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ホーム > レポート > 産業 > 付加価値を創造する新たな農業 Part3 ブランディングとプロモーションによる高付加価値化

付加価値を創造する新たな農業 Part3
   ブランディングとプロモーションによる高付加価値化

研究部長  藤本 幸久

V.ブランディングとプロモーション

安全・安心な商品であれば必ず売れるということではない。競争を勝ち抜くためには、しっかりとしたブランディングが必要である。

価値をよりアピールしブランドとして確立することが必要であり、積極的なプロモーションにより、認知度を高めていくことが重要である。

1 ポイントを捉えた販売チャンネルの開発
ア アグリビジネスにおけるマーケティング・ミックス(4P戦略と4C戦略)

商品の特性やターゲット顧客に応じて、販売チャネルの開発をすすめるにはマーケティング・ミックスという考え方が重要となる。

単に販路を拡大するのではなく、4P戦略と4C戦略をトータルで検討した上で判断しなければならない。

イ 商品の強みを活かした最適なチャネル(販売ルート)の設計

市場規模や競合の動向などを踏まえた上で、常に先を見据えたチャネル戦略(流通戦略)の構築が事業成功の鍵を握ると言っても過言ではない。

強みを発揮できる販売チャネルとなる最適な戦略を設計することが大切である。

販売農家戸数は、2015年では124万戸ですが、2010年に比べると17.3%の減少となっている。

出荷先の状況をみると、農協出荷が910,722経営体で2010年に比べ17.8%減少、卸売市場出荷137,090経営体で12.1%減少、小売店出荷104,684経営体で1.9%減少している。

一方、増加しているのは、食品製造業・外食産業への出荷34,944経営体で45.0%増加、なかでもインターネットによる販売が9,132経営体で95.8%と飛躍的に増加している。

農業経営体の農産物の出荷先の状況(全国、複数回答)
農業経営体の農産物の出荷先の状況(全国、複数回答)

2 4P戦略と4C戦略を展開することの必要性と重要性

消費者が目にするものは、製品、価格、POP・広告、店舗・販路などであり、具体的に商品の「差別化」を進め、消費者に直接「価値」(商品・サービス)を提供する4P戦略が重要である。

さらに、生産者視点の「4P」に加え、消費者視点の「4C」を考慮した販売戦略を展開することが必要である。

果物の摂取量は、生活様式や食生活の多様化、簡便化や低コスト化志向が進むなか横ばい傾向で推移し、特に20〜40歳代の摂取量が少なくなっている。

一方、若年層は簡便に食べられるカットフルーツ等の加工品を好むなど、コンビニエンスストアや駅の自動販売機等での購入機会が増加しているといった変化も見られることから、まさに「4C」活用が有効である。

よく見聞きするのは、商品を開発したものの売れない、売り先がない。どうしたら売れるのだろうかという話である。

販売を視野に入れた商品開発、それには売り場や競合を知ること、まさに差別化戦略が先決であり重要なのである。なお差別化の要素にも様々なものがあろうが、前述した機能性を意識しながら商品開発をすすめることも必要ではなかろうか。

さらに商品特性に加えて、最近特に魅せ方や売り方についても重要性が増していることから、パッケージやディスプレイ、販促ツール、パブリシティなどを効果的に組み合わせた販売戦略も大きなファクターとなっており、それらを有効に活用することが必要不可欠である。

6次産業化は農林水産物等の地域資源を活用した取組であることから、地域により多くの収益をもたらすように、当該地域資源の競争優位性を高めることが重要である。このためには,地域性を生かした地域ブランドを確立し、他との差別化をはかって競争力を向上させることも有効な方策の一つである。

いずれにしても、商品の差別化すなわち販売戦略の進め方が、6次産業化の成否を大きく左右することになるであろう。

VI.6次産業化のすすめ

1 6次産業化のタイプとフロー

6次産業化は、1次・2次・3次産業の連携によるバリューチェーンの構築による農林水産物・食品の付加価値の向上や、農林漁業者が加工や販売にノウハウを持つ2次・3次産業の事業者との連携等をはかりながら、生産・加工・販売(流通)を一体化してバリューチェーンを構築する取組であるとしている。

そもそも、6次産業化とは、次のとおり地域資源に付加価値を付けながら消費者・実需者に対し商品及びサービスを提供する取組である。

いずれにしても、6次産業化は、主として収穫後の2次、3次的事業活動において付加価値づくりを行いながら、消費者・実需者に商品並びにサービスを提供しようとする取組であると言える。

(農林水産政策研究所の6次産業化研究資料よる分類より)

付加価値化として、農業のブランド化、消費者への直接販売、農家レストランの経営などがあげられる。

「良いものを作れば売れるはず」といった生産者の視点だけで考えるのではなく、「誰に」対して、「何を」提供するのかといった事業コンセプトを考え、さらに「どのように」生産し、「どのように」加工し、「どのように」販売するのかといったストーリー性を持たせたビジネスモデルを考える必要がある。

6次産業化のフロー
6次産業化のフロー

2 生産・加工・販売における課題

農林水産省の6次産業化事業者対象調査によると、生産面では「需要に見合う生産量が確保できない」が40.9%、次いで「資材・燃料費用がかさむ」(37.5%)、「生産量が不安定で安定供給ができない」(36.4%)の順で、需要に即した生産物の安定供給とコスト低減が課題となっていることがわかる。

加工面では、「資材・燃料等の費用がかさむ」、「生産性が上がらない」が40.9%、次いで「加工技術・製造技術が習得できない」(34.1%)で、生産性の向上と加工技術等の習得が課題となっている。

販売面では、「広報宣伝・販売促進の費用がかさむ」が42.7%、次いで「販売先の開拓が進まない」(41.6%)、「営業手法・販売手法が習得できない」(32.6%)で、販路の開拓などの販売促進機能の強化が課題となっている。

(農林水産省の6次産業化事業者対象調査より)

3 商品開発と販路開拓の方向性

商品開発と販路開拓において先ず考えるべきところは、「誰に」「何を」「どのように」提供するか、買ってもらうかを分析することである。

一方的なコミュニケーションではなく、顧客の共感を作り出し、顧客自らが発見し、関わり合い、発信してもらう能動的な体験を促すことが求められている。

売り先を視野に入れた商品開発、それには売り場や競合品目を知ること、まさに差別化戦略が先決であり重要である。また、開発しようとする商品やサービスと競合するものがないか、消費者目線で事前に充分なる調査を行うことが必要である。

加えて、差別化は開発商品だけではなく、販売ルートやそれに伴うサービス提供などにおいても大切となる。

また、地域が持つ魅力や個性、歴史などの地域資源を6次産業化に活用する発想力が不可欠である。6次産業化は経済規模が小さくても、地域循環や地産地消、関連産業への波及効果などを考えると、長期にわたって安定的に多くの利益を地域にとどめることができる。

とりわけ、長期的視点に立ちながら消費形態の変化を踏まえ、経営資源の分析、商品開発、販売促進、顧客満足度などに対応できる取組が不可欠となっている。

農業の高付加価値化の方向性イメージ
農業の高付加価値化の方向性イメージ

4 果実の消費動向と課題

生鮮果実の消費数量は総じて減少傾向にあるものの、皮むき等の手間が要らないカットフルーツやドライフルーツ等の需要が伸びていることから、消費者ニーズに合った果実加工品の開発が課題となっている。

2014年の総務省の家計費調査によると、果物の購入数量は総じて減少傾向にあるが、ここ数年をみると多くの品目で下げ止まっている状況となっているとも言える。

なかでも、りんご、なし、かき、メロンがこれに該当する一方、みかん、スイカ、キウイフルーツはむしろ増加傾向となっている。

ただ、食べやすい果物の王様と言われているイチゴの購入数量は、なぜか減少気味の感がある。さらに、購入数量が最も多いバナナは減少傾向となっており、特にグレープフルーツは減少の一途をたどっている。

和歌山として期待をしたい桃は、残念ながら微減傾向となっている

1世帯当たり年間品目別購入量(二人以上の世帯) (単位:g)
1世帯当たり年間品目別購入量

1世帯当たり年間品目別購入量(二人以上の世帯) (単位:g)
1世帯当たり年間品目別購入量

5 カットフルーツの需要動向
(1)カットフルーツの取扱いに関する意識・意向調査結果

生鮮果実の家計消費量は減少傾向にあるものの、近年では多くのスーパーやコンビニエンス・ストア等で「カットフルーツ」が販売されている。

農林水産省の2014年に流通加工業者モニター(食品小売業)に対し実施した「カットフルーツの取扱いに関する意識・意向調査結果」によると、2〜3年前と比較して、「総じてやや増えたと思う」が53.1%と最も高く、次いで「総じてかなり増えたと思う」22.4%、「総じて変わらないと思う」22.4%、「総じてやや減ったと思う」2.0%の順であったことと併せ、カットフルーツは皮むき等の手間をかけずに食べることができるため、消費者の簡便化志向がすすむなかで果物消費量の増加につながることが期待できる。

カットフルーツの販売量の変化
(2014年の2〜3年前との比較)
(2014年農林水産省カットフルーツの取扱いに関する意識・意向調査より)
カットフルーツの販売量の変化

(2)カットフルーツの販売先

カットフルーツの販売先については、食品スーパーは、全般的に各店舗のバックヤードでのカット加工が基本となっていることから、カット加工業者への販売と同様に、カットフルーツ用の生鮮果実の販売が考えられます。

学校給食では副食としてのカットフルーツ採用の可能性があることと、子どもの頃から柿を食べることで将来にわたっての消費者になってもらう為にも有効と言えられることから、学校給食会にヒアリングを行ないました。

(3)生鮮果実と果実加工品の購入度合い

農林水産省の2016年7月「果樹をめぐる情勢」(生鮮果実と果実加工品の購入度合い)をみると、果実はどの年代も生鮮果実を主体に摂取され高年齢層ほど多く、果実加工品は特に20歳代で好まれていることから、果実の需要を掘り起こすため、消費者ニーズに合った果実加工品の開発が必要であると言える。

生鮮果実と果実加工品の購入度合い
生鮮果実と果実加工品の購入度合い

(4)柿が学校給食に採用された場合の試算

○ 前提条件 年間回数10・11月各1回都合2回

販売単価200円/s、200g/個、4切/個(50g/1切→10円/1切)

※ 学校給食のフルーツ想定コスト(1果実/1切程度/回)を、1切れ20円とした(原料柿10円、カット及び輸送コスト10円の都合20円)

和歌山県内及び全国の学校給食実施状況
和歌山県内及び全国の学校給食実施状況

  • フルーツ単品以外に、サラダの材料として、りんごの1/6か1/8カットが一部採用されている模様であり、サラダに柿採用の可能性もある。
  • 子どもの頃から柿を食すことで将来にわたっての消費者を期待することとしても、試算をしてみると予想外に利用数量、金額は少ない。
  • 学校給食は各フルーツの収穫シーズンに限定しており、冷凍冷蔵してまで年間通じて供給することはコストを含め適当ではない。
  • 原料柿価格以外に、カットすることにおけるコスト(選別、洗浄、剥皮、カット、殺菌、包装、脱酸素剤など)及び輸送コストなどが10円/1切れに抑えられるのかの判断も重要である。
6 果実の輸出とその課題
(1)輸出状況

農産物の輸出における物流パターン
農産物の輸出における物流パターン

農産物を輸出するには、輸出先国及び地域の市場調査、検疫条件対策、関税、通関費用、荷役料、流通費、販売手数料などが嵩むほか多くの課題があるものの、国内市場の縮小が予想されるなか、新たな市場の開拓による多様な販路が確保できること、生産過剰時における価格調整機能が期待できること、農業経営の安定化と地域経済の活性化が図れること等から、平成22年頃から輸出額が増加傾向にある。

ところが、輸出業者に対するヒアリングによると、和歌山県産みかんの直近の輸出状況としては若干増加してはいるものの、輸出数量と金額とも大きな変化はない模様である。

柿は輸出数量が増加してはいるが、単価ダウンにより輸出金額は微増となっている一方、桃については単価には大きな変化はないものの、輸出数量の増加により販売金額を大きく伸ばしている。

(2)輸出における課題

近年の海外市場の傾向としては、輸出先が、香港や台湾など東アジアの特定の地域に集中していること、韓国や中国などから安い農産物が大量に出回るようになったことで過当競争となっていること、さらに、海外市場でも、日本国内同様、日本の産地間での売場獲得競争が常態化していることなど厳しい状況となっていることから、これらの問題解決が喫緊の課題となっている。

ただ、ドライフルーツ市場が大きく日本食レストランが増加しているイギリスや、柿を食べる習慣のあるアメリカ西海岸は戦略次第では可能性があると言える。

とりわけ、東南アジア市場における干し柿は国内市場同様に40才代以下の消費量が少ないうえに、価格の安い中国産とのすみ分けを考える必要があることから、あくまでも輸出することが目的ではなく手段であって、産地が生き残るための6次産業化の一つの選択肢として捉えるべきと思われる。

(2018.4)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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