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「なぎさ海道」の推進について

財団法人大阪湾ベイエリア開発推進機構
(前 和歌山社会経済研究所 研究員)
艸林 尚志

はじめに

昨年12月に、和歌山社会経済研究所を離れ、財団法人大阪湾ベイエリア開発推進機構で勤務することとなりました。この法人は、近畿圏の活性化を先導する大阪湾岸地域に関する一体的利用を推進するため、新たな高次機能の集積、快適な生活空間の形成等大阪湾岸地域の総合的開発整備に関する調査研究、企画立案、合意形成の促進、広域的共同的取り組みの促進等を行い、多極分散型国土の形成に寄与することを目的として平成3年に設立されました。そして、この財団の事業の一つに「なぎさ海道」の推進というものがあります。本稿では、和歌山県の海辺等も含んだ、この取り組みの理念や現況について触れてみたいと思います。

「なぎさ海道」とは

「なぎさ海道」は、「大阪湾ベイエリア開発整備のグランドデザイン」(平成3年策定)におけるシンボルプロジェクトの一つとして提唱されました。「グランドデザイン」は、世界都市“関西”の形成を先導する大阪湾ベイエリアの将来の発展方向とそれを実現するための戦略を示したもので、「住・職・学・遊の諸機能が複合した快適な生活空間の形成」、「自然と調和した魅力的な環境の創出」等、大阪湾ベイエリア開発整備の基本目標を掲げています。この「グランドデザイン」の実現に向けて、積極的な親水空間の創出が必要との視点から、推進すべきプロジェクトとして設定されたものです。その後、調査研究が進み、平成9年3月には「なぎさ海道推進マスタープラン」が策定され、その理念と推進方策が提示されました。

「なぎさ」とは、多彩な生物が生息し、豊かな自然が広がっている波打ち際を指します。「海道」とは、人、モノ、情報が行き交い、様々な人間活動が展開されている海岸に沿った道や地域を意味します。「なぎさ海道」とは、このふたつが重なり合うことで生まれる、人と海とが豊かに触れ合う魅力ある海辺空間の象徴です。具体的には、地域の特徴を活かした「拠点」と、それらを結ぶ「海辺の路」とによって構成されます。「なぎさ海道」は、海と陸が出会うように、異なるものが出会い交わる場として、様々なかたちで市民生活や都市活動を結び、人と海の豊かな関わりを育んでゆく場です。

「なぎさ海道」が目指すものは、自然環境の保全と持続可能な開発を基本に、社会経済基盤の整備を進めつつ、人と海とが豊かに触れ合うことであり、海辺のみならず、海・河川・内陸、さらには関西の持つ豊かな歴史的・文化的資源と連携しながら、「新しいライフスタイルの創造」「海と一体になった地域の形成」「持続可能な未来につながる産業の活性化」といった、大阪湾ベイエリアの新たな可能性を創造しようとするものです。

「なぎさ海道」の対象エリアと登録資源等

「なぎさ海道」は、大阪湾・播磨灘・紀伊水道をめぐる1,500キロにわたるエリアを対象としており、府県で言うと大阪府・兵庫県・和歌山県・徳島県にわたっています。

図:「なぎさ海道」の対象エリア
「なぎさ海道」の対象エリア

このエリアにおいて、「なぎさ海道」の認識と理解を深めるため、「なぎさ海道」にふさわしい施設や資源を、基準を設けて(表1〜2)登録・広報しており、現在373箇所が登録されています。なお、和歌山県の関連では75箇所となっています(登録資源の詳細については、推進機構のホームページをご参照ください/URL http://www.o-bay.or.jp)。

これらのハードのほか、海辺などで展開される都市・生活・文化活動等のソフト(例:海辺の祭り、イベント、清掃活動、自然観察、海洋レクリエーション、漁業、自然維持保全、モニタリング調査、交易・文化交流、産業活動)も含めたものが、登録対象の全体像(将来像)をなしています。

表1:資源登録にあたり配慮することが望ましい7つの原則

開放 誰もが自由に利用・参加できること
親水 昔や今の海を感じ、海辺に近づけ、海に親しむことができること
眺望 海、船、産業活動や人々の活動が望めること
施設 子供から高齢者に至るすべての人が使いやすいデザインであること
景観 近景と遠景に配慮されていること
アクセス 様々なところから情報や現地にアクセスができ、他の資源・施設にネットワークができていること
共生 自然や地域の環境を大切にし、動植物・自然と共生すること

表2:登録基準の概要

登録資源・施設 イメージ 適合する例
1.なぎさのスポット 海に関係する文化的、歴史的等の資源を記す看板や石碑、旧式灯台、砲台などの小さな建築構造物とする。なお、水辺に立地することは要しない。(例示:石碑・看板、灯台) 住吉高灯籠(大阪市)、紀ノ国屋文左衛門船出の碑、大崎万葉歌碑(下津町)など
2.なぎさの拠点 親水空間が備わる施設や概ね臨海部に立地する施設、又は、海辺を眺めることを目的としてできる施設(展望台) 黒江の町並み(海南市)、大阪ガスガス科学館(高石市)など
3.なぎさトレイル 歩行者・自転車の通行を前提とした水際の路、又はテーマ性のある臨海部の路。(例示:遊歩道、自転車道) 酒蔵の道(神戸市)、浜街道(阪南市)、磯崎遊歩道(南部町)など
4.なぎさロード 自動車による海辺のドライブコース(一般道路(高速道路は含まない))や高速道路を走る定期バスの海が見える区間 淡路・徳島行き高速バス、関西国際空港行きリムジンバスなど
5.なぎさシーライン 大阪湾ベイエリア内の海上・水上航路で、定期航路・クルーズ・遊覧船・渡舟などがある。 別府航路、中之島−OBP間の水上バスなど
6.なぎさレールウェイ 海への眺望が素晴らしい鉄軌道。 切目駅〜岩代駅〜南部駅、磯ノ浦駅付近など

「要件」の欄は省略

「なぎさ海道」の推進

「なぎさ海道推進マスタープラン」においては、新しい連携のしくみと市民参加に基づく発見・ネットワーク・参加をキーワードに「なぎさ海道ムーブメント」を起こし、人と海とが豊かに触れ合う「なぎさ海道」の実現をとおして、大阪湾ベイエリアの新たな可能性の創造に取り組むとしています。そして、そのための活動として、広報、交流・連携、調査・研究の3つの側面から多岐にわたる息の長い取り組みが重要であるとされています。

これを受けて、平成9年度には、国、府県、市町、企業、市民のそれぞれの取り組みをつなげ総合的に推進する中核組織として「なぎさ海道推進会議」が設立されました。また、ワークショップ・研究会の開催や前述の資源登録、「なぎさ海道ウォーク」、市民ネットワーク活動(情報交換・交流会)、「なぎさトレイル」モデルルートの提案(マップの作成:14年度は和歌山市等)などを、現在に至るまで実施しており、「なぎさ海道」の実現に向けて積極的な活動を展開しています。

鉄道会社等とタイアップした「なぎさ海道ウォーク」などは、気軽に参加でき「なぎさ海道」の魅力に触れることのできるイベントです(和歌山県での最近の実施箇所は海南市、下津町、日高町、等)。みなさんも一度体験されてみてはいかがでしょうか。

おわりに

和歌山在任中は、癒しを求め熊野古道にも幾度となく足を運びました。大雲取越の坂の厳しさや幽玄さを醸し出す森林の空気が強く印象に残る一方で、比較的気軽に訪れることのできる藤白峠のルートや峠からの明るい海の眺めも、また記憶に刻まれています。歴史街道としての「道」の魅力に加え、海・山といった多彩で美しい自然に触れられることに大きな喜びを覚え、自然環境保護の重要性を改めて感じた次第です。

「なぎさ海道」についても、人々が自然と触れあい理解を深めるとともに、歴史を知り、未来を考えるきっかけとなるという点で相通じるものがあると思います。今後、少しでも多くの方が、「なぎさ海道」推進の活動に関心を持って参加していただくことを願ってやみません。

さらに、国あるいは関西において観光振興がキーワードとなる中で、大阪湾ベイエリア、ひいては関西全体の活性化のために、「なぎさ海道」の観光資源としての可能性にも今後着目し充実を図っていく必要があるのでは…とも考えています。

(2003.3)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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