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地域食料自給率の向上〜地域に合った取り組み〜

主任研究員  藤代 正樹

はじめに

新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年3月以降、世界で米や小麦などの輸出を制限する動きが出始めました。また、近年、異常気象やバッタ被害等により農作物の安定生産・供給が脅かされています。日本のカロリーベースの食料自給率は38%(2019年度)であり、6割超を海外からの輸入に頼っています。食料自給率の現状と地域に合った自給率向上について紹介します。

1.食料自給率の分類

(1)総合食料自給率

食料自給率とは、国内の食料全体の供給に対する食料の国内生産の割合で、分子を国内生産、分母を国内消費仕向として計算。カロリーベースと生産額ベースとがある。

[1] カロリーベース総合食料自給率
  • 供給熱量ベースの総合食料自給率。
  • 国内に供給される食料の熱量が、どれだけ国内で生産されているかを示した割合。
  • 基礎的な栄養価であるカロリーに応じた供給熱量ベースには、国民の生命と健康の維持に不可欠な食料の実態が反映される。食料安全保障の状況を捉えることができる。
  • 飼料自給率は反映される。

カロリーベース総合食料自給率

[2] 生産額ベース総合食料自給率
  • 国内に供給される食料の生産額のうち、どれだけ国内生産が占めるかを示した割合。
  • 経済的な価値に応じた生産額ベースからは、農業の経済活動の状況を捉えることができる。エネルギーが比較的少ない一方で、高い付加価値を有する畜産物、野菜、果実等の生産活動をより適切に反映させることができる。
  • 野菜、果実等は経済的価値が高いがエネルギーの供給は限定的なため、生産額ベース自給率には寄与するがカロリーベース自給率への影響は小さい、一方、穀物類は高い。農業や生産基盤の強化の観点からは生産額ベースの自給率が重視される。海外の評価は生産額ベースの評価が重視されている。
  • 飼料自給率は反映される。

生産額ベース総合食料自給率

【総合食料自給率の推移】

カロリーベース、生産額ベースともに減少傾向が続いている。カロリーベースでは、平成(1989年)以降50%を下回り、2018年には37%まで低下している。この大きな理由は、日本人の食生活の変化にある。かつては、国産の米や野菜が食事の中心であったものが、欧米風の食生活に変化したため、外国産の小麦を使ったパンや、飼料や原料の輸入割合が高い畜産物や油脂類の消費が増加したためである。逆に米の消費量は減少し、自給可能な米の供給熱量全体に占める割合が大きく低下している。

カロリーベースの食料自給率は、1人当たり供給熱量の減少や、小麦・大豆・新規需要米等の国内生産増加、米をはじめとする消費量減少、人口の増減等の影響により変動。長期的には減少傾向で推移している。

生産額ベース自給率が下がるのは、カロリーにあまり反映しない野菜・果実等の輸入増と生産減少によるものである。

総合食料自給率の推移(全国)
総合食料自給率の推移(全国)

出典:農林水産省

【米の消費量の減少】

米の需要量は1965年には12,037千トンであったが、2018年には7,507千トン(▲4,530千トン、▲37.6%)まで減少した。また、国民1人当たり供給熱量は、1965年の1,090kcalから2018年には528kal(▲562kcal、▲51.6%)と半減した。この米の消費量・供給熱量の減少が日本の自給率低下に大きく影響している。

米の需要量と供給熱量
米の需要量と供給熱量

出典:農林水産省「食料需給表」

(2)飼料自給率

飼料の自給度合いによって畜産物の自給率は大きく影響を受けるため、国産飼料基盤に立脚した畜産業を確立する観点から飼料自給率の目標が設定されている。

・国内に供給される飼料に対する国内生産の割合。


飼料自給率

※TDN(可消化養分総量)とは、エネルギー含量を示す単位。

【飼料自給率の推移】

飼料自給率は低下傾向が続いている。これは飼料の需要量が大きく増加しているのに対して、それを国内産飼料で賄うことが出来ず、外国産の飼料に依存する割合が高くなっているからである。

1965年 国産飼料7,290TDN千トン÷飼料需要量 13,359TDN千トン=55%

2018年 国産飼料6,197TDN千トン÷飼料需要量 24,498TDN千トン=25%

つまり、約半世紀の間に飼料の需要が+83%増加したが、逆に国産飼料供給量は▲15%減少した。この差が食料自給率を低下させる大きな要因になっており、飼料自給率の低さは畜産物の自給率が上がらない要因にもなっている。飼料自給率を反映しない食料国産率では畜産物のカロリーベース自給率は62%に達するが、飼料自給率を反映すると15%まで下がる。

飼料自給率の推移(全国)
飼料自給率の推移(全国)

出典:農林水産省生産局飼料課

(3)食料国産率

食料国産率は、飼料が国産か輸入かにかかわらず、畜産業の活動を反映し、国内生産の状況を評価するもの。需要に応じて増頭・増産を図る畜産農家の努力が反映され、また、国産畜産物を購入する消費者の実感に合うという特徴がある。

食料自給率と食料国産率の差は、輸入飼料を用いて生産された国内畜産物を意味する。そのため、食料国産率と飼料自給率の双方の向上を通じて、食料自給率の向上を図ることが必要である。

[1] カロリーベース食料国産率
  • 2020年から導入。
  • 国内に供給される食料の熱量のうち、輸入飼料に関係なくすべての畜産物を含めた国産の食料による熱量の割合。
  • 飼料自給率は反映されない。


カロリーベース食料国産率

[2] 生産額ベース食料国産率
  • 2020年から導入。
  • 国内に供給される食料の生産額のうち、輸入飼料に関係なくすべての畜産物を含めた国産の食料の生産額の割合。
  • 飼料自給率は反映されない。


生産額ベース食料国産率

【食料国産率の推移】

総合食料自給率が飼料自給率を反映しているのに対し、食料国産率では飼料自給率を反映せずに算出している。そのため、カロリーベースと生産額ベースともに国産率の方が高くなっている。

総合自給率と国産率を比較すると、2018年の生産額ベースでは66%と69%とその差は小さいのに対して、カロリーベースでは輸入飼料のマイナスがないため37%と46%と国産率が+9ポイント高くなっている。

食料国産率の推移(全国)
食料国産率の推移(全国)

出典:農林水産省

(4)品目別の食料自給率

品目別の供給熱量の高い順から、@穀類(米・小麦等)858.2 kcal、A油脂類(植物・動物)363.7 kcal、B肉類(牛・豚・鶏)193.2 kcal、C牛乳及び乳製品166.9 kcal、となっている。

一方、野菜は73.0 kcal、果実は62.7 kcalと穀類等と比較すると低い供給熱量となっており、中でも「みかん」は4.6 kcalと低く、和歌山県でみかんに次いで産出額の多いうめ0.6 kcal、かき1.8 kcalとさらに低い。そのため、みかん等の果実類は米や肉・油脂類と比較して総合自給率カロリーベース評価では寄与度が低くなっている。これが、和歌山県のカロリーベース自給率が低い大きな理由である。

2.都道府県別の食料自給率

(1)都道府県別自給率の特徴

都道府県別の食料自給率を見ると、カロリーベースでは、畑作物の生産が盛んな北海道や米の生産量が多い東北地方や新潟県で高い傾向になっている。

生産額ベースでは、宮崎県、鹿児島県、青森県、北海道等で高く、畜産、野菜、果実の生産が盛んな地域が高い傾向になっている。肉用牛や豚等の畜産類は、九州での産出額が多いが飼料を海外に依存している割合が高い(生産額ベース自給率は高いが、飼料自給率がマイナスされるためカロリーベース自給率は低くなる)。

秋田県、富山県、福井県、滋賀県では生産額に占める米の割合が高いことから、カロリーベースの食料自給率が生産額ベースの食料自給率を上回っている。

一方、人口が集中している東京都、大阪府、神奈川県等の大都市部の食料自給率はカロリーベース、生産額ベースともに非常に低い水準となっており、食料調達が他県(外国)に大きく依存している。

このように、都道府県別の自給率は農業産出額(生産額)の構成割合によって数値が変わってくる。さらに、人口数が自給率に影響し、都市部の人口集中部では自給率は低い傾向になっている。

和歌山県と同様に、果実の産出額が大きい青森県、長野県、山形県、山梨県ではカロリーベース自給率に比べて生産額ベース自給率の方が上回っている。これは、果実のカロリーが低く、付加価値が米よりも高くなっているためである。

都道府県別食料自給率と人口
都道府県別食料自給率と人口

出典:農林水産省「都道府県別食料自給率」2018年、総務省国勢調査「都道府県別人口」2017年

(2)近畿における自給率

近畿2府4県の自給率を見ると、それぞれの府県の特徴が出ている。

カロリーベース自給率では、滋賀県が48%と最も高く、近畿では滋賀県だけが全国値37%を上回っている。次いで和歌山県が28%となっている。

生産額ベース自給率では、和歌山県が113%と最も高く、近畿では和歌山県だけが全国値66%を上回っている。次いで、滋賀県、兵庫県が37%となっている。それらの要因について次に示す。

〇カロリーベース全国順位(単位:%)

〇生産額ベース全国順位(単位:%)

出典:農林水産省「都道府県別食料自給率」2018年

近畿の食料自給率と人口
近畿の食料自給率と人口

出典:農林水産省「都道府県別食料自給率」2018年、総務省国勢調査「都道府県別人口」2017年

カロリーベース自給率の推移を見ると、滋賀県で減少、その他の府県でも微減もしくは横ばいとなっている。滋賀県が高く、次いで和歌山県の順位は変わらないがその差は小さくなっている。

〇近畿のカロリーベース自給率の推移

出典:農林水産省「都道府県別食料自給率」

生産額ベース自給率の推移を見ると、和歌山県は果実産出額の変動により年度により上下するものの他府県より大きく上回って推移している。和歌山県以外は生産額ベース自給率の減少傾向が続いている。

〇近畿の生産額ベース自給率の推移

出典:農林水産省「都道府県別食料自給率」

(3)近畿の農業産出額

次に、食料自給率と農業産出額について比較する。近畿の農業産出額は風土や気候の違い、競争力の高い品目など府県ごとに特徴があり、この農産物の違いが自給率に影響を与えている。

和歌山県の農業産出額(2018年)は、合計では1,158億円で、そのうち米が75億円(6.5%)で全国順位42位となっている。一方、果実は748億円(64.6%)で全国順位は青森県に次いで2位である。カロリーの高い米の生産が低く、カロリーベース自給率が低い結果になっている。

一方、生産額ベース自給率では、和歌山県は付加価値の高い畜産物の生産は少ないが、カロリーは低いけど単価の高い果実を多く生産しているので生産額ベース自給率は高くなっている。果実産出の中でも、みかん(308億円、全国シェア17.7%)、うめ(200億円、同71.4%)、かき(77億円、同19.8%)はそれぞれ全国1位の産出額となっている。

参考までに、スターチスやかすみ草等の花き産出額も全国18位と高く、農業の生産所得を高めているものの、花きは食料自給率には評価されない。

〇近畿の主要農業産出額(実額)

出典:農林水産省「都道府県別農業産出額」2018年

このうち、滋賀県と和歌山県の農業産出額を比較する。

滋賀県は、自給率がほぼ100%の米の産出割合が57.6%と5割を超えておりカロリーベース自給率の高さにつながっている。

和歌山県は米の産出割合が6.5%に過ぎずカロリーベース自給率の低さの要因になっている。一方、果実の産出割合が64.6%と高く、生産額ベース自給率の高さにつながっている。

結果的に、産出額の割合の違いから自給率は以下のようになっている。

  • カロリーベース自給率では、滋賀県48%>全国平均37%>和歌山県28%。
  • 生産額ベース自給率では、和歌山県113%>全国平均66%>滋賀県37%。

〇近畿の主要農業産出額(割合)

出典:農林水産省「都道府県別農業産出額」2018年

3.食料自給率向上に向けた取り組み「地産地消」、「食品ロス削減」

(1)地産地消

全国的には国産品の消費拡大や海外市場の開拓(=輸出の増加)は自給率計算上の分子に輸出額が含まれるため、カロリーベース食料自給率が向上する。

地域単位で考えると、地域で生産した食料をその域内で消費して、それぞれの地域が域内の自給率を高めることが、国内全体の自給率を押し上げることにつながる。それは各地域の生産基盤の強化にも効果がある。

〇カロリーベース食料自給率の向上について

出典:農林水産省「2019年度 食料自給率・食料自給力指標」

(2)食品ロス削減

世界的な人口増加による食料不足への懸念や環境保護の面から食品廃棄の減少への意識が国際的に高まっている。2017年度の日本の食品ロス量は約612万トン、このうち食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は約328万トンと推計される。いずれも、食品ロス量の推計を開始した2012年度以降最少となった。事業系の食品ロス減少は食品産業における納品期限緩和の動きが進んできたことがひとつの要因としてあげられる。

〇日本の食品ロスの状況(2017年度)

出典:総務省人口推計(2017年10月1日)、2017年度食料需給表(確定値)

自給率の計算式では、カロリーベース自給率は「1人・1日当たり供給熱量」を分母とし、生産額ベース自給率は「食料の国内消費仕向額」を分母としており、両方ともに廃棄分を含んだ数字となっている。そのため、食品廃棄を減少させることができれば、その分、分母が減少し自給率は上昇することになるため、自給率の観点からも食品廃棄率を低減することは重要である。

4.まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大は、食料の安定供給という側面から国内農業基盤を見直す契機となった。自給率の向上のためには国内農業の生産基盤の強化が不可欠である。輸入に頼りすぎた食品事業者や消費者が国内産の農作物への需要を高め、食品需要を国内生産でまかなうことのできる体制づくりを目指すことが重要だ。

地域の自給率向上の積み上げが国全体の自給率向上につながることは間違いない。人口が集中する東京、大阪等の都市部では自給率が極端に低く生産面から域内自給率を上げるのは難しいが、「消費」面では重要な役割を担っている。

和歌山県の自給率の現状は以下のようにまとめられる。

「和歌山県は、カロリーの高い米の生産が低く、果実や花きの生産が盛んであるが、果実はカロリーが低く、花きは自給率には評価されないためカロリーベース自給率は低い。一方、生産額ベースの自給率では、付加価値の高い畜産物の生産は少ないが、カロリーは低いけど単価の高い果実を多く生産しているのでカロリーベースに比べ生産額ベースの自給率は高くなっている。」

食料安全保障という面からは生活に必要なエネルギーを勘案したカロリーベースの方が重要かもしれないが、農業の生産基盤の強化とカロリーベース自給率は必ずしも比例するものではない。カロリーベースを高めても農業者の所得が高まるとは限らないからだ。自給率の消費熱量は、米と比較すると、和歌山県特産のみかん、うめ、かき等の果実はカロリーが小さいため、いくら果実の生産を増やしてもカロリーベース自給率を押し上げる効果は少ない。逆に、果実や野菜を金額換算した生産額ベース自給率では米を上回っており、生産者の所得を考える上では大事な指標である。このように、和歌山県の特色を踏まえると、カロリーベースより生産額ベース自給率を重視していくことが重要であると考えられる。今後、地域の食料自給率を高めるためには、生産者、流通加工業者、消費者等が自給率の重要性を認識し、地域が一体となって取り組んでいくことが求められる。

(2021.8)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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