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農業と学生をつなぐコーディネートの重要性

主任研究員  藤代 正樹

和歌山県でも農業就業人口が減少し後継者・担い手不足が問題となっている。農家の高齢化と耕作放棄地等の農業の現状を踏まえ、大学生の農村支援活動の取り組みを紹介し、今後の農家と学生の協働活動の方向性を考えたい。

1.和歌山県の農業就業人口と耕作放棄地の特徴

表1 農業就業人口と耕作放棄地の関連指標(和歌山県)

65歳以上の農業就業人口率を見ると、県計では48.0%と全国計54.5%を下回っているものの、新宮市の71.1%を最大に50%以上の市町村は17と半数を超えている。一方、耕作放棄地率を見ると、みなべ町の1.4%を最小に全国計9.7%を下回る市町村が7に対して、上回るのは21と多くなっている。

農業就業人口率と耕作放棄地率の関係を見ると、各数値の高低5市町村には両方含まれている市町村があるのに対して、一方の割合が高く(又は低い)、かつ他方の割合が低い(又は高い)という市町村はない。

全国農業会議所調査(2002年全国調査)によると、耕作放棄が増えている理由として、「高齢化・労働力不足」が水田・畑・樹園地とも第1位となっている。

このように農業従事者の高齢化が耕作放棄地の増加に大きく関係していることがわかる。

表2 農業産出額

和歌山県の農業の特徴は、果樹が農業算出額の6割を占めていることである。みかん、うめ等全国シェアで1位のものも多く、果実全体では全国2位となっている。しかし、果実の栽培は山の傾斜地で行われているものも多く、田のように機械化が進まず、高齢者にとってきつい農作業となっている。

表3 耕作放棄地面積(農業経営体の耕作別、非農家含まず)

耕作別に耕作放棄地割合(非農家含まず)を見ると、和歌山県では樹園地の割合が放棄地全体の6割と全国や近畿の割合と比べて約30ポイント高くなっている。果樹の生産量のシェアの高いことから放棄地割合も高くなっているが、高齢化・後継者不足もその一因になっているものと考えられる。県の売り物である果樹栽培の樹園地において耕作放棄地の動向は今後懸念されるところである。

2.大学生の農村支援活動

このような状況の下、農家の農作業を支援する体制づくりにむけて県の「学生参画地域づくり体制サポートモデル事業」が3地域で実施された。

@日高川町(9/2〜9/3旧中津村中津地区)
  • 参加学生数13人
  • 活動内容:野菜の藩種、米の有機栽培、不耕起栽培、林業等
A紀の川市(9/24〜9/25旧那賀町林ケ峰地区)
  • 参加学生数10人
  • 活動内容:柿の収穫、たまねぎの土作り、葉ボタンの葉かき等
  • ※この活動がきっかけで地域住民が学生に依頼し、地域で開催された青洲時代行列(10/12青洲まつり)に参加した。
B有田川町(9/28〜9/29旧清水町安諦地区)
  • 参加学生数13人
  • 活動内容:グランドカバーの手入れ、花木の作業等

<活動からの意見>

受入(農家)側
  • ・農業以外の幅広い交流に期待。
  • ・支援システムの確立。
  • ・継続性のある支援活動の実施。等
学生側
  • ・地域の人と触れ合うことが重要。
  • ・再度ボランティアに行きたい。
  • ・農業は誰かがやらないといけない。等

和歌山大学のアンケート調査(H20年)では「農業支援をする必要がある」と回答した学生は58.0%、一方、有田川町の住民アンケート調査(H20年)では「農業支援を希望する」が53.4%といずれも5割を超えている。この農家・学生の双方のニーズをマッチさせるシステム作りが必要である。

3.今後の農家と学生の協働活動の方向性

継続性のある支援活動を行っていくためには、農家と学生をつなぐコーディネートの役割が不可欠である。和歌山大学の同調査では、期待する農業支援組織としては「一般市民・NPO」(36.3%)、「複数大学による組織」(35.3%)「サークル」(23.0%)の順となっている。前述の3地域活動が効率よく実施できたのは、地域の方々のご協力に加え、和歌山大学経済学部、大西敏夫教授に学生の取りまとめから煩雑な大学事務処理まで担当して頂けたからである。大学(事務局)は学生派遣等の実施については、かなり制約があり簡単に事業を計画実行することができない。今後、支援活動の機動性を高め実効性のあるものとするためには、ある程度学生のフリーハンドに委ねられるところがあるべきである。そのためには、学生が主体性を持ち活動できるサークルやNPOなどが有力なコーディネート役をすべきものと考える。

学生と農家のコーディネートイメージ

農業は高齢化・担い手不足、販売価格・消費の低迷等厳しい環境に直面している。このような支援活動は単に一時期の収穫・耕作作業を手助けするだけではない。農家とのコミュニケーションを通じて、学生自身が農業・地域への現状認識を高め、愛着の醸成を図ることができる。将来、農業への就業、地域へのかかわり、移住等多面的な農業支援につながるとともに、さらには耕作放棄地の拡大防止についても効果が期待できる。

4.大学生の農村支援活動

日高川町
白菜の藩種
白菜の藩種
数少ない専業農家
数少ない専業農家
有機の田んぼ
有機の田んぼ
日高川町参加者
日高川町参加者
紀の川市
柿の収穫
柿の収穫
葉ぼたんの葉かき作業
葉ぼたんの葉かき作業
たまねぎの土作り
たまねぎの土作り
紀の川市参加者
紀の川市参加者
支援活動がきっかけで青洲まつりに参加
支援活動がきっかけで青洲まつりに参加
籠をかつぐ学生
籠をかつぐ学生
有田川町
グランドカバーの手入れ
グランドカバーの手入れ
多品種のグランドカバーが作られている
多品種のグランドカバーが作られている
ハウス内での作業
ハウス内での作業
栗もたくさん作られている
栗もたくさん作られている
有田川町参加者
有田川町参加者

(2010.1)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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