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人口減少社会における小売業の動向 その2 直売所編

主任研究員  藤代 正樹

はじめに

産地直売所(以下、「直売所」)は、消費者ニーズへの対応、生産者の所得向上等により存在感を急速に高め、農業生産関連事業(2015年)の年間総販売金額の5割を占めるようになっています。今回は直売所の動向について紹介します。

※農林水産省6次産業化総合調査の「直売所の事業体」を以下文中では直売所と略称表示。

1.全国の直売所数は減少に転じたが販売額は増加

直売所数は急速な増加から2015年は減少に転じた。一方、販売額は増加傾向が続き2015年は9,974億円となった。これは、年間販売額規模が5百万円未満の小規模直売所が減少したのに対して5百万円〜5千万円の中規模と1億円以上の大規模直売所が増加したことが理由の一つとして考えられる。全国の直売所で約1兆円が売られていることは生産者の所得向上に大きく貢献していると考えられる。

日本農業新聞調査によると、直売所の効果として(1)生産者の所得向上、(2)生産意欲の向上、(3)地域消費者に好評、があげられている。生産者・消費者ともに大きな支持を受けていることが堅調な直売所運営につながっている。

直売所の年間販売額・事業体数(全国)
直売所の年間販売額・事業体数(全国)

出典:農林水産省「6次産業化総合調査」

年間販売金額規模別事業体数割合(2015年度、全国)
◆

出典:農林水産省「6次産業化総合調査」

2.全国の販売額は農業協同組合等が8割超え

直売所の運営形態別に見ると、農業経営体が15.3%に対して、農業協同組合(JA)等が84.7%と大きく上回っている。

運営形態別販売額割合(2015年度)
運営形態別販売額割合(2015年度)

出典:農林水産省「6次産業化総合調査」

一方で、販売額伸び率を2011年と2015年との比較をすると、農業経営体(+149%)の伸び率が農業協同組合等(+122%)を上回っている。農業経営体数は大きく減少している(2005年2,009千→2015年1,377千事業体)。にもかかわらず農業経営体の運営する直売所販売額が増加しているのは、農家の法人化が進展し、農家(法人)・会社等の増加にともないそれらに運営される直売所の販売額が増加していることが理由の一つと考えられる。

かつて農業経営は家族中心であったが、農家数の減少は人口減少率を上回る推移で進み、土地持ち非農家や自給的農家が増加している。さらに、近年、家族経営体が法人に集約されていく傾向が見られる。増加する法人経営体が地域にどのように貢献していくのか、持続可能な経営体になることができるのか。このような課題を解決していくことが、今後の直売所の運営に大きく影響するものと考えられる。

運営形態別の年間販売額推移(全国)
運営形態別の年間販売額推移(全国)

出典:農林水産省「6次産業化総合調査」

農業経営体の運営する直売所の伸び率が高い。

販売農家数の推移(全国)
販売農家数の推移(全国)

出典:農林水産省「農林業センサス」、「農業構造動態調査」

農家数は減少傾向が続いている。

法人経営体数の推移(全国)
法人経営体数の推移(全国)

出典:農林水産省「農林業センサス」

農家数減少に対して、法人経営体数は増加。

3.県内の直売所数は微増、販売額は横ばい

県内の直売所数は増加傾向が続き、2015年に250となった。販売額はここ数年140億円台でほぼ横ばいとなっている。規模別では、5百万円〜5千万円の中規模直売所が減少したのに対して、5百万円未満の小規模と5千万円以上の大規模事業所が増加している。

直売所の年間販売額・事業体数(和歌山県)
直売所の年間販売額・事業体数(和歌山県)

年間販売金額規模別事業体数割合(2015年度、和歌山県)

出典:農林水産省「6次産業化総合調査」

4.1直売所の平均販売額は全国平均を上回る

都道府県別では、和歌山県の年間販売額(32位)、直売所数(36位)に対して、1直売所当たりの平均販売額は6,018万円(15位)となり、全国平均4,229万円を大きく上回っている。

これは、規模別において、県内の直売所は5千万円以上の割合が全国を上回っており、さらに、JA紀の里が運営する「めっけもん広場」など売上高10億円以上の大型直売所が3店あり平均販売額を押し上げているものと考えられる。

都道府県別 直売所販売額(2015年度)
都道府県別 直売所販売額(2015年度)

出典:農林水産省「6次産業化総合調査」

売上高10億円以上のJA直売所(2016年度)
売上高10億円以上のJA直売所(2016年度)

出典:日本農業新聞

一方で、県内では年間販売額が1千万円未満の小規模直売所も多く、合計55.1%と半分を超えている。また、年間来場者数も5千人未満の割合が55.8%と半分を超えている。このような小規模直売所は、特定の野菜や果実などを専門に販売したり季節性の高い果実等を期間限定で販売しているなど、地元に密着した地域直売所としての役割を果たしている。

年間販売額規模別事業体数割合(2015年度)
年間販売額規模別事業体数割合(2015年度)

年間購入者数規模別事業体数割合(2015年度)
年間購入者数規模別事業体数割合(2015年度)

出典:農林水産省「6次産業化総合調査」

5.果実、花の販売割合が高い

品目別を見ると、和歌山県は「果実類」(販売額16位、割合3位)と「花き・花木」(販売額16位、割合3位)の売れ行きが好調で、県特産品が直売所でも人気商品となっている。これは、県を代表する果実・花の品質が地域住民からも高く評価されていることを表している。

一方、「野菜類」は全国的には32%を占める直売所の目玉商品だが、県内では、野菜類の売り上げを果実類が上回っている。直売所での果実の売り上げが野菜を上回っているのは、和歌山県(ミカン、カキ、ウメ等)、山形県(ナシ、サクランボ等)、山梨県(ブドウ、モモ等)の3県のみである。

この果実や花の強みが集客力・販売力を高めることにつながり、直売所の経営基盤安定に大きく寄与していると見られる。さらに、野菜の品揃えを増やすなどにより直売所の存在感を一層強めていくことが可能であると考えられる。

品目別年間販売額(2015年度)
品目別年間販売額(2015年度)

出典:農林水産省「6次産業化総合調査」


都道府県別 品目別年間販売額(2015年度)
都道府県別 品目別年間販売額(2015年度)

出典:農林水産省「6次産業化総合調査」。販売総額順に並べ替え。

和歌山県の順位は、

  • 販売額総額32位、野菜類35位。
  • 果実類16位、花き・花木16位。
  • 果実類が野菜類を上回っているのは、山形県(+830百万円)、山梨県(+3,001百万円)、和歌山県(+36百万円)の3県のみ。

6.高い地場産割合

地場産割合(自家生産物と自都道府県産の合計)は、全国平均を若干下回っているが、それでも県内直売所の地場産割合は9割近い高水準を維持している。直売所は地場産を売りにしている所も多いが、季節的制約もあり、常に品揃えを十分に行うことは難しい。不足がちな商品を他府県から仕入れることで消費者ニーズに対応している。

しかし、品揃え充実のために地場産以外の商品比率を高めると直売所とスーパーの棲み分けが無くなる。直売所は地産、品質にこだわり付加価値を高めることが消費者の評価につながっている。

直売所における地場産販売割合
直売所における地場産販売割合
直売所における地場産販売割合

出典:農林水産省「6次産業化総合調査」

※販売額は、農産物(生鮮食品、農産加工品及び花き・花木)の販売額の合計。「自家生産物」は、農業経営体のみの結果。

7.直売所農産物の流れ

通常の流通、小売り形態とちがい、直売所は委託販売であり、直売所への販売手数料を差し引いた販売金額が生産者の収入となる。生産者にとって販売価格を自ら決定できるのが直売所販売の大きな魅力である。一生懸命に作った商品を生産コストに見合った価格で販売することができるため、生産者の所得向上に寄与するとともに、生産意欲の向上につながっている。

しかし、直売所は買取販売ではないため、売れ残りは生産者が回収処分しなければならない。いくら希望の価格で売れ行きが好調でも、売れ残りが多くあれば収益的にはマイナスである。このロスを削減するために、時期的に大量に出回る作物の調整や品薄(人気)商品の生産向上などを生産者に指導することが直売所の重要な役割の一つである。作物が過度に集中あるいは不足することがないよう生産者と直売所が連携して栽培計画などを作っていくことが重要である。

直売所農産物の流れ
直売所農産物の流れ

8.直売所機能の多様化

生産者、消費者のニーズに対応した新たな直売所の取り組みを紹介する。。

1 集荷サービス

ほとんどの直売所は生産者自身が商品を運び込んでいる。しかし、高齢化が進み、作物を直売所まで運ぶことが難しくなっている農家も多くなりつつある。その人たちを支援するために直売所のトラック便等が巡回して農家から作物を集荷して直売所まで運び込む。売れ残りの作物は生産者に返品するのを省いて直売所が直接廃棄する。集荷代金、廃棄代金が徴求されるが、利用者は遠くまで車で行く必要と時間ロスが無くなる。

2 ワンストップ・ショッピング機能

農産物に加えて、肉類・魚介類の販売、弁当等の加工品の販売を行う直売所。消費者にとって1店舗で食料品を買い揃えられることが大きなメリットである。野菜や果実に比べて肉類等の販売割合は小さいが、今後、この機能が充実すれば、さらに集客機能が高まり、直売所全体の販売額が増加することが見込まれる。肉類等についても農産物と同様に、新鮮な安全・安心に配慮した品揃えが欠かせない。

3 他業態との連携

地方では人口減少が進み、直売所だけでは集客数や売上を伸ばしていくことは容易ではない。そのため、同一店舗内に直売所と他業態の店舗を併営する取り組みがされている。店舗の付加価値を高めることが消費者の利便性を高めることにつながり、直売所経営の安定化にも効果がある。

4 インショップ機能

通常の直売所店舗ではなく、スーパー等の施設内に店舗を開設する。集客力が高く、一般の直売所で売り切れない商品を販売することが可能になる。売れ残った商品の廃棄ロスが軽減でき、生産者の所得向上(マイナスの軽減)につながる。

9.人口減少と直売所の可能性

人口減少により消費が縮小しても、直売所の販売額は堅調に推移し、経営を安定的にしている。直売所の品質の高い農産物等の提供が消費者に好評だからだ。また、地域イベントを開催するなど地域住民との交流が地域づくりにも貢献している。直売所は単に農産物を販売するだけでなく、地域社会を活性化させる有力な手段となっている。

課題は生産者側に多くある。農家数の減少、高齢化、後継者不足は深刻な状況になっている。それらに伴い、今後さらに農業生産が減少し地産の品揃えが難しくなることが予想され、品不足への対応が必要となってくるであろう。 これからも直売所が地域から評価されるには、高品質の農産物を提供していくことが不可欠である。そのためには、生産者、直売所、消費者が連携して対応していかなければならない。

「良い物を作り、良い物を食べる」これが生産者と消費者の信頼関係を築き上げる基本だ。高品質のミカン、カキ、キャベツ、トマト等が店内に並び、それを一生懸命に作った生産者の顔が見えてくる。消費者は、生産者の努力を十分に理解し評価することが求められる。生産者と消費者の架け橋となるのが直売所だと考える。

直売所の可能性
直売所の可能性

(2018.8)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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