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欧州視察レポート

研究員  濱田 和寿

概要

研修期間 平成15年10月17日(金)〜10月22日(水)(6日間)
研修先 イギリス、スペイン、フランス

はじめに

昨年10月、海外視察の機会を与えて頂いた。視察地はイギリス、スペイン、フランスの3カ国で、イギリスでは環境分野でのリサイクルセンターの視察、スペインでは観光振興という観点から歴史的建造物を活かした観光振興事例の視察、フランスではIT分野での自治体のインターネットを利用した取組みについての視察という盛り沢山な内容であった。それぞれ奥が深い分野のなかで、今回、私が見てきたものはごく断片的なものにすぎないと思われるが、それぞれの視察内容の要旨を私観も含め報告する。

1 イギリス

昨年10月、海外視察の機会を与えて頂いた。視察地はイギリス、スペイン、フランスの3カ国で、イギリスでは環境分野でのリサイクルセンターの視察、スペインでは観光振興という観点から歴史的建造物を活かした観光振興事例の視察、フランスではIT分野での自治体のインターネットを利用した取組みについての視察という盛り沢山な内容であった。それぞれ奥が深い分野のなかで、今回、私が見てきたものはごく断片的なものにすぎないと思われるが、それぞれの視察内容の要旨を私観も含め報告する。

視察テーマ イギリスにおけるリサイクルの現状
訪問日 平成15年10月17日(金)
訪問先 REGIS ROAD RECYCLING CENTRE
(ロンドン市 カムデン区 リサイクルセンター)
先方対応者 MR.Neil Devis(リサイクルセンター局長)
MR.Albert(現場担当者)
1−1 イギリスにおける廃棄物の現状

イギリスでは年間約4億トンの廃棄物を排出している。そのうち2億4500万トンが規制廃棄物をいわれるもので、その内訳をみると家庭用廃棄物2000万トン、事業系廃棄物1500万トン、産業廃棄物2億1000万トンとなっている。

EUの法が入り、これまで地方自治体に頼ってきた廃棄物行政に全国レベルの規制が加わることとなった。

廃棄物収集は各市町村、廃棄物処分は各県、廃棄物規制は環境庁というように三段階にわたって異なった機関がかかわっており、廃棄物処理方法としては直接埋め立てが主流となっている。

リサイクルの現状を見ると、家庭系廃棄物では5%(1995年)のリサイクル率となっていたが、イギリスでは2005年までの目標として25%という数字を挙げリサイクル率の向上に努めている。

カムデン区リサイクルセンター
カムデン区リサイクルセンター
■カムデン区の概要
  • 人口20万人の中規模区で、アパート・マンションが多く住民の50%はアパートに居住している。多民族が共生する地区。
1−2 カムデン区 リサイクルセンター公式訪問
■カムデン区リサイクルセンターについて
  • 1995年の設置された施設。
  • 休日はクリスマスのみで、週7日(午前8時〜午後3時45分)家庭から持ち込まれた廃棄物を受け入れている。
  • 施設の一角には、教育センターがある。
  • 職員数は、路上回収24名、工場内職員6名、管理職2名の合計32名。
  • 古紙、ガラス、プラスチック、缶のリサイクルを行っている。
  • 回収トラックは8台あり、1台につき3名が乗車する。
カムデン区リサイクルセンター
カムデン区リサイクルセンター
リサイクルセンター内
リサイクルセンター内
■ヒアリング内容
  • カムデン区では年間12万トンの廃棄物がでる。うち、家庭廃棄物のリサイクル率は17%である。
  • 家庭廃棄物は1世帯あたり、1年で1トン。
  • リサイクルされないゴミの80%は焼却処理される。それ以外は埋め立てである。
  • コスト的には埋め立ての方が安くつく。(1トンにつき13ポンド)
  • しかし、今後の値上げが予想され、埋立地の問題もあり、リサイクルが注目されている。
  • ロンドンでは一つの区に必ず一つのリサイクル工場がある。
  • カムデン区の50%以上の世帯にリサイクル回収箱を配布。週に1度回収している。
  • 現在、住民の37%がリサイクル活動に参加。
  • 住民はリサイクルのゴミの分別はせず、まとめて箱にいれる。回収後、業者が分別を行う。
  • 今後は、如何に住民に分別を行ってもらうかが課題である。
教育センターでの説明風景
教育センターでの説明風景
1−3 私観

持ち込み型のリサイクルセンターは最近日本でも増加傾向にあるようだが、今回の視察先であったカムデン区リサイクルセンターは、小規模ながら多品目を受け入れており、地域密着型の施設であった。実際、私達が施設の説明を受けている数十分の間にも、多数の住民が廃棄物を持ち込んでいた。

イギリスでは、製造物が廃棄物になった際のリサイクルまたは有効活用の責任義務を事業者に科している。こういった規制のもとに事業者、自治体、そして住民が一体となったリサイクルへの取組みがなされており、見習うべきところも数多くあるだろう。

しかし一方では、ゴミの分別は回収後になされており、住民による分別の推進を今後の課題としている。それに対し、日本では、自治体により多少の違いこそあれ、きめ細やかな指導により徹底した多品目分別収集がなされており、その部分に関してはむしろ日本のほうが進んでいる。

今後、日本においては、自治体が築き上げてきた高い分別収集能力を維持しつつ、産官一体となった取組みがなされていくことに期待したい

2 スペイン

視察テーマ 歴史的建造物を活かした観光都市づくり
訪問日 平成15年10月20日(月)
訪問先 バリャドリード県 ペナフィエール市迎賓館
先方対応者 MR.Agapito Hernando(ぺナフィエール市長)
MR.Rafael Guzman Villarreal(バリャドリード県観光局局長)
MR.Jose Luis(建築課 技師)
MR.Migel Angel Benito(市議会議員)
2−1 スペインの観光について

スペインは観光大国であり、長年にわたり観光部門は「金の卵を産む鶏」にたとえられてきた。2002年にスペインを訪れた外国人観光客数は5170万人で、これはフランスの7700万人に次ぐ世界第二位を誇っている。また国際観光収入についても年間4兆円と米国の8兆円に次いで世界第二位となっている。

しかし近年、高速道路の整備などが進むにつれ、観光客がフランスやドイツ、イタリアからテントを積んだキャンピングカーで訪れるなど、安上がりの観光をめざす客が増え、観光客が落すお金が少なくなってきている。また、スペインと同様の「ビーチと太陽」をコンセプトとしたトルコ、クロアチア、ブルガリアなどといった観光新興国が割安予算で同等のサービス提供を行っているため、スペインでは「ビーチと太陽」だけでなく、地域の歴史を学ぶ観光の充実に注力している。

2−2 バリャドリード県 ペナフィエール市公式訪問
地図
地図
■ペナフィエール市の概要

マドリード郊外より北へ約150km、車で約2時間のところにペナフィエール市がある。人口は約5,600人。古くからのワインの産地であるとともに、近年は歴史的建造物を活用した観光振興を積極的に行っている。

■ヒアリング内容
(市長の話)
  • ぺナフィエール市では、観光振興の戦略の一つとして、1300〜1400年代に作られた城を修復し、迎賓館を作った。
  • ここの一部はワイン博物館にもなっている。
古城を修復した迎賓館
古城を修復した迎賓館
説明風景(迎賓館内)
説明風景(迎賓館内)
  • それ以外にも古い建造物を利用し、美術館及び民族博物館を作った。
  • このプロジェクトを行うにあたっては、市の行政が率先して活動し住民と一体となった活動を行った。
  • 現在のプロジェクトとしてはラジオ(放送局)博物館の建築を企画している。
  • ただのワインの町であったところに、この6〜8年間に3つの博物館を作ったため、町全体(行政及び住民)のホスピタリティが向上した。
  • 町を修復すると共に周辺のインフラ整備を続けている。
  • 以下のことを町づくりの3本柱としている。
     ○文化財の利用
     ○ワインと食事
     ○インフラの充実
ペナフィエール市内地図
ペナフィエール市内地図(↑クリックすると拡大します)
(技術者の話)
  • 文化財の修復は、まず、目的物を見出すことから始まる。
  • リベラ民族博物館は、100年前の生活をモチーフに、近代技術は使わず100年前の技術、材質で修復している。これによって、歴史を感じることが出来る。
  • 企画中のラジオ博物館は100年前の放送局を再現しようとしている。
  • まわりの民家を修復し、闘牛場を復活させた。
  • 民家の修復には所有者の許可が必要となるが、全体の文化財としての理解をこい、金融面での援助をおこなった。
  • 住民とのコミュニケーションが大切である。
  • 効果としては、開発後の4年間で観光客数は40万人を超えた。特にワイン博物館への来館が多い。
修復された闘牛場
修復された闘牛場
  • 訪れる観光客はやはりスペイン人が一番多いが、イギリス、アメリカからの観光客も多い。
  • 雇用は地域から優先的におこなっているため、人口が増加し、若年層も増加している。1995年で5030人であったのが、2003年には5600人になった。
  • レストランは6軒から18軒になった。
  • 新しい家を作るときは、旧市内の景観を損なわないという規則がある。
  • 街の美観を損なわないよう、清掃員を倍にした。
闘牛 闘牛
シーズンになると闘牛が開催される(ペナフィエール市パンフレットより)
迎賓館展望台から見た町並み
迎賓館展望台から見た町並み
2−3 私観

今回のスペイン視察での率直な感想は、スペインでは国をあげて観光振興に大変な努力をしているということであった。スペイン政府は世界23カ国にある海外事務所を通じて世界各国の観光動向をモニターし、その情報を各自治体に流している。そして各自治体はその情報を参考に、それぞれ独自に誘致活動を計画、実施しているとのことである。

ペナフィエール市においては、歴史的建造物を利用した観光振興策を実践しているが、具体的な振興策の有効性といったものとは別のところにある、それに対する熱意といったものが市長をはじめ、各担当者から感じとれた。自治体が先頭にたち、そしてそれに住民が理解を示し参加する。そういった構図を改めて認識させられた視察であった。

3 フランス

視察テーマ インターネットを利用した行政サービス
訪問日 平成15年10月22日(水)
訪問先 レジニー市役所
先方対応者 MR.Gerard Ruffin(レジニー市長)
MR.Juliene Bayoko(IT部門担当者)
MRS.Marie Lecompte(広報担当者)
備考 レジニー市URL : http://www.mairie-lesigny.fr
3−1 フランス自治体における情報通信技術の活用

フランスでは小さな市町村の合併が進まず、全国で約3万7000の市町村が存在する。そのうち9割は人口2000人未満の小規模な自治体である。

情報通信技術の進展に伴い、各自治体はこれをチャンスと捉え有効な活用法を模索しているが、政治や経済の中心地から離れた遠隔地にあっては、優れたインフラが整備されていない状況である。大手通信会社のインフラ整備計画によると、人口1万5000人以上の都市では2003年度中にブロードバンドが利用可能になるとされているが、逆に人口1万5000人未満の都市では、まだ見通しがたっていない。

住民が公の情報にアクセスするツールとしてホームページを立ち上げている自治体は数多くみられるが、そのコンテンツは、ほとんどが地理情報、役場概況、議員の紹介、公共サービスの紹介、電子メールによる問い合わせの受付といったものである。

特別な取組みとしては、街の映像をリアルタイムで紹介したり、360度の映像を提供しヴァーチャル的な体験ができるコンテンツを発信しているところもある。

3−2 レジニー市役所公式訪問
■レジニー市の概要
  • パリから南東に約35km。人口7,647人の町
  • 地元の主要産業は農業であるが、最近はパリまで通勤している人も多い。
■ヒアリング内容
  • 町では約20%の世帯がインターネットを導入
  • 98年にフランスワールドカップが開催された時に、ブラジル代表チームが同地で合宿を行った。その情報発信のツールとしてホームページを開設した。
  • 以前はブラジル代表チームに関するコンテンツが中心であったが、03年にホームページをリニューアル。
  • コンセプトは住民のためのホームページ。住民サービスに重点をおいているため外部のアクセスはあまり重要ではない。
  • 議会の内容や今後の動き等をホームページで公開。今後は経済活動なども掲載する予定。
  • 町内紙を月に一度発行しており、同じ内容をホームページに掲載している。しかし、まだ紙で見る人が多い。
  • 電子申請はできない。申請用紙をウェブからダウンロードすることはできる。
  • 人気コンテンツは、1位 町の活動、2位 お店のページ、3位 学校関係である。
  • 町内には学校が3校あるが、6歳以上の生徒にパソコンを設置する予定。
プレゼンテーション風景
プレゼンテーション風景
3−3 私観

フランスには、フランステレコムが開発し、80年代にフランス社会に浸透した「ミニテル」というネットワーク情報検索システムがある。かつては、「ミニテル」の開発と普及により、情報通信技術の社会的活用の先端に位置していたが、それがインターネットへの転換を遅らせる原因となり、現在の普及状況が日本やヨーロッパの平均よりもやや遅れているといわれている。

今回のレジニー市への訪問は、現在、日本でも導入を進めている電子自治体に関する情報を得たいとの目的で参加した視察であったが、私の見た限りでは、ホームページのコンテンツにしろ、セキュリティーへの認識にしろ日本のほうがむしろ進んでいると感じた。ただ、インターネットを何にどう使っていくかということを十分に考えていく必要があることは、フランスでも日本でも同様である。

4 おわりに

視察の合間に、各国の博物館や美術館を訪れた。そこでは、日本ではとうてい近寄って見られないような作品でも、ロープも張らずに間近に鑑賞できるように配慮されていた。また、大抵は入場料が無料であり、多くの子供達が授業の一貫として有名な画家の絵画の前で説明を聞いたり、デッサンをしたりしている姿を見かけた。幼い頃から、こういったものを直に鑑賞することで、深い感性が培われていくのであろう。日本でも「ゆとり教育」なるものが実施されているが、あまりこういった機会に恵まれない日本の子供達は損をしているように思う。

今回の視察においても、私自身、実際に自分の目で見て初めて分かったことが沢山あり、机の上での知識の吸収だけでなく、実際に体験すること、身をもって事柄に接することの重要性を改めて認識させられた欧州視察であった。

(2004.3)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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