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和歌山市中央卸売市場見学と食品の流通、安全について

研究員  川嶋 宏通

はじめに

最近、新聞やテレビのニュースなどで中国産の食材の安全性が取り上げられたり、数年前から問題になっているBSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザなど、食の安全について話題になる事柄が多く、また日本近海における漁獲量の減少や天候不良等による農作物の不作なども時々目にすることがあります。こういったことは、私たちの食生活に直接関わってくることでもあり、時には健康にも影響があるかもしれませんのでとても気になるところであります。

先日、和歌山市の中央卸売市場を見学する機会があり、関係者の方々に話を伺うことが出来ました。ちょうど食の安全について考えていたところでしたので、和歌山市中央卸売市場で取引される食料品の安全に関する取組み等について教えていただきました。

1.和歌山市中央卸売市場について

久々に和歌山市西浜にある中央卸売市場を訪れたのですが、あらためてその広さを実感しました。実際に市場内を端から見学していくと充分いい運動になる距離でした。

和歌山市中央卸売市場は昭和49年4月の業務開始で、市場の面積は約4万坪あるそうです。なかには青果部(野菜、果実及びこれらの加工品の取扱い)と水産物部(生鮮水産物及びその加工品の取扱い)があり、卸売業者が青果部2社と水産物部1社、仲卸業者が青果部39社と水産物部44社、売買参加者が青果部63名と水産物部90名となっており、別に関連事業者も78業者入っているそうです。

●市場の仕組み
市場の仕組み
●和歌山市中央卸売市場の1日の取扱量及び取扱高(平成18年度)
青果部取扱量 271トン
取扱高 5,657万円
水産物部取扱量 109トン
取扱高 6,969万円
●和歌山市中央卸売市場の1年の取扱量及び取扱高(平成18年度)
青果部取扱量 74,237トン
取扱高 1,549,892万円
水産物部取扱量 29,818トン
取扱高 1,909,572万円
●青果部の取扱量及び取扱高の過去6年間の推移
青果部の取扱量及び取扱高の過去6年間の推移
●水産物部の取扱量及び取扱高の過去6年間の推移
水産物部の取扱量及び取扱高の過去6年間の推移

過去6年間の中央卸売市場での取扱量と取扱高の推移を見てみると、青果部では平成17年度と平成18年度にかけて取扱量は増えているものの、取扱高はあまり大きな変動は見られていません。特に平成17年度では天候に恵まれたこともあり豊作の年になったため取扱量は最も多くなっていますが、農作物の単価が全体的に低くなり、取扱高は前年より減少となったようです。

水産物部では平成14年度に卸売業者が2社から1社になりその影響で平成15年度の取扱量が大きく減少していますが、平成16年度からは回復しています。平成18年度においても取扱量は減少していますが、取扱高は平成15年度から安定した動きになっています。

全国的にも市場で流通している食料品の取扱量と取扱高は減少傾向にあるとのことですが、和歌山市中央卸売市場の取扱量・取扱高のそれぞれの前年度比は、青果部・水産物部ともに概ね全国の前年度比水準を上回っているそうです。

和歌山市中央卸売市場の風景
和歌山市中央卸売市場の風景

2.食品の流通について

食料品(特に生鮮食料品)は鮮度の維持が重要であり、流通時間の短縮とその保存方法や運搬方法などは年々改良されており、新鮮でしかもおいしく届けられるように皆さんが努力されています。昨今では交通網の整備も進み、自動車では冷凍車両や低温車両の使用が、販売業者側だけでなく産地・生産者側からも喜ばれているそうです。

近年ではさまざまな形の市場外流通も発達しており、インターネットを使った取引や大型化する生産者・出荷団体から直接購入するケースなど多種多様な流通形態が生まれています。また、価格破壊が浸透している中で、スーパーなど大型量販店では産地直送品や安価な輸入食料品を卸売市場を経由しない商社と取引するケースなどが出てくるようになり、品質や鮮度だけではなく、価格でもますます競争が激しくなって、中央卸売市場を取り巻く環境は一層厳しくなっているそうです。

しかし、こうした流れの中では、量販店でよく取り扱われる“売れる食品”、“もうかる食品”のみが流通の主流になってしまうことから、中央卸売市場では多種多様な食料品を集荷し、市場流通による適正価格で安定的に供給するという本来の役割を果たすため、豊富な品ぞろえと安定供給の推進に努めているとのことです。

また、中央卸売市場内のせりに参加している仲卸業者では、取引先として小売店や飲食業者の外にも病院や学校へ給食などに使用する食料品を販売しているそうです。

3.食品の安全について

先にも挙げたように、中国の食品等に対する安全性の問題や国内でも食肉加工販売会社の原料偽装や菓子製造会社の賞味期限改ざんなど、最近では食に対する安全性が損なわれ、消費者の安心感が奪われる事柄が度々起こっています。

中央卸売市場でも取り扱っている食料品にはそれぞれ管理に気を使い、消費者の元へ安全・安心な食品が届くように努力されているそうです。また、市場では現物を見て取引するのが原則なので品質は大丈夫と言われていました。

また、中央卸売市場内では今年度から水産低温売場が稼動を始め、品質管理の推進がさらに図れるようになっています。今後は、青果部でも同じように低温売場の設置を目指していくとのことです。

水産物部の卸売業者である 鰍、おいち 和歌山(旧 和歌山魚類)では、安全・安心できる食材(加工品)を提供できるようにと、従来の食品安全確認方法からさらに食品の製造過程における品質管理や細菌検査を行う手法を取り入れています。この手法と加工施設は、国際的に推奨されているHACCPの認定を受けているそうです。

このように徹底した衛生管理の推進や品質管理の体制を整えることで、生産者・消費者双方から食の安全に対する信頼を得られるよう努めているとのことです。

※ HACCP
原料の入荷から製造・出荷までのすべての工程において、あらかじめ危害を予測し、その危害を防止するための重要管理点を特定して、そのポイントを継続的に監視し、異常が認められたときにはすぐに対策を取り解決するので、不良製品の出荷を未然に防ぐことができるシステム。
この方式は国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機構(WHO)の合同機関である食品規格(Codex)委員会から発表され、各国にその採用を推奨している国際的に認められたもの。
水産低温売場の内部
水産低温売場の内部

おわりに

国では、“食”は“いのち”を支える源であり、一日たりとも欠かすことができない国民生活の基本であると位置づけられており、その安全性を確保することは大変重要であると考えられています。また、国民が安心して食生活を送るためには、安全な食品の供給に加えて、“食”に対する消費者の信頼が得られるように、安全性をはじめとした食品に関する情報の提供が必要であると言われています。

消費者の食の安全・安心に対する関心が高まっている中、久々に和歌山市中央卸売市場に入って、せりを見たり、食品の流通や食の安全・安心について伺ってみると、中央卸売市場で取引されている食料品がなぜ安全・安心なのか、なぜ品物が良いのかということをもっと消費者に分かるようにPRしても良いのではないかと感じました。また、取引されている食料品についてはもちろんのこと、中央卸売市場のことについても一般の人々にもっと知ってもらえる情報発信が必要であると思いました。

中央卸売市場では、直接一般の消費者と結びつく取引がないので周知することが難しいとのことでしたが、最近では市場の役割を多くの消費者に知ってもらう機会として、毎年「市場鍋まつり」を開催して一般の人々の来場を呼びかけています。

企業が利益を追求するあまりに食の安全性に対して問題になるニュースを見る機会が増えている中で、私たち消費者はそのことに慣れることなく気を付けていくとともに、食料品の加工・製造や販売に関わる企業にはそういった不正などがないように努力していってほしいものです。

(2007.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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