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和歌山県の景気動向〜景気動向調査2008年〜

研究員  石橋 宏之

はじめに

当研究所では、四半期毎に景気動向調査を実施し、県内企業の実態、動向、先行きを把握するとともに、現在の経済環境が県内の各企業にどのような影響を及ぼしているかを調査している。また同時に、トッピクス的な事項を毎回クローズアップし、特集として調査している。

ここでは、昨年(2008年1月〜12月)1年間に実施した景気動向調査をもとに、2008年の県内景気を振り返るとともに、特集で取り上げた各テーマにおける県内の各企業の取組み・実態を紹介する。

1.2008年の日本経済

2008年の日本経済を振り返ると、前半は原油・原材料価格の高騰やサブプライムローン問題を契機としたアメリカ経済の減速に伴う輸出の減少などにより緩やかではあるが後退した。後半は9月のリーマンブラザーズの破綻以降、「100年に一度」と言われる世界的な金融危機の影響により急速に厳しさを増し、2009年を迎えることとなった。

2.和歌山県内の景気

当研究所の景気動向調査では、昨年1年間(2008年)の和歌山県内の景気動向を四半期毎の調査におけるBSI値(自社の景況が「良い」とする企業の割合から「悪い」とする企業の割合を減産した値)から概観し、次のように表現した。

1〜3月期 BSI値-33.8 (2.9ポイント下降) 「県内景況感は悪化続く、原材料価格高騰が影響」
4〜6月期 BSI値-38.2 (4.4ポイント下降) 「県内景況感は悪化傾向が続き、先行きも厳しい」
7〜9月期 BSI値-44.4 (6.2ポイント下降) 「県内景況感はさらに悪化、先行き不透明」
10〜12月期 BSI値-45.8 (1.4ポイント下降) 「全国との差は縮小するも、先行き厳しい県内景気」

県内の自社景況BSI

3.全国との比較

日本銀行が全国規模で行っている企業短期経済観測調査(短観)における、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)を全国の基準値(以下短観DI)と同様の基準で算定している景気動向調査における和歌山県内の自社景況BSI値とを比較してみると、昨年1年間(2008年)に短観DIは26ポイントの下降、和歌山県内のBSI値は15ポイントの下降となった。

日銀短観と県内自社景気の比較(全産業)

4.特集調査の要約

(1)「Uターン者の採用」について(平成20年3月調査)

和歌山県の高等学校卒業者の県外大学・短大への進学者割合は、平成18年は87.8%で全国1位となっている(和歌山県統計課)。また、高等学校卒業者の県外への就職者割合も比較的高い率を示している(全国15位、近畿圏では最も高い。和歌山県統計課)。今後、和歌山県が活力を取り戻し維持していくためには、若年層の労働力確保、県内定着が不可欠であり、県外進学者や県外へ就職した人の中から、一人でも多く和歌山へUターンしてもらうことが重要である。そこで、県内企業のUターン者の採用状況について調査・分析を行った。

(1) Uターン者の採用について

全産業では、採用者の中にUターン者が「含まれている」は23.0%と少なく、8割近い企業は「含まれていない」となっている。

Uターン者の採用

(2) Uターン者を採用したときのメリットについて

全産業では、「郷土への愛着があり定着率が高い」が27.8%と最も多く、次いで「特にメリットはない」(25.9%)、「土地勘や地元に関する知識が豊富」(22.2%)の順となっている。

Uターン者を採用したときのメリット

(3) 今後のUターン者の採用について

全産業では、「Uターンか否かはこだわらない」が77.0%と最も多くなっている。次いで「できれば採用したい」(15.8%)、「ぜひ優先的に採用したい」(3.9%)の順となっており、合わせるとUターン者の採用に積極的な企業は2割近くになる。逆に「採用したくない」とする企業は合わせると3.3%と比較的少ない。

今後のUターン者の採用

(4) まとめ

今回の調査では、ここ3年間でUターン者を採用した企業は23.0%となっており、Uターン者を採用している企業数は多いとは言えない。また、今後のUターン者の採用についても「Uターンか否かはこだわらない」と回答した企業は8割近くになっており、採用時にUターン者であることが特に有利に働くというわけではない。

一方で、Uターン者を積極的に採用したいとする企業は全体では19.7%、ここ3年間でUターン者の採用実績のある企業だけを見ると、そのうち41.5%の企業が積極的に採用したいと考えている。これらの企業のUターン者に対する採用意欲とUターン者をマッチングさせていくことが必要である。今後、Uターン者に対する企業側の情報発信の充実をはかり、より多くの人材が地元で働けることを期待したい。

(2)「事業継続計画(BCP)策定の状況」について(平成20年6月調査)

近い将来発生が予想されている東南海・南海地震等に備えた防災対策に取り組むことが必要になっている。このような中、企業においては、自然災害等の危機事象に備えた「BCP(Business Continuity Plan事業継続計画)」の策定が企業防災を進める有効な手段として注目されている。BCPの策定は顧客信用力の向上や従業員の雇用維持など企業価値を向上させる効果が期待されている。そこで、県内企業のBCP策定の状況について調査・分析を行った。

《※BCP・・・企業が自然災害、大火災、などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく経営計画のこと。》

(1) BCPについて

全産業では、「聞いたことがあり意味も理解している」と回答した企業は16.7%と少なく、「聞いたことがない」が47.0%、「聞いたことはあるが意味を理解していない」が36.2%となっており、BCPの内容については8割を超える企業に理解されていない。

BCPについて

(2) BCPの策定について

全産業では、「策定する予定は当面ない」が39.6%と最も多く、逆に「既に策定している」が1.8%、「策定中である」が2.8%と少なかった。一方で、「今後、策定したい」が20.5%、「策定を検討してもよい」が35.2%となっており、合わせると55.7%の企業がBCP策定について前向きに考えている。

BCPの策定について

(3) BCPを策定されない理由について

全産業では、「社員や資金をBCP策定に充てる余裕がない」が36.0%と最も多く、次いで「策定方法がわからない」(28.7%)、「有効性に疑問がある」(21.3%)の順となっている。

BCPを策定されない理由について

(4) まとめ

今回の調査では、BCPを理解している企業は16.7%となっており、理解していない企業は8割を超えている。また、取引先企業からBCPの有無を聞かれたことがある企業は5.4%と少なく、取引先企業にBCP策定を求めないと回答した企業は67.9%と高くなっている。このように企業間でもBCPに関してはそれほど深く浸透していないと見られる。

一方で、BCP策定について「今後、検討したい」「策定を検討してもよい」と考えている企業は合わせると5割を超えている。このような企業のBCP策定を進めるためには、BCPの内容や取り組み方法、効果等についての情報提供や支援が必要であると考えられる。

BCP策定は、大災害発生時に企業の防災力を強化するというだけでなく、雇用確保という面からも重要である。今後、行政が企業に対してBCPの情報提供や取り組み指導等の充実を図りBCP策定企業が増えることに期待したい。

(3)「原材料価格高騰による影響」について(平成20年9月調査)

原油・原材料価格の高騰が企業の景気動向に大きく影響している。原油価格の高騰がさまざまな原材料価格の高騰に波及し、企業の収益を圧迫するなど深刻な問題となっている。そこで、原材料価格高騰が企業に与える影響について調査・分析を行った。

(1) 原材料価格について(07年末価格との比較)

全産業では、「上昇している」と回答した企業は84.8%と最も多く、「ほとんど変わらない」が12.4%、「下降している」が2.8%となっており、8割を超える企業において原材料価格が上昇している。

原材料価格について

※以降は、問@で「原材料価格が上昇している」と回答した会社からの回答
(2) 製・商品販売価格(サービス価格)について(07年末価格との比較)

全産業では、「上昇している」が33.9%となっており、まだまだ価格転嫁が進んでいない企業が多いものと考えられる。

)製・商品販売価格(サービス価格)について

(3) 原材料価格の値上がりに対する転嫁状況について
  (問Aで「製・商品販売価格(サービス価格)が上昇している」と回答した会社からの回答)

全産業では、9割近い企業が「転嫁できているが、不十分である」と回答しており、ある程度価格転嫁はできているものの、原材料価格の上昇に見合うだけの価格転嫁ができていない。

原材料価格の値上がりに対する転嫁状況について

(4) 収益について(07年末との比較)

全産業では、「増加している」は7.2%と低く、逆に「減少している」は68.3%と高くなっており企業の収益状況は悪化している。

収益について

(5)まとめ

今回の調査では、昨年末と比較して原材料価格が上昇していると回答した企業は8割を超えているが、そのうち、価格転嫁ができている企業の割合は33.9%と少ない。さらに、価格転嫁ができている企業のうち、9割が「転嫁できているが、不十分である」と回答しており、まだまだ価格転嫁が十分にできていない企業が多い。

また、収益面では、7割の企業が「収益が減少している」と回答しており、原材料価格の上昇が企業業績に大きな影響を与えていると言える。

今後、原材料価格の上昇に対して、価格転嫁ができるか否か、また、コスト削減等の対策の実施が企業業績を左右するであろう。

(4)「企業の借入状況と中小企業向け新融資制度」について(平成20年12月調査)

日本経済は、米欧の金融危機に伴い、株価の下落、急激な円高が進むなど厳しい状態が続くものと予想されている。また、原油・原材料価格高騰により収益状況が悪化し、さらに輸出不振、消費低迷などにより売上が減少し、資金繰りも悪化している企業が増加している。

和歌山県でも平成20年11月から県内中小企業者の資金繰りを支援する新融資制度が実施されている。今回は、「企業の借入状況と中小企業向け新融資制度」について調査・分析を行った。

(1) 最近6ヶ月間における借入申込の状況について

全産業では、「申込む必要がなかった」が44.4%と最も多く、一方で「申込をした」(40.6%)と「現在申込中である」(10.0%)を合わせると50.6%となり、最近6ヶ月以内に5割以上の企業が借入の申込を行っている。

最近6ヶ月間における借入申込の状況について

(2) 借入の満足度について(@の問で「申込をした」と回答した企業からの回答)

全産業では、「満足している」が70.8%と最も多く、「非常に満足している」(10.7%)と「満足している」を合わせると81.5%となり、借入についての満足度は高いと思われる。

また、拒絶された理由として、「借入残高が多い」や「業績悪化」などであった。

借入の満足度について

【平成20年11月10日から実施されている中小企業向け県融資制度「資金繰り安定資金(緊急対策枠/新設)・経営支援資金(セーフティ枠/拡充)」(以下、新融資制度)について】
(3) 新融資制度の周知度について

全産業では、「知っている」が70.1%、「知らない」が29.9%となっており、新融資制度について多くの企業で周知されている。

新融資制度の周知度について

(4) 新融資制度の利用状況について

全産業では、「今の所、利用する予定はない」が48.6%と最も多くなっている。一方で、「すでに利用している」は9.8%、「利用する予定(申込中含む)」又は「今後、利用を検討したい」と回答した今後の利用に前向きな企業は、41.6%となっている。

新融資制度の利用状況を周知別に見ると、「知っている」と回答した企業では、56.6%の企業が利用もしくは利用を検討している。また、「知らない」と回答した企業でも、今回のアンケートによって、「今後、利用を検討したい」企業が38.1%となった。

新融資制度の利用状況について

新融資制度の利用状況(周知別)について

(5) まとめ

今回の調査では、最近6ヶ月間に借入の申込をした企業は40.6%であり、そのうち、8割を超える企業が借入について満足しており、人員数が多い企業ほど満足度が高くなっている。

一方、平成20年11月10日から実施されている和歌山県の中小企業向け新融資制度を知っている企業が70.1%となっており、周知度は高くなっている。しかし、新融資制度を知らなかった企業においても、今回のアンケートにより新融資制度の情報を知った結果、約4割の企業が「今後、利用を検討したい」と回答しており、借入の申込をする企業は、さらに増加すると思われる。

今後、この急激な景気減速局面を乗り切るため、中小企業への支援を含めたスピーディーかつ柔軟な経済対策への取り組みが喫緊の課題となっている。

(2009.3)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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