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自動車リサイクルの現状について

主任研究員  畠山 秀人

はじめに

高度経済成長時代を経て、わが国の自動車台数は増え続け、一家に1台どころか一家に複数所有する時代になった。2007年の保有台数は全国で約7,566万台、和歌山県で約72万台となっている。このように自動車は私たちの身近な家財になったが、一方、大量に消費されるということは、その裏で大量に廃棄処理されているということにもなる。

そんな中、1990年に香川県の豊島産廃不法投棄事件が発覚した。瀬戸内海に浮かぶ小さな島である豊島の北西部に不法に埋め立てられていた産業廃棄物は、汚染土壌を含む約56万m3(68万t)に上り、その約70%がシュレッダーダストであったと言われている。シュレッダーダストとは、使用済自動車を破砕処理し有用金属を取り除いたあとに残る廃棄物である。

それまでは「古くなった自動車は、部品を取って、きれいにプレスされ、あとは溶かされて鉄に戻る。」と単純に考えていた私にとって非常に衝撃的な事件であった。

このような社会状況の中で、わが国では2000年に「循環型社会形成推進基本法」を制定、2002年に実務的な法律の1つとして「使用済自動車の再資源化等に関する法律」いわゆる自動車リサイクル法が施行され、使用済自動車のリサイクルの仕組みが法令により規定されることになった。

自動車リサイクル法

わが国の自動車リサイクル法は、使用済自動車をリサイクルし部品類・金属類の流通を活性化させるとともに、処理費がかさむため不法投棄の原因になっていたフロン類の破壊、エアバック類のリサイクル、シュレッダーダストのリサイクルに対応できるシステムを構築する目的で2002年に成立した。わが国の自動車リサイクル法には次のような特徴がある。

  • 自動車リサイクル関連事業者にフロン類・エアバック類・シュレッダーダストの指定3品目の適正処理を義務化した。
  • メーカー等にシュレッダーダストのリサイクル(エネルギー転化等)を義務化した。
  • 電子マニュフェストの仕組みにより使用済自動車の流通を集中管理し、不法投棄の防止を図った。
  • 廃棄物処理法・フロン回収法との円滑な接合をした。
  • 所有者がリサイクル料金の負担をすることを義務化した。

※シュレッダーダスト:自動車を破砕処理したあとに出るゴミ
※電子マニュフェスト:使用済み自動車の処理・流通の管理票を電子化したシステム

EUにおける自動車リサイクル

EUでは2000年にEU廃車令を制定し、加盟国における自動車リサイクルの基本的な考え方を示した。EU廃車令の主な特徴は次のとおりである。

  • 2007年以降、製造者は廃車の無料引取を保証し、引取費用の全て又は大半を製造者が負担する。
  • 2006年までに自動車重量の85%を再利用する。
  • 自動車に水銀・六価クロム・カドミュウム・鉛を使用することを禁止する。

EU廃車令を受けて、加盟国では其々の国家事情・産業構造に応じた廃車令を制定し自動車リサイクルシステムを構築している。

ドイツでは、自動車リサイクルがビジネスとして健全に発展できるように配慮した制度となっている。生産者は、2007年以降全ての廃車の引取りが義務となり、社内に廃車引取りのための引当金を構築することになった。

自動車メーカーが無いオランダでは、ARNという自動車リサイクルシステムが産業界により自主的に運営されている。ARNでは自動車の購入者が廃車処理料を基金に支払い、その原資で自動車リサイクルを実施する年金方式が採られている。

リサイクル料金

新車を購入する際または車検時に、所有者はリサイクル料金を負担しなければならないのがわが国の自動車リサイクル法の特徴の1つである。このリサイクル料金は、シュレッダーダストの重量やエアバックの数などにより算出されるため、車種によって異なる金額になる。通常、高価な自動車ほどエアバックの数が多く、車体の大きさに比例してシュレッダーダストの量も多いため、リサイクル料金も高額になる傾向がある。所有者から徴収されたリサイクル料金は、資金管理法人(財)自動車リサイクル促進センターに預託され、主にフロン類・エアバック類・シュレッダーダストのリサイクル費用として事業者に支払われる。ただし、解体に対してはリサイクル料金からの処理費は支払われない。これは、解体工程による部品販売によって費用が賄われると考えるためである。

【リサイクル料金の標準額の一例】
  • トヨタ クラウン CE系  12,060円〜
  • トヨタ カローラ AE系  7,710円〜
  • 日産 アベニール W 10系  8,730円〜
  • メルセデスベンツ E300系 20,500円〜

※各メーカー・販売店のホームページ参照

自動車数

国土交通省の陸運統計要覧による和歌山県域の自動車数を見ると、トラックは減少傾向にあるが、バス・乗用車は増加している。全体的に増加の幅は小さく、H18年度合計で前年度比0.8%増にとどまっている。全国総数を見てもほぼ同じ様な状況である。

陸運統計要覧 自動車数

引取件数の推移

使用済自動車の引取件数の全国推移を見ると、自動車登録の年度末処理に伴い3月〜4月に処理のピークが見られる。また、平成18年度から全体の処理数に増加の傾向が見られる。

使用済自動車引取件数(全国)

鉄スクラップ相場

鉄スクラップ価格の推移を見ると、下のグラフのとおり2006年後半から上昇傾向にある。近年、中国を中心とする経済発展により鉄の需要が伸び、鉄スクラップの市場価格が上昇している。このように鉄スクラップの高値やインターネットによる中古部品流通が活発化したことにより、最近では、使用済み自動車が供給不足の状況にあるといわれている。

鉄スクラップ 関西価格

おわりに

使用済自動車には、エアコンの冷媒として使用されているフロン類やエンジン・バッテリーなどに重金属類が含まれており、不法に投棄されると環境への負荷が非常に大きい。

使用済自動車が不法投棄される大きな要因としては、廃車を処分する際に逆有償(処分費を支払わないと引き取ってもらえない。)の状況にあったことが考えられる。しかし現在は、自動車リサイクル法の施行により、リサイクル料金が新車購入時または車検時に事前に支払われるため廃車時の所有者負担は少なくなった。さらに、鉄スクラップ相場や中古部品流通の活性化により、状態の良い車両だと有償で引き取られる場合もあるなど、リサイクルシステムを円滑に運営するのには良い状況にあるといえる。

しかし、中国景気を背景にした鉄スクラップ相場の動き、途上国向けに輸出している中古エンジンなどが新しい環境基準に適合しなくなる可能性などを考えると、将来的には必ずしも楽観視はできない。今後は、EUにおける先進的な取組み事例などについて調査研究を行ない、メーカー等を中心にリサイクル市場の不安定要素に影響を受けないリサイクルシステムを構築し、自動車リサイクルが一つの産業として発展していくことが求められている。

【取材協力】
  • 和歌山市産業廃棄物課、金田商店
【参考資料等】
  • 経済産業省HP「欧州における自動車リサイクルの事例と我が国の制度の特徴」
  • 環境省HP
  • 自動車リサイクルHP
  • 香川県豊島問題HP
  • (社)日本鉄リサイクル工業会HP

(2007.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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