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人口減少社会における小売業の動向 その1 コンビニ編

主任研究員  藤代 正樹

はじめに

全国的に個人消費が低迷を続け、地方では人口減少が進み小売業へ与える影響は大きくなっています。厳しい状況にある小売業界のなかで拡大しているのがコンビニエンスストアと産地直売所です。人口減少社会におけるこの二つの小売業の動向を2回に分けて紹介します。

※以下略称表示、コンビニエンスストア(コンビニ)、セブンイレブン(セブン)、ファミリーマート(ファミマ)、デイリーヤマザキ(ヤマザキ)。

1.全国で成長するコンビニ

コンビニの店舗数・売上高はともに大きく増加し、店舗数は6万店、売上高は11兆円に届こうとしている。

全国コンビニ店舗数・売上高の推移
全国コンビニ店舗数・売上高の推移

出典:日本フランチャイズチェーン協会

注目されるのは、店舗・売上の増加に加えて、コンビニ機能の多様化である。弁当や飲み物は品揃えの充実を続け、サービス面ではATM・コピー機の設置、公共料金収納、チケット販売等を取り扱い、今では消費者にとって欠かせない生活インフラとして成長し、当たり前のように身近に存在している。CD・ATM設置台数はコンビニ系が約5万台と銀行等と比べて遜色はない。

業態別CD・ATM設置状況
業態別CD・ATM設置状況

出典:コンビニ以外は全国銀行協会2016年9月。コンビニは各社のHPより集計。

2.和歌山のコンビニも堅調

県内コンビニ店舗数は商業動態統計調査の都道府県集計が始まった2015年7月の328店から2017年9月には362店に増加(+10.4%)。販売額は、夏場に飲料・アイスクリーム等の夏物商材の売れ行きが好調なため増加する。販売額は各月とも前年同月比を上回る実績で推移しており県内の販売額、店舗数はともに堅調な推移を続けている。

コンビニエンスストア販売額・店舗数(和歌山県)
コンビニエンスストア販売額・店舗数(和歌山県)

出典:経済産業省「商業動態統計」

3.和歌山の百貨店・スーパー販売額は減少傾向

小売業の代表的な消費指標である百貨店・スーパー販売額は県人口の減少と同様に減少が続き、1998年−2016年を比較すると人口(1076千人→954千人、11.3%減少)、販売額(1521億円→1253億円、17.6%減少)となっている。コンビニ等小売り他業態への流出、インターネット通販の拡大等の影響もあろうが、人口減少(=消費者の減少)による消費縮小も影響しているものと考えられる。

百貨店・スーパー販売額と人口(和歌山県)
百貨店・スーパー販売額と人口(和歌山県)

出典:経済産業省「商業販売統計」「商業動態統計」、国勢調査、県人口調査より作成
参考:2014.3イオンモール和歌山オープン、2014.9スーパーセンターオークワセントラルシティ和歌山店オープン。

4.コンビニの県内販売額シェアは1/4、全国と同水準

減少傾向の百貨店・スーパー販売額であるが、県内小売業販売額における割合は47.4%(1,253億円、全国割合比+3.1%)と大きい。次いでコンビニ販売額の割合は24.9%(658億円)と1/4を占め、全国25.9%とほぼ同じ。県内でもコンビニの店舗数の増加とともに販売額の増加が見込め、今後この割合は高くなることが予想される。

小売業販売額の割合(2016年)
小売業販売額の割合(2016年)

小売業販売額の割合
小売業販売額の割合

出典:経済産業省「商業動態統計」

5.1店舗当たり販売額の比較

コンビニ1店舗当たりの販売額を比較すると、東京都>全国≒大阪府>和歌山県、で推移している。人口が集中する東京都での消費の強さが伺われる。ちなみに、2017年9月の1店舗当たり販売額は、東京都20.1百万円、全国17.4〃、大阪府17.3〃、和歌山県15.3〃であった。

1店舗当たり販売額
1店舗当たり販売額

出典:経済産業省「商業動態統計」

6.1店舗当たり日販の比較

次に1店舗当たり日販(1日当りの販売額)を算出した。県の日販は全国平均を54千円下回る513千円で、これは東京都より134千円下回る。大手コンビニ平均客単価は600円前後であり、@600円と想定して来店客数を推計したのが下表である。

その結果、県内の1日の来店客数は全国比(−90人)、東京都比(−223人)となる。県内に出店するコンビニは多い順にローソン、ファミマ、セブン、ヤマザキで全国の店舗割合とは違いが見られる。決算から見る大手コンビニ日販はセブンがもっとも高く、この店舗割合と会社別日販の差が県全体の日販に影響している可能性はあるかもしれない。

出典:経済産業省「商業動態統計」より作成、客単価は想定。

出典:各社決算

和歌山県内に出店数の多い4コンビニの比較
和歌山県内に出店数の多い4コンビニの比較

出典:各社決算、4コンビニのみ対象に計算し作成。

7.地域別店舗数・販売額比較

県内の店舗数・販売額割合はともに対全国比0.6%で、これは人口割合0.76%と近い数字となる。県の人口1万人当たり店舗数は3.76店と全国平均4.44店より0.68下回っている。しかし、和歌山市だけに限ると、人口1万人当たり店舗数は4.20店と県平均を0.44上回る。4コンビニ各社の和歌山市内への出店割合は、59.7%〜36.5%であった。いずれも人口の多い和歌山市内への出店割合が高くなっている。人口が集中する地域、商業施設の密集地、公共施設周辺、交通量の多い道路沿いに出店しているところが大半を占めている。

地域別店舗数・販売額比較
地域別店舗数・販売額比較

出典:経済産業省「商業動態統計」、2015年国勢調査。
※和歌山市店舗数はコンビニ各社のHPより集計。

8.人口減少の影響

コンビニ各社はシェア自転車、コインランドリー等の異業種サービスとのコラボで集客力を高めようと取り組んでいる。生活インフラとしてのコンビニの役目はますます存在感を増していくであろう。

しかし、拡大基調を続ける中で、店舗経営は厳しさを増している。特に人手不足と人件費の上昇である。人口減少は消費者減少だけでなく、労働力をも減少させる。特定のコンビニ※を除き県内のコンビニはほとんどが24時間営業を行っており、夜間の人手も確保しなければならない。和歌山県の最低賃金はこの10年間で100円以上上昇し、夜間は昼間以上の賃金が必要である。コンビニ店舗数が増加すれば全体として販売額が増加するが、コスト負担が増加すれば日販高が増加しない限り利益は減少する。そのため、セブンはロイヤリティ(売上、粗利等に応じた本部へ支払う対価)を引下げ、ローソンは夜間営業の負担を少なくするため無人レジを2018年に始める予定だ。本部が店舗経営の支援を強化し、消費者ニーズに対応した豊富な品揃え、サービスの拡充をすることで、人口減少社会においてもコンビニの成長が続くことは十分可能であろう。

※県内で24時間営業でない店舗は、セブン(ハートインJR和歌山駅中央口、ハートインJR海南駅改札口)ファミマ(和歌山市役所店、イオンモール和歌山店)ローソン(サテライト箕島店)等の施設内店舗や特定の店舗。

最低賃金の推移(和歌山県)
最低賃金の推移(和歌山県)

出典:厚生労働省

9.地域拠点としてコンビニへの期待

コンビニの成長が見込まれる一方で、県内でコンビニが堅調に伸びているのは地方中核都市(和歌山市)や中小都市の人口が比較的多い地域に限定されている。そこから少し離れた地域ではコンビニはほとんどない。理由として、消費者が少なく店舗経営を維持できるだけの日販が見込めない、効率的な商品配送ができない等が考えられる。これらの地域は都市部周辺に比べて人口流出、高齢化が一層進み買い物弱者も増えている。

直売所との連携等による集客力向上や物流体制の効率化、サービスの限定、24時間営業の見直し等による経費節約を図り、平均日販を下回っても経営が成り立つようになればコンビニの地方出店の可能性が高くなるのではないか。もちろん、そのためには地域住民や地元企業、自治体との連携が欠かせない。過疎化が進む地域にコンビニがあれば買い物だけでなく、地域住民の交流の場、生活拠点となり地域を支えるインフラとして期待が出来る。

次号では、その2 直売所編を紹介します。

(2018.4)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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