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ブドウ栽培とワイナリーによる地域活性化のすすめ
    Part3 ワインづくりにおける戦略的視点と課題

前・研究部長  藤本 幸久

IV ワインづくりにおける戦略的視点と課題

1 ワインづくりにおける戦略的視点と課題

6次産業化は農林水産物等の地域資源を活用した取り組みであることから、地域により多くの収益をもたらせるように、地域資源の競争優位性を高めることが重要である。

(1)ブランディングとプロモーション

地域での産学金官の連携体制を取りながら、ワインづくりによる地域性を生かした地域ブランドを確立することで、他との差別化をはかり競争力を向上させることが有効な方策の一つであると思われる。

まさに、安全・安心な商品であれば必ず売れるということではなく、競争を勝ち抜くために、しっかりとしたブランディングとプロモーションを強化することが重要と言える。

ネーミング(例)“高野山麓天(コウヤサンロクアマ)のワイン” “アマノ・ヌーヴォ”

ブランディングとプロモーションの視点及びコンセプト

ブランディングとプロモーションの視点及びコンセプト

とりわけ、価値をよりアピールしブランドとして確立することが必要であり、前表の4つの視点「消費者の視点で考える」、「付加価値と優位性を明確に」、「特徴や魅力をシンプルに」、「戦略的なプロモーション」を考慮しながら、なかでも「戦略的なプロモーション」を積極的に着実に展開することにより、認知度を高めていくことが重要となってくる。

次に、マーケティングの「4P」による販売戦略並びに、生産者視点「4P」と消費者視点「4C」の融合による差別化戦略を図式化してみることとする。

マーケティングの「4P」による販売戦略

マーケティングの「4P」による販売戦略

生産者視点「4P」と消費者視点「4C」の融合による差別化戦略

生産者視点「4P」と消費者視点「4C」の融合による差別化戦略

まさに、他と明確に差別化できる個性(イメージ・信頼感・機能性など)をつくりあげ、消費者との信頼関係を深めることによって、ブランドの訴求力が向上し、競合相手に対して優位に立つことができる。

さらに、差別化の要素にも様々なものがあろうが、機能性を意識しながら商品開発をすすめることも必要ではなかろうか。

例えば、ブドウの機能性としてはポリフェノールが有効であると考えられる。

ブドウの皮には、ポリフェノールの一種である「アントシアニン」や「レスベラトロール」が含まれ、眼精疲労や活性酸素を除去する効果、また、悪玉コレステロールの発生を防ぎ血液を綺麗にする働きがあるとされ、動脈硬化やがん予防に役立つと言われている。

(2)ストーリー・マーケティング

ストーリー・マーケティングとは、商品やサービスなどに対して、そのものの性能や機能における優位性や価値を訴えるだけではなく、コト消費やイメージといった情緒的な付加価値を訴求することで共感を生み出そうとするマーケティング手法のことである。

多くの消費者は、既にたくさんのことを体験しており、単に商品が優れているから、また、価格が安いからといった理由だけで購買行動が喚起されなくなってきている。

だから、ストーリーへの共感により需要を創造することが期待されていると言える。

ついては、基本となる「商品ストーリーづくりの流れ」と「商品ストーリーの類型」の概要を述べることとする。

ア 商品ストーリーづくりの流れ

開発商品が決定したあとの、商品ストーリーづくりの手順は次のとおりである。

商品ストーリーづくりの手順

(1) 生産者のこだわり
商品の魅力、優れている点、原材料の希少価値、栽培方法など、生産者のこだわりを列挙してみる。

(2) 購入してくれるターゲット
どのような人たちが購入してくれるのだろうか。また購入してほしいのか。購入ターゲット層を想定してみる。

(3) 消費者に伝えたいストーリー
生産者の言葉で伝えたいストーリーを書いてみる。これがまさに商品ストーリーとなるのである。

イ 商品ストーリーの類型

以下は商品ストーリー構成のための基本類型であるが、訴求内容を組み合わせて商品ストーリーを構成することも有効であろう。

商品ストーリー構成のための基本類型

商品ストーリー構成のための基本類型

(J-Net21のHPより)

画期的な商品ストーリーが消費者の心を打つように、大根一本にもストーリーは必要で、味はストーリーがあるとおいしく感じられる。

まさに、高級なワインは世の中に選びきれないほどたくさんあるが、その中で売れるワインとは何なのだろうか。それはやはりストーリー性を持った商品ということになるであろう。

ストーリー・マーケティングは、開発秘話、商品の素材に対するこだわり、サービスを利用して得られる恩恵のことであり、良いストーリーづくりに大切な条件が2つある。

1つは、共感が得られることであり、もう1つは、商品やサービスの魅力が伝わることである。

その結果、マーケティングにストーリーを取り入れることにおいて、次の3つのメリット並びに効果が期待できると思われる。

  1. 商品の差別化ができる。
  2. 消費者の共感を生み、感情を動かし易くなる。
  3. メッセージが記憶に残り易い。

商品やサービスの裏側にあるストーリーに同じものはなく、それぞれが唯一無二のものであると認識することが何よりも大事なことである。

ストーリーの魅力を伝えることができれば、全く同じ商品やサービスであったとしても、競合商品とは全く違う価値を生み出すことが可能となるのである。

(3)販売戦略

よく見聞きするのは、商品を開発したものの売れない、売り先がない。どうしたら売れるのだろうかという話である。

販売を視野に入れた商品開発、それには売り場や競合を知ること、まさに差別化戦略が先決であり重要なのである。

消費者の視点で考えながら、付加価値と優位性を明確にし、特徴や魅力をシンプルに表現しながら、どのような経路や手段で消費者に届けるか戦略的なプロモーションを展開することが大切である。

ア レストラン等飲食店での飲用と販売

地域の飲食店や旅館等の宿泊施設と協力し、ワインを通して顧客の拡大をすすめる。

ただし、レストランでのワイン提供については保健所の営業許可、ワインの販売については所轄税務署長の酒類販売業免許の、それぞれ申請と許可が必要となる。

なお販売免許を取る条件に場所的要件(酒税法第10条)があり、飲食店や酒場は酒類を販売する場所として不適当とされており、酒類販売業免許を受けるのは難しいと思われる。

イ 農産物直売所

最近、特に見せ方や売り方についても重要性が増していることから、パッケージやディスプレイ、販促ツール、パブリシティなどを効果的に組み合わせた販売戦略も大きなファクターとなっており、それらを有効に活用することが必要不可欠である。

ウ ワインツーリズム

ワイナリー見学ツアー客への販売、ワイナリーの有料会員に対する販売等をはかる。

エ インターネット販売

差別化戦略は、開発商品だけではなく、販売ルートやそれに伴うサービス提供などにおいても大切ではなかろうか。

2 事業実施体制確立とワイナリーの考え方
(1)生産プロセス

地域の農業者とともに苗木生産や栽培技術を共有し、地域と連携したブドウ栽培とワイナリー経営をすすめる必要がある。

ア ワイン製造の構図

生産性の向上を図るためには、生産計画(商品戦略)の樹立と生産プロセスの構築及び販売戦略の確立が最重要解題となっている。

ワイン製造の構図

ワイン製造の構図

イ 事業実施主体の体制(生産プロセス)

ワイナリーは自社工場とするか、委託製造(醸造)とするかの判断が必要である。

(1) 自社工場製造

自社工場製造プロセス

自社工場製造プロセス

(2) 委託製造(醸造)

委託製造プロセス

委託製造プロセス

(2)資金造成

わかやま中小企業元気ファンド、ものづくり補助金などを活用するのか。

(3)ワイナリー設置の考え方(収支計画)
ワイン特区を活用すると法定製造数量が1/3の2klに緩和され、年間6klを生産する場合よりも設備投資などが軽減できることから、検討に値するのではなかろうか。

ア 醸造工場建設の資金計画

醸造工場建設に関しては、販売数量の状況によるが、およそ数千万円から1億円程度になるのではなかろうか。

一方、その資金の造成方法としては以下の項目が考えられる。

@ わかやま中小企業元気ファンド

  • 新商品や新サービスの研究・開発や販路開拓等の資金に活用
  • 補助率は2/3以内
  • 対象経費は会議費・開発研究費・機械装置・工具器具費(研究開発費のみ)
  • 助成額は、1事業につき100万円以上600万円以内(地域資源活用分野 区分B)
  • 提出書類は、申請書・事業計画書・収支予算書・事業者概要

A ものづくり補助金

B 農業制度資金

C クラウドファンディング等

イ 委託製造(委託醸造)

  • 初桜酒造株式会社など酒造メーカーへの委託醸造の研究検討を行う。
  • 本社の醸造所内か、出先の新規醸造所なのか。
いずれにしても、自社醸造では醸造技術者の確保と併せて新規就労者等の受入れ体制を整える必要があることから、最初から自社工場建設ではなく、当面は委託醸造を行いながら実績の積み上げとブランドの確立をはかることで、拡大策の検討をすすめることが懸命ではなかろうか。

おわりに

地域が持つ魅力や個性、歴史などの価値を6次産業化に活用する発想力が不可欠である。

6次産業化は経済規模が小さくても、地域循環や地産地消、関連産業への波及効果などを考えると、長期安定的に多くの利益を地域にとどめることができる。

農業経営において6次産業化を実現するためには、高付加価値化を目指した生産と加工及び販売の一体的な取組や、新商品並びに新サービスの開発や販路拡大など、その経営発展の段階に応じた多様な取組が必要である。

開発しようとする商品やサービスと競合するものがないか、消費者目線で事前に充分なる調査を行うこと。

加えて、差別化は開発商品だけではなく、販売ルートやそれに伴うサービス提供などにおいても大切ではなかろうか。

顧客のことを知り、そのニーズを満たすことにより顧客を創り出すことが出来る。

一方的なコミュニケーションではなく、顧客の共感を作り出し、顧客自らが発見し、関わり合い、発信してもらう能動的な体験を促すことが求められている。

まさに、長期的視点に立ちながら消費形態の変化を踏まえ、経営資源の分析、商品開発、販売促進、顧客満足度などに対応できる取組が不可欠であろう。

参考文献

  • 和歌山県 構造改革特区・地域再生、地域再生計画一覧表
  • 和歌山県工業技術センターHP
  • 大阪府立環境農林水産総合研究所 ぶどうワインラボHP
  • 福井県 ふくいワインカレッジ
  • 農林水産省 2015年農林業センサス報告書
  • 内閣府地方創生推進事務局 構造改革特別区域計画認定申請マニュアル
  • 国税庁 酒類製造免許関係、酒のしおり
    日本ワイン表示ルールの周知パンフレット
    国内製造ワインの概況(平成28年度調査分)
    酒税法、酒税関係法令等の改正
    構造改革特区における製造免許の手引
    酒税法の特例措置の認定状況一覧
    免許申請の手引(販売業免許関係)
  • 日本ワイナリー協会 ワインの基礎知識
  • 酒類総合研究所 お酒のはなし
  • 日本経済新聞 日本ワイン3年後に施行、揺れる大阪ワイン10月に産地表示厳格化
  • 日本農業新聞 日本ワインイベント活況
  • 東洋経済 女性醸造家の渾身のワインに世界が驚嘆
  • サントリー ワインの基礎知識
  • ASAHI WINE.COM ワインを知る
  • キッコーマン マンズワイン
  • J-Net21 よくわかる地域ブランド食品づくりの基本
  • 志村葡萄研究所HP
  • カタシモワインフード株式会社HP
  • 花野食品HP
  • 古民家カフェレストランねごろ初花HP
  • 初桜酒造株式会社HP
  • 中野BC株式会社HP
  • 株式会社吉村秀雄商店HP
  • 松尾酒店HP

(2020.4)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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