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官民連携による水辺空間の賑わい創出 〜大阪・道頓堀川の事例より〜

主任研究員  中井 敬明

従来、河川や道路といった都市基盤・公有地については、所有する国・地方公共団体等(以下「行政」という。)が公的な観点から自ら管理・運営を担ってきた。市民・企業など民間が営利目的で活用することは、法令上制限があった。

しかし昨今、規制緩和により民間活力を導入、公共空間においても民間主体の営利活動や占用を認めることで、地域の活性化や賑わいのあるまちづくりに取り組むケースが増えてきている。この場合、行政にとっては管理・運営の負担が軽減できるほか、エリアマネジメント[*1] を推進することで地域の魅力を高める効果が期待できる。

今回、規制緩和と民間活力による地域活性化事例として、大阪・道頓堀川における河川管理者(行政)と水辺空間管理運営者(民間事業者)が官民連携して取り組む賑わい創出について、以下に紹介することとしたい。

1.道頓堀川水辺の基盤整備

道頓堀川は、東横堀川と木津川を結ぶ延長約2.7km、川幅約30〜50mの一級河川。大坂夏の陣のあった元和元年(1615年)に完成した堀川で、大阪都心部に残された貴重な水辺空間である。

位置図(大阪市ウェブサイトより)
位置図(大阪市ウェブサイトより)

しかし20世紀以降、治水対策のため護岸がかさ上げされたことや水質の汚濁などによって道頓堀川は「まち」と隔たり、沿川建物は川に背を向け、市民には縁遠い存在となっていた。

そこで河川管理者である大阪市は、同市が掲げるまちづくりの目標「水の都・大阪再生」に向け、平成7年道頓堀川水辺整備事業に着手。川の両端を水門で区切り上流からの汚染水流入を防ぐことで水質浄化とともに水位を常に安定させたほか、川沿いの水面に近い高さの両岸にそれぞれ幅8mほどの遊歩道を設け、あわせて休憩施設や広場、船着場などを各所に整備、水辺の歩行者空間を確保した。

この遊歩道は「とんぼりリバーウォーク」と命名され、平成16年一部供用開始、平成25年全区間(日本橋〜浮庭橋約1qの沿川両岸)が開通した。

2.特例措置を適用した社会実験

水辺空間の利用を促進し賑わいを創出するためには、ハード対策(基盤整備)だけでなくソフト対策(規制緩和)も必要であった。というのは、河川敷地占用許可準則(全国的な河川敷地の占用の許可に係る基準を示した従前のルール)において、占用主体や施設が公共性・公益性のあるものに限られていたからである。

もっとも大阪市は、平成16年の国の通知で同許可準則の特例措置が設けられたことから、直ちに道頓堀川の一部区間について適用区域の指定を受け、社会実験として、物販行為、オープンカフェ、イベント等を実施した。

この社会実験は、占用主体が公的機関等に限られていたものの、(1)まちづくり・賑わい創出効果、(2)適正な維持管理、(3)河川空間への新たなニーズ把握を目的としており、地元関係者との意見調整や公平かつ適正利用確保を検討する場として、学識経験者・沿川地元代表・行政で構成する「道頓堀川水辺協議会」が設置され、水辺空間の利活用のルールづくりが行われた。

なお、社会実験の実施は、平成17年度から23年度までの7年間に及んだ。期間中、イベント実施件数について最終年度は初年度の4倍超に増加(12→49回)したほか、川に背を向けていた沿川建物のうち川側(遊歩道側)へ間口を設置した軒数が大幅に増加(1→44軒)するなど、水辺空間に新たな人の流れができていった。

河川敷地占用許可の特例を適用した場合のイメージ
(国土交通省「官民連携まちづくりの進め方」より)

3.民間事業者による管理運営

平成23年河川敷地占用許可準則の一部改正により、これまで社会実験として認められてきた特例措置の内容が恒久制度化されることとなった。すなわち全国の河川管理者の判断のみで特例適用区域(都市・地域再生等利用区域)を指定できるようになったほか、オープンカフェや広告板、イベント開催のための照明・音響施設等の占用主体が民間事業者にも認められるようになる(改正前は公的機関等に限定)など、より一層の規制緩和が進められたのである。

これを機に、大阪市は「とんぼりリバーウォーク」全区間を特例適用区域に指定、民間活力を導入して水辺空間のさらなる利用促進を図ることを目的に、新たに平成24年度から3年間の指定管理事業として「道頓堀川水辺利用にかかる管理運営事業」の予定者を公募した。

この公募では、イベント・オープンカフェの誘致・開催などの「賑わい創出業務」とともに清掃・警備巡回などの「維持管理業務」を対象業務とし、「収支シミュレーション・地域活性化への考え方」「企業の健全性等」を評価基準に、応札3団体の提案内容に関して、学識経験者の意見を踏まえ審査が行われた。

この結果、一括管理運営を行うことができる能力を有し、民間ノウハウを活用することで、これまで以上に遊歩道の利用促進を図ることができると見込まれる民間事業者として、南海電気鉄道株式会社[*2] (以下「南海」という。)が選定された。

南海は、管理運営者(指定管理者)として受託のうえ平成24年4月業務を開始、2期目(平成27〜29年度)の公募においても応札4団体の中から選定されたため、平成29年12月現在も継続して水辺空間の管理運営を行っている。

4.水辺空間の管理運営スキーム

以下の図に事業スキームを示す。主な関係主体は、大阪市(河川管理者)、道頓堀川水辺空間利用検討会(検討会)、南海(占用者・管理運営者)、利用者(出店者等)である。

事業スキーム

(1)占用許可

以下の断面模式図のとおり道頓堀川両岸の遊歩道は河川区域内に張り出して整備されているため、南海は、利活用にあたり全区域の占用者として大阪市から包括占用許可を得ている。

断面模式図

(2)占用料

河川区域における占用料は、本来、大阪府が占用者から徴収することができるが、この事業スキームにおいて、大阪市が大阪府に対し副申しているため、現在、免除扱いとなっている。

(3)使用料

オープンカフェ出店やイベント開催にあたり、利用者は、管理運営者である南海と利用契約を締結または使用承認を得たうえで、南海に使用料を支払う。額は、種別等により異なる。

(4)検討会

規制緩和の特例区域指定条件として、地域の合意を図ることが求められたため、学識経験者と沿川地域代表者の意見を採り入れた遊歩道の利用ルールを作成・運用すること及び管理運営状況に関する意見聴取を目的に「道頓堀川水辺利用検討会」が設置され、平成24年度から26年度までの3年間開催された。

平成27年度以降は、利用増加や認知度向上、利用ニーズの高まりに伴い、遊歩道だけでなく水面部分も含めた運用や、さらなる利活用に関する意見聴取を行う場として「道頓堀川水辺空間利用検討会」に改組された(年2回開催)。

(5)管理運営業務

管理運営者である南海が担う具体的業務は、以下のとおりである。

ア.賑わい創出に関する業務
  • イベント実施及び誘致、オープンカフェ、広告事業、並びにロケ等の誘致
  • 関係機関(河川管理者、交通管理者等)や地域(沿川店舗、団体等)との調整
  • 利用案内等の作成、利用の案内・受付等
イ.維持管理業務
  • 現場管理(巡回、異状・緊急時対応)
  • 清掃・除草
  • 警備巡視(24時間体制で警備員配置)
ウ.その他業務
  • 道頓堀川水辺空間利用検討会開催に係る補助(資料作成、出席者調整等)
  • アンケート調査(年2回/各2日)
  • 地域活性化への貢献事業[*3] の実施
  • 各種書類の作成・提出
地元小学生の写生絵画展示 地元小学生の写生絵画展示
地元小学生の写生絵画展示
(6)事業収支

管理運営事業に係る南海の収支については、

収入 大阪市からの受託料(通常維持管理費相当額)、イベント等の使用料
費用 各委託料、地元貢献イベント費など

以上のような構造であり、基本的には、賑わい創出に向けた地元貢献イベント費や高品質の清掃費等を、利活用で得たイベント等の使用料収入で賄っているのが実状である。

5.賑わい創出の成果

大阪市と南海の官民連携による水辺空間の賑わい創出は、スタートしてから平成28年度までの5年間で顕著な成果をあげている。

各年度におけるイベント等の状況
各年度におけるイベント等の状況(南海提供資料より)

上表のとおり、イベント等の件数はいずれも平成28年度は24年度の3倍超と飛躍的に増加している。

地域活性化への貢献事業として実施しているイルミネーションについても、平成28年度は「とんぼりリバーウォーク」全区間両岸において11月11日から2月19日までの期間中、数々のモニュメントに加えて毎日約3万球のLEDを点灯するなど、彩りと華やかさを演出し、冬の道頓堀の賑わいと回遊性向上に貢献した。

さらに、ニューヨーク・タイムズ紙が発表した「今年行くべき世界の都市2017」に大阪が選ばれたが、その紹介写真として「とんぼりリバーウォーク」のイベント風景が掲載されるなど、“ミナミの道頓堀”として大阪の価値向上にも寄与しているといえよう。

南海もまた、平成29年度を最終年度とする中期経営計画「深展133計画」において「なんばエリアの求心力向上」を基本方針の一つとしており、ターミナル難波を含む「ミナミ」の魅力創造は、経営戦略上重要な意義を持つ。

(52 Places to Go in 2017 - The New York Timesより)
(52 Places to Go in 2017 - The New York Timesより)

とんぼりリバークルーズから戎橋周辺を臨む
とんぼりリバークルーズから戎橋周辺を臨む

6.和歌山市の水辺空間再生について

一方、和歌山市においても、水辺空間活用に向け、官民連携のプラットフォーム「わかやま水辺プロジェクト」が発足、平成28年12月に活動を開始している。

平成29年度は「水辺を生かしたまちづくり」をテーマに9月3日から約80日間の社会実験が市堀川沿いで実施され、仮設桟橋を設けて民間事業者によるカヌー体験や遊覧船運行が行われたほか、対岸の建物や並木へのライトアップにより夜間の賑わい創出が図られた。

和歌山市の中心部を流れる市堀川は、徳川御三家の和歌山城の外堀に当たり、川に架かる京橋付近はかつて和歌山城下で最も活況を呈する場所であったと聞く。

昔の賑わいを取り戻し、多くの市民や観光客が集うスポットとして、水辺空間が再生されることを願ってやまない。

和歌山「市堀川クルーズ」

雑賀橋前 仮設桟橋
雑賀橋前 仮設桟橋
乗船場案内
乗船場案内
クルーズ船 すれちがい
クルーズ船 すれちがい
時刻表
時刻表

参考情報

  • [*1]
    地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取り組み(国土交通省ウェブサイトより)

  • [*2]
    南海は、グループ会社の南海ビルサービス株式会社を含め、これまでに大阪府立体育会館、大阪府立臨海スポーツセンター、和歌山県立白崎青少年の家、和歌山市立つつじが丘テニスコートなど、公共公益施設の指定管理者として管理運営実績を有している。

  • [*3]
    地元商店会等との会議(とんぼりリバーウォーク賑わい創出連絡会ほか)開催、地元貢献イベント(イルミネーション、写生会など)の企画立案・実施

(2017.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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