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欧州地方行政調査報告

研究部長  井ノ本 眞治

概要

研修期間 平成13年11月12日(月)〜11月23日(金)(12日間)
研修先 イギリス、ギリシア、ドイツ、イタリア、フランス

はじめに

平成13年9月11日の米国における同時多発テロの影響で航空機等を利用した欧州地方行政調査は取りやめにしようかと悩んだが、現在の潮流としての国際化、グローバル化に対応して新聞、テレビといったメディアからの情報では飽き足りなくなったうえに、テロ後の航空産業の落ち込みが激しく景気の低下に拍車をかけている状況もあり、つぶさに海外事情を視察することが大事であると考え命を掛けた視察、国際交流にあえて挑戦することとした。

案の定、出発日である11月12日には、ニューヨーク郊外に飛行機が落ち、到着したフランクフルト空港でそのニュースを聞くことになった。墜落原因が不明でこれからの旅行の前途に一抹の不安を投げかけることになる。

私自身、5カ国訪問での飛行機利用回数は延べ8回にもなることから飛行機の無事な離着陸を心の中で常に念じることとなった。

地球の裏側にあたるヨーロッパへは、飛行時間で10時間以上を要し、距離的には勿論、文化遺産や思想など歴史的にも異郷・別世界という思いがあり、日本を含む東洋とは隔世の感がする。短い期間ではあったが、改めて西洋と東洋の違いを実感する事ができた。

今回の欧州地方行政調査は、5カ国という多くの国を視察する上に、調査対象も高齢者福祉施策、古代遺産を活用した観光施策、ごみ処理などの環境施策、地方経済振興策、青少年問題などと広範多岐な範囲にわたったものであったが、訪問した各国それぞれの担当部局の関係者との意見交換が出来た。国情や制度等の違い、更には言葉の問題から充分に把握できたとは言えない面もあるが、以下訪問国順に視察内容の要旨などを、私観も含め報告することとする。

1 イギリス

テーマ 英国における在宅型高齢者福祉施策
訪問日 平成13年11月13日
訪問先 エルダベリーデイケアセンター
Elderberries Center for Old people(ロンドン市レッドブリッジ区)
担当者 MS.EVE Baguma‐Joy…デイセンターマネージャー(ウガンダ系イギリス人)
MS.鈴木玲子…スタッフ(在英日本人ワーカー)
1−1 エルダベリーデイケアセンターの概要
対  象 65歳以上で痴呆症(軽度か?)のある在宅老人
入所審査 ア.本人に必要なケアで、同施設で提供ができるかどうか
イ.財政的負担が可能か(6£=約千円/日)
提供するサービス内容 送迎、リハビリ、マッサージ、各国料理教室、ツボ押し
職  員 マネージャー1人、スタッフ(看護士等の有資格者)18人、調理師2人、他にボランティアスタッフ
開所日時 月〜金曜 9:00〜17:00
運営費 職員の給与、施設運営費など経費の80〜100%を公費で負担。
1−2 調査槻要

英国も高齢化が大きな課題になっている。1989年で15.8%、ピーク時の2025年には18.3%になると想定。我が国の高齢化のスピードより緩やかで、ピークの山も低い。

ただし、英国人の気風として、成人すれば独立して親と別居を求める傾向(親の方にもある)が強く、結果として独居老人が多い。このことは、日本のような家族介護(最近は公的介護も多くなってきている)と少し違った高齢者介護の問題となっている。

英国では、家族人数や就労先との距離など、ライフスタイルにより、生涯にいくつも家を移り住むのが一般的になっている。

英国では、高い税金・社会保障負担と引き替えに高い福祉サービスという考え方が、戦後一貫して採られているが、その抑制策もサッチャー政権時代に採られた。その一環として、施設ケアから在宅ケアへ比重を移す試みがなされた。今回の訪問先は、在宅福祉の延長上にあり、健康な独居老人が昼間過ごすための施設である。

英国の高齢者福祉、医療は、

  • 在宅ケア=デイケアセンター
  • 施設ケア=レストホーム(健康な老人ホーム)
  • ナーシングホーム(日本の特別養護老人ホーム的なもの)
  • 病院

レッドブリッジ区はロンドン22区の1つで、人口22万人.同区には8つデイケアセンターがあり、各々が対象者やサービス内容に違いがある。

スタッフ以外にサポートグループがある。同グループは、同施設利用者の親戚の人などで、独居老人を家に誘ってティータイムをもったり、同居者がいる老人には同居者に介護の休みを取れるよう日中預かったりしている。

レッドブリッジ区では、デイケアセンターの利用については、特に選ばなければ、即利用可能とのことである。

同所で働く日本人スタッフは、将来的には、在英日本人のためのデイケアセンターを造ることを夢みて、そのためにここで働きだした。英国には、ユダヤ人やインド人専用のデイケアセンターがあるという。高齢化すれば、母国語しか話さなくなる老人が多く、日本人向け施設も必要である。

テームズ河畔にて
テームズ河畔にて

1−3 私観

わが国では、世界に例の無い速さで高齢社会に突入している。福祉先進国である北欧や英国での高齢者福祉は、“ゆりかごから墓場まで”といわれてきたように、基本的には高福祉高負担のもとに公的部門の役割が大きいが、当センターを見ると親戚はもとより地域の人々などボランティア団体等の地域活動も重要な役割を果たしている。

核家族化が進み、高齢化に加えて過疎化の進んでいる、特に地方の自治体にとっての高齢者福祉をどのように考えていったらいいのか。

寝たきり(ベッドバウンド)という概念の無いヨーロッパと寝かせきりにして置かなければいけないわが国の状況を考えるとき、介護問題について、費用負担も含めて誰が世話しなければいけないのか、又世話していけるのかその仕組み(システム)を根本的に考えていく必要を痛感した。経済の高度成長はもはや望むべくもない現状の中で、少子高齢化が進み、介護需要が増大することは明らかではあるが、その需要を充たすだけのマンパワーの確保と費用負担の問題が喫緊の課題ではないかと思われる。

余談ではあるが、ウエストミンスタ―寺院を見学したとき、歴史に残る英雄たちもその地下に眠っている(埋葬されている)。その墓碑銘を踏むことができる西洋と、墓所は神聖であるとする東洋との宗教観の違いなどからも、福祉施策に対する考え方にも多様性があり、深く人生観の相違が出ているように思われる。

2 ギリシア

テーマ 古代遺跡を活用した観光施策
訪問日 平成13年11月15日
訪問先 Tourist Board in Athens(アテネ市覿光局)
担当者 MR.Athanasios Zacharoglou (国際広報部長)
MS.Angela Vatela (同部宣伝担当)
2−1 調査槻要

アテネは、人口約300万人でギリシアの人口約1千万人の1/3を擁し政治・経済・文化の集中している都市である。訪問先は、国の覿光を所管するセクションであったが、名称はアテネ市観光局となっている。

観光はギリシアの中心産業で、GDPの7%を占めている。
観光に何らかの形で従事する人口は60万人。ホテルのベッド数は70万床。
年間1300万人の観光客があり、国民の数を上回っている。

観光客のうち93%がヨーロッパから。このため数字的にはアメリカでの、今回のテロ事件の影響はそれほどでもない。

以前は史跡巡りなど歴史文化が観光資源の中心だったが、近年は、25OOの多島海であるエーゲ海のクルーズ観光が伸びている。

ギリシアの観光行政の課題は、ヨーロッパに片寄る観光客の世界規模化と、季節的にも夏場に片寄っているのを通年化すること。
そのため、アメリカや日本からの誘客に力を入れている。特に、アメリカ人のクルーズ好きと日本からの団体旅行の受入に力を入れている。

海外に27の観光センターがある。以前はセンターが個々に誘客に取り組んでいたが、1990年からは統一した戦略のPRに取り組んでいる。

今までで世界的に最も有名になったキャッチコピーは『神から選ばれたギリシア』である。

2004年のアテネオリンピックの際には、故事に習い世界中での戦争・紛争の中止をギリシアからのメッセージとして発する予定とのことである。

日本からの観光客は、成田一アテネの直行便が有った当時は14万人/年あったが、廃止後は8万人に留まっている。
日本の国土交通省と復活の協議に入っている。(関西空港便の開設も要望)

行政の所管としては、

  • 観光行政…「開発省」
  • 古代の遺跡保存…「文化省」
  • 2〜300年ほど前の住宅などの文化財…「開発省」

術並み保存のため、2〜300年ほど前の住宅は伝統的な外観や色を変えることは禁止されている。観光資源に活用できると国が判断した場合は、補助金が支給される。また、利用について、例えば旅館のように利用する場合はその改装経費は支給される。

オリンピックに向け地下鉄工事を進めているが、多くの埋蔵遺跡が出土しその調査があるので苦労している。工事により発掘された遺物は、最寄りの地下鉄の駅にミニ博物館を併設し展示するようにしている。

古代の遺跡は保存するだけでなく、活用することが重要と考えている。その一環として、アクロポリスのふもとのディオニソス劇場では、古代の悲・喜劇やオペラなどを毎年開催し、ヨーロッパ各国からも観光客が来る音楽祭として定着している。

パルテノン神殿
パルテノン神殿

2−2 私観

ふるさと“和歌山県下津町・大崎”は万葉の古代から詩に読まれたところで、私は日本の“エーゲ海”(別に瀬戸内海にこのように呼ばれているところがあるようだ)として宣伝しているが、アクロポリスの丘に立つパルテノン神殿から「ほんまもんのエーゲ海」を望んだ時の感動は、今も目に焼き付いている。

古代ギリシャの英雄たちが活躍した舞台に残る巨大な石造建造物。片や万葉集という歌集に残る抒情詩。今流に言うとハードとソフトか。現実に存在し、目にすることのできる人類の遺産と目を閉じて読みびとや旅人の情感を彷彿させる文学史的景観。和歌山県には世界遺産登録をめざす高野熊野を中心とした紀伊山地の霊場と参詣道をはじめ多くの歴史的な由来を持った自然景観を数多く擁しているが、いずれも観光資源としての要素を備えている。これら資源を活用し、地域の活性化に生かしていくことが今を生きる私たちの役割ではないかと思う。

3 ドイツ

テーマ ドイツにおけるゴミ処理の現状
訪問日 平成13年11月16日
訪問先 Kompostanlage Heidelberg−Wieblingen(ウィブリンゲン州ハイデルベルクゴミ処理場)
担当者 MR.Rolf Friedel(ハイデルベルク市ゴミ処理場局長)
3−1 調査槻要

ヨーロッパは、現在EUとしての考え方が最上位槻念として存在する。従って、ゴミの問題もEUの考え方、ドイツ連邦の考え方(規制)、そして実際の処理を担う自治体の考え方という、3段階の規制になる。

EU…自由競争原理のもと、域内は人・物が自由に動かなければならない。リサイクルできる物は移動できなければならない。

連邦…メーカーは製造物が最終にどういう形で処理されるかまで把握し責任を持つ必要がある。

ゴミ処理は10万人以上の人口規模の市町村が行う。小さい町は郡が行う。従って具体的な処理方法や規制は市町村条例により定められる。

調査先のゴミは、ウイブリンゲン州(人口100万人規模)で広域処理されている。従って、訪問したハイデルベルク市は生ゴミのコンポスト化処理、マンハイム市が最終ゴミの処理、ラインネッカー郡がゴミの埋め立てと分担して担当している。

ゴミ処理に要する経費は、全て受益者負担。州や市町村の費用は全くない。施設建設は、公費であるが、ゴミ処理の手数料で20年で償還する予定。

各家庭ごとに色分けされたゴミ箱を設置。

ゴミ減量化、とりわけ最終ゴミ(リサイクルできないゴミ)の減量化の取組について

(1)料金体系の単純化

(2)分別容器の色分けによる明確化(在独外国人には文盲の人がかなりいるらしい)―実行可能性を高くするため

  • (6分別)
  •   茶色――生ごみ、有機ゴミ
  •   黄色――メタル、プラスチックなどの包装材料のゴミ
  •   灰色――リサイクル不能ごみ
  •   青色――ダンボール、紙ゴミ
  •   白・緑色――ガラスゴミ(色による小分類あり)

(3)徹底した広報‥市民に納得してもらうことの重要性―市民参加

  • 詳細な説明書の各家庭への配布
  • 外国人向けに外国語の説明書の作成
  • ゴミを身近な物としてとらえてもらうためのユーモラスな標語の作成
  • センター(ごみ問題等の問い合わせ先)に8人のコンサルタントを常駐。コンサルタントは、化学、生物学、エンジニア、教育学などの専門家

(4)家庭からの排出量に応じた課金システム(分類へのモチベーションの向上のために料金設定し、有料制とした)=バンダロールシステムの導入

  • 最終ゴミの処理費を最も高く設定(リサイクルできるゴミはその40%ぐらいに値段設定)
  •    ↓
  • これらの取組により、1戸建ての家庭の60%が目印を付けた日だけ最終ゴミを回収してもらうようになった。生ゴミは、衛生上、1〜2週間に1度は必ず回収する。
  • 平均的な4人家族で、ゴミ処理にかかる年間費用は300マルク(約18,000円)。
  •    ↓
  • 最終ごみの減量化に繋がった

リユースとリサイクルの違いの啓発は広報の粘り勝ち。ごみ問題を自分自身の問題として啓発して行った。

ごみの減量化は、祭など行政が行う事業から徹底して行った。

ロルフ・フリーデル局長の説明風景
ロルフ・フリーデル局長の説明風景

3−2 私観

ドイツでは、ごみ問題など環境問題を含めて、市町村、郡、州のそれぞれの役割分担が明確になされている。基本的には、生活に密着した最小単位の自治体である市町村の自立意識が高く、個が確立しているように思われる。

このため小さな自治体で解決できない問題は、合理的な理論の下で目的に向けて段階的に郡、州へとあがっていく。このような行政システムがきっちりと構築されているように思われる。

ロマンティック街道やメルヘン街道をバスで走行したとき、なだらかな丘陵地の中で突如として中世の街並みが出現した。どうしてこのような農村地域にローテンブルグやハイデルベルグといった街が出現できるのか。この街の人々の暮らしはどのようにして維持されているのか。田園都市としての経済基盤の確立はどのようになっているのだろうか。中世から近世にかけて、ハンザ同盟という都市同盟が存在したが、現在もライン川やネッカー川といった大陸を悠揚と流れる大河の流れのように、地域社会の成り立ちについて、人々の日常の生活の中に豊かに育まれてきているのだろうか。

訪問地の中で、学生時代に読んだマイヤー・フェルスターの「アルト・ハイデルベルク」物語の舞台となったハイデルベルク大学は、今でも大学の街として知られるこの市のシンボルであり、地域としての成り立ちに大きな貢献をしている。ハイデルベルクやローテンブルクの町は、自立した町として存続していける一つのモデルのように思われる。

どこかの国のように、効率性と経済性ばかりを追い求め、地方から都市へと人口の過度の集中をもたらし、地方の過疎化(疲弊?)の上に都市基盤を確立している性急な国民性とどこか異なる「頑なさ=強い意志」を感じたのは私だけだろうか。

4 イタリア

テーマ 地域産物を利用した観光施策
訪問日 平成13年11月19日
訪問先 Marino Municipal Museum(マリノ市立博物館)
担当者 MS.Sandra Piacentini(マリノ市文化部長)
MR.Aressandro Bedetti(市立博物館職員)
マリーノ市の
槻要
位置 : ローマの南西、時間距離で約1時間
人口 : 4万人
主産業 : 別荘地を含む観光と農業
キリスト教が流布する以前にヨーロッパで広く信仰されていたミトラ神の遺跡があることで有名
4−1 調査槻要

マリノ市は、帝政ローマ時代の南へ伸びる幹線上に位置し、高台にあるため避暑地として発達した。2〜3世紀に教会が建てられた歴史的な町である。

16世紀にこの地を支配した貴族がぶどう栽培と栗の植樹(ぶどう酒樽の原材料)を進めてから今の町の基礎ができた。

市の行政組繊について
  市長(住民から直接選挙)と6分野を担当する副市長が施政
  (社会福祉、文化、スポーツ、都市計画、公共事業、総務・商業)
     予算規模  700億リラ (約49億円)
     職 員 数   200人
     議  員   30人

予算の財源については、市が課税する租税以外に、国・州・県の上部団体からの補助金がある。

主産業のワインづくりは、重労働であることから後継者難であり、また70年代に価格が暴落したことがある。それを契機に量より質への転換を図り、価格も上昇し若者が戻る傾向にある。

ぶどう栽培は、個人の農家が行っている。醸造は、農家が集まった組合と民間企業が行っている。

(ローマ市の景観保護)

イタリアでは、憲法で景観は国民共有の財産とうたっている。景観保護についてのコンセンサスがあるようだ。

ローマ市内の旧市内(城壁の内側)については、建築物の外観はおろか、空き地もそのままにすることが最近決定された。空き地もそのままというのは、驚きである。

郊外に大規模駐車場をつくり、そこからは公共交通を利用(パーク&ライド)し、市内への自動車の流入を減らそうとしているらしいが、あまり効果があがっていないようだ。

コロッセオ遺跡の内部風景
コロッセオ遺跡の内部風景

4−2 私観

ローマ時代の遺跡は、ギリシャの古代遺跡と比べればやはり規模的にも、技術的にも“さすがローマの建造物だ”と万人を凌駕するものがある。

コロッセオの遺跡での格闘技(人対人、人対野獣)の喚声がそこかしこに木霊している。そんな錯覚に捕らわれた。巨大遺跡は、権力者の権勢の象徴として、また市民、そして奴隷が奏でる協奏曲として現代にも語りかけてくるものがある。

ローマ市内の雑踏と賑わい。無秩序な自動車の駐車事情。これらが不思議にマッチしている。

そして、ローマの懐に抱かれたバチカン市国。全世界のキリスト教の大本壇。これには、圧倒された。ミケランジェロやラファエロなど世界の美術界の天才が描いた壁画などがあちこちにゴロゴロ。世界の秘宝も普通の「徒の物」のように思われる。

“夏草や つわものどもが 夢の後” 松尾芭蕉の一句ではないが大ローマ帝国を建設したイタリアの人たちの胸裏には、今、ヨーロッパや世界の中で、イタリアのそのおかれている位置づけについて、どのような感慨を持っているのだろうか。

5 フランス

テーマ 青少年のための社会教育・文化センターの活動
訪問日 平成13年11月21日
訪問先 CENTER D‘ANIMATION MARC SANGNIER
(マーク・サンニェール青少年センター)
担当者 MR.Alain Girard (同センター ディレクター)
5−1 調査槻要

マーク・サンニェール青少年センターは、パリ第14区の外郭環状道路の近くにある。

同地区は、比較的低所得者層や海外からの転入者が多い地区である。

同センターは、低所得者層の人も他の階層の人とつき合えるようにすることを目的のひとつにしていて、様々な人がこのセンターで交流できるよう取り組んできている。

同様のセンターはパリ市内に45ある。日本で言うところの生涯学習センターとカルチャーセンターを合わせたようなものである。

市の施設で、運営はNPO的な協会が行っている。

協会は、5年ごとに運営企画書を市に提出し、承認を受け契約するシステム。施設運営費、協会職員の人件費は市から支給されている。

センターの活動は、有料で様々な講座(現在55講座)を提供している。大別すると文化系講座とスポーツ系講座になる。

講座対象は、3区分
  修学前の幼児…水曜日  小学生…月〜金曜(17:00〜19:00)
  中学生〜成人…月〜金曜(19:00〜22:00)
  成人を対象にした講座は午前中から開健のものもあり

講座はその分野の専門家(有資格者)がインストラクターになっていて、人によってその料金が異なる。この受講料を受講者が負担する仕組みになっている。経済的に困難な人には免除制度もある。

他に入会金が100フラン必要である。

現在、約2千人が同センターの受講者として登録されている。

人気のある講座
  (子ども)  女…ダンス   男…柔道、絵画
  (成人)   美術、コンピューター、語学、ワイン学

ベルサイユ宮殿広場にて
ベルサイユ宮殿広場にて

5−2 私観

アラン・ジラードディレクターとの話の中で、ジプシーや移民の問題を質問したとき、彼ら(フランス人)は、人権という観点からジプシーや移民を一人の人間の問題として真正面から捉えていた。日本人は、ややもするとすぐ「外国人の問題」という観点で捕らえる傾向が強い。島国で単一民族であるということもあるが、国民性の故か国際化やグローバリゼーションというのは、まだまだの感がする。多民族が織り成す国際都市パリの面目躍如といったところか。

ギリシャ、ローマといった古代、中世に創られてきた巨大石造建造物の街並みを見てきた私にとって、パリは現代の、少なくとも近世及び近代のモダンな美観に思える。

フランス革命により断頭台の露と消えたマリーアントワネットの無念が、コンコルド広場の民衆の歓呼の中で怨念として宿っているようだ。

世界サミット会議の会議場にもなったベルサイユ宮殿の絢爛豪華な建物も、大きな歴史上の遺物として多くの観光客を呼んでいる。

ルーブル美術館やオルセー美術館など多くの見残した名所旧跡を後に残しパリの短い日程を終えた。名残の月の残影が私の胸を締め付けている。

6 おわりに

東洋と西洋。私にとって、地球上にまだまだ知らないところが沢山ある。同じ人間が生活してきた痕跡が、地域によりこのように違うものか。交通・通信手段の発達とともに地球上の時間距離は益々短くなってきている。

人種、宗教、思想、言葉、生活風習などなど、人間を取巻く環境はそれぞれ異なっているが、それだけに面白いことが沢山ある。学ぶことが沢山ある。

今回の視察で感じたことの一つに、日本の女性の世界進出がいかに目に付いたことか。視察した先々で、多くの日本の人たちがその地域で住まい、活躍している姿を目の当たりにした。

男女雇用機会均等法ができたのをはじめ、男女共同参画社会の構築が叫ばれているが、世界規模でみると、地球の隅々までのいたるところで日本人、特に女性の積極的な活動があるのだろう。

視察先で応対してくれた人々にも女性が多かった。景気が低迷している日本においても、社会構造の改革が叫ばれているが、これからの活き活きした社会を作っていくためには、女性の力が大きな要素となってくるだろう。21世紀の新世紀を豊かで安定した成熟社会にしていくためには、旧来の男社会の仕組みに決別し、女性の社会進出が不可欠であると改めて認識した次第である。

(2002.9)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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