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高齢化社会の到来と地域コミュニティの再生

主任研究員  中平 匡俊

1.『地域コミュニティ』の崩壊

地域社会では、一人ひとりが単独で生きているわけではなく、地域の課題やニーズに能動的に対応する人々のつながりが重要です。この「つながり」が築かれている地域社会のことを『地域コミュニティ』といいます。

さて、この『地域コミュニティ』の崩壊が各地で根深く進行していないでしょうか。

当研究所では、昨年の平成19年8月、和歌山県内の市町村へのアンケートを行いました。質問はつぎのとおりです。

問「今、地域コミュニティの崩壊が叫ばれていますが、あなたの市町村ではどうですか。」
選択肢⇒1.かなり深刻である
2.やや心配である
3.特に問題はない
4.しっかりしている

回答のあった29の市町村の結果はつぎのとおりです。

1.かなり深刻である2の市町村
2.やや心配である23の市町村
3.特に問題はない3の市町村
4.しっかりしている1の市町村

実は、この質問については、平成16年9月に人口20万人未満の市町村(2996の市町村)を対象として、内閣府経済社会総合研究所が、全く同じ内容のことを聞いています(回答数は1249市町村)。

結果をグラフで比較してみましょう。数字は和歌山県がかなり悪い現状となっていることを物語っています。

◇平成16年◇
平成16年 全国の市町村
全国の市町村
◇平成19年◇
平成19年 和歌山県の市町村
和歌山県の市町村

つぎに、関連する質問として、「かなり深刻である」または「やや心配である」と回答した和歌山県の市町村に、「それは、どのようなことに起因すると考えるか。いくつでもあげてください」と聞いたところ、結果はつぎのとおり、大半の市町村が『少子高齢化と人口減少』をあげています。

「少子高齢化と人口減少」80.0%
「地域リーダー不在」48.0%
「核家族化」44.0%
「個人中心主義へのかたより(社会への無関心)」36.0%
「子どもを取り巻く環境(TVゲーム・塾通い)」36.0%
 以上(上位の5項目)

2.『地域コミュニティ』を形成するネットワーク

地域のつながりを形成する組織として、町内会・自治会という典型的なものがあります。しかし、入会はしているがその活動へ参加している人は少なく、また入会しない人も増えているのではないでしょうか。

地域の課題やニーズを解決するという本来の目的を達成するには、この従来型のネットワーク、「国民白書(平成19年版)」ではエリア型地域活動と呼んでいますが、だけでは限界が生じてきているように思われます。

一方、最近NPOやボランティア活動といった言葉をよく耳にしますが、こちらの方は、あるテーマについての課題やニーズに関心を持った人たちが集まりますので、いうまでもなくその活動は活発化します。このテーマ型地域活動における「テーマ」が数多く登場し、参加する人が増えることが望まれます。

さらには、エリア型、テーマ型が連携し、真の地域活動につながれば、強固な『地域コミュニティ』が形成されるでしょう。

そして、世代をこえて地域の人がつながることが理想ですが、主役はなんといっても人生経験豊かな高齢者になっていただく必要があります。

3.「地域入学式」(事例紹介)

大阪府堺市南区が平成19年1月14日開催したイベントを紹介したいと思います。

イベントは、入学式が幼少青年が新たな社会への出発のセレモニーであるのと同じく、地域へ入るきっかけ作りとして「地域入学式」と題し、団塊の世代を対象として実施されました。

堺市南区は人口約15万7千人、世帯数約6万世帯のニュータウンであり、自治会への加入率が低くまた年々減少しており、地域コミュニティ崩壊がかなり深刻な状況のなか、その再生につなげようと企画されたものです。

約1,400人の参加者を得て開催された同イベントは、講師にアグネス・チャン氏(歌手、エッセイスト、日本ユニセフ大使、教育学博士)を招き講演会が行われました。さらに会場には、区内の19の自治会と42のNPOやボランティア団体等地域で活動する団体の紹介ブースが設けられました。

各団体では、入会せずとも活動を体験してもらえるという「おためしメニュー」を用意し情報提供を図りました。その結果、イベント開催後200〜300人の「おためしメニュー」への参加があったそうです。

企画・実施に携わられた堺市南区役所総務部の前田 正利副理事は、地域活動の担い手となる人材と各団体とのマッチングを目指したこのイベントをステップに、今後、「まちづくり」につながる交流ネットワークの構築を進めたいと話されています。

4.『65歳の成人式』

少子高齢化と人口減少時代の到来は、わが国全体の話ですが、地方にとっては、しっかりした対応をとらなければ危機的状況を招きかねません。特に和歌山県は他地域に比べ老年人口(65歳以上の人口)比率がかなりの割合で増えるといわれています。

各自治体において「成人式」は、毎年年初めの一大イベントに位置付けられていることが多いと思いますが、現役続行の人も引退の人も『65歳』に達した地域の人全てを対象に同様のイベントを実施してはどうでしょう。参加者にとって何十年ぶりかの同窓会という趣がある人も多いと思います。

年金・医療・福祉や健康生活のための知識、生涯学習・文化スポーツサークル等の情報提供、そして地域活動の一員になってもらうための様々なインフォメーションを行うのです。

まさに、「まちづくり」にとって必要な多くの優秀な人材が成人を迎える時代の到来だととらえたらどうでしょう。

2035年の和歌山県の老年人口割合
2035年の和歌山県の老年人口割合
2035年の老年人口割合の見通し
2005年→2035年
和歌山県24.1% → 38.6%(全国第2位)
全国平均20.2% → 33.7%

※データは国立社会保障・人口問題研究所による

(2008.3)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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