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香港レポート −日本産農産物の輸入国としての実情と今後のすがた−
  Part3 「調査結果から見えてくる新たな視点」

研究部長  藤本 幸久

6 市場価格調査

(1)フルーツ価格市場調査結果
香港のシティ・スーパー(City Super)のフルーツ売場
香港のシティ・スーパー(City Super)のフルーツ売場

(パッケージデザインと価格)

佐賀県温室みかん@182
佐賀県温室みかん@182
奈良県ハウス柿@634
奈良県ハウス柿@634
山梨県桃@1,722
山梨県桃@1,722
鳥取県二十世紀梨@1,162
鳥取県二十世紀梨@1,162
岡山県シャインマスカット@10,472
岡山県シャインマスカット@10,472
福岡県巨峰@1,162
福岡県巨峰@1,162

香港のシティ・スーパー(City Super)のフルーツ価格調査結果(2017年9月4日(月)調査)

※ 1個当たりの価格は、為替レートを1香港ドル(HK$)14円として計算

香港のシティ・スーパー(City Super)のフルーツ価格調査結果(2017年9月4日(月)調査)

○ 売場レイアウトとパッケージデザイン

最近特に魅せ方や売り方についても重要性が増していることから、パッケージやディスプレイ、販促ツール、パブリシティなどを効果的に組み合わせた販売戦略も大きなファクターとなっており、それらを有効に活用することが必要不可欠である。

○ フルーツのパッケージデザインと個別価格

販売しようとする商品やサービスと競合するものがないか、消費者目線で事前に充分なる調査を行うこと。加えて、差別化は商品開発だけではなく、販売ルートやそれに伴うサービス提供などにおいても大切ではなかろうか。

○ ポップ広告

農産物の特徴や産地の説明を、適切に現地の消費者に伝えることが、商品の差別化となって購買につながることとなる。

消費者の視点で考え、付加価値・優位性を明確にしながら、特徴や魅力をシンプルに、戦略的なフレーズを考慮しながら、積極的に着実に展開することが重要となっている。

(商品名・価格・キャッチコピー・説明文)

山形県産 桃@770

山形県産 桃@770
山形県産 桃@770
青森県産 りんご陸奥@868

青森県産 りんご陸奥@868
青森県産 りんご陸奥@868

おいしい物に目がない香港人だが、生活習慣の違いから思わぬ壁もある。エンゲル係数は日本と変わらないが、外食比率が非常に高く、住宅事情や共働きの多さもあって、あまり家庭で料理をしない人が多い。

この様な消費者にアピールできるポイントは、「おいしい、安心安全、そしていかに手間がかからない商品であるか」である。

ただし、「レンジでチン」というのは日本ではPRになるが、香港の家庭やオフィスにあるのは蒸し器であり、電子レンジが置いてあるとは限らない。

シティースーパーは香港人をターゲットにした香港企業であり1996年にスタートした。香港では4店舗を展開し上海にも出店している。

来店客の8割が香港人だが世界各国の商品が並んでいる。取扱食品の割合は日本3割、欧米3割、アジアその他が4割という割合であり、このバランスを変えないことをお店づくりのポリシーとしているということである。

日本の食品を買いに行くお店ではなく、日本の食品も買えるお店としての独自の立ち位置とブランドを維持している。まさに世界中の品質の高いものが購入できるスーパーなのである。

○ フルーツ売場入口と魅せるディスプレイ

パッケージやディスプレイなど、魅せ方や売り方の重要性が高まっている。

(2)香港のビール事情

香港はまさに多様な文化が交錯する都市であり、セブンイレブンで売られているビールにおいても、青島(中国)、サンミゲル(フィリピン)、タイガー(シンガポール)、バドワイザー(アメリカ)、ギネス(アイルランド)、クローネンブルグ(フランス)など世界各国のビールがズラリと並んでいる。

価格は350ml缶が5ドル〜10ドル(70〜140円)程度。6缶入りパックでも20〜35ドル(280〜490円)ほどと激安である。(1香港ドルは14円で計算)

缶コーラや、ペットボトルのミネラルウォーターが7〜8ドル(約98円〜112円)するため、アルコール度数30%以下の酒は非課税となっているとはいえ、ビールは水やジュースより安いといえる。

スーパーで買えるビールランキングベスト8(価格は2014年8月時点、wellcome調べ)

5月から10月まで連日30度を超える真夏日が続き、まさにビール日和といえるが、不思議と日本のような「夏といえばビール!」という雰囲気ではない。檸檬茶やコーラのほうが好きなのかと思われる。

特に女性は、体を冷やす食べ物や飲み物を避ける傾向があり、暑いからといってビールなど冷たい飲み物を多く飲むという習慣はないようである。ただし、何故かエアコンの温度設定が18度になっており少し寒く感じられる。

個人差はあろうが、1週間でビールを飲む回数はおよそ1回以下の模様である。

日本では食事をしながらビールやお酒を飲むことはごくあたりまえの光景だが、香港では酒楼(しゅろう)「中華レストラン」などでの食事や宴席を除き、飲酒と食事は別々に行なう傾向がある。

ビールを飲む場所といえば「バー」であり、ランカイフォンや湾仔など繁華街には、世界各地のビールを提供する店が集まっている。オープンスタイルの店が多く、夕方になると軒先にはビールを片手に談笑する西洋人の数が増えて活気にあふれる。

16時頃から21時頃までは飲物が半額近くになるハッピーアワーとなり、この時間帯に行くとビールがBuy 1 Get 1 Free(2杯目が無料)になるなどお得感がある。

(3)調査結果から見えてくる新たな視点

香港はイギリスの植民地時代が長かったことなどにより、他国の食文化の受入れが比較的寛容であり、中華圏だけでなく世界中から様々な料理や食材を幅広く受け入れてきた歴史があることから、一般的に香港人の食に対する嗜好や習慣として次の点が考えられる。

  • 間食の習慣があり、1日5食をとる人が多い。
  • 価格には厳しいが、本当に良い物には出費を惜しまない。
  • 目新しい食品への興味が高く、試食、試飲などのつまみ食い大好き。
  • 夫婦共働き家庭が多く、外食、テイクアウトが中心となり、料理をあまりしない。

今回の調査結果では、まさに日本産農産物の市場価格が高価格であることを物語っていると言える。いくら富裕層を対象としているとはいうものの、関税障壁や非関税障壁が少ないにも関わらず輸出コストが積みあがり過ぎて高価格になっているのではなかろうか。

輸出コストには、輸出先の店頭に並ぶまでの腐敗や減耗などのロスはもちろんのこと、梱包料、輸送運賃(日本国内・国際・現地国内)、荷役料、関税、通関・検査・検疫手数料、保険料などが加算されるとともに、さらに流通マージンが上乗せされることとなる。

ついては、生産コストの引き下げ努力はもちろんのこと、流通コスト、流通マージンなどの引き下げをはかる一段の取組みと新たな仕組み(システム)づくりが必要であると考える。

和歌山県並びにJAグループ和歌山とりわけJA紀北かわかみでは、2018年産の柿をオーストラリアに向けて初めて輸出することとした。

日本とは季節が逆になるため、オーストラリア産やニュージーランド産が途絶える11から12月を狙っての輸出となる。

これまでは東南アジア向けの輸出が中心であったが、昨年2017年産の柿が初めて輸出されたアメリカ向けも今年は大幅に増加する見通しである。

日本産農産物は、「安心・安全・おいしい」を前面に、高級スーパーや日本食料理店において、販売促進フェア等が行われることが多い。

こうした店舗におけるフェアは、香港在住の日本人のほか、ある程度の収入があり、多少高価であっても日本産農産物や本物の和食を求める香港人や欧米人をメインターゲットとして実施されている。

また、こうした店舗やその納入業者には、日本人のバイヤーが勤務していることが多く、輸出側にとって取引をすすめやすいという点も、フェアが行われる理由の一つであろう。

しかしながら、香港は人口規模や生活費などの面から見ると、市場としてはそれほど大きいものではない。すなわち、香港は市場への参入条件的には、植物検疫などの規制の少なさなどのメリットがあるものの、規模の面では販売を拡大するには限界があると言える。

多くの日本産農産物フェアが行われ、また販売されている高級スーパーなどでは、これから先、競合する産地や店舗が増え、値下げ競争や補助金競争などの体力勝負に陥るおそれが大きいと想定される。

事実、これまで主に高級スーパーでのみ販売されていた日本産農産物が、数は少ないものの、「街市(小売店舗が多数入居した半屋外市場)」で販売され始めており、おのずと価格は高級スーパーより安く、場合によっては半額で販売されていることもある模様である。

高級スーパーに日本産農産物を納めている現地の輸入業者によると、現時点では自社の販売に影響を受けている状況では無いとしながらも、一方で、安い価格で販売され始めたことよりも、街市で販売され始めたことの方が問題であり、街市で購入できるものをわざわざ高い金額を支払ってまで高級スーパーで買うだろうか、とのことであった。

街市(ガイシー)「市場」

普通の団地内にあった「街市」
普通の団地内にあった「街市」
東涌(とうちょう)の新しい「香港街市」
東涌(とうちょう)の新しい「香港街市」

香港でも日本と同じようにあちこちにスーパーマーケットがあるが、昔ながらの買い物風景といえば「街市(ガイシー)」である。香港の各エリアに必ずある市場で、肉、魚、卵、野菜、果物などの食材から、生活雑貨までが売られている。

かつては路上に並ぶ市場であったが、衛生面の問題から政府の管理のもとビルに集約されるようになったとのことである。

一般消費者はもちろんプロの料理人も足を運ぶなど、目利きがよく新鮮でよりお値打ち品を探しに来るだけに、コストパフォーマンスの優れたものが手に入る。

ここ数年、香港独特のレトロなアイテムを取り入れたレストランやショップが増え、香港人の生活にはなくてはならない街市(Fresh Market/市場)にまで、アミューズメントパークのようなレトロデザイン・マーケット「香港街市」が登場した。

ごくごく普通の香港の団地内にできた「香港街市」だが、デザインの面白さだけではなく衛生面も向上し、街市初心者でも安心して楽しめる場所となっている。

7 香港を通じ日本の食を世界展開

日本農業発展のためには、急速な成長を遂げる中国市場と東南アジア市場への積極的なアプローチが重要課題となるであろう。

中国は、動植物検疫や放射線物質規制などの輸入規制が多いものの、訪日旅行客には安心・安全・高品質など日本産品の評価が高く、日本食・日本食材に人気がある。

現在、大きなマーケットである中国市場に対して輸出可能な農産物は、加工品のなかでも「精米」、生果実では「りんご」と「なし」のみとなっている。

一方、香港を経由して中国本土に日本産農産物及びその加工品の相当量が流入していることなど日本食品の確実な需要があることから、香港に今後も発展性があるのは間違いないようだが、香港から「世界」へ飛躍するにはどういう仕組みがあるのだろうか。

香港は人口が約700万人で、マーケットとしては大きくないように思われるが、年間のべ4,100万人の来訪者があり、食料自給率1〜2%程度であるうえ、関税障壁や非関税障壁が少ないことから、世界中からの食品が集結している。加えて、香港の人々が1日に5回食事をするといわれる「食い倒れ」の街でもある。

毎年香港で開かれているアジア最大級の食品展示会「フード・エキスポ」は、2011年度実績で来場者総数38万人、うちバイヤーが世界各国から1.3万人を記録し、日本からの出展者数は過去最大の162社・団体であった。

2012年度からは、日本が「フード・エキスポ」のパートナー国に選ばれており、各種サイド・プログラムが充実、大々的な日本食品プロモーションが展開されている。

ジャパンパビリオン 統一デザイン(イメージ)2016年〜
ジャパンパビリオン 統一デザイン(イメージ)2016年〜

(1)香港市場の魅力を活用

香港市場の魅力としては、以下の4つがあげられる。

  1. 自由貿易制度 資本・情報の流れが活発、物流・金融ハブとしての機能を有する。
  2. 地理的優位性 アジアのハブ、アジアの主要都市まで4時間以内であること。
  3. 税制 一部物品税を除き関税が無いうえ、税制及び法制度が整備されている。
  4. 中国への玄関口 中国政府と包括的経済連携協定(CEPA)を結んだ都市である。
(2)世界の華僑のトレンドを作る香港の活用

香港の名物でもある高級店のチャーシューは、『てかり』を日本の味醂で出しているといわれており、世界中の中華レストランにも広まっている。これはメーカー主導で売り込んだわけではなく、香港のシェフが独自に開発した方法である。また、日本の豚骨ラーメンのスープの素を、小籠包のあんに加えたりしている。そうすると肉汁がとてもジューシーでおいしくなるとのことである。(香港貿易発展局(HKTDC)大阪事務所長伊東正裕氏談より)

香港には、才能豊かでアイデアのセンスを持ったシェフが多く、本来の用途とは別のうまい利用法を独自に工夫・開発し、華僑のネットワークを通じて世界に広まって行くという効能が香港にはあるように思える。

(3)国際的な酒類流通ハブとなった香港の活用

香港では2008年に、それまで80%だった酒税が完全撤廃(葡萄酒とアルコール度数30%以下の酒類)され、2011年にはワインオークションの成約金額で、ニューヨークを抜いて世界第1位となった。

国際的な「酒類流通ハブ」となった香港において、いま日本酒が注目されている。

酒税低減措置が発効してから、香港の高級スーパーなどで日本酒が売れるようになった。

主に、香港の若者や、中国人が買って帰るとのことだが、香港では日本食レストランが1,300軒以上もあり、日本食が浸透しているのに、いままでは酒税が高かったため、日本酒はあまり広まっていなかった。

酒税撤廃で価格が安くなったのをきっかけに、今までは日本酒は熱燗で飲むというイメージしかなかったのが、冷酒のような飲み方もあることが知られるようになり、日本食レストランでもよく注文されるようになったようである。

国際的な酒類流通ハブとなった香港で認められるならば、日本の酒やワインが香港を通じて、中国をはじめ、世界で認められるようになる可能性は十分に考えられる。

(4)食文化・食産業のグローバル展開

現在、香港が輸入している食品の約3割は世界に向けて再輸出されており、そのうちの6割が中国本土向けだとされているものの、実態は公式見解よりはるかに多いといわれている。

すなわち、日本の食品にとって香港は、世界並びに中国富裕層に向けての重要な足がかりの一つと言えるのではないだろうか。

また、日本産品の輸出に当たっては、世界で高く評価されている日本食文化と併せて日本産品を世界に発信することで、日本産品の海外における需要を広げることが重要であろう。

まさに、Made FROM Japan(世界の料理界で日本食材の活用)と Made BY Japan(日本の食文化・食産業の海外展開)並びに Made IN Japan(日本の農林水産物・食品の輸出)の三点セットでのグローバル展開が重要である。

食文化・食産業のグローバル展開(農林水産省HPより)


(参考文献)

  • 香港経済貿易代表部公式サイト 香港の基本情報
  • 外務省 香港−Ministry of Foreign Affairs of Japan
  • 在香港日本国総領事館・経済班 香港・マカオ経済概観2014年6月
  • 香港ポスト「香港を通じて日本の食を世界に売る」大阪事務所長伊東正裕氏談
  • 農林水産省 農林水産業の輸出力強化戦略2016年5月20日公表
  • 農林水産省 香港における青果物流通実態調査報告書(2017年3月)
  • 農林水産省 平成23年度国別戦略的マーケティング事業調査報告書2012年3月
  • 農林水産省 平成22年度農林水産物・食品輸出オリエンテーションの会 事前ガイダンス
  • ジェトロ調査レポート 2016年度「輸出環境調査(果物)(韓国・香港)」(2017年3月)
  • ジェトロ調査レポート 農林水産物・食品関連企業への輸出に関するアンケート調査17.2
  • ジェトロ調査レポート 米国・香港における日本産食品の競合実態調査(2016年3月)
  • ジェトロ調査レポート 香港における日本産食品の試験販売・アンケート調査2016年3月
  • ジェトロ調査レポート 【香港】農水産物輸出は「産直」で(2016年1月)
  • ジェトロ農林水産・食品部 香港・台湾食品市場の概況(2014年1月)
  • 農林中央金庫香港駐在事務所 香港市場に見る日本農林水産物の実力2009年8月
  • 農林中央金庫 輸出の芽(香港編vol.1)2016年4月
  • 農林中金総合研究所 農産物輸出の実態と今後の展望2014年2月
  • 自治体国際化協会 日本食品を海外に売り込め(自治体国際化フォーラム2014.4)
  • 大分銀行香港駐在員事務所 香港の概況2017年6月
  • 西日本シティ銀行香港事務所 香港における日本食品の販路拡大について2009年3月
  • FFG調査月報2009年10月 香港への食品輸出と販売戦略

(2019.4)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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