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2020年農林業センサスからみる和歌山県農業の主要データ

主任研究員  藤代 正樹

はじめに

農林業センサスは、国内の農林業の生産構造や就業構造、農山村地域における土地資源など農林業・農山村の基本構造の実態とその変化を明らかにし、 農林業施策の企画・立案・推進のための基礎資料となる統計を作成し、提供することを目的に、5年ごとに行う調査です。2010年から直近の2020年までの3回の公表データを、全国、近畿、和歌山県に分けて時系列に整理し、この10年間の動向をまとめました。さらに、和歌山県内の市町村のうち、その調査項目ごとに降順で上位5市町村を抽出し分析しました。

※使用データはすべて「農林業センサス」から出典。

1.農業経営体

(1)全国・近畿・和歌山県

農業経営体は減少傾向が続いている。なかでも、農業経営体の大部分を占める個人経営体の減少率が大きい。

個人経営体は、全国・近畿・和歌山県ともに10-15年の減少率より15-20年の減少率が大きくなった。一方で、団体経営体は、全国・近畿では増加しており、このうち特に法人経営体の伸びが大きい。和歌山県でも5年前に比べ10経営体(6.9%)増加した。

和歌山県は個人経営体の割合が高く、20年17,976経営体(99.1%)と全国平均(96.4%)より2.7%高くなっている。

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(2)県内上位5市町

田辺市を除いた市町では、個人経営体の割合が県平均99.1%を上回っている。田辺市では、法人経営体が22経営体(1.2%)と1%を上回っている。

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2.経営耕地面積規模別経営体数

(1)全国・近畿・和歌山県

全国・近畿・和歌山県ともに0.3〜3.0haの経営体の減少率が大きい。 一方で、15-20年では、5.0ha以上で近畿が10.2%、和歌山県が36.4%とそれぞれ増加した。

和歌山県は0.3ha未満の経営体割合が20年で1,419経営体(7.8%)と全国(3.3%)・近畿(2.9%)より高くなっている。一方で、5.0ha以上の経営体割合は135経営体(0.7%)と全国(9.6%)・近畿(3.4%)より低い。

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(2)県内上位5市町

いずれの市町も0.3〜2.0haの占める割合が高い。

みなべ町は、2.0〜3.0ha(19.3%)、3.0〜5.0ha(11.9%)とこれらの面積規模の経営体の割合が他の市町と比べて高くなっている。

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3.経営耕地面積規模別面積◆

(1)全国・近畿・和歌山県

全国・近畿・和歌山県ともに5.0ha以上の面積で増加傾向がみられる。

和歌山県は5.0ha以上の面積で増加しているが、県全体に占める割合は20年で4.9%と全国(65.5%)・近畿(36.2%)と比べるとかなり低い。面積規模の小さい割合が高く、0.3〜3.0haの面積を合わせると80.7%と約8割を占めている。

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(2)県内上位5市町

和歌山市を除いて、面積規模は0.3〜5.0haの間に分散されている。和歌山市は0.3〜1.0haの面積割合が52.2%と半分を占めている。

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4-1.経営耕地の状況◆

(1)全国・近畿・和歌山県

総経営体数、総面積ともに減少傾向が続いている。

田をみると、15-20年では、全国・近畿ともに経営体数で20%超、面積で8%超の減少となった。和歌山県は、経営体数で28.3%の減少、面積で23.6%の減少となり、全国・近畿の減少率を上回っている。

畑をみると、15-20年では、全国・近畿・和歌山県ともに経営体数は減少しているが、和歌山県の減少率は7.7%と小さい。面積で、近畿が10.4%、和歌山県が26.4%の増加に転じた。

樹園地をみると、全国・近畿・和歌山県ともに経営体数、面積の減少傾向が続いている。

1経営体当たりの耕地面積(面積÷経営体数)をみると、和歌山県は、15-20年では、3.7%増加したが、平均面積は1.06haと全国(3.05ha)、近畿(1.39ha)に比べると小さい。

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(2)県内上位5市町

いずれの市町も総経営体数、総面積ともに減少傾向が続いている。

田をみると、15-20年では、有田川町は経営体数が44.2%、面積が38.3%と減少率が最も大きかった。一方で、和歌山市は経営体数が18.8%、面積が15.8%と減少率が最も小さかった。

畑をみると、15-20年では、経営体数で紀の川市、有田川町、みなべ町が増加し、面積で紀の川市とみなべ町が2倍超の増加となった。

樹園地をみると、経営体数、面積ともに減少傾向が続いている。

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4-2.経営耕地のうち借入耕地の状況◆

(1)全国・近畿・和歌山県

借入耕地のある総経営体数は減少傾向が続いているが、一方で、総面積は全国・近畿で増加した。

田をみると、経営体数は畑や樹園地と比べて減少率が大きい。15-20年では、面積は全国・近畿で増加しているが、和歌山県は17.9%減少した。

畑をみると、15-20年では、経営体数は全国・近畿で減少したが、和歌山県は9.3%増加、面積でも54.5%の増加となった。

樹園地をみると、15-20年では、全国・近畿・和歌山県ともに経営体数は10%台の減少となったが、面積はほぼ横ばいで推移している。

この結果、和歌山県の借入耕地合計は、15-20年では、経営体数で20.6%、面積で4.5%の減少となった。

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(2)県内上位5市町

15-20年では、総経営体数で紀の川市(26.8%)、田辺市(21.1%)、和歌山市(19.2%)の順で減少率が大きかった。総面積で、紀の川市が470haから395haへと75ha(16.0%)減少した。

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5.農産物販売金額規模別経営体数◆

(1)全国・近畿・和歌山県

全国・近畿・和歌山県ともに、15-20年では、300万円未満の減少率が大きい。一方で、300〜1,000万円の減少率は小さく、1,000〜3,000万円では近畿・和歌山県で増加し、3,000万円以上では全国・近畿・和歌山県ともに増加した。

15-20年では、和歌山県は1,000〜3,000万円で1,432から1,737へと305経営体(21.3%)増加した。さらに、3,000万円以上で119から194へと75経営体(63.0%)の増加となった。

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(2)県内上位5市町

1,000〜3,000万円では、構成比の県平均(9.6%)を田辺市(15.0%)、有田川町(13.5%)、みなべ町(18.9%)が上回っており、紀の川市(5.6%)、和歌山市(3.9%)が下回っている。

和歌山市は、100万円未満が59.4%と5割を超えており、販売なしも9.3%と高い割合となっている。

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6.◆農業経営組織別経営体数

(1)全国・近畿・和歌山県

単一経営の品目別をみると、全国・近畿・和歌山ともに野菜と果樹類は他の品目と比べて減少率は小さい。また、単一経営の合計減少率は複合経営の減少率より小さい。

15-20年では、和歌山県は、全体で15.3%の減少率となったが、野菜だけは3.8%増加した。

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(2)県内上位5市町

単一経営の品目では、果樹類が有田川町、田辺市、みなべ町で80%台を占めており、果樹類の県平均60.3%を20%以上上回っている。一方、和歌山市では、稲作(56.8%)と野菜(12.9%)の割合が高くなっている。

単一経営の合計割合は、県平均(84.6%)を有田川町(93.5%)と田辺市(94.2%)が10%ほど上回っており、逆に複合経営の割合が低くなっている。

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7.農産物販売金額1位の出荷先別経営体数◆

(1)全国・近畿・和歌山県

全国・近畿・和歌山県ともに農協への出荷割合が50〜60%台で最も高い。

販売のあった経営体が全体的に減少しているため、15-20年では、すべての出荷先で減少推移となった。

和歌山県は、15-20年では、小売業者への出荷が2.2%の減少率で小さかったが、食品製造業・外食産業への出荷が35.0%の大きい減少率となった。

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(2)県内上位5市町

5市町ともに、農協への出荷割合が最も高くなっているが、和歌山市、みなべ町の農協への出荷割合は4割程度と他の市町より低い。

和歌山市は消費者に直接販売が18.1%、小売業者が17.0%、みなべ町は食品製造業・外食産業が29.9%と比較的高い割合となっている。

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8.主副業別農業経営体数(個人経営体)◆

※2010年の数値は「販売農家」の区分から抽出。

(1)全国・近畿・和歌山県

全国・近畿・和歌山県ともに、主業、準主業ともに減少傾向が続いているが、主業より準主業の減少率が大きくなっている。一方で、副業的経営体の減少率は主業、副行と比べると比較的緩やかになっている。

和歌山県は、20年では、全国・近畿と比べて主業割合が31.9%と高いのに対して、準主業が11.7%、副業的が56.4%と低くなっている。15-20年では、全国・近畿と比べて、主業と副業的の減少率が小さく、この結果、合計減少率が全国・近畿と比べて抑えられている。

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(2)県内上位5市町

主業割合をみると、県平均(31.9%)を田辺市(42.0%)、有田川町(38.6%)、みなべ町(51.5%)が上回っている。この3市町では65歳未満の農業専従者がいる割合も県平均(28.8%)を上回っている。一方、準主業の割合はそれほど差がない。

副業的割合をみると、県平均(56.4%)を紀の川市(57.7%)、和歌山市(69.2%)が上回っている。みなべ町は36.0%と低い割合となっている。

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9.年齢別基幹的農業従事者数(個人経営体)◆

※2010、2015年の数値は「販売農家」の区分から抽出。

(1)全国・近畿・和歌山県

従事者数は全体的に大きく減少している。10-20年の20年間では、全国で688,399人(33.6%)、和歌山県でも8,919人(24.7%)の減少となった。

全国・近畿・和歌山県ともに、15-20年では、すべての年齢層で減少となった。なかでも、15〜29歳の若い世代と50〜69歳のベテラン域の世代の減少率が平均を大きく上回っている。

和歌山県は、15-20年では、15〜29歳の減少率が41.7%と特に高くなっている。また、50〜69歳の年齢層は合わせると54.1%の減少率となった。

平均年齢では、全国67.8歳、近畿69.2歳と比べて和歌山県は66.5歳と少し若くなっている。

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(2)県内上位5市町

60歳以上の年齢層を合わせた割合は高い順に、和歌山市(83.4%)、紀の川市(80.0%)、有田川町(73.5%)、田辺市(67.7%)、みなべ町(63.0%)であった。

みなべ町は40〜59歳の年齢層を合わせると28.9%と他の市町より高い割合となっている。このため、平均年齢は62.3歳と県平均66.5歳よ4.2歳若くなっている。

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10.総農家数◆

(1)全国・近畿・和歌山県

全国・近畿・和歌山県ともに販売農家、自給的農家数は減少傾向が続いている。このうち、全国・近畿では、自給的農家より販売農家の減少率が大きくなっている。

和歌山県は、販売農家の減少率は15.2%、自給的農家の減少率は14.4%と全国・近畿と比べてその差は小さい。

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(2)県内上位5市町

紀の川市、田辺市、有田川町では販売農家の割合が70〜80%台であるのに対して、和歌山市と橋本市では販売農家の割合は50%台で、その分、自給的農家の割合が高くなっている。

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おわりに

和歌山県では、農業を主な仕事とする基幹的農業従事者数は27千2百人となり、この5年間に、5千3百人、16.3%の減少となった。また、農業経営体のうち個人経営体も、3千4百経営体、15.7%の減少となった。これらは全国的な傾向で、高齢化による離農が大きな理由であると考えられる。一方で、団体経営体のうち法人経営体は144から154へと10経営体、6.9%の増加となった。経営耕地面積規模別経営体数をみると、この5年間に、県平均が15.6%の減少であるのに対して、3.0〜5.0haで1.3%の微減、5.0ha以上では36.4%増加した。また、借入耕地をみると、この5年間に、田の経営体数・面積はともに減少しているのに対して、畑の経営体数は9.3%の増加、面積は54.5%と大きく増加した。

これらのデータからは、県内においても小規模の個人経営体(家族経営体)が減少し、維持・管理が出来なくなった農地を地域の担い手(集落営農組織や法人経営体など)が引き受けて一定の農地集約から規模拡大が進展していることが見て取れる。

販売品目をみると、野菜以外の単一経営体と複合経営体のすべてで経営体が減少しているが、野菜の販売金額が8割以上の単一経営体だけが3.8%増加した。法人経営体などが高付加価値の野菜を作り販売するために、積極的に農地借入を行い、規模を拡大していると考えられる。販売金額をみても、この5年間に、販売金額1,000〜3,000万円の経営体は1,432から1,737へと305経営体、21.3%の増加となり、さらに、3,000万円以上の経営体数は少ないながら、119から194へと75経営体、増加率は63.0%と大きく増加している。

しかし、北海道や東北の大規模農地と違い、和歌山県は中山間地が多く、農地が分散しているため、農地集約、規模拡大には限界がある。規模が大きくなる分、農地や水路などの維持管理の負担も増してくる。地域の支援なしで少数の法人経営体だけでは持続的な地域農業の発展は難しい。大規模の法人経営が行き詰れば、地域の農業の存続自体が危うくなる。大事なのは、担い手が農業経営体の99%を占める小規模な個人経営体や地域住民と連携し耕作放棄を抑制し生産性を高めていくことだ。

全国で、農業従事者の高齢化が進む中で、若者を農業に呼び込み定着させることが喫緊の課題となっている。今後、農山村地域の小規模農家、法人経営体などに対する政策支援のさらなる拡充・強化が必要であろう。また、スマート農業の活用などによる省力化、魅力のある農業を展開していくことが求められる。

(2022.4)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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