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和歌山県の公共交通

研究員  東野 正裕

1.はじめに

私が和歌山県内の公共交通について、これまで以上に強く関心を持ったきっかけは、大阪環状線の車内アナウンスを聞いたことでした。

車内アナウンスの内容は、西日本旅客鉄道株式会社(以降、JRと省略します)の保守工事に伴う和歌山線での定期的な昼間時間帯の列車運休のお知らせと”バスの代行輸送がない”という案内でした。

気づかず遠方から、その地域を訪れた旅行者は、現地でどうされるだろうか、と非常に心配になりました。交通インフラは、あって当たり前という考えを根底から覆されました。

これを契機に、和歌山県の最近の交通情勢を調べました。

表1.最近の和歌山県の交通史

年 月記  事
平成元年 4月紀州鉄道(日高川〜西御坊間)廃止
平成 6年 3月野上電鉄廃止
平成 6年 9月関西国際空港開港
平成11年 5月南海貴志川線交通センター前駅開業
平成13年 3月JR和歌山駅バリアフリー設備完成
平成13年12月JR西日本完全民営化
平成14年 2月改正道路運送法施行
乗合バス・タクシー事業規制緩和開始
平成14年 3月JR和歌山線オールワンマン化
平成14年 3月JR和歌山線(粉河〜高田)
毎月第二日曜日(6〜8月除く)昼間時間帯運休
平成14年 4月西日本JRバスが1系統(紀伊田辺〜栗栖川)を除く県内の乗合バス事業を廃止
平成14年 5月南海和歌山港線の和歌山港〜水軒間廃止
平成15年 1月有田鉄道の鉄道事業の廃止

資料:平成14年度 和歌山県公共交通機関等資料集

ここ十数年は、鉄道およびバスの廃止など暗いニュースが殆どで、明るいニュースはごくわずかしかありません。

本稿では、地域経済と地域の利用者の視点から和歌山県内の交通についての展望を述べていきます。

2.交通機関をとりまく社会情勢

昨今の社会情勢の変化は著しく、交通機関も大きな影響を受けています。

(1) 少子・高齢化

今後数年の内に、全国的に人口は減少していきますが、それ以上に大幅な年齢別人口構成の変化にさらされます。和歌山県でも、図1のように急激な変化が予測されます。

老年人口(65才以上)は増加傾向にありますが、年少人口(14才以下)および生産年齢人口(15〜64才)は急激に減少しています。

特に、64才以下人口は、過去10年間で7%も減少しています

また、今後10年間で10%も減少すると予測され、通勤・通学者の大幅な減少が懸念されます。

急激な人口構成の変化は、教育・福祉を始め、様々な社会問題を派生し、社会構造そのものが大きく変革することになります。

図1.和歌山県の将来推計人口
図1.和歌山県の将来推計人口

(2) 市町村合併と地方財政

和歌山県内でも多くの市町村が、合併特例法期限の平成17年3月に向けて、市町村合併に取り組んでいます。平成15年10月1日現在、34の市町村が8つの法定合併協議会と3つの任意の合併協議会で、市町村の合併について協議しています。

市町村合併が行われれば、当然、役所・役場などの移転・統合が発生し、地域の枠組みや人の流れが大きく変わってしまいます。

加えて、国・地方財政は共に非常に厳しい状況にあり、合併した自治体でも地方交付税を含め、税収入は減少を余儀なくされると推測されます。

市町村からは、”合併しても大変、合併しなくても大変”、という声も聞かれます。

今後、地方自治体は、予算が縮小していく中で、住民の期待する行政サービスをどう維持していくかという難しい課題を抱えています。

(3) グローバル化と地域経済

グローバル化の進展によって国際競争が激化し、国内製造業の海外流出のため、地域経済に深刻な影響を受けています。また、ここ数年の景気低迷の中、東京一極集中が進み、関西の景気悪化に拍車をかけています。

(4) 高度情報化

目覚しい情報通信技術の進歩により、我々は現地に行かなくても、様々な情報や文献をインターネットを通じて入手することができるようになりました。また、在宅したまま、商品取引や教育などができる時代がきつつあります。

在宅勤務や営業マンのデスクをオフィスにおかず、直接相手先に行く勤務形態をとる会社もでてきています。

(5) 新しいライフスタイル

若者を中心に、従来の仕事中心の考え方やライフスタイルから、「遊び」「楽しみ」「自然とのふれあい」など人それぞれの個性を重視するライフスタイルに変わってきています。

休日の外出も、鉄道・バスなどを使わずに、ドア・ツー・ドアで行動できる便利なマイカー中心に変わってきています。

(6) 交通事業の規制緩和

平成11年5月に鉄道事業法が改正され、平成12年3月に施行されました。また、平成14年2月には改正道路運送法も施行され、鉄道・バス・タクシー事業の規制緩和が実施されました。

これにより、都市部のドル箱路線へのバス事業の新規参入が容易になった反面、赤字ローカル路線の廃止も容易になりました。

従来、特定エリアの交通事業者数を制限する効果として、赤字ローカル路線の維持をバス会社に半ば義務的に運行させた場合でも、一方で、黒字路線の収益を保護する事で、バス事業者の収益のバランスが釣り合っていました。

規制緩和の影響で、都市部ドル箱路線に競争原理が適用され、運賃が下がったことは利用者にとって歓迎すべき事ですが、その一方で、赤字ローカル路線の赤字を補うすべがなくなり、廃止される路線がでてきたことは、地域社会にとって憂慮すべき問題です。

鉄道事業には、バス事業ほどの競争原理は働かないものの規制緩和により、届出を出すことで、1年後には赤字鉄道路線の廃止ができるようになりました。

平成12年以降、多くの赤字鉄道線が廃止され、平成14年以降、バス路線の廃止も現実のものとなっています。(表1参照)

(7) 環境問題

環境問題の中でも特に、地球温暖化の問題が最近よく取り上げられています。平成9年6月の京都会議で採択された京都議定書の第1期の内容を満たすには、平成2年を基準に平成24年までにCO2 などを6%削減する必要があります。

CO2 排出量の削減のため、いろいろな取り組みを始めていますが、マイカーの自粛と公共交通機関の利用促進もCO2 排出量削減に効果的な取り組みのひとつです。

また、自動車が排出する窒素酸化物や粉塵による健康被害についても関心が高まっています。

(8) 高野山・熊野の世界遺産登録

和歌山県内の交通を考える上で、平成16年6月に世界遺産登録が予定されている高野山・熊野についても考えていく必要があります。

県内の生活交通は、下降気味ですが、高野山・熊野については、今後の新たな観光振興のための交通施策が必要となります。

高野山と熊野・南紀方面間の交通アクセスをどう確保していくかが課題となります。

3.公共交通機関廃止の地域経済への影響

鉄道・バス路線が廃止すると、駅および停留所は、人が通る必然性のあるエリアでなくなります。これにより、次の4つの影響が考えられます。

  • ・周辺地域の土地価格の下落
  • ・地域拠点(駅・停留所)の喪失
  • ・産業誘致に支障
  • ・利便性のよい地域への人口の流出

鉄道は多くの土地を必要とする公共交通であるため、建設には多大な努力が必要な反面、一度廃止すると、復活は難しい側面があります。

バス路線については、資産的には鉄道ほどの痛手はなく、廃止した路線の復活は可能でありますが、利用者を再度確保する事が難しいと考えられます。

また、鉄道・バス共に廃止した時点で、地域の人口流出と衰退が始まるため、再度交通機関を復活させることは極めて困難であると考えます。

4.自動車交通と交通弱者

和歌山県では、道路交通網の整備により、年々渋滞が緩和され、自動車交通はより便利になってきました。また、将来推計人口は減少傾向にあり、道路の混雑は今後さらに緩和されていくものと考えられます。

和歌山県のマイカーは、これまでは年々増加してきましたが、現在ピークに達しており、今後緩やかに減少していくと思われます。

自動車は、ドア・ツー・ドアで、どこにでも行ける反面、どこにも寄らなくてもよいため、近所を歩いたり、駅・停留所などを通ったりする必然性がなく、近所の人と顔を合わせる機会が減少していきます。

地域の交流の場や地域拠点がなくなっていく事が心配されます。

表2.和歌山県の自動車保有台数  [台]
表2.和歌山県の自動車保有台数  [台]

表3.自動車免許保有者数の推移  [人]
表3.自動車免許保有者数の推移  [人]

また、図1でみる通り、65才以上の人口は今後しばらく増加が予測されています。平成12年現在、65才以上の人口は21%であり、平成22年には26%に達する見込みです。表3をみると、64才以下の免許保有率に比べ、65才以上の免許保有率が著しく低くなっています。

加齢と共に運転をやめる人が増加していきます。

これら免許を持たない高齢者、17才以下の子ども達や身体障害者および妊婦など自動車を運転できない交通弱者の交通手段をどう確保していくかが、今後の課題となります。

5.各交通手段の特徴

利用者の立場からは、鉄道、バス、タクシー、マイカー、自転車、徒歩などの交通手段が選択できます。環境面で、鉄道・バス・自転車が優れています。特に、自転車の利便性と環境面での優位性が再認識され、駅などに駐輪場を整備する自治体も増えています。

表4.各交通手段の特徴

特   徴
鉄 道低運賃で、高速大量輸送が可能。定時制や環境面でも優れているが、建設・維持コストが高い。
バ ス低運賃で、大量輸送可能。環境面で優れているが、道路渋滞の影響を受けるため定時制に劣る。
タクシー道路渋滞の影響を受け、環境面からも好ましくない。利用者の運賃が高く、地域によっては、タクシーがつかまらない。
自動車徒歩区間が殆どなくなるため、利便性がよい。道路渋滞の影響はやはり受け、環境面からは好ましくない。
自転車徒歩区間が殆どなくなるため、利便性がよい上に、環境面でも優れており、非常に優れた交通手段。
徒 歩近距離に行動範囲が制約される。

6.日本の公共交通機関の二面性

日本の公共交通機関は、地域を支える移動手段としての公共性の側面と、民間営利企業としての側面の二つの側面を持っています。

JRの株式上場で、殆どの交通機関が株式会社となり、株主から採算性と配当を求められる立場となりました。この二つの立場は相反しており、人口減少等による赤字路線の増加のため、営業収支が悪化しているため、民間営利企業の立場で、収支の赤字化を防ぐことを優先する方向に傾いています。

7.道路重視の自治体予算

地方自治体は、多くの予算を道路の維持・整備に費やしています。和歌山県でも、表5のように交通関係の予算の殆どを費やしています。

表5.平成14年度和歌山県交通関係予算[千円]
表5.平成14年度和歌山県交通関係予算[千円]

8.交通弱者からみた行政の交通施策

前項のように、行政が道路整備に力を入れてきた結果、道路渋滞の緩和や道路移動時間の短縮などの成果がでています。

ただし、交通弱者の視点から考えると、せっかく立派に道路が整備されても自動車・バスなどを利用できなければ、その利益を直接享受することができません。

交通関係予算約770億円の9割近くが、道路関係に費やされていますが、その内のわずか数%を費やせば、交通弱者のために、鉄道・バスなどを維持・整備していくことができます。

9.鉄道の経営状況

和歌山県内の鉄道各線の乗降客数を表6にまとめました。表6をみると、和歌山県内の鉄道の乗降客数は阪和線(和歌山駅を除く)以外は減少傾向にあることが伺えます。

表6.和歌山県内の鉄道の乗降客数 [人/日]
表6.和歌山県内の鉄道の乗降客数 [人/日]

以下で鉄道の各路線毎の収支状況の分析を試みますが、鉄道の公開されている資料を基に、鉄道の各路線の経営状態を推し量ることは、非常に困難です。

特に、1社で複数の路線を乗り継げる場合での各路線毎の運賃収入や各社各路線の設備の違いを把握することは、公開されている情報からは不可能ですが、可能な範囲で分析を実施します。

鉄道を運営する上で、主に3つのランニング・コストがかかります。

  1. 駅員や列車乗務員の人件費等、列車運行に係る営業費用
  2. 固定資産税や減価償却費等と線路設備の保守など維持に係る費用
  3. 線路用地の買収など鉄道建設に係る債務に対する利払い

この鉄道の3つの経費の内、1は実際には列車の走る距離や駅数等によって変わりますが、ある程度、線路長に応じて、経費が増加します。また、2と3は線路長に比例して、経費が増大します。

運賃は、乗車距離が1キロの場合と2キロ場合で、2倍になったりはせず、運賃は同額か少し増える程度です。よって、路線長があまり長くなければ、輸送人員・キロを元に考えるより、輸送人員を元に運賃収入を推測する方が適切と考えます。

よって、誤差はあるものの乗降客の平均運賃が路線毎にそう大きく変わらないと仮定し、経費は距離に比例すると考え、キロ当たり乗降客数を指標とします。

この指標は、誤差は大きいものの目安としてみることはできると考えます。

営業キロ1キロ・1日当たりの乗降人員を表7と図2にまとめました。

(なお、JRは表6の和歌山駅分を独自に各線に振り分けています。)

表7.2000年の各社のキロ当たり乗降客数
表7.2000年の各社のキロ当たり乗降客数

図2 鉄道のキロ当たり乗降客数の推移
図2 鉄道のキロ当たり乗降客数の推移

表7を見ると、南海本線や阪和線と他の路線で、明らかな格差があることがわかります。

また、例えば、路線長が中距離で自社乗り換えのない貴志川線の採算ベースは、年度によってばらつきはありますが、千人/キロ・日前後となっています。

この指標には誤差の幅がかなり大きいため、必ずしも他の路線の採算ベースを一概にいうことはできませんが、和歌山県内の多くの鉄道路線の収支はあまりよくないのではないかと推察します。また、乗降客数の減少傾向は続いており、今後も厳しい状態が懸念されます。

なお、この指標をみる時に、特に次の3点に注意しておく必要があります。

  1. 路線長が非常に長い路線など、路線毎の平均運賃に比例して、誤差が大きく生じます。
  2. 他の路線への乗り継ぎ者の多い路線や特急料金を収受している路線は運賃収入の誤差が大きくなります。
  3. 路線毎の駅数・列車運行本数・鉄道設備の状態により、経費の規模が大きく変わります。

特に、鉄橋やトンネルがある路線は、経費が著しく大きくなります。

よって、鉄橋やトンネルの多い路線は経費がふくらむため、採算をとるために千人/キロ・日より多い乗降客数が必要となり、逆に、路線長が長く乗客の平均運賃の高い路線や線路設備の経費を大幅に抑えている路線では、千人/キロ・日より少ない乗降客数でも採算が採れることになります。

また、各社の背景や鉄道事業の比重もまちまちです。紀州鉄道は、鉄道業以外の事業規模の方がはるかに大きいなど、各社の事情や設備規模にもかなりの格差があり、分析を一層難しくしています。

なお、ホームページ掲載に当たり、 貴志川線の情報分析 を別頁に追加しています。

10.バスの経営状況

和歌山県の乗り合いバス事業について、営業成績を表8にまとめ、鉄道と同様の考え方から、輸送人員/走行キロを算出しました。

表8を見ると、平成13年度の輸送人員は、昭和55年度の1/3近くにまで減少しており、走行キロ当たりの輸送人員も1.07人/kmにまで落ち込んでいます。これにより、近年は営業収支が急速に悪化していると推察できます。

また、この走行キロ当たり輸送人員は平均ですから、けやき大通りや県庁前の交差点付近のようにバスが多く走り、乗車密度が高い区間も含まれています。よって、閑散路線の乗車密度はかなり低いものとなっています。

路線によっては行政からの補助金もありますが、ここまで輸送人員が減少すると、営業収支の著しく悪い路線が相当数あり、経営を圧迫しているのではないかと推察します。

表8.和歌山県の乗り合いバスの営業成績
表8.和歌山県の乗り合いバスの営業成績

11.タクシーの経営状況

和歌山県のハイヤー・タクシーの車両数は、2000台前後で推移し、ほぼ横ばいです。

ただし、表9が示す通り、1日・1車当たりの輸送収入は年々減少しており、タクシー会社の経営を圧迫しています。

京都では、”忘れ物を届けたり、買い物の代行サービス”を始めたタクシー会社があるように、タクシー業界もサービスの多様化が始まっていますが、同時にタクシー会社の再編と淘汰も始まっています。

表9.和歌山県のタクシー1日・1車当り実働
表9.和歌山県のタクシー1日・1車当り実働

12.欧州の公共交通

欧州は日本より、少子高齢化が早くから進んでおり、公共交通は政府・自治体などからの補助金で運営されているところが殆どです。

欧州では、人は自由に移動する権利があり、交通弱者であっても、必要な交通手段は確保するべきだという考え方が定着しています。

また、環境面からも公共交通を重視しており、マイカーより公共交通を利用させる仕組みづくりに社会全体で取り組んでいます。

パーク&ライドやマイカーを含めた各交通機関の乗り継ぎの円滑化のために、様々な努力がされています。

欧州ももちろん車社会ですが、人と車と鉄道・バスが調和したまちづくりを大変な努力によって、実現させています。

13.将来の交通システムへの提言

欧州の例を見ても、年少・生産年齢人口の減少に伴い、地方公共交通機関が独立採算を保つことが不可能になっていくことは明らかです。

和歌山でも、人口減少などにより、急速に交通会社の経営収支は悪化しており、表1にみるように既に鉄道の廃線やバスの路線縮小は始まっています。欧州のように、国・地方からの財政援助を行って、地域の生活交通を確保していくことが必要であると考えます。

有田鉄道の廃線の時は、バス路線に転換しましたが、今後の廃線の際には、次のようにいろいろな角度からもっと検討していくべきだと考えます。

  1. 鉄道を廃線せずに第三セクターとして維持する
  2. 財政支援をして鉄道を維持する
  3. 新型路面電車LRT(Light Rail Transit)に転換する
  4. バス路線に転換する
  5. 鉄道跡を一般道路として活用する

更に、交通システム全体について、市町村単独ではなく、複数市町村や県全体レベルでの広域での交通システムのあり方について、考えていく必要を感じます。

特に市町村合併が実施される地域では、住民への大きな影響があるため、地域にあった交通システムを合併前に充分検討しておく必要があります。

加えて、今後の人口の減少のために、人口分布が虫食い状に偏った地域分布になることが予測される地域では、交通需要が数年で大きく変化する事もあり得ます。

よって、数年ごとに、公共交通についての住民意向調査等を実施して、最適な交通システムを模索していく必要があるでしょう。

亀岡市や阪南市など近畿運輸局管内の22の地域で、自治体が低廉な運賃のコミュニティーバスを走らせ、運営は民間に委託して運行しています。このようにコミュニティーバスを自治体で走らせるのか、路線毎に補助を行って民間バス路線を維持していくのか、廃止に向かうのか、難しい選択を迫られることになります。

利用者には、最後の選択として、行政サービスや公共サービスの悪い地域からもっと条件のよい地域へ転出することができます。

例えば、交通の便の悪い地域に住んでいる高齢者の方が、加齢に伴い、日々の買い物や生活に不便を感じて、子供の住んでいる所に転出するケースなどがあります。

実際には、こういう動きは既に始まっているともいえるでしょう。

最近、和歌山市内でも中心部にマンションがいくつも建設され、周辺地域の人口の減少に拍車をかけています。

人口の密集する市街地でも、もっと利用者の利便性のよい交通システムを再構築していく必要があるでしょう。タクシーの駅構内乗り場への入構制限やバスの停留所以外での乗降の禁止などの規制を撤廃すべきだと考えます。

また、一部で導入されている公共交通優先信号システムのエリア拡大やバスロケーション・システムの導入、各交通機関の接続利便性の向上など、自治体に対する住民からの期待と要望は非常に大きいものがあります。

交通政策については、先進的に取り組んでいる都道府県もありますが、後手後手になり、地域社会が衰退しつつある地域もあります。

表1を見る限り、和歌山県でも交通政策が後手にまわりつつあり、早急な検討が望まれるところです。また、これからの社会構造の大きな変化への対応についても、あわせて検討する必要があります。

14.おわりに

結論として、これからの地域交通は、営業収支ベースではなく、住民の声を元にニーズにあった地域交通を考えていくことが大切であり、住民と自治体が協力して取り組んでいくべき問題と考えます。

最後に、今回述べられませんでしたが、交通システムのまちづくりへの影響についても述べていきたいと考えています。鉄道線や大きな車道は、まちを分断し、まちの広がりと発展を制限してしまいます。

わずか2車線の車道でも自動車の通行量の多い通りでは、通りの片側の人通りが少なかったり、自動車の通行量の少ない道路に比べて、通りを行き来して横断する人が極端に少なくなったりしています。

LRTを活かした人にやさしいまちづくりや和歌山市内の交通システムについて、次の機会に述べていきたいと考えます。

(2003.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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