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決算書等でみる減価償却費とは?

研究員   林 秀訓

決算申告書等でよく計上されている「減価償却費」という勘定科目ですが、意外と中身について疑問に思う方も多いのではないでしょうか?建物や機械等の設備関連の勘定科目であることは理解されていても、他の勘定科目と違い年度末に定額法や定率法といった特殊な手続きを行う見慣れない勘定科目、またはキャッシュフロー計算書を作成する場合に、非現金項目として「加算修正」するなど特殊な勘定科目といったイメージがあると思います。そこで、今回はその減価償却費の計上を行う「減価償却」という会計手続きがなぜ必要か、どうして他の手続きとは違った特徴を持つのかを会計的に説明したいと思います。一般的な仕訳例は以下の通りです。

1.減価償却の意義

『有形固定資産の取得原価を使用できる各会計期間に、あらかじめ定められた一定の計画に基づいて計画的・規則的に配分するとともに、同額だけ資産価額を減少させていく会計手続き』が会計上の意味ですが、これでは全く意味が分かりません。

内容を理解するには、まず、「期間利益はどのように算出されるか」、「減価償却がどういった考え方に基づいているのか」を考える必要があります。まず、期間利益がどのように算定されるかを考えた上で、次に減価償却費の基礎となる考え方を調べていきたいと思います。

減価償却費の基礎となる考え方
  1. 取得原価主義による資産評価(収支額基準)
  2. 費用配分の原則
  3. 発生主義による費用認識
  4. 費用収益対応原則

2.一会計期間の期間利益の算定方法

決算申告書に計上されている期間利益は、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応する全ての費用とを記載して経常利益を表示し、特別損益項目を調整し当期純利益を表示しなければなりません(損益計算書原則・一)。ここで、大事なことは一会計期間の期間費用とは「収益と対応する全ての費用」のことであり、「当期に発生した全ての費用」ではありません。(*図1を参照 )

当期に発生した発生費用(100個製造分)のうち、当期の収益(80個販売分)を獲得するのに必要とした費用(80個分)を抜き出し、当期の期間費用として計上します。そうして、80個販売した「収益」から80個製造するのに要した「費用」を引き算することで、「当期利益」を算出します。

図1より、費用と収益の概念はイメージできたと思いますが、次のステップとして具体的に、費用収益をどのタイミングで認識し、その費用の金額をどのように測定するのでしょうか?図1に(1)発生費用とありますが現在の会計制度上では、費用の認識は「発生主義」により行い、費用の測定は「収支額基準」により行います。

この「発生主義による費用認識」と、「収支額基準」は減価償却費の基礎となる考え方の軸ですので詳しくお話しします。

3.費用の認識基準である「発生主義」について

(1)費用の認識とは何を意味するのか

費用の認識とは、費用の期間帰属をいつにするのかを決定する手続きです。例えば取引先から製品製造のための機械設備を購入した場合、購入時に支払代金を支払います。しかし、この機械の会計上の費用認識は、機械の購入代金を支払った時ではなく、製品を製造するのに機械を稼働し、使用した時点で費用として認識します。

(2)発生主義について

図1のように費用の認識を行うことを「発生主義による費用認識」といいます。つまり発生主義とは「経済的な価値の減少の事実が発生した時点で費用を認識する」考え方です。財や用役の費消という「確定的な事実」に基づいて費用を認識するため、一会計期間の業績を経済的に把握するのに適しています。発生主義により「費用」、「収益」を認識した場合のイメージは図2のようになります。

4.費用の測定基準である「収支額基準」について

費用の測定とは「費用の金額を決定する」手続きです。費用の金額は制度上、費用を取得するのに対価として支払った支出額の金額に基づいて算出されます。機械設備を1000万円で購入すれば、その機械設備を1000万円の価値があると考えるのは自然な考え方であり「収支額基準」とはその当たり前の内容を表しています。

5.費用収益対応の原則について

図1のように当期に発生主義により認識された費用(発生費用)のうち、当期の収益獲得の犠牲となったものが選び出され、最終的に損益計算書の費用として認識されますが、この選び出す過程を「費用収益対応の原則」といい、この原則により選び出され最終的に損益計算書に計上される費用を特に、「期間費用」といいます。

(1)意義

費用収益対応原則とは、適正な期間損益計算の観点から一会計期間における収益と費用を成果と犠牲の関係により把握し、両者を合理的に対応させて正味の成果としての適正な期間損益を計算することを要請する原則です。

(2)役割

費用収益対応の原則は、発生主義により認識される発生費用の中から、当期の収益と因果関係を持つものを選び出し、期間費用として認識する役割を果たします。これにより、成果と犠牲の関係を重視した適正な期間損益計算が行われます。(図1を参照)

当期以前に発生した費用のうち、当期の期間費用とされなかったものは、資産として繰延べられ、次期以降において当該費用の関連収益が認識された時点で、費用収益対応の原則により期間費用とされます。  (製品在庫、仕掛品、繰延資産 等)

(3)費用収益対応の類型
個別的対応
(直接的対応)
商品等の販売事実に基づいて把握される収益と費用の直接的な対応関係。売上高と売上原価に代表される対応関係であり、収益と費用の因果関係や関連性が明確。
期間的対応
(間接的対応)
会計期間を媒介として把握される収益と費用の間接的な関係。売上高と販管費、営業外費用に代表される対応関係で、収益と費用の因果関係や関連性は一般に不明確。

以上の説明により、一般的な期間損益の計算方法のポイントは、費用の額を「収支額基準」に基づき、「発生主義」により認識し、「費用収益対応の原則」により当期の収益に対応する費用を選び出し、利益を算定するイメージを掴んでいただけたと思います。

それでは次のステップとして、本稿のテーマである減価償却費が関連する機械設備や建物といった「費用性資産」の評価額や費用化額をどのように計算し、期間利益を考えるのかという「取得原価主義会計」について考えたいと思います。基本的な考え方は変わりませんが、「費用配分の原則」という考え方にも触れて説明したいと思います。

6.取得原価主義会計について

(1)意義

取得原価主義とは、費用性資産の評価額及びその費用化額を支出額に基づき決定するものです。取得原価主義会計は、適正な期間損益計算を行う観点から、費用性資産に対して要請される会計処理全体の枠組みを示すものです。言い換えれば、発生主義会計による期間損益計算の構造を、費用性資産に着目して説明するものと理解することができます。

(2)費用配分の原則について

貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として当該資産の取得原価を基礎として計上しなければならない。資産の取得原価は、資産の種類に応じた費用配分の原則によって、各事業年度に配分されなければならない。有形固定資産は、当該資産の耐用期間に渡り、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法によってその取得原価を各事業年度に配分する(貸借対照表原則/五)と企業会計原則にはあります。

1) 意義

いずれ費用となるべき支出額を、当期と次期以降の期間に配分する手続きを支える根本思考。

2) 役割・位置づけ

費用配分の原則は、取得原価主義に基づく資産評価を前提として、費用性資産の取得原価を当期の費用と次期以降の費用となる貸借対照表価額とに適正に配分することを要請するものです。

費用配分の原則に基づく配分とは前述の発生主義に基づいて費用性資産の経済価値の減少を費用として認識する過程を示すものです。また同時に、取得原価である支出額を資産の経済価値の減少の認められる会計期間に配分することを通じて、各会計期間の費用額を実質的に測定する過程を示すものとも理解されています。結局、発生主義による費用認識と収支額基準による費用の測定を同時に行うことを意味します。費用配分の原則という概念が特別に明示されるのは、費用性資産の費用額を適正に決定するには、会計処理上何らかのルールが必要とされると考えられるからです。

3) 費用配分の原則の適用方法

【棚卸資産】
費消の事実(製品Aをいくつ払出したか)を事後的・個別的に数量で把握することができます。そのため、事後に把握した数量に取得単価を乗じることで行われ、棚卸資産の費用配分は取得原価(単価)が配分の単位として用いられます。

【有形固定資産】
費消の事実を事後的・個別的に把握できないことが一般的です。費用配分は減価償却の手続きにより、事前に一定の仮定を設けて計画的・規則的に行い、取得原価を各会計期間に渡って部分的に配分することで行います。

4) 費用配分の原則と費用収益対応の原則の関係

費用配分の原則に基づいて決定された発生費用のうち、当期の収益に対応するものが費用収益対応の原則により選択され最終的な期間費用として決定されます。

5) 有形固定資産の費用配分(減価償却費)の特徴

有形固定資産は、一般に企業の営業活動の中で長期に渡りその全体としての用役をもって収益獲得に貢献するものです。そのため、一会計期間における価値の減少を事後的・物量的に把握することが困難です。そこで、使用に先立ち、事前に費用配分の割合において一定の仮定を設け、以降はその仮定に基づいて取得原価を計画的・規則的に配分して毎期の費用額を決定する減価償却の手続きが適用されます。あくまで、一定の仮定に基づいており、一定時点における有形固定資産の帳簿価額(未償却残高)がその地点の資産の経済価値(時価等)を正しく示すものではありません。

7.まとめ

1項から6項で、一般的な期間利益の算定と有形固定資産の費用認識から配分、期間利益の算定の一巡の手続きを説明してきました。結局、期間損益を求めるために、特に有形固定資産を含む費用性資産の場合、(1)収支額基準により配分すべき資産の評価測定を行う、(2)発生費用により費用認識を行う、(3)費用配分の原則により当期の費用を配分し、C費用収益対応の原則により収益を獲得するために貢献した費用を選び出すという手続きが基本にあります。

しかし、有形固定資産の場合は、特徴でもお話しした通り、(3)の費用配分の原則による当期の費用配分において、事後的・物量的に費用額を把握することができません。従って、一般の商品と違い、製造の都度ではなく、期末にまとめて当期の機械の費用額を仮定計算をもって決めているにすぎません。例えば、1000万円の機械を使用し製品を10個製造した場合、その製造過程で何円機械の価値が減ったかは普通わかりません。わかるとするならば、20年間機械を使用し、故障等で買替る時に、1000万円が20年で使い切ったので1年あたり約50万円程度の費用額だなあと初めてわかります。費用額を個別具体的に算定できないため、減価償却という特殊な手続きが必要になるわけです。

(2014.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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