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和歌山県の景気動向〜景気動向調査2009年〜

研究員  石橋 宏之

はじめに

当研究所では、四半期毎に景気動向調査を実施し、県内企業の実態、動向、先行きを把握するとともに、現在の経済環境が県内の各企業にどのような影響を及ぼしているかを調査しており、また同時に、トッピクス的な事項を毎回クローズアップし、特集として調査している。

ここでは、昨年(2009年1月〜12月)1年間に実施した景気動向調査をもとに、2009年の県内景気を振り返るとともに、特集で取り上げた各テーマにおける県内の各企業の取組み・実態を紹介する。

1.和歌山県内の自社景況

当研究所の景気動向調査では、昨年1年間(2009年)の和歌山県内の景気動向を四半期毎の調査におけるBSI値(「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた数値)から概観し、次のように表現した。

1〜3月期 BSI値 −52.5 (6.7ポイント下降) 「景気悪化が製造業に大きく影響」
4〜6月期 BSI値 −50.5 (2.0ポイント上昇) 「県内景況感、見通しともに改善」
7〜9月期 BSI値 −47.4 (3.1ポイント上昇) 「県内景況感2期連続改善、新政策に期待」
10〜12月期 BSI値 −42.4 (5.0ポイント上昇) 「県内景況感は改善続く」

県内景況感は、原材料価格の高騰やその後の世界的な金融危機の影響により21年1〜3月期まで下降が続いたが、21年4〜6月期以降、生産や輸出が持ち直し始め改善に転じた。

また、日本銀行が全国規模で行っている企業短期経済観測調査(短観)と比較してみると、改善幅は多少異なるものの、同じような動きであった。

日銀短観と県内自社景気の比較(全産業)

2.地域別の自社景況

県内自社景況を和歌山市、紀北地域、紀中地域、紀南地域の4地域に分けて比較すると、地域別で景況感の動きや改善幅が異なるものの、全地域で対1〜3月期は改善となった。

<地域区分>

和歌山市
紀北地域 海南市、紀美野町、岩出市、紀の川市、橋本市、かつらぎ町、九度山町、高野町
紀中地域 有田市、湯浅町、広川町、有田川町、御坊市、美浜町、日高町、由良町、印南町、みなべ町、日高川町
紀南地域 田辺市、白浜町、上富田町、すさみ町、新宮市、那智勝浦町、太地町、古座川町、北山村、串本町

県内自社景気の地域別比較表(全産業)

4〜6月 7〜9月 10〜12月 改善幅
(対1〜3月)
和歌山市 up up up +14.4P
紀北地域 up up down +13.5P
紀中地域 down down up +1.9P
紀南地域 down up up +3.7P
和歌山市・・・上昇が続いた。
紀北地域・・・4〜6月、7〜9月と上昇するも10〜12月は下降した。
紀中地域・・・4〜6月、7〜9月と下降するも10〜12月は上昇した。
紀南地域・・・4〜6月は下降するも7〜9月、10〜12月と上昇した。

3.特集調査の要約

(1)「労働事情及びワークシェアリング」について(平成21年3月調査)

世界的な金融危機の影響により景気が急速に後退し、雇用対策として労働時間の短縮などにより雇用を維持するワークシェアリングの実施を検討する企業も出てきており、「労働事情及びワークシェアリング」について調査・分析を行った。

※ワークシェアリング・・・労働時間の短縮などにより、より多くの人で仕事の総量を分け合うこと。一時的な景況の悪化を乗り越えるための『緊急避難型』、中高年層の雇用を確保するための『中高年対策型』、失業者に新たな就業機会を提供することを目的とした『雇用創出型』、正社員について勤務の仕方を多様化し、より多くの労働者に雇用機会を与えるための『多様就業対応型』がある。
【要約】

今回の調査では、従業員数の現状について24.3%の企業が「過剰」であると回答しており、製造業では36.4%と最も多くなっている。人員過剰への対応策としては、「人員の削減」(37.3%)が最も多くなっているものの、業種によってバラツキが見られる。

一方、ワークシェアリングについては、製造業で最も関心度が高く、「実施している(12.1%)」及び「実施に向け検討中」又は「今後検討してみたい」といった『実施に前向きな企業(27.1%)』も製造業で最も多くなっている。

また、従業員数が「過剰」と回答した企業のうち約4割の企業がワークシェアリングの実施に前向きであり、関心度が高くなるにしたがって、実施もしくは実施に前向きな企業の割合も多くなっている。

しかしながら、ワークシェアリングの実施・検討にあたっての問題として、「給与削減への理解」及び「従業員の士気の低下」が重要視されており、今後、ワークシェアリングの導入を実施もしくは検討している企業に対し、こういった労使間の問題を解決するための支援を充実させることが必要であると考えられる。

図1 関心度
図1 関心度

図2 実施状況
図2 実施状況

図3 実施・検討にあたっての問題点
図3 実施・検討にあたっての問題点

(2)「企業の社会的責任(CSR)」について(平成21年6月調査)

環境・労働・人権・社会貢献活動など様々な「企業の社会的責任(CSR)」に関する取組みの動きが広がっており、CSRに対する関心も高まってきている。今後、さらにCSRの取組みが重要になると考えられ、「企業の社会的責任(CSR)」に関する取組み状況について調査・分析を行った。

※「企業の社会的責任」=CSR:Corporate(企業) Social(社会的) Responsibility(責任)
【要約】

今回の調査では、『CSR活動に取組んでいる企業』は43.3%、『CSR活動に前向きな企業』は35.8%となっており、約8割の企業がCSR活動に前向きであり、人員数が多い企業ほどCSR活動に前向きとなっている。

『CSR活動に取組んでいる企業』において重点的に取組んでいる活動としては、「地域社会への貢献」(48.0%)、「安心・安全の確保」(43.6%)、「優れた商品・サービスの提供」(40.8%)、「環境保護への取組み」(40.8%)の割合が高くなっている。また、CSRの取組みにおいての課題としては、コスト・時間・人員的な面を挙げる企業の割合が高くなっている。

一方、CSRに取組んでいない理由としては、コスト・時間的な面に次いで「何から取組むべきかわからない」を挙げる企業の割合が高くなっている。

CSRは企業の経営そのものといえる。また、経営者は企業が社会に果たしている責任を改めて認識するなかで、CSR活動としてどのような取組みをすべきなのかを考えることが重要である。今後、CSRに関する取組みの重要性はさらに増すものと考えられ、企業経営の強化は勿論、企業価値を高めるうえでも、企業のCSRへのさまざまな取組みに期待したい。

図1 取組み状況
図1 取組み状況

図2 重点的に取り組んでいるCSR活動
図2 重点的に取り組んでいるCSR活動

図3 取組みにおいての課題
図3 取組みにおいての課題

図4 取り組んでいない理由
図4 取り組んでいない理由

(3)「雇用調整に関する助成金制度」について(平成21年9月調査)

日本経済は、このところ持ち直しの動きが見られるものの、雇用情勢は悪化しており、今後も厳しい状況が続くものと考えられる。そんな中、景気の変動、産業構造の変化やその他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、休業(休業及び教育訓練)又は出向を行った事業主に対して、休業手当、賃金の一部が支給される『雇用調整助成金』や『中小企業緊急雇用安定助成金』(平成20年12月創設)、残業削減により労働者(有期契約労働者及び派遣労働者)の雇用の維持を図る事業主に対して奨励金が支給される『残業削減雇用維持奨励金』(平成21年3月創設)といった助成金制度が設置されており、「雇用調整に関する助成金制度」について調査・分析を行った。

【要約】

今回の調査では、雇用調整に関する助成金制度の利用について「利用もしくは利用に前向きな企業」は、「雇調金等」で48.4%、「奨励金」で44.0%となっている。また、制度を「聞いたことはあるが内容は知らない」または「知らない」と回答した企業のうち「今後検討したい」企業は、「雇調金等」「奨励金」ともに4割を超えており、今後さらに助成金の申請をする企業が増加すると思われる。

雇用の維持等への効果について「効果がある(見込み)」企業は、「雇調金等」で71.6%、「奨励金」で62.9%となっており、助成金制度によるある程度の効果は見込まれる。

一方、制度に対する要望については、「手続きの簡略化」(51.2%)、「受給資格、条件の緩和」(43.5%)が上位となっている。

しかしながら、制度について「知っている」企業は、「雇調金等」で41.3%、「奨励金」で28.4%とあまり周知されていない。

今後も厳しい経済状況が続くものと考えられ、このような助成金制度が、厳しい経営状況にある企業に早急に周知されることが必要であるとともに、企業の雇用維持等に大きな効果をもたらすことを期待する。

図1 周知度(雇用調整助成金)
図1 周知度(雇用調整助成金)

図2 利用状況(雇用調整助成金)
図2 利用状況(雇用調整助成金)

図3 制度に対する要望
図3 制度に対する要望

(4)「環境ビジネス」について(平成21年12月調査)

近年、地球温暖化などの環境問題への関心が高まってきており、環境に配慮した取り組みを実施する企業も増加している。また、新政権においては温室効果ガスの25%削減(1990年比)目標や地球温暖化対策税(仮称)導入等が検討されており、今後より一層環境問題への取り組みが重要視されると考えられる。そんな中、環境への負荷が少ない製品・サービスや、環境保全技術・システムなどを提供するといった『環境ビジネス』を新たなビジネスチャンスと捉え、事業展開している企業が増加していると思われ、「環境ビジネス」への取り組み等について調査・分析を行った。

※「環境ビジネス」……『水、大気、土壌等の環境に与える悪影響』と『廃棄物、騒音、エコ・システムに関連する問題』を計測し、予防し、削減し、最小化し、改善する製品とサービスを提供する活動(OECD:経済協力開発機構)
【要約】

今回の調査では、環境ビジネスへの取り組みについて「既に行っている」、「今後始める予定」、「今後取り組みたい」を合わせた前向きな企業は43.0%、「ユーザーとして関わりたい」企業は25.7%となっており、約7割の企業が関心を寄せている。また、重視する分野については、「エネルギー関連(省エネ・新エネ等)」が47.1%と最も高くなっている。

「既に行っている」企業において売上に占める環境ビジネスの割合は、約8割(77.6%)の企業が「20%未満」となっているものの、今後の見通しが「拡大傾向」とする企業は、42.1%と4割を超えている。

一方、環境ビジネス進展のための課題としては「収益性」や「販路拡大」、「他企業との連携」、行政への要望としては「税制面での優遇措置」や「情報提供」、「消費者意識の向上のための啓発活動」が上位となっている。

今後、環境ビジネスが進展し、市場が拡大を見せれば、環境保全に大きな効果をもたらすものと考えられ、そのためには産官学等あらゆる分野においてより一層の取り組みが必要であると考える。

図1 取組み状況
図1 取組み状況

図2 売上に占める割合
図2 売上に占める割合

図3 今後の見通し
図3 今後の見通し

図4 進展における課題
図4 進展における課題

図5 行政に望む支援
図5 行政に望む支援

(2010.4)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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