クリプトキサンチンが含まれていることが証明され、消費者庁に申請したところ、2016年12月28日に機能性表示食品として認証された。
100%ストレートジュースの機能性表示食品は味一しぼりが全国初と思われる。生の果実の消費が伸び悩むなか、加工商品の付加価値を健康志向と結びつけ、今後も機能性表示食品の販売と開発を強化する意欲を示している。

次回Part3は「ブランディングとプロモーションによる高付加価値化」

(2017.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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