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公共サービスの民営化に関する一考察

主任研究員  黒川 久生

I.はじめに

冷戦終結後始まった共産圏経済の市場開放等により世界的なデフレ経済が進行している。日本経済においては、バブル経済期に高騰した土地等の資産に対するデフレの影響が大きくのしかかっており、未だその清算途上にある。このような中、政府は行財政の構造改革に取り組み、規制を緩和し、民間活力を最大限に活用することにより、政府の財政再建と日本経済の再生を目指すこととし、基本方針として「骨太の方針」および「アクションプログラム」を打ち出すに至っている。

構造改革の分野は、「構造改革のための7つの改革プログラム」に示されており、民営化・規制改革 、チャレンジャー支援 、保険機能強化 、知的資産倍増、生活維新、地方自立・活性化、財政改革がその骨子となっており、経済活性化などを狙った民営化・規制改革などが柱である。 これらの根底には、「民にできることは民に任せる」ことが前提となっており、それの実現を妨げる規制は緩和する内容となっている。政府の財政再建のための「小さな政府」の実現や、「個性ある地域の発展」と「知恵と工夫の競争による活性化」を重視するための「地方分権」の実現にあたっても、民間を活用する方針は同様であり、ここに公共サービスの民営化がクローズアップされることになる。

本稿では、公共サービスの民営化について、現在実施されている手法や今後の方向性および課題について検証することとする。また、市町村合併等により広域での地方分権が進展する場合において、地域の団体等が公共サービスの民営化等に参加し、財政収入を伴って地域運営を担うことが考えられるため、現状において実現可能ではないかと考えられる手法についてケーススタディを行うこととする。

II.公共サービスの民営等に関する一考察

1.公共サービスの民営化手法

公共サービスの民営化については、政府の「骨太の方針」および「アクションプログラム」においてその推進の方向性が打ち出されているが、公共サービス民営化の手法についてはどのようなことが考えられるのか検証してみることにする。

近年、公共サービスについては、これまで通りの行政直営や事業団委託だけでは時代に即したサービスを柔軟かつ迅速に提供することは難しいことから、多様な運営形態が導入されはじめている。

(1)公共サービス民営化の方向

公共サービス民営化の概念を整理すると、その公共サービスを提供する施設等の「所有」と公共サービス提供(施設等)の「運営」、さらには公共サービス提供に対する「支配・統治(ガバナンス)」との相互の組み合わせが変化するものとしてとらえることができる。この関係を踏まえた上で、ここでは議論を複雑にする「支配・統治」を除き、「所有」と「運営」の主体について「行政」と「民間」の組み合わせを変化させることにより、具体的な民営化の方向について考察することにする。

公共サービス提供において、「所有」と「運営」の形態としては、(1)「所有」「運営」ともに行政が担っている場合、(2)「所有」を行政が「運営」を民間が担っている場合、(3)「所有」を民間が「運営」を行政が担っている場合の3パターンが考えられるが、それぞれの民営化の基本的な方向は次のとおりである。

「所有」と「運営」の主体からみた民営化の方向

1)「所有」「運営」ともに行政が担っている場合
 a.運営(公共サービス供給)のみ民間主体に転換
  • 施設は行政が所有したままで、当該施設の民間委託、民間貸与などを通じ運営を民間主体に転換するもの。
 b.所有のみ民間主体に転換
  • 施設を民間主体に譲渡した上で当該施設の貸与を受ける(引き続き運営は行政が担当)などの方法により、施設の所有のみ民間主体に移管するもの。
  • この方法では、民営化に伴う大きな効果を得ることは難しく、実際に活用されるケースは少ないものと考えられる。
 c.所有・運営ともに民間主体に転換
  • 民間主体に対する資産等譲渡や株式取得・売却などによる民営化(民間企業化等)、PFI()もしくはPFI的手法を活用した契約に基づく所有・運営の民間移管などを通じ、所有・運営とも民間主体に委ねるもの。
2)「所有」を行政が「運営」を民間が担っている場合
  • 上記cの手法等を用い、所有を行政から民間主体に移管することにより、所有・運営とも民間主体に委ねるもの。
3)「所有」を民間が「運営」を行政が担っている場合
  • 上記cの手法等を用い、運営を行政から民間主体に移管することにより、所有・運営とも民間主体に委ねるもの。
(2)公共サービスの管理運営形態と特徴

公共サービスの民営化の基本パターンにしたがって、現状行なわれている管理運営形態をリストアップし、それらについて概要やメリット・デメリットについて検証してみることにする。

公共サービスの管理運営形態としては、まず行政が直接管理運営する直営方式がある。この方式の中には、警備や清掃などの一部の業務のみを民間に委託している場合もあるが、管理運営の主体はあくまでも行政であり、管理運営を民間に委託する業務委託とは明確に区別されるといえる。

次に、管理運営を民間に委託する方式がある。この場合、委託を受ける民間の事業形態や法人形態により、行政が設立した事業団などに運営委託する事業団委託、地域住民が設立したNPO()に運営委託するNPO委託、民間企業に運営委託する民間委託にさらに細分化され、それぞれがメリットやデメリットを有しているといえる。

また近年では、民間企業にテナントとして貸与し、賃料を得る民間貸与(経営委託)や契約方式にもとづき、施設の設計・建設・管理運営まですべてを民間企業に委ねるPFIも高いハードルをクリアして採用されるケースも散見できるようになっている。

行政が所有する資産を民間主体に譲渡し、これにより事業運営も民間主体に移管する民間企業化は公共サービスの民営化における最終形であるとも言える。具体的には、行政が所有する資産等を民間に譲渡し、その対価を金銭により得る資産譲渡の方式と、行政の所有する資産等を民間主体に譲渡(現物出資等)し、その対価を株式により得る株式取得・売却の方式が考えられる。

管理運営形態それぞれのメリット・デメリットは下記の表のように整理することができる。

(表II-1-1) 公共サービスの管理運営形態と特徴

手法 直営 管理運営民間委託 民間貸与 事業権契約 民営化
行政直営 事業団
委託
NPO
委託
民間
委託
経営
委託
PFI 民間企業化

行政が直接運営する方式。一部業務のみを民間に業務委託する場合もある。 行政が設立した事業団などに運営委託する方式。 地域住民が設立したNPOに運営委託する方式。 民間企業に運営委託する方式。 民間企業にテナントとして貸与し、賃料を得る方式。 契約方式にもとづき、施設の設計・建設・管理運営まですべてを民間企業に委ねる方式。 行政が所有する資産等を民間主体に譲渡し、事業運営も民間主体に移管する方式。



行政が直接コントロールできる。利用料が安い。 直営に比して閉館時間、開館日時などの自由度が大きい。 NPOが自発的に利用者を拡大するインセンティブを内包している。 民間企業のノウハウを活用できる。 行政は賃金収入が得られる。事業者は裁量が大きく、ノウハウを発揮しやすい。 民間の創意工夫を最大限に発揮できる。行政負担が軽減される。 民間の創意工夫を最大限に発揮できる。行政負担がなくなる。




開館時間、休館日などの制約が大きい。 必ずしも受託者側に運営ノウハウがあるわけではない。 NPOが少ないうえ、ノウハウを有する団体はさらに少ない。 リスクの分担によっては事業が継続できない場合も生じる。 地方自治体により適用施設が限定される。 事業者選定、契約などの一連の手続きが複雑。 サービス水準の維持・確保のための行政の関与は薄れる。

北山村
観光事業
物産事業
診療所事業
北山村
振興公社事業
社協事業
池田市立
公益活動促進センター
(大阪府池田市)
荒川区
スポーツセンター
(東京都荒川区)
国民宿舎
あくね
(鹿児島県阿久根市)
岡山県
当新田余熱利用施設
(岡山県岡山市)
弟子屈
観光施設スキー場
(北海道弟子屈町)
(3)管理運営の民間委託形態と特徴

さらに、管理運営を民間に委託する場合は、その委託費の支払いと利用料金収入の取扱いにより4つのパターンが考えられる。

まず、民間企業に定額の委託費を支払い運営委託し、利用料金は行政の収入とする委託費支払型が考えられる。

またそれとは逆に、利用料金を民間企業の収入とすることを前提に、行政が委託費を負担せずに民間企業に運営委託する利用料金型も考えられる。

上記の2方法を組み合わせることで、利用料金は民間企業の収入としつつ、管理運営に要する費用不足分は委託費として行政が負担して民間企業に運営委託する利用料金型と委託費支払型の併用型、および、利用料金は行政の収入とするが利用者(利用料金)増加分は民間企業の収入とすることを前提に民間企業に運営委託するインセンティブ型も考えられる。

管理運営の民間委託形態それぞれのメリット・デメリットは下記の表のように整理することができる。

(表II-1-2) 管理運営の民間委託形態と特徴

民間委託
(1)委託費支払型 (2)利用料金型 (3)利用料金型と
委託費支払型の
併用
(4)インセンティブ型

民間企業に定額で運営委託する方式。 利用料金を民間企業の収入とすることを前提に、行政は委託費を負担せずに民間企業に運営委託する方式。 利用料金型を基本にしつつ管理運営に要する費用不足分は委託費として行政が負担して民間企業に運営委託する方式。 利用者(利用料金)増加分を民間企業の収入とすることを前提に、民間企業に運営委託する方式。



民間企業のノウハウを活用できる。 民間企業の運営ノウハウをフルに活用し、利用者増を期待できる。 民間企業の運営ノウハウを活用できる。
使用料の徴収・入金処理事務が軽減できる。
民間企業の運営ノウハウをフルに活用し、利用者増を期待できる。




定額であるため、事業者にとって利用者増加の誘引がない。 利用者が少ない場合、事業者のリスクが大きい。 赤字の場合、事業者にとって利用者増加の誘引がない。 利用者増がない場合、事業者のリスクが大きい。
2.各種の制限事項

公共サービスの民営化をめざすにあたっての理論としての管理運営形態およびそれに伴う民間への委託形態は前述のとおりであるが、実務においてその手法を活用するためには、公共サービスであるが故の法的制約等を考慮し、最善の手法を講じる必要が生じる。ここでは、各種手法を選択する場合に考慮すべき事項について考察することにする。

(1)地方自治法
 地方自治法第244条の2第3項
 地方自治法施行令第173条の3
 地方自治法施行規則第17条
  • まず、公の施設の管理運営委託については、地方自治法第244条の2第3項に基づき行なう必要がある。同法により委託先はいわゆる第三セクター、公共団体もしくは公共的団体に限定され、純民間企業への委託は認められていない状況にある。このため、本来最もノウハウや専門性を有する純民間の企業を活用していないほか、民間企業が持つ柔軟性や機動性も十分に発揮されていないなど、競争原理が有効に機能していない面も生じている。
  • PFI事業者の場合は、公の施設の管理受託者の要件を満たさない場合も事実上の業務等を包括的に行なわせることが可能(事務次官通知第6号)であるが、その場合はPFI事業者が料金収入を自らの収入として収受できず、臨機応変な料金水準の変更等もできないため、PFI事業者に需要変動リスク分担を求めることが困難になる恐れがある。
 地方自治法第244条の2第4項、5項
  • また、利用料金については、地方自治法第244条の2第4項に基づき、管理受託者の収入とすることが認められているが、この料金水準は同5項により地方公共団体の承認を得るとともに条例で定めることが要請されており、柔軟な料金設定等を通じた民間主体のインセンティブが働きにくい面がある。
 地方自治法第238条の4第1項
  • 公共施設の貸付については、地方自治法第238条の4第1項により、基本的に行政財産の貸付は認められていない。よって貸付が可能となる場合は、普通財産である施設を貸付する場合、もしくは行政財産から普通財産に転換した上で貸付する場合に限定され、手続き面などで障害が存在していると考えられる。
  • ただし、PFIの場合には、平成13年12月12日のPFI法の改正により行政財産の貸付も可能となっている。

(表II-2-1)

〜 地方自治法(抜粋) 〜

第10章 公の施設

(公の施設)
第244条  普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
 2  普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
 3  普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。
(公の施設の設置、管理及び廃止)
第244条の2 普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない。
 2  普通地方公共団体は、条例で定める重要な公の施設のうち条例で定める特に重要なものについて、これを廃止し、又は条例で定める長期かつ独占的な利用をさせようとするときは、議会において出席議員の三分の二以上の者の同意を得なければならない。
 3  普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、その管理を普通地方公共団体が出資している法人で政令で定めるもの又は公共団体若しくは公共的団体に委託することができる。
 4  普通地方公共団体は、適当と認めるときは、管理受託者(前項の規定に基づき公の施設の管理の委託を受けたものをいう。以下本条において同じ。)に当該公の施設の利用に係る料金(次項において「利用料金」という。)を当該管理受託者の収入として収受させることができる。
 5  前項の場合における利用料金は、公益上必要があると認める場合を除くほか、条例の定めるところにより、管理受託者が定めるものとする。この場合において、管理受託者は、あらかじめ当該利用料金について当該普通地方公共団体の承認を受けなければならない。
 6  普通地方公共団体の長又は委員会は、委託に係る公の施設の管理の適正を期するため、管理受託者に対して、当該委託に係る業務又は経理の状況に関し報告を求め、実地について調査し、又は必要な指示をすることができる。
(公の施設の区域外設置及び他の団体の公の施設の利用)
第244条の3  普通地方公共団体は、その区域外においても、また、関係普通地方公共団体との協議により、公の施設を設けることができる。
 2  普通地方公共団体は、他の普通地方公共団体との協議により、当該他の普通地方公共団体の公の施設を自己の住民の利用に供させることができる。
 3  前二項の協議については、関係普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。
(公の施設を利用する権利に関する処分についての不服申立て)
第244条の4  普通地方公共団体の長がした公の施設を利用する権利に関する処分に不服がある者は、都道府県知事がした処分については総務大臣、市町村長がした処分については都道府県知事に審査請求をすることができる。この場合においては、異議申立てをすることもできる。
 2  第138条の4第1項に規定する機関がした公の施設を利用する権利に関する処分に不服がある者は、当該普通地方公共団体の長に審査請求をすることができる。
 3  普通地方公共団体の長及び前項に規定する機関以外の機関がした公の施設を利用する権利に関する処分についての審査請求は、普通地方公共団体の長が処分庁の直近上級行政庁でない場合においても、当該普通地方公共団体の長に対してするものとする。
 4  普通地方公共団体の長は、公の施設を利用する権利に関する処分についての異議申立て又は審査請求(第一項に規定する審査請求を除く。)があつたときは、議会に諮問してこれを決定しなければならない。
 5  議会は、前項の規定による諮問があつた日から二十日以内に意見を述べなければならない。
 6  公の施設を利用する権利に関する処分についての審査請求(第一項に規定する審査請求を除く。)に対する裁決に不服がある者は、都道府県知事がした裁決については総務大臣、市町村長がしがした裁決については都道府県知事に再審査請求をすることができる。

(表II-2-2)

〜 地方自治法施行令(抜粋) 〜

(公の施設の管理受託者)
第173条の3
地方自治法第244条の2第3項に規定する普通地方公共団体が出資している法人で政令で定めるものは、次に掲げる法人とする。
1.普通地方公共団体が資本金、基本金その他これらに準ずるものの2分の1以上を出資している法人
2.前号に掲げる法人のほか、当該法人の業務の内容及び当該普通地方公共団体の出資の状況、職員の派遣の状況等の当該普通地方公共団体との関係からみて当該公の施設の適正な管理の確保に支障がないものとして総務省令で定めるもの

(表II-2-3)

〜 地方自治法施行規則(抜粋) 〜

(昭和22年5月3日内務省令第29号)
第17条
 地方自治法施行令第173条の3第3号の総務省令で定める法人は、公の施設の管理を委託しようとする普通地方公共団体が資本金、基本金その他これらに準ずるものの四分の一以上を出資している法人で当該公の施設の管理を主たる業務とするもの又は当該公の施設の管理に類する業務を行つているもののうち次のいずれかに該当するものとする。
1 当該普通地方公共団体が当該法人の無限責任社員、取締役若しくは監査役又はこれらに準ずべき者及び支配人の二分の一以上を派遣している法人
2 前号に掲げるもののほか、職員の派遣の状況が次のいずれかに該当する法人であつて、経営の安定が確保され、かつ、十分な社会的信用を有するもの
イ 当該普通地方公共団体その他の普通地方公共団体が当該法人の無限責任社員、取締役若しくは監査役又はこれらに準ずべき者及び支配人の概ね二分の一以上を派遣し、かつ、公の施設の管理を委託しようとする普通地方公共団体が当該法人の代表取締役その他の主要な役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。ロにおいて同じ。)を派遣している法人
ロ 当該普通地方公共団体が当該法人の代表取締役その他の主要な役員を派遣し、かつ、当該法人の管理運営に係る事務に従事する主要な職員を派遣している法人

(表II-2-4)

〜 地方自治法(抜粋) 〜

第238条(公有財産の範囲及び分類)
1 この法律において「公有財産」とは、普通地方公共団体の所有に属する財産のうち次に掲げるもの(基金に属するものを除く。)をいう。
 1.不動産
 2.船舶、浮標、浮桟橋及び浮ドック並びに航空機
 3.前2号に掲げる不動産及び動産の従物
 4.地上権、地役権、鉱業権その他これらに準ずる権利
 5.特許権、著作権、商標権、実用新案権その他これらに準ずる権利
 6.株券、社債券(特別の法律により設立された法人の発行する債券を含む。)及び地方債証券(社債等登録法(昭和17年法律第11号)の規定により登録されたものを含む。)並びに国債証券(国債に関する法律(明治39年法律第34号)の規定により登録されたものを含む。)その他これらに準ずる有価証券
 7.出資による権利
 8.不動産の信託による受益権
2 公有財産は、これを行政財産と普通財産とに分類する。
3 行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産をいい、普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産をいう。
第238条の4(行政財産の管理及び処分)
1 行政財産は、次項に定めるもののほか、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、出資の目的とし、若しくは信託し、又はこれに私権を設定することができない。
2 行政財産である土地は、その用途又は目的を妨げない限度において、国、他の地方公共団体その他政令で定めるものに対し、政令で定める用途に供させるため、政令で定めるところにより、これを貸し付け、又はこれに地上権を設定することができる。
 この場合においては、次条第3項及び第4項の規定を準用する。
3 第1項の規定に違反する行為は、これを無効とする。
4 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。
5 前項の規定により許可を受けてする行政財産の使用については、借地借家法(平成3年法律第90号)の規定は、これを適用しない。
6 第4項の規定により行政財産の使用を許可した場合において、公用若しくは公共用に供するため必要を生じたとき、又は許可の条件に違反する行為があると認めるときは、普通地方公共団体の長又は委員会は、その許可を取り消すことができる。
第238条の5(普通財産の管理及び処分)
1 普通財産は、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、若しくは出資の目的とし、又はこれに私権を設定することができる。
2 普通財産である土地(その土地の定着物を含む。)は、当該普通地方公共団体を受益者として政令で定める信託の目的により、これを信託することができる。
3 普通財産を貸し付けた場合において、その貸付期間中に国、地方公共団体その他公共団体において公用又は公共用に供するため必要を生じたときは、普通地方公共団体の長は、その契約を解除することができる。
4 前項の規定により契約を解除した場合においては、借受人は、これによって生じた損害につきその補償を求めることができる。
5 普通地方公共団体の長が一定の用途並びにその用途に供しなければならない期日及び期間を指定して普通財産を貸し付けた場合において、借受人が指定された期日を経過してもなおこれをその用途に供せず、又はこれをその用途に供した後その指定された期間内にその用途を廃止したときは、当該普通地方公共団体の長は、その契約を解除することができる。
6 第3項及び第4項の規定は貸付以外の方法により普通財産を使用させる場合に、前項の規定は普通財産を売り払い、又は譲与する場合に準用する。
7 第3項から第5項までの規定は、普通財産である土地(その土地の定着物を含む。)を信託する場合に準用する。
8 第6項に定めるもののほか普通財産の売払いに関し必要な事項及び普通財産の交換に関し必要な事項は政令でこれを定める。

(表II-2-5)

〜 地方自治法施行令/第1編 普通地方公共団体(抜粋) 〜

昭和22年5月3日 政令第16号
最終改正 平成11年10月14日 政令第324号

第5章 財務
第169条(行政財産である土地を貸し付け又はこれに地上権を設定することができるもの)
 地方自治法第238条の4第2項に規定する政令で定めるものは、次の表の上欄に掲げる区分に応じ、当該下欄に掲げるものとする。
1 行政財産である土地を貸し付けることができるもの
 イ  特別の法律により設立された法人で国又は普通地方公共団体において出資しているもののうち、総務大臣が指定するもの
 ロ  港務局、地方住宅供給公社、地方道路公社及び土地開発公社並びに普通地方公共団体が資本金、基本金その他これらに準ずるものの2分の1以上を出資している民法第34条の法人、株式会社及び有限会社
 ハ  公共団体又は公共的団体で法人格を有するもののうち、当該普通地方公共団体が行う事務と密接な関係を有する事業を行うもの
 ニ  国家公務員共済組合及び国家公務員共済組合連合会並びに地方公務員共済組合、全国市町村職員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会及び地方議会議員共済会
2 行政財産である土地に地上権を設定することができるもの
 イ  日本鉄道建設公団、帝都高速度交通営団、鉄道事業法(昭和61年法律第92号)第3条第1項の免許を受けた鉄道事業者及び軌道法(大正10年法律第76号)第3条の特許を受けた軌道経営者
 ロ  日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団及び地方道路公社
 ハ  電気事業法(昭和39年法律第170号)第2条第1項第8号に規定する電気事業者
 ニ  ガス事業法(昭和29年法律第51号)第2条第2項に規定する一般ガス事業者及び同条第4項に規定する簡易ガス事業者
 ホ  水道法(昭和32年法律第177号)第3条第5項に規定する水道事業者
 ヘ  電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第12条第1項に規定する第1種電気通信事業者
第169条の2(行政財産である土地を貸し付け又はこれに地上権を設定することができる用途)
 地方自治法第238条の4第2項に規定する政令で定める用途は、行政財産である土地の貸付けについては、普通地方公共団体が国、他の地方公共団体又は前条の表の第1号の下欄に掲げるものと1むねの建物を区分して所有する場合に当該建物の用に供することとし、行政財産である土地に対する地上権の設定については、国、他の地方公共団体又は同表の第2号の下欄に掲げるものが経営する次に掲げる施設の用に供することとする。
 1.鉄道
 2.道路
 3.軌道
 4.電線路
 5.ガスの導管
 6.水道(工業用水道を含む。)の導管
 7.下水道の排水管及び排水渠
 8.電気通信線路
 9.前各号に掲げる施設の付属設
(2)補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律

行政財産である公の施設の設置や行政が行なう事業には、補助金等を受けて実施されている場合が多く見られる。これらの補助金事業により設置された公の施設や公共サービスについて民営化を目指す場合は、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の適用を受けることになる。

同法は、第11条で補助金の他用途への使用を禁じており、それに違反した場合は補助金等の交付の決定を全部または一部取り消すことができると第17条で定め、第18条では補助金の交付の決定が取り消された場合、返還を命じる旨が定められている。また、第22条では、補助金事業で取得した財産等については、各省庁の長の承認を受けずに補助金交付の目的外使用や譲渡、交換、貸付または担保に供することを禁じている。

よって、補助金事業により取得した公の施設等の管理運営形態については、補助金を返済する覚悟を持つのでなければ、行政直営または管理運営民間委託を検討することになり、民間貸与やPFIおよび民間主体に資産等を譲渡する民間企業化はその選択肢にはなりにくいと考えられる。

(3)地方財政法/過疎地域自立促進特別措置法

行政が行なう投資的事業については、その財源として普通地方債や過疎地域では過疎債等があてられることが一般的となっている。これら普通地方債や過疎債等を財源として設置された公の施設について民営化を目指す場合は、地方財政法や過疎地域自立促進特別措置法の適用を受けることになる。

地方財政法第5条では、地方債をもってその財源とすることができる事業を特定しており、過疎地域自立促進特別措置法第12条では過疎地域に対しては、特例としてその地方債適用事業の範囲を広げている。よって、起債においてはその目的が明確にされており、その目的が変更になる場合は総務大臣又は都道府県知事に協議しなければならないとされている。しかし、起債により取得した公の施設等については、地方財政法や過疎地域自立促進特別措置法によりその適用事業が特定されている以上、それ以外の目的(たとえば民間貸与を行なうために行政財産から普通財産へ変更するなどの根本的な目的の変更)が認められるとは考えにくいため、この場合は償還が求められることになると考えられる。また起債により取得した公の施設等を民間主体に譲渡して民間企業化を図ろうとする場合は、当然のことながらその施設に対応する地方債は償還が必要になる。

よって、起債により取得した公の施設等の管理運営形態については、残債額を償還する覚悟を持つのでなければ、行政直営または管理運営民間委託を検討することになり、民間貸与やPFIおよび民間主体に資産等を譲渡する民間企業化はその選択肢にはなりにくいと考えられる。

(表II-2-6)

〜 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(抜粋) 〜

昭和30年8月27日法律第179号
最終改正:平成11年7月16日法律第87号

第3章 補助事業等の遂行等
(補助事業等及び間接補助事業等の遂行)
第11条 補助事業者等は、法令の定並びに補助金等の交付の決定の内容及びこれに附した条件その他法令に基く各省各庁の長の処分に従い、善良な管理者の注意をもつて補助事業等を行わなければならず、いやしくも補助金等の他の用途への使用(利子補給金にあつては、その交付の目的となつている融資又は利子の軽減をしないことにより、補助金等の交付の目的に反してその交付を受けたことになることをいう。以下同じ。)をしてはならない。
2 間接補助事業者等は、法令の定及び間接補助金等の交付又は融通の目的に従い、善良な管理者の注意をもつて間接補助事業等を行わなければならず、いやしくも間接補助金等の他の用途への使用(利子の軽減を目的とする第2条第4項第1号の給付金にあつては、その交付の目的となつている融資又は利子の軽減をしないことにより間接補助金等の交付の目的に反してその交付を受けたことになることをいい、同項第2号の資金にあつては、その融通の目的に従つて使用しないことにより不当に利子の軽減を受けたことになることをいう。以下同じ。)をしてはならない。

第4章 補助金等の返還等

(決定の取消)
第17条 各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
2 各省各庁の長は、間接補助事業者等が、間接補助金等の他の用途への使用をし、その他間接補助事業等に関して法令に違反したときは、補助事業者等に対し、当該間接補助金等に係る補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。
3 前2項の規定は、補助事業等について交付すべき補助金等の額の確定があつた後においても適用があるものとする。
4 第8条の規定は、第1項又は第2項の規定による取消をした場合について準用する。

(補助金等の返還)
第18条 各省各庁の長は、補助金等の交付の決定を取り消した場合において、補助事業等の当該取消に係る部分に関し、すでに補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない。
2 各省各庁の長は、補助事業者等に交付すべき補助金等の額を確定した場合において、すでにその額をこえる補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない。
3 各省各庁の長は、第1項の返還の命令に係る補助金等の交付の決定の取消が前条第2項の規定によるものである場合において、やむを得ない事情があると認めるときは、政令で定めるところにより、返還の期限を延長し、又は返還の命令の全部若しくは一部を取り消すことができる。

第5章 雑 則

(財産の処分の制限)
第22条 補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。

(表II-2-7)

〜 地方財政法(抜粋) 〜

(昭和23年7月7日法律第109号)
最終改正:平成13年3月30日法律第9号

(地方債の制限)
第5条 地方公共団体の歳出は、地方債以外の歳入をもつて、その財源としなければならない。ただし、次に掲げる場合においては、地方債をもつてその財源とすることができる。
1 交通事業、ガス事業、水道事業その他地方公共団体の行う企業(以下「公営企業」という。)に要する経費の財源とする場合
2 出資金及び貸付け金の財源とする場合(出資又は貸付けを目的として土地又は物件を買収するために要する経費の財源とする場合を含む。)
3 地方債の借換えのために要する経費の財源とする場合
4 災害応急事業費、災害復旧事業費及び災害救助事業費の財源とする場合
5 学校その他の文教施設、保育所その他の厚生施設、消防施設、道路、河川、港湾その他の土木施設等の公共施設又は公用施設の建設事業費(公共的団体又は国若しくは地方公共団体が出資している法人で政令で定めるものが設置する公共施設の建設事業に係る負担又は助成に要する経費を含む。)及び公共用若しくは公用に供する土地又はその代替地としてあらかじめ取得する土地の購入費(当該土地に関する所有権以外の権利を取得するために要する経費を含む。)の財源とする場合

(地方債の償還年限)
第5条の2 前条第5号の規定により起こす同号の建設事業費に係る地方債の償還年限は、当該地方債を財源として建設した公共施設又は公用施設の耐用年数を超えないようにしなければならない。当該地方債を借り換える場合においても、同様とする

(地方債の協議等)
第5条の3 地方公共団体は、地方債を起こし、又は起債の方法、利率若しくは償還の方法を変更しようとする場合は、政令で定めるところにより、総務大臣又は都道府県知事に協議しなければならない。ただし、軽微な場合その他の総務省令で定める場合については、この限りでない。
2 前項に規定する協議は、地方債の起債の目的、限度額、起債の方法、資金、利率、償還の方法その他政令で定める事項を明らかにして行うものとする。
3 地方公共団体は、第1項に規定する協議において総務大臣又は都道府県知事の同意を得た地方債についてのみ、当該同意に係る政令で定める公的資金を借り入れることができる。
4 総務大臣又は都道府県知事が第1項に規定する協議において同意をした地方債に係る元利償還に要する経費は、地方交付税法(昭和25年法律第211号)第7条の定めるところにより、同条第2号の地方団体の歳出総額の見込額に算入されるものとする。
5 地方公共団体が、第1項に規定する協議の上、総務大臣又は都道府県知事の同意を得ないで、地方債を起こし、又は起債の方法、利率若しくは償還の方法を変更しようとする場合には、当該地方公共団体の長は、その旨をあらかじめ議会に報告しなければならない。ただし、地方公共団体の長において議会を招集する暇がないと認める場合その他政令で定める場合は、当該地方公共団体が、当該同意を得ないで、地方債を起こし、又は起債の方法、利率若しくは償還の方法を変更した後に、次の会議においてその旨を議会に報告することをもつて足りる。
6 総務大臣は、毎年度、政令で定めるところにより、総務大臣又は都道府県知事が第1項に規定する協議における同意並びに次条第1項及び第3項から第5項までに規定する許可をするかどうかを判断するために必要とされる基準を定め、並びに総務大臣又は都道府県知事が第1項に規定する協議において同意をする地方債(次条第1項及び第3項から第5項までの規定により許可をする地方債を含む。)の予定額の総額その他政令で定める事項に関する書類を作成し、これらを公表するものとする。
7 総務大臣は、第1項に規定する協議における総務大臣の同意並びに前項に規定する基準の作成及び同項の書類の作成については、地方財政審議会の意見を聴かなければならない。

(表II-2-8)

〜 過疎地域自立促進特別措置法(抜粋) 〜

(過疎地域自立促進のための地方債)
第12条 過疎地域の市町村が市町村計画に基づいて行う地場産業に係る事業又は観光若しくはレクリエーションに関する事業を行う者で政令で定めるものに対する出資及び次に掲げる施設の整備につき当該市町村が必要とする経費については、地方財政法(昭和23年法律第109号)第5条各号に規定する経費に該当しないものについても、地方債をもってその財源とすることができる。
1 交通の確保又は産業の振興を図るために必要な政令で定める市町村道(融雪施設その他の道路の附属物を含む。)、農道、林道及び漁港関連道
2 漁港及び港湾
3 地場産業の振興に資する施設で政令で定めるもの
4 観光又はレクリエーションに関する施設
5 電気通信に関する施設
6 下水処理のための施設
7 公民館その他の集会施設
8 消防施設
9 高齢者の保健又は福祉の向上又は増進を図るための施設
10 保育所及び児童館
11 診療施設(巡回診療車及び巡回診療船並びに患者輸送車及び患者輸送艇を含む。)
12 公立の小学校又は中学校を適正な規模にするための統合に伴い必要となり、又は必要となった校舎、屋内運動場及び寄宿舎並びに公立の小学校又は中学校を適正な規模にするための統合に伴い必要となった教員又は職員のための住宅及び児童又は生徒の通学を容易にするための自動車又は渡船施設
13 地域文化の振興等を図るための施設
14 集落の整備のための政令で定める用地及び住宅
15 前各号に掲げるもののほか、政令で定める施設
3.事例研究(管理運営NPO委託)

これまで公共サービスの民営化等の手法や法的な制限についてみてきたが、公共サービスを民営化するためには様々な手法があり、またその実現については乗り越えるべき課題も山積していることがわかった。

ここでは、公共サービスの民営化の手法として近年注目されているが、その導入についてはまだ件数が少ないNPOへの管理運営委託について、先進的な事例として大阪府池田市の事例を研究することとする。

(1)池田市の経緯

池田市では、平成11年11月に企業や団体、市民の代表からなるボランティア市民会議が発足し、行政による市民公益活動団体への支援のあり方や活性化のための環境整備についての検討がなされ、平成12年10月に「市民公益活動促進に関する提言」がとりまとめられた。この提言を踏まえ、平成13年3月に「池田市公益活動促進に関する条例」が制定され、条例に基づき、平成13年5月7日にNPOとして池田市公益活動促進協議会が発足し、7月1日には同協議会に管理運営を委託して池田市立公益活動促進センター(いけだNPOセンター)が開所した。

条例では、公益活動団体の登録制度や池田市公益活動促進協議会の設置、公益活動促進のために市または市長の指定する団体(同協議会及び社会福祉協議会)に贈られた寄付金の額と同額を市が支出し、基金に積み立てるマッチング・ギフト方式の公益活動促進基金の設置など先駆的な規定がおかれている。

(2)池田市の先進性

池田市の先進性を表しているものは、「池田市公益活動促進に関する条例」である。これまで公共サービスの民営化については、最も容易と考えられる手法として公の施設の管理運営委託が取り上げられ、今後有望なその担い手としてNPOの活用が注目されてきた。しかし、実務上のその管理運営委託については前述のとおり、地方自治法第244条の2第3項の規定により、その委託先はいわゆる第三セクターや自治体出資の公益法人がほとんどを占めている状況となっている。同法では、管理委託は公共的団体にも認められており、この公共的団体にはNPOも含まれるであろうことは容易に推察されるところであるが、一方ではNPOが公共的団体であるという確証が得られにくいという現状があり、この状況がNPOへの公の施設の管理委託が増加しない要因の1つになっているのではないかと考えられる。

この問題に対し、池田市は「池田市公益活動促進に関する条例」を制定し、NPOの登録を制度化するという解決策を図っている。これは、池田市がNPOに一定の基準を設けておき、NPOに登録申請をしてもらい、基準に達しているNPOを登録し、公の施設の管理運営委託は登録済みのNPOの中から選択するという方法である。つまり、池田市がNPOに対して条例により公共的団体であるというお墨付きを与え、公の施設の管理委託を公共的団体であるNPOに委託するというものである。

この手法によれば、公の施設の管理委託先としてNPOの活用が図られやすい状況を作り出すことができると考えられる。池田市では登録NPO数が平成14年8月末現在、23件に達している。

図II-3-1

(表II-3-1)

池田市公益活動促進に関する条例(抜粋)

第1章 総則

(目的)
第1条 この条例は、公益活動の果たす役割の重要性に鑑み、公益活動の促進に当たっての基本理念、基本的施策等を定めることにより、自主的かつ主体的な公益活動を促進するとともに、行政と公益活動団体との協働を推進し、もって自立した市民が自主的、主体的に活動し、お互いに多様な価値観を認め合いながら共に支えあって生活を営む市民社会を実現し活力ある豊かな地域づくりに寄与することを目的とする。
第2章 登録制度

(登録)
第9条 公益活動団体は、次に掲げる事項を記載した書類を市長に提出して、登録を申請することができる。
(1)団体の名称及び代表者名
(2)規約又は会則
(3)団体の目的及び活動内容
(4)主たる事務所又は連絡先及び主な活動地域
(5)会員名及び会員の資格得喪に関する事項
(6)会計に関する事項
(7)市と協働することのできる事業
(8)その他必要な事項
2 市長は、前項の登録の申請があったときは、当該申請の内容について、第14条に規定する池田市公益活動促進協議会の意見を聞き、これを尊重するものとする。
3 市長は、第1項の申請をした団体が、公益活動団体であり、かつ、市と協働するにふさわしい団体であると認めるときは、登録しなければならない。
4 市長は、登録の基準を策定し、インターネットの利用その他適切な方法により公表するものとする。
5 公益活動団体は、市の事務を受託しようとするときは、あらかじめ市に登録するものとする。

(登録の変更届)
第10条 前条第3項の規定により登録を受けた団体(以下「登録団体」という。)は、同条第1項各号に掲げる事項に変更があったときは、速やかに、その旨を市長に届け出なければならない。

(登録の抹消)
第11条 市長は、登録団体が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、第14条に規定する池田市公益活動促進協議会の意見を聞いて、その登録を抹消することができる。
(1)公益活動団体でなくなったとき。
(2)登録事項に虚偽の事項があったとき。
(3)公益活動団体として著しく逸脱した行為があったとき。
(4)市の助成金、委託料に関して著しく不当な行為をしたとき。
(5)解散したとき。
(6)その他市長が抹消を相当と認めるとき。

(登録の通知)
第12条 市長は、登録をしたときはその旨を、登録を拒否又は抹消したときはその旨及びその理由を当該団体に書面により通知しなければならない。

(登録情報の公開)
第13条 登録団体は、毎年、市長にその活動内容を報告しなければならない。
2 市長は、毎年、登録団体に係る情報について、インターネットの利用その他適切な方法により公表するものとする。

出典:池田市HPにより作成(http://www.city.ikeda.osaka.jp/

III.実務的な民営化検討について

1.民営化形態の検証

自治体がサービスを提供している各事業について今後の民営化を検討する場合、その民営化形態の選択には前述の制限事項等を検証する必要がある。当該事業が補助金事業であるのか、また起債によりその費用が賄われているのか否かにより、選択可能な民営化形態が絞り込まれることになると推察される。

補助金および起債を伴う事業について民営化を検討するには、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」および「地方財政法」「過疎地域自立促進特別措置法」の制限事項の対象となると考えられる。よって、地方自治法238条の4第1項の制限により行政財産から普通財産に転換が必要な民間貸与(経営委託)や行政財産から普通財産に転換した上での売却等が必要な民営化(民間企業化)を民営化形態として選択する場合は、補助金の返済や地方債の一括償還を行なう必要が生じるため、一般的な自治体の財政を考慮すれば現実的に選択することは困難であると考えられる。また、事業開始後の時期からのPFI導入については、一連の手続きが複雑であると指摘されている新規事業のPFI導入よりもさらに複雑で困難なものになると考られるため、実現の可能性は皆無であると考えられる。

以上の状況に配慮した上で、自治体がサービスを提供している事業の民営化形態を選択するのであれば、そのほとんどの事業が管理運営民間委託を選択することにならざるを得ないのではないかと考えられる。

2.事業の管理運営民間委託形態の検証

前述のように、地方自治法第244条の2第3項に基づけば、公の施設の管理運営委託の委託先はいわゆる第三セクター、公共団体もしくは公共的団体に限定され、純民間企業への委託は認められていないため、実質的に管理運営民間委託を検討する場合は、事業団委託またはNPO委託、および第三セクターに限定した民間委託を検討することとなる。今後の市町村合併等を考慮に入れた場合、委託先をどのように選定するべきであるのか、これらの委託方法別に検討してみることとする。

(1)事業団委託

事業団への委託については、自治体の100パーセント出資の公益法人を設立して、事業の管理運営委託を行っている場合が見られる。市町村合併等による影響等をより小さくする可能性を探るという観点から言えば、これらの事業の収益状況が良好である場合は、住民の雇用を支える住民参加の企業体として、住民からの出資を募り、出資額の50パーセント程度を住民が出資することにより住民参加の色合いの濃い公益法人とすることも考えられる。しかし、公益法人への出捐金については寄付金的な性格が強く、解散の際の残余財産については公共団体である自治体に寄付することが寄付行為に定められている場合が多く、一般的な出資者には出捐金の返還や配当等の還元も行われないため、住民に出資の見返りを期待する意向が強い場合は、住民出資実現の可能性は低いと考えられる。また、住民の出資については、あくまで市町村合併等による影響等をより小さくする可能性を探るというレベルの方策であり、住民出資の企業体であるから、市町村合併等が行われた場合も必ず安定的な管理運営受託が保証されるというものではなく、それは市町村合併交渉の際の取り決め事項として確定させるべき条件項目であると推察される。

(2)NPO委託

事業のNPOへの管理運営委託を行う場合は、まず事業の管理運営を受託をするNPOが住民の中に組織される必要がある。事例研究で先述した池田市の条例では『公益活動とは、市民が行い、又は市民のために行われる自発的かつ自立的な活動であって、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするものをいう。』と定義している。公益活動を行おうという気運が住民の中に醸成され、リーダーシップが発揮されればNPOが組織されることは不可能なことではないと考えられる。また、NPOであれば、住民が多額の出資を行う必要性もないのではないかと考えられる。しかし、NPOへの公の施設の管理運営委託については、地方自治法244条の2第3項にいう公共的団体の認定という観点からは池田市のように条例による規定が望ましいと考えられ、市町村合併の可能性が議論されている状況下においては、その如何によっては特殊な条例に対しての取り扱いも流動的であると考えられる。

よって、現時点における事業のNPOへの管理運営委託は賢明な策とは言えないのではないかと考えられる。

(3)第三セクターに限定した民間委託

第三セクター方式による株式会社への事業の管理運営委託については、まず第三セクター方式により株式会社を設立する必要がある。第三セクター方式による株式会社への管理運営委託のメリットはその出資パートナーとなる民間企業のノウハウを活用することにあるが、必ずしも管理運営ノウハウを持った純民間企業の参入があるとは限らない。参入が期待できない場合は、民間企業のノウハウの活用というメリットは享受できないと考えられる。

しかし、株式会社設立についてのメリット享受の方法としては、住民の雇用を支える住民参加の企業体として、より住民所有の色合いの濃い法人を設立することも考えられる。住民からの50パーセント程度の出資を募り、残り50パーセントを自治体が出資する形態である。この方法であれば、新規に株式会社を設立するメリットが得られるのではないかと考えられる。商法上の株式会社設立にあたっては最低資本金は1,000万円となっているため、住民出資額は500万円で設立可能となる。また、株式会社であれば、経営不振の場合は倒産もありえるが、利益が出た場合は住民への配当も可能となる。

しかし、東京商工リサーチのまとめでは、財団法人や社団法人も含む自治体収支が25パーセント以上の第三セクターは平成12年度決算において経常赤字や債務超過が目立っており、特に和歌山県ではその比率が全国で最も高く約半数が赤字法人となっている状況もあり、第三セクター方式による株式会社新設および住民出資についてはリスク面を考えると住民にその賛同が得られるか微妙な状況であると考えられる。

よって、事業の第三セクター方式による株式会社への管理運営委託は、そのメリットの有無、住民出資に対する賛否の有無等を考慮すると、その実現の可能性が低いのではないかと考えられる。

以上のように事業の管理運営民間委託の方式について事業団委託、NPO委託、および第三セクターに限定した民間委託を検討してきたが、市町村合併等の問題等が存在する現在の状況下においては、自治体全額出資の財団法人等を活用した事業団委託を選択せざるを得ない状況が多くなっているのではないかと考えられる。

3.地域への利益誘導のためのケーススタディ

自治体や自治体が出資する公益法人が行ってきた各種事業は、その事業が存在する地域の財産とも言えるものである。できれば、市町村合併等が行われた場合もこの財産から生まれる利益については、当該地域にスムーズに誘導・還元され、地域が自主的に地域運営を行うための資金としたいところである。そのような手法が存在しないのであろうか。想定される仕組みについてケーススタディを行ってみる。

前述のとおり、住民がリーダーシップを発揮してNPOを設立し、直接事業の管理運営を受託するということは難しいと考えられるため、事業の管理運営は第三セクター等の別法人に任せ、出資者や地権者として経営に参加し,その利益を配当等で享受する方法を考えてみる。地域への利益の還元および地域の自主的運営のための資金確保という観点で考えた場合、受益者は住民個人ではなくなんらかの公益性を維持できる地域の団体であることが望ましいと考えられる。なお、出資等については住民の賛同が得られるものと仮定しケーススタディを行うものとする。

i.地縁による団体のケーススタディ(1)

公益性を維持し、地域の自主運営を行うことのできる団体としては、自治会や区などの地縁による団体が考えられる。地方自治法260条の2によれば、「町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体(地縁による団体)は、地域的な共同活動のための不動産又は不動産に関する権利等を保有するため市町村長の認可を受けたときは、その規約の定める目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」とされている。

これらの団体がすべて公民館や区有林等の不動産を取得し、地縁による団体として認可を受け、法人格を有する団体として管理運営法人へ出資を行えれば、事業利益の地域への誘導および財政力をともなった地域運営には理想的な状況となると考えられる。

地縁による団体の出資イメージ図

しかし、地方自治法260条の2に関する通知(平成3年4月2日)によれば、同法にいう「不動産又は不動産に関する権利等」とは、1)不動産登記法(明治32年法律第24号)第1条各号に掲げる土地及び建物に関する権利。2)立木に関する法律(明治42年法律第22号)第1条第1項に規定する「立木」の所有権、抵当権。3)登録を要する金融資産。とされている。総務省および和歌山県への聞き取り調査では「登録を要する金融資産」とは国債・地方債・社債を想定しおり、他法人への出資は同法にいう地縁による団体の要件に該当しないため、法人格のある地縁による団体としては他法人への出資はできない(出資する場合は任意の団体としての出資となる)という見解が示された。

地縁による団体の成立要件とその権利義務の範囲については法解釈上の余地は残されているのではないかと考えられるが、リスク回避の観点から判断を行うとすれば、地方自治法260条の2を適用した地縁による団体(法人)としての他法人への出資は断念せざるを得ないのではないかと考えられる。

ii.地縁による団体のケーススタディ(2)

地方自治法260条の2を適用した地縁による団体(法人)としての他法人への出資は断念せざるを得ないことを確認することはできた。しかし、地縁による団体は地域の自主的運営を行うには規模的にも組織的にも適した団体であると考えられるため、地縁による団体として出資の方法を取らず、利益の還元を受ける方法はないか検討してみる。

前述のように、地方自治法260条の2は不動産取得を地縁による団体に認めることを目的として規定されたと言えるため、その本来の法主旨に従い、当該事業に関する不動産の一部を地縁による団体で取得する事は可能であると考えられる。そうした上で、その取得した不動産を当該事業の管理運営を行う法人に賃貸し、地代として収益を得ことができれば、地域への利益誘導・還元という当初の目的は達成できると考えられる。ただし、土地取得のために必要となる費用金額および賃貸金額の設定については、関係者による合意が不可欠であり、採算面においても合理的な解決が図られる必要があると考えられる。不動産取得の場合、出資に比べその取得費用が高くなる可能性が懸念される。また、収入については、当該法人が赤字の場合でも地代であれば取得できる反面、当該法人の利益が大きい場合は、出資の場合には得られるであろう配当金額に比べ、不動産の賃貸による地代は低い金額となる可能性があると考えられる。

地縁による団体の不動産所有イメージ図

iii.NPO法人のケーススタディ

出資者としての可能性をもう一度検討してみると、地方自治法260条の2の地縁による団体としては他法人への出資を断念せざるを得ないが、公益性を持って活動をおこなう法人格を持つ団体としては、もう一つ特定非営利活動法による特定非営利活動法人(NPO法人)が考えられる。地縁による団体として前述で想定した自治会や区を地縁による団体ではなくNPO法人として法人化し、他法人への出資を行い、その配当利益により地域の自治活動を行うことが可能であるか検証してみることにする。

NPO法人の出資イメージ図

特定非営利活動法人(NPO法人)は、都道府県をまたがない場合は、都道府県知事に所定の申請書を提出し設立の認証を受けることにより設立することができる。「特定非営利活動」とは、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするものをいうため、「特定非営利活動法人」は特定の個人または法人その他の団体の利益を目的としてその事業を行ってはならない。しかし、同法人はその行う特定非営利活動に係る事業に支障がない限り、その収益を当該事業に当てるため、収益を目的とする事業(収益事業)を行うことができるとされている。入会資格に地域等の制限を加えることはできないが、各区(自治会)が地域の福祉およびまちづくりの推進を図る活動等を行うためにNPO法人を設立し、その収益を当該事業に当てるために他法人へ出資を行うことは可能と考えられる。

しかし、NPO法人設立にあたっては、かなりの量の申請書類や会計書類が必要になり、また設立後は、その詳しい活動報告や財産目録、貸借対照表、収支計算書を毎年所轄庁に提出するなどの義務が生じ、理事の変更や再任にあたっても登記が必要となるなど煩雑な事務が発生することとなる。税金についても、収益事業については株式会社と同等の税金がかかり、まったく収益事業を行わない場合においても一定の税金がかかることになる。

NPO法人を地域一体で設立し、自治体や自治体出資の公益法人が行ってきた各種事業を受託し、管理運営事業を行いながら地域活動を行う場合と比較すれば、区や自治会でNPO法人を設立し他法人へ出資を行う場合は、その組織や規模は小さいものとなるため、NPO法人を組織として運営していくための負荷は幾分か軽減されると考えられるが、何れにしても強いリーダーシップと法的・社会的責任が求められるものであると考えられる。

(表III-3-1)

NPO法人の概要
●法人格とNPO法

たとえば、会社のものやお金は社員のものではなく、会社がからんだ契約も社員個人の契約ではありません。これは、会社が人格を持ち、お金を所有したり、契約を結んでいるからです。

団体の規模や活動が大きくなると、財産所有や契約などの法律行為を個人の責任ではなく、団体の責任で処理したほうが便利で実態とあう場合があります。このため、法律で法人という制度をつくり、団体に法律上の人格を取得できるようにしたのが「法人格」です。

平成10年12月1日から施行されたNPO法(正式名称:特定非営利活動促進法)は、NPOなどの市民活動を行う民間非営利団体が簡易に法人格を取得できるように定めたもので、この法律に基づいて法人格を取得した団体を通称でNPO法人(正式名称:特定非営利活動法人)と呼びます。法人格をもつNPOも、もたないNPOも等しく社会に役立つ活動を行っており、活動に対する市民の評価に法人格の有無は関係ありません。

●法人格を取得するには?

NPO法人になるためには設立の認証が必要です。団体の事務所が和歌山県内のみにしかない場合は和歌山県知事に、2つ以上の都道府県にある場合は内閣総理大臣に申請します。

申請時に提出する書類は、次のものがNPO法で定められています。

【提出書類】

1. 申請書
2. 定款
3. 役員名簿
4. 就任承諾書
5. 役員の住所または居所を証する書面 (住民票等)
6. 宣誓書(欠格事由、親族排除規定)
7. 役員のうち報酬を受ける者の名簿
8. 社員のうち10人以上の者の名簿
9. 確認書 (宗教活動を主たる目的にしないこと等)
10. 設立趣旨書
11. 設立者名簿
12. 設立についての意思の決定を証する議事録
13. 設立当初の財産目録
14. 設立当初の事業年度を記載した書面
15. 設立の初年(度)及び翌年(度)の事業計画書
16. 設立の初年(度)及び翌年(度)の収支予算書

これらの書類が提出されますと、県ではNPO法の基準や手続きに従って審査し、要件を満たしていれば2ヶ月間の縦覧を経て認証をします。

●どんな団体が認証されるの?

NPO法人を取得するには主に二つの条件があります。

一つめは、団体の活動がNPO法に定める12分野の活動のうち1つ以上に該当し、不特定多数のものの利益の増進に寄与することを目的としていること、二つめにNPO法に定める8つの条件を満たしていることがあげられます。

【NPO法に定める12分野の活動】
  1. 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
  2. 社会教育の推進を図る活動
  3. まちづくりの推進を図る活動
  4. 文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
  5. 環境の保全を図る活動
  6. 災害救援活動
  7. 地域安全活動
  8. 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
  9. 国際協力の活動
  10. 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
  11. 子どもの健全育成を図る活動
  12. 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
    ※不特定かつ多数の利益の増進に寄与することを目的とするものであること。
【NPO法に定める8つの条件】
  • 特定非営利活動を行うことを主たる目的とすること。
  • 営利を目的としないものであること。
  • 社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さないこと。
  • 役員(理事・監事)のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の1/3以下であること。
  • その活動が、宗教活動や政治活動を主たる目的とするものでないこと。
  • その活動が、特定の公職者(候補者を含む)又は政党を推薦、支持、反対することを目的とするものでないこと。
  • 暴力団でないこと、暴力団やその構成員の統制下にある団体でないこと。
  • 10人以上の社員を有するものであること。
●NPO法人ができること

法人格を持たない団体は任意団体と呼ばれ、実態は団体であっても法律上はあくまで個人の集まりとして扱われます。そのため、契約や財産所有等は代表者などの個人名義で対応することになり、万一、問題や事故が起こったときなどは個人に多大な負担がかかる可能性があります。

法人格を取得すると、団体に関する法律行為を団体名義で処理することができることから、メンバーの個人的な負担が軽くなり、安定的・継続的な活動が行いやすくなります。例えば、電話に加入したり、事務所を借りたりすることや、土地や建物にかかる登記についても団体名義で行うことが可能となります。また、海外での活動を行う団体などでは、法人格を取得していたほうが活動しやすい場合もあるようです。

以上のように、権利関係や責任の所在を明確にし、個人の財産と団体の財産を区別するためには法人格を取得したほうが便利だと言えます。しかし、法人化することによって、かえって負担が増加することがあるということを知っておかなければなりません。有志でつくる団体で自由に活動できればいいという場合でも、法人格取得によって「NPO法上の義務」や「納税の義務」が発生します。

契約等の名義(例)
法人格がない場合 NPO法人の場合
「○○の会代表 △山△子」 「特定非営利活動法人○○の会」
●NPO法人の義務

法人格を取得すると、「権利」が与えられる反面、大きく分けて「NPO法上の義務」と「納税の義務」の二つの義務が発生します。

1.NPO法上の義務

法人化すると、NPO法に従い以下のことが義務づけられます。

  • 法律や定款に沿った運営
  • 毎年の必要事項の登記
  • 毎年の事業報告や決算書類の提出
  • 情報公開
  • 毎年1回以上の総会

「情報公開」は、「NPOは市民自らが監督し、育てていくものだ」というNPO法の趣旨を反映したもので、NPO法人は行政の監督をあまり受けないかわりに情報を広く市民に公開し、活動に対する評価を市民一人ひとりの判断に委ねる仕組みになっています。

2.納税の義務

NPO法人の納税の義務には、

  • 法人税(収益事業をしている場合)
  • 都道府県民税
  • 市町村民税
  • 事業税(収益事業をしている場合)

などが発生しますので、詳しくは税務署などに相談してください。

●してはいけない活動

NPO法人がしてはいけない主な活動には、以下のものがあります。

  • 宗教活動を主たる目的として活動すること
  • 政治活動を主たる目的として活動すること
  • 特定の公職者(候補者を含む)を推薦、支持、反対することを目的として活動すること
  • 特定の政党を推薦、支持、反対することを目的として活動すること
●NPO法人の収益事業

非営利活動とは「無料奉仕」を意味するのではなく、「利益を団体の構成員に分配しない」ということです。NPO法では、NPO法人が活動の目的とする「本来事業」の他に、組織を運営し継続的に活動するための資金を得る「収益事業」を行えることになっています。例えば、あるNPO法人が資金を集めるために、収益を目的としたバザー等を開催することなどが該当します。

また、専属のスタッフに給料を払っているNPO法人もありますが、だからと言って直ちに営利団体だとは言えません。組織を運営するためには、電気代や通信費、備品などの購入費が必要です。組織の活動を円滑に進めていくためにスタッフを雇用する必要が生じることもあり、その人に対する給料は必要経費と考えることができます。ただし、労働の対価としての常識から離れた高い給料を払っていた場合は、利益を分配しているとみられる可能性があります。

●収益事業をする条件

NPO法人が収益事業を行うには、以下の条件を満たすことが必要です。

  • 本来の特定非営利活動に支障をきたさないこと
  • 収益は社会貢献活動にのみ使用すること(利益分配の禁止)
  • 特定非営利活動会計と収益事業会計を明確に分離すること
  • 法人税、事業税等の納税義務を果たすこと
●認証手続きについて

法人設立認証手続きの流れ
法人設立認証手続きの流れ

出典:和歌山県HPわかやまNPO広場(http://www.wakayama-npo.jp/

IV.おわりに

自治体が行う公共サービスの今後の民営化の可能性について検討を重ねてきたが、現状において公共サービスの民営化手法は様々に検討されており、また、理論上有効ではないかと考えられる手段の存在も認識することができた。

また、市町村合併等を考慮する中において、収益事業から生じる利益についての当該地域へのスムーズな誘導・還元については、「地縁による団体」が収益事業にかかる不動産を取得・所有し、その不動産を管理運営会社に賃貸することにより地代として収益を取得する手法と、収益事業を第三セクターとして株式会社化し、当該地域内の区や自治会等がNPO法人を立ち上げ、その第三セクターに出資する手法が、現状の法規制の下では実現の可能性が高いのではないかと考えられる。しかし、NPO法人には、法人の立ち上げにともなうリーダーシップの存在が不可欠であり、煩雑な申請手続きや運営上の多様な責任も生じることとなるため、当該地域住民の足並がそろうか懸念が残るところである。また、地域でのNPO法人立ち上げの目的ともいえる第三セクターへの出資に対してNPO法人内での合意形成が円滑に行えるか等の問題も解決すべき前提となると考えられる。

今回の調査研究においては、合併論議を含む地方分権に対する政府の推進方針に比べ、今後、地方分権を進めるための地方財政運営に大きく影響を及ぼすであろう公共サービスの民営化の推進については、それを効率的に活用するための法改正や立法措置を含む規制緩和が遅れているのではないかと考えざるを得ない状況が確認された。

今後、全国的な合併協議が進展し、新自治体が市町村建設計画等の具体的取組みに着手した場合、公共サービスの民営化を取り巻く法的な規制が健全な地方財政計画策定の足かせとなるとも考えられるため、公共サービスの民営化を取り巻く法規制に関しては、規制緩和を求める声が高くなってくるものと考えられる。この方向性は、政府の方針である地方の自己決定・自己責任の方針や民間活力導入による経済活性化の方針に合致するものであり、公共サービスを取り巻く規制は自ずと緩和の方向に向かうものと考えられるが、地方自治体からも強い要請を政府に行っていく必要があるのではないかと考えられる。

参考文献等一覧

参考文献
  • 「第3セクターをリストラせよ」 (熊井均編著) 日刊工業新聞社
  • 「公益法人の合併・解散と営利転換」 (塩井勝著) かんき出版
  • 「地方分権下の地方自治」 (本田弘・下條美智彦編著) 公人社
  • 「<特集>公社・第三セクターの改革課題」 (成瀬龍夫・自治体問題研究所編集) 自治体研究社
  • 「地方税財源の改革課題」 (関野満夫・自治体問題研究所編集) 自治体研究社
  • 「自治体のアウトソーシング戦略」 (島田辰巳編著) ぎょうせい
  • 「公共サービスの民営化−公民パートナーシップ(PPP)の展開Vol.2」 (日本投資銀行北海道支店)
  • 「公共施設改革プログラム」 (山梨県)
  • 「PFI導入マニュアル」 (三重県総合企画局)
  • 「日本版PPP(PublicPrivatePartnership:公共サービスの民営化)の実現にむけて」 (経済産業省経済産業研究所日本版PPP研究会)
  • 「エムライラニュースレターNo26 第三セクターのあり方について」 (宮城県地域振興センター)
ホームページ
引用および参考法律・法令等
  • 「地方自治法」
  • 「地方自治法施行令」
  • 「地方自治法施行規則」
  • 「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」
  • 「地方財政法」
  • 「過疎地域自立促進特別措置法」
  • 「特定非営利活動促進法」(NPO法)
  • 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)

(2003.6)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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