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がんばれ 紀州レンジャーズ 〜和歌山県への経済波及効果の推計〜

主任研究員  中平 匡俊
研究員  石橋 宏之

はじめに

人口減少時代を迎え、私たちを取り巻く経済状況は、右肩あがりの頃と比べたいへん厳しいと言わなければなりません。
特に地方にとっては切実な問題です。定住人口が減るなか、なんとか交流人口を増やし地域の活性化につなげる取り組みが望まれています。

交流人口を増やす施策は、観光や文化スポーツといった分野など『人が動く経済』にスポットを当て、地域の経済浮揚につなげることだと思います。
同時にそれは、地域の真の豊かさにつながることにもなります。

ここでは、和歌山県に新しく誕生した野球の関西独立リーグに所属する「紀州レンジャーズ」について、球団運営、付帯する活動等を調査し、和歌山県に及ぼす経済波及効果を推計していきます。
また、球団が行う地域おこしへの取り組みや観戦客アンケートより得られた関西独立リーグへのファンの要望等も併せて紹介します。

1.経済波及効果とは

新しい経済活動は、その活動に必要な財・サービスの購入や雇用者所得の増加を生み、他の産業の生産をも誘発します。また雇用者所得のうち消費に回った分が更なる生産活動を引き起こすことになります。
これらを総合して経済波及効果とよんでいます。

2.本調査での経済波及効果の推計方法

「紀州レンジャーズ」の活動に伴い和歌山県で発生するつぎの3つに分類した消費支出額について調査・推計し、和歌山県産業連関表により経済波及効果を算出します。

(1)球団の消費支出
  • (試合開催・移動・宿舎・用品購入・報酬等球団運営に係る費用)
(2)支援企業・個人サポーターの消費支出
  • (協賛金・広告費・年間会費等)
(3)観戦客等の消費支出
  • (観戦・交通・グッズ購入に係る費用・付帯する支出等)

以上について、「球団からの聞き取り調査」と「観戦客へのアンケート調査」により得られた数値をもとに推計を行うことにしました。

3.紀州レンジャーズについて

今年球団設立された「和歌山」の野球チーム。「大阪」、「神戸」、「明石」の3球団とともに野球の関西独立リーグを展開しています。「ナックル姫」の愛称で人気の吉田えり投手の神戸入団は話題になりました。
年間を通じて72試合行い、ホームゲーム36試合は和歌山市の紀三井寺球場をはじめ和歌山県内各地で開催されます。

野球を通じて、また身近に誰もが楽しく参加できる催しなどを通じて地域おこしに力を注いでいます。
地域密着型のプロ球団として、地元企業や住民の支援・応援に支えられ活動を行います。試合の観戦については、小学生以下、高齢者、身体障害者の方は全試合無料となります。

日本における独立リーグの現在状況は、四国九州リーグ6チーム、関西リーグ4チーム、北信越リーグ6チーム、合計16チームです。また関西では、「三重」が来年からリーグへの参加を表明しています。

選手の平均年俸は約130万円、全寮生活の若い選手たちのチームです。先行の四国リーグからは日本プロ野球チームへ入団できた選手もいます。
独立リーグの監督・コーチ陣は、地元にゆかりの元プロ野球選手や指導者の方が多く、紀州レンジャーズの監督は、和歌山出身で元阪神タイガース監督の藤田 平氏です。

4.紀州レンジャーズの和歌山県への経済波及効果

(1)総括

関西独立リーグは、4球団でスタート、2年目に5球団となり、3年目に6球団で本格的に軌道に乗るとしています。
今回の推計は、まず、活動実績を基に初年度である今年1年間の和歌山県への経済波及効果を推計し、さらに設立から軌道に乗るシーズン終了までの3年間の活動による和歌山県への経済波及効果を推計します。
今回の推計では、シーズンオフ時の活動(キャンペーン等)、また試合開催に付随して行われる諸活動(球場及び周辺でのイベント等)については算入していません。
その結果、紀州レンジャーズの和歌山県への経済波及効果は、初年度1億4,700万円、設立から3年間で6億3,300万円と推計されます。

◇今年1年間の和歌山県への経済波及効果

経済波及効果    1億4,700万円
直接効果1億円
一次波及効果2,900万円
二次波及効果1,800万円
雇用誘発者数8人

◇3年間の活動による和歌山県への経済波及効果

経済波及効果    6億3,300万円
直接効果4億3,100万円
一次波及効果1億3,100万円
二次波及効果7,000万円
雇用誘発者数37人
(2)詳 細

経済波及効果の推計に際し、ベースとなる数値を以下のとおりとしました。

初年度 3年間
1.ホームゲーム(県内で開催される36試合)の有料観戦客総数 19,292人
(前期18試合の実績9,646人×2倍)
約85,000人
(2年目27,100人、3年目は1試合あたり1,000人以上の年間38,600人を目標)
2.球団の運営費 監督、コーチ、選手、球団スタッフ等の人件費 7,350万円 1億8,624万円
(2年目より人件費圧縮)
運営に係る諸経費 2,698万円 7,343万円
3.スポンサー・サポーターの消費 年間メインスポンサー、企業・個人サポーター 5,427万円 1億6,682万円
4.観戦客等の消費 グッズ売上 300万円 1,020万円
売店での消費 360万円 1,170万円
5.新たな取り組みにより発生する消費 紀州レンジャーズ和歌山県産品ネット販売 企画中 2億円
紀州レンジャーズ飲料自販機設置 企画中 1億7,000万円
紀州レンジャーズ試合観戦付バスツアー 試験実施につき推計に算入せず 1,000万円
(年間10回以上の開催目標)

5.その他の様々な効果

(1)宣伝効果

紀州レンジャーズの活動は、新聞・雑誌・テレビ・ラジオ等のメディアに数多く取り上げられています。
球団に記録のあった新聞の掲載実績(前期分のみ)だけを見ても、貨幣評価換算すれば初年度1年間で、おおよそ6,000万円と推計されます。

  • 前期分掲載実績 約300段
  • 年間掲載推計600段×広告段単価平均10万円
(2)ボランティアの貨幣評価

紀州レンジャーズの活動は、多くのボランティアに支えられており、それらを人件費として換算すれば初年度1年間で、おおよそ340万円となります。

  • 一試合平均10人×10時間×36試合×時給934円(※1)=3,362,400円
  •       ※1和歌山県(産業部門)のパートタイム男女平均賃金
  •          (「平成18年度賃金構造基本統計調査」より)
(3)キャラクター効果

紀州レンジャーズのキャラクターは応援グッズ等に展開し販売されますが、認知度が上がればキャラクターイメージを使った別のアイテムへの転用も発生します。
紀州レンジャーズのイメージでデザインされた飲料自動販売機を県内へ展開したいという話が、球団とメーカーとの間で持ち上がっており具体化されています。

6.紀州レンジャーズの活動紹介

紀州レンジャーズは、総合型地域スポーツクラブ「紀州レンジャーズクラブ」を設立・運営を開始しています。クラブ種目は、現在「野球」・「ラグビー」・「カヌー」・「フリークライミング」・「モトクロス」・「ダンス」・「フィットネス」があり、順次拡大中です。

「野球」では、軟式野球から硬式野球を目指す少年対象の硬式野球基本指導を、紀州レンジャーズの試合終了後、球場を利用し選手たちが行っています。

このように、紀州レンジャーズは、スポーツをテーマとして地域コミュニティ活性化の一翼を担っています。
また、紀州レンジャーズの活動に合わせて、野球観戦と和歌山を体験できるバスツアーが実施されたり、試合開催日には球場の周りでフリーマーケットが開催されるなど、「元気な和歌山」達成には、たのもしい相乗効果も少しずつ生まれてきています。

7.観戦客アンケートより

(1)アンケート概要

財団法人和歌山社会経済研究所と大阪体育大学冨山研究室(スポーツマネジメント)が協力し、紀州レンジャーズのホームゲームに来場された野球観戦客に、つぎのとおりアンケートを実施しました。

○アンケート実施日・場所・対戦カード
第1回平成21年5月28日(金)試合開始18時 紀三井寺球場
紀州レンジャーズVS明石レッドソルジャーズ
第2回平成21年6月6日(土)試合開始13時 上富田球場
紀州レンジャーズVS大阪ゴールドビリケーンズ
○アンケート実施方法
当日来場された方に、アンケート用紙を配布、試合終了後回収。
○サンプル数
 第1回回収数132
 第2回回収数62
 合 計194
(2)アンケート結果より

アンケート結果より回答者の属性と、関西独立リーグへの要望について抜粋し、つぎに掲載しました。

○回答者の属性

性別

年齢

居住地

○関西独立リーグへの要望

各項目について要望の高さを得点化するとつぎのとおりです(5点満点)。トップ3については球場により順位は入れ替わります。

紀三井寺球場 上富田球場
レベルの高い試合 4.57 4.20
子どもが楽しめる雰囲気づくり 4.27 4.25
ファンクラブ組織の充実 3.99 4.20
会場で販売する飲食物の充実 3.84 3.95
試合の合間のアトラクションの充実 3.58 3.78
試合観戦時のプレゼントの充実 3.35 3.70

おわりに

設立時の大きな設備投資はなく、また運営においても選手の年棒に代表されるように、紀州レンジャーズの経済活動の規模は今はまだ小さいものです。
しかし、本活動は、ボランティアスタッフをはじめ多くの地域の人々に支えられて展開されます。
活動に携わる人々の熱意に触れ、また実際に球場へ足を運ばれる人々を見ていると、まさに動いているのは人であり、そのことの尊ささえ感じます。
運営に係わる人、観戦する人、応援する人が連帯感を生み、将来に向けて何か大きな歯車が回りだしたような予感を与えてくれます。
本調査を終えて、短期間での経済波及効果だけで、本活動の評価を論じることはできないことを改めて感じた次第です。

最後に、本調査に際しては、紀州レンジャーズ球団代表の木村 竹志さん、株式会社紀州レンジャーズ代表取締役の竹中 則行さん、大阪体育大学教授の冨山 浩三さんはじめ快くご協力いただいた多くの方々に深く御礼申し上げます。

がんばれ 紀州レンジャーズ。

(2009.9)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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