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ブドウ栽培とワイナリーによる地域活性化のすすめ
    Part2 課題解決策としてのワイン特区の活用

前・研究部長  藤本 幸久

III 課題解決策としてのワイン特区の活用

1 構造改革特別区域法(特区法)による果実酒製造(ワイン特区)

果実酒の法定製造数量年間6klが1/3の2klに緩和されるのがワイン特区であるが、それは次のように大きく2つに分類される。

1つは、最低醸造量を緩和したタイプ。もう1つは通称ハウスワイン特区といわれる民宿型のワイン特区である。
(1)特区法における果実酒の製造免許概要

酒税法の特例により、特区内において、地方公共団体の長がその地域の特産物として指定した果実を原料として果実酒を製造しようとする場合には次のようになる。

酒税法第7条第2項「最低製造数量基準(年間6kl)」の規定は、特区を活用すると1/3の2klに緩和されることになり、年間6klを生産する場合よりも設備投資などが軽減できることとなる。

一方、民宿型のワイン特区では、民宿や旅館、レストランを経営している人が、お客様に対してのみ、自分で醸造したワインを提供できるかたちのものである。

ただし、来店、宿泊される方々への提供が原則で、醸造量緩和型免許のように不特定多数の方に販売することはできない。醸造量も自動的に制限され、提供するワインは、その場でしか味わえない。

いずれにしても、ワイン造りにおいて最初のハードルである製造免許を取得する難関をクリアするには、ワイン特区を活用するのは有効といえる。

構造改革特別区域法(特区法)による果実酒の製造免許

特区法によると果実酒の製造免許については、次の2タイプ
いわゆる最低醸造量緩和タイプと民宿型ワイン特区に分類される。

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(2)和歌山県内における酒税法の特例措置の認定状況一覧(特産酒類、特定酒類)

以下に、みなべ町、田辺市、有田市、上富田町、岩出市の特区申請状況について記述することとする。

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(3)和歌山県内の特区申請と酒造免許取得及び販売状況

果実酒製造免許取得において、最低製造数量基準年間6kl規定に代わって、これより緩い1/3の2klに基準が緩和される「構造改革特別区域計画認定申請」のすすめ方の現状とこれにかかる酒造免許取得状況は次のとおりである。

なお、平成29年5月までの和歌山県内の認定状況は、「特産酒類の製造事業」4件、「特定農業者による特定酒類の製造事業」1件となっていることから、なかでも、特産酒類の「有田市地域資源果実酒・リキュール特区」と特定酒類の「いわで根来寺どぶろく特区」に関し、次に概要を示すこととする。

ア 有田市地域資源果実酒・リキュール特区(平成22年6月30認定)

有田市経営企画課の南村氏に対する電話でのヒアリング内容は次のとおりである。

平成22年に花野食品(花野雅司代表)から依頼のあったリキュール特区に関し、有田市役所が「特産酒類の製造事業特区」を申請し認定されたものの、原料の一部が地元産でなかったことから、特区認定のリキュールの販売が出来ていない状況である。
ただ、特区認定のリキュールは諦め、現在は通常のリキュール(仮免許の毎年更新、すなわち1年間に製造しようとする見込数量が6kl以上)を販売しているとのことである。

花野食品(和歌山県産カタログHPより)

代  表 花野雅司
住  所 有田市糸我町西498-6
電話番号 0737-88-6098
工  場 有田市糸我町西485-1
売 上 高 平成27年度71000万円
主な商品 果実酒、果実酢、調味料(プレミア和歌山)
醸造製品 蜜柑王国みかんの酒 有田みかんのアイスなワイン みかんワイン「祭きぶん」 
みかんワイン「みかん王国」 みかんシュワッ酒(スパークリングワイン)
紀州みかん酢 食酢
従業員数 平成27年度9名

なお、花野食品では、昭和47年に全酒類小売免許取得、59年に全酒類販売免許取得、平成6年に果実酒醸造免許を取得しワイナリー併設、平成7年にみかんワイン「祭きぶん」を発売、平成8年にみかんワイン「みかん王国」発売、平成22年にみかんシュワッ酒(スパークリングワイン)をそれぞれ発売し、現在イオンモール和歌山等で販売している。

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イ いわで根来寺どぶろく特区(平成26年11月28日認定)

岩出市役所産業観光課の高砂氏によると、平成26年に、岩出市商工会会員の(株)紀ノ圀フーズ(林定男社長)からの要望に基づき、岩出市役所が「特定酒類の製造事業特区」を申請し認定されたものの、設備要件不備のため、未だ「どぶろく」の販売には至っていない。

なお、設備要件不備とは、保管設備等の能力不足を国税庁から指摘されたことから改修をすすめており、改めて申請を行う模様である。

(1) 古民家カフェレストランねごろ初花

農家レストラン等(申請書)
2015年3月オープン 岩出市根来東谷2185
100年以上の歴史ある建物は雰囲気満点
四季折々の素材を生かしたお料理をご賞味あれ

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(2) 株式会社紀ノ國フーズ(和歌山県産カタログHPより)

代表者 林 定男
電 話 0736-63-5289
所在地 岩出市西国分635-1
工 場 岩出市畑毛72番地
売上高 20,000万円
(4)ワイン特区申請と果実酒製造免許取得

「構造改革特別区域計画認定申請」(ワイン特区申請)をすすめるにあたり、県内の認定状況と現状確認及び内閣府地方創生推進事務局等に対するヒアリングから得た注意すべき事項を、次に記述することとする。

基本的に、提出書類に不備がなかった場合でも、酒造免許が申請から4か月、酒販免許は2か月程度の期間を要することから、早めに周到に申請をすすめることが必要である。

ア 特区申請と酒造免許取得における注意事項(内閣府地方創生推進事務局ヒアリングより)

(1) 地域の特産物とは

特産酒類の製造事業(最低醸造量緩和タイプ)の特区申請にかかる「地域の特産物」とは、作付面積、生産数量、販売金額などの特別な条件はなく、あくまでも「地方公共団体の長がその地域の特産品として指定すること」となっている。
なお、「○○○○○のブドウ」については、「中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律」第4条第1項に基づき、地域資源に指定されていることから、手続きはすすめやすいものと思われる。
ただ、酒税法の特例措置の認定状況をみると、「特産酒類の製造事業特区」申請にあたり、少なくとも特区を活用したいという事業体の存在が必要となるであろう。

(2) 不特定多数への販売の如何

「特定農業者による特定酒類の製造事業(民宿型ワイン特区)」において、「ワイン」は不特定多数の方に販売できないが、「どぶろく」は販売可能である。

すなわち、食事とワインを飲用した方に対するワイン販売については、酒類販売業免許があったとしても不可である。

(3) 場所的要件・技術的要件・設備要件

特区申請もさることながら、とりわけ国税庁の酒税法上の要件である場所的要件と設備要件が重要である。

(4) 地消地産

原材料は全て地元産(地域で生産された原材料使用)であることが、特区の必要要件となっている。

以下は花野食品等よりヒアリングした。

(5) 果実酒製造免許取得時の課題

税務署は、申請者の法律の遵守状況や経営の基礎状況、製造技術能力、製造設備の状況などのほか、製造免許を受けた後1年間の製造見込数量が一定の数量に達しているかどうか(最低製造数量基準)を審査し、これらの要件を満たさなければ製造免許が付与されないとなっている。

なかでも、「事業目論見書(事業の概要・収支の見込・所要資金の額及び調達方法)」の事業概要(事業計画)が重要視される。

例えば、販売先の販売計画文書まで添付提出が必要とのことである。

(6) 免許期限の延長時の課題

国税局の行う品質審査など一定の要件を満たしている場合には、1年間免許期限が延長されるとなっているが、少なくとも初年度含め最低でも2年間は年間6kl以上の計画達成が必要とのことである。

ただ、それ以降は年間2kl程度でも審査は厳しいものの免許期限の延長は可能な模様であった。

(7) トレーサビリティと在庫管理の重要性

当然のことながら、原料の仕入から製造工程等での品質管理並びに、原料と仕掛品及び製品等の在庫管理などの徹底が要求されるとのことであった。

(8) 特区申請(特産酒類の製造事業)にかかる計画書の提出

首長が、「地域資源」であるブドウを「地域の特産物」として指定し、「構造改革特別区域計画認定申請(ワイン特区申請)」を、内閣府地方創生推進事務局に提出を行う。

構造改革特別区域計画書内容(○○○○地域資源果実酒・リキュール特区)
  • 構造改革特別区域の特性(地勢と気候、人口、産業、規制の特例措置を講じる必要性)
  • 構造改革特別区域計画の意義
  • 構造改革特別区域計画の目標
  • 構造改革特別区域計画の実施が構造改革特別区域に及ぼす経済的社会的効果
  • 特定事業の名称(709特産酒類の製造事業)
  • 構造改革特別区域において実施し又はその実施を促進しようとする特定事業に関連する事業その他の構造改革特別区域計画の実施に関し地方公共団体が必要と認める事項
2 酒類の販売業免許(国税庁、酒税法第9条等)
酒類の販売業をしようとする場合は、酒税法に基づき、販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長から販売業免許を受ける必要がある。

ただし、酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場で飲用に供する業を行う場合には、販売業免許は必要ない。

なお、酒類の販売業免許は、酒類の販売先によって次の2つに区分される。

(1)酒類小売業免許

消費者、料飲店営業者(酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場において飲用に供する業を行う営業者)又は菓子等製造業者(酒類を菓子、パン、漬物等の製造用の原料として使用する営業者)に対して酒類を継続的に販売することが認められる免許である。

酒類の購入者に、対面や手渡しで販売するための免許で、店舗を構えて商品を陳列し、来訪客に販売する販売形態には、この免許が必要である。

なお、店舗で酒類を受注した後、直接、倉庫業者や製造元様に配送の指示をして購入者に配送することも可能である。

・一般酒類小売業免許
酒類の購入者に、対面や手渡しで販売するための免許である。

店舗を構えて商品を陳列し、来訪客に販売する販売形態には、この免許が必要である。

さらに、一般酒類小売業免許と併せて、通信販売酒類小売業免許を取得することで拡販がより可能となる。いわゆる、ソーシャルメディアなかでもSNS(LINE、Instagram、Twitter、Facebook等)が新規顧客獲得及びリピーターの拡大に活用可能であろう。

(2)酒類卸売業免許

酒類販売業者又は酒類製造者に対し酒類を継続的に販売することが認められる免許である。

なお、卸売業免許だけを取得しても、小売業免許が含まれるわけではなく、一般消費者や飲食店には販売できない。

・洋酒卸売業免許
酒類の販売業者や製造場に対して、いわゆる洋酒を卸売りできる免許である。

すでに年間取扱見込数量による制限は、撤廃されている。

なお、洋酒の品目としては、果実酒、甘味果実酒、ウイスキー、ブランデー、発泡酒、その他醸造酒、スピリッツ、リキュール、粉末酒、雑酒であり、国産酒か輸入酒かは問わない。

(2019.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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