ホーム | サイトマップ | リンク

ホーム > レポート > 社会・福祉 > 地震等災害に対する、自主防災対策・体制づくり

地震等災害に対する、自主防災対策・体制づくり

主任研究員  片山喜久子

はじめに

月日の経つのは早いもので、阪神・淡路大震災は今年で10年目を迎えます。早朝大きな揺れを感じ、目を覚ましてテレビをつけると地震が発生したと報じ、時間の経過とともに大惨事になっている様子が、テレビの画面に映し出され、ビルの崩壊や線路の寸断、道路の崩壊など、信じられない光景が目に飛び込んで来ました。何度も訪れた事があるところだけに信じられない思いがしたものです。その光景をまのあたりにした震災当時は、私達も防災に対して強い関心を持ち、防災用袋に水や日持ちのする食料などを入れ、いつでも持って逃げられるようにしていました。しかし歳月が経つと同時に、防災に対する関心も薄れていっている現状ですが、東南海・南海地震を発生周期から見ると30年以内に起こる確率は40〜50%とかなり高い数値が予想されています。従って、今一度重要な課題として、防災について考えてみる必要があります。

東南海・南海地震発生に伴う被害予想

周期的に地震は必ず来るといわれています。平成15年9月に開催され中央防災会議に設置された「東南海、南海地震等に関する専門調査会」は、発生の仕方について5ケースを想定しました。

  1. 想定東海地震、東南海地震、南海地震の震源域が同時に破壊される場合
  2. 東南海地震と南海地震の震源域が同時に破壊される場合
  3. 想定東海地震と東南海地震の震源域が同時に破壊される場合
  4. 東南海地震単独で発生する場合
  5. 南海地震単独で発生する場合

第14回中央防災会議「東南海、南海地震等に関する専門委員会」では、(2)の東南海・南海地震について詳しく検討され、被害想定が出されました。それによると全壊棟数・死者数などは下記の予測数値になります。

全壊棟数
↑クリックで拡大します。
全壊棟数
↑クリックで拡大します。

これによると、和歌山県における死者の数は午前5時台では約2,700〜4,600人、18時台では約1,700〜約2,800人となっており、いずれも前回の昭和21年12月に起こった南海地震よりも、約5倍から最大で約17倍の数となっています。

防災対策による効果

専門調査会によると、防災対策を講じる事によって、被害数に大きな差が出てきます。例えば昭和56年以降に建築された建物が、それ以前の耐震基準で建築されていた場合、約170,200棟の全壊棟数と想定されるものが、約217,800棟と大きく増加する。逆に、今後昭和56年以前の耐震基準で建築されたものを耐震強化し、昭和57年以降の建物と同様の耐震性を持たせる事により、死者の数が6,600人と推定されるのが、約1,400人と5分の1程度に大きく減少すると推算されています。

また、津波災害についても、堤防や水門が正常に機能するかどうかによって、建物全壊棟数に約1.4倍の差が想定され、住民の避難意識の高低によっても、津波による死者数に、2倍程度の差がでることが予測されています。

住民の防災意識を高めるためには、自分達の住むまちの状況、また災害時予測情報を正確に知る必要があります。そのためには次のようなことが早急に必要と考えます。

(1)ハザードマップの作成

専門調査会では、地震発生に伴う和歌山県への津波予測を、和歌山市から下津町、有田市、由良町、日高町、御坊市、南部町、白浜町、すさみ町、串本町、古座町、那智勝浦町など、どれくらいの高さの津波が来るか予測しています。例えば和歌山市の場合でも満潮時には3m以上の津波が押し寄せることが予測されていますが、現時点では浸水予測図があるだけで、必要なハザードマップは作成されていません。地震や津波は必ずくるので、自分の家の周辺は安全なのかどうか、避難所への安全な経路等知ることは必要で、その情報を知った上での対策が重要です。従って詳細なハザードマップの作成が望まれます。

※ハザードマップとは・・・被害の想定される区域と、被害の程度、さらに避難場所、避難経路などの情報を地図上に明示したもの。

(2)既存建築の耐震診断や耐震対策の周知

昭和57年以前の耐震基準で作られている建物かどうか診断し、満たされていない場合は耐震強化を図る事が被害を減らすために必要で、公の建物は公で、個人住宅は個人で、建物の耐震をチェックし、耐震強化しなければなりません。簡易な耐震診断はインターネット上でもできますが、本格的な耐震診断ができる業者や、耐震改修融資制度なども、まだまだ住民に知られていないのが現状ではないでしょうか。住民に一目でわかるような関連情報の発信も必要です。

(3)自主防災組織率のアップ
大規模自身災害による人的被害の予測

住民の避難意識の高低によっても、死者の数が2倍も違うという予測が出ています。また阪神・淡路大震災では、死者の数も多かったですが、救出された人も多く、救出された35,000人のうち約8割の27,000人が家族や近隣者により救助されたといわれており、緊急時の場合は自主的救助に動くことが大切です。

自治体単位の大きな防災組織ももちろん必要ですが、日頃から防災意識をもち活動できる自主防災組織が重要です。消防・警察・自衛隊が救助にあたってくれますが、体制を整えるまでには時間がかかり、災害にあった瞬間は自分達の身は自分達で守らなければなりません。そのためにも、自主防災組織率の向上も図る必要があります。

下の表は各県の自主防災組織率の一覧表です。都道府県によって随分差がありますが、宮城県・神奈川県・東京都・兵庫県など、かつて大きな地震の発生した地域では高い自主防災組織率になっています。過去の地震体験により人々の防災意識が高くなった結果と思われます。研修や啓発活動を通して、市民の防災意識を高め、自主防災組織率のアップにつなげることが大切です。

都道府県別の防災組織率

また一人住まいの方や、高齢者だけの世帯は特にその対応を考えていく必要があります。阪神・淡路大震災の死亡者6,432人のうち65歳以上は3,193人(男性1,229人女性1,964人)(数字は消防白書平成12年版から)で49.6%と約半数を占めていました。ちなみに和歌山県内の高齢者所帯を調べてみると次のようになります。

在宅高齢者の世帯構成

表でわかるとおり、高齢者一人世帯は37,913世帯、高齢者夫婦だけの世帯が47,644世帯あり、合計85,557世帯は高齢者だけの世帯となっています。高齢者や一人住まいに対する対応は、各自治体において、今後考えていく必要があります。また地域自治会や小単位の地域の中でも、高齢者や一人暮らしの方々の安否確認等、その地域に応じた形での支援体制を確立し、高齢者や障害者また一人暮らしの方々にとっても安心して住めるシステム作りが必要です。

下表は、地域住民による自主的な防災活動事例集から抜粋したものですが、このように地域に応じた、きめの細かい取り組みが大切です。

自主的な防災活動事例集

おわりに

今までは避難のみの防災体制でしたが、これからは近隣の人たちによる共同の救助等も考慮に入れた、防災体制が重要になり、意識も変えていく必要があります。今後起こりうるであろう、地震や災害に備え従来の防災体制をチェックしなおすと同時に、早急に自主防災組織率を上げていくことも重要です。組織を整えるためには自治体の側面的な支援も欠かせません。

今後起こるであろう地震災害の被害を最小限にとどめるためには、事後対策型から予見対策型にし、可能な限りの事前の対策・体制をとることが必要です。それが確立することによって、そこに住む人々にとって安心・安全な地域となるのです。

(2004.3)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

このページのトップへ