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グリーンマップとまちづくり

主任研究員  中西 歩

はじめに

わかうらグリーンマップは、今までのマップとは違う新しいタイプの地域情報マップです。和歌の浦の地域には、すばらしい自然や景観等が多く残され、歴史的価値のあるものも数多くあります。

しかし、ここに暮らす私たちは、地域の持つ魅力や可能性を十分に知っているでしょうか?見過ごしてしまっていることや、忘れてしまっていることも少なくないのではないでしょうか?

そこで、「地域の海辺の魅力を再発見しよう!」ということで、平成16年にグリーンマップ制作の取り組みが始まりました。

このマップづくりは、制作する過程において、今まで知らなかった魅力を感じたり、地域で活動している多くの人々との交流が図れるなど、コミュニティのネットワークの輪も広がります。

1.グリーンマップとは

ウェンディ・ブラウアー氏
ウェンディ・ブラウアー氏

グリーンマップは、1992年にニューヨークのエコデザイナーであるウェンディ・ブラウアー氏によって提唱されました。ブラウアー氏がこのマップを提唱した目的は、世界中の人たちが、それぞれの視点で、身近な環境に関心をもつことで、良好な環境を維持し、創造するための知恵を共有することです。

このマップは、市民やNPOによる自主的な活動を中心に展開して制作されており,現在では世界中で約47カ国,300以上の地域で作られている世界規模のプロジェクトで,日本でも30以上のグリーンマップ制作が進んでいます。

2.グリーンマップの特徴

グリーンマップの主な特徴は次のようなものです。

(1)身近な環境を世界共通のアイコン(絵文字)で表示(グリーンマップ・グローバルアイコン)

グローバルアイコンは視覚的な「言語」です。自分たちの身近な地域環境についての情報を、言語や文化の違いを超えて情報を共有できる役割を持ち、世界共通の言葉となっています。

グリーンマップアイコンは、現在125種類あり、11のカテゴリーに分類され、大別して地球・文化・社会がテーマとなっています。わかりやすい例をいくつか挙げてみましょう。

1.地球(地形・植物・動物・資源)

地球環境を守るにはどのようにすればよいかを考えるアイコン

アイコン 大分類 意味
地形 地 形 湿地・湿原・干潟
植物 植 物 花の名所
動物 動 物 野生生物観察地点
資源 資 源 太陽エネルギー
2.文化(生活・文化・デザイン)

地球環境とそれと調和する人間社会との関係を考えるアイコン

アイコン 大分類 意味
生活 生 活 子供にやさしい場所
文化 文 化 史跡・文化財
デザイン デザイン 環境配慮建築
3.社会(都市基盤・交通・情報・汚染)

地球環境に人間が作り出したものが、どのような意味を持つのかを考えるアイコン

アイコン 大分類 意味
都市基盤 都市基盤 ゴミ焼却場
交通 交 通 車椅子OK
情報 情 報 環境情報センター
汚染 汚 染 環境荒廃地区(哀しい場所)

これらのアイコンは、環境に良いことばかりでなく環境に悪いことも、また歴史的なもの、動植物などさまざまな分野に及んでいます。

(2)身近な環境で感じた良いこと・悪いことすべてが情報

アイコンの内容でもわかるように、樹林や公園の緑,野生生物の生息地といった自然環境,アートスポットや史跡などの文化関連,自然食品店といった生活関連や,逆にゴミの不法投棄といった環境汚染源など自分たちが気付いたこと−良いこと・悪いこと−すべてがグリーンマップの情報となります。

(3)ネットワーク作り

グリーンマップのテーマは環境問題、防災やまちなみ保全などそれぞれ異なりますが、マップを制作するにあたり、同じ目的をもち、地域の状態を認識したことで情報の共有化が図れ、より様々な環境に関わる住民、団体、商店や施設などの情報も知ることができます。この結果、いろいろな情報を得ることで人と人とのつながりが広がり、新しいネットワークもまた生まれてきます。

(4)問題点を提案するツール

グリーンマップは制作することが最終目的ではありません。収集された情報を検討し、住民運動や行政に提案するなどの働きかけを行い、社会状況を変えていこうというものです。

3.世界のグリーンマップ

世界で最初に制作されたグリーンマップは1992年にニューヨークのダウンタウンを紹介したもので、さらに1997年にはレベルアップを図り、ニューヨーク全域を収録した「グリーン・アップルマップ」が完成しました。

グリーン・アップルマップ
ニューヨーク・グリーン・アップルマップ 3版(1997年)

エコショップ、環境関連の市民活動団体、リサイクルショップ等を収録したこのマップ作りの運動は、インターネットを通じて、コペンハーゲン、京都、トロント、メルボルン、ブエノスアイレス、シンガポール、ジンバブエなど5大陸に広がり2000年初頭には参加都市100、36のグリーンマップが出版されるまでになりました。

現在、グリーンマップの本部―グリーンマップシステムーはニューヨーク・マンハッタン(2000年設立)にあり、世界のグリーンマップ作りの心臓部となっています。

また、名古屋で開催されていた「愛・地球博」の「地球市民村」(長久手会場)では、8月の1ヶ月間、グリーンマップの展示やワークショップが行われました。

「地球市民村」交流ホールで、グリーンマップの創始者ブラウアー氏を始め、台湾、インド、インドネシアなどアジアのグリーンマップリーダーと国内からも、京都、東京、金沢、鎌倉、福岡、函館など各地のグリーンマップ制作者が参加し交流国際会議や、グリーンマップがつなぐ国際環境プロジェクトと題し「グリーンマップ・アジア交流ミーティング」などが開催され、インド、台湾、インドネシアなどの取り組みが発表されました。

愛・地球博 グリーンマップホール
愛・地球博 グリーンマップホール

4.日本のグリーンマップ

日本では、1995年に京都で開催されたTennendesign’95 Kyotoというエコデザイン国際会議にブラウアー氏が来日し、ワークショップを主催したことをきっかけにマップ制作の気運が高まりました。その後、1997年「地球温暖化防止京都会議―COP3」に合わせて日本最初の「京都グリーンマップ」が制作されました。

現在、京都,世田谷,岡山・高松,丸亀・倉敷、広島、函館、金沢、などが完成。その他、福岡、横浜,鎌倉、札幌などで約30以上のグリーンマップ作りが進行中です。

活動が始まったころは、環境、教育、自然保護活動などのテーマが主でしたが、最近は、特定のテーマに絞ったユニークなマップも増えてきています。

では、特徴のある2つの事例を紹介しましょう。

(1)京都自転車ルートマップ−左京区主要部

このマップは京都市の環境行動計画として生み出された「京(みやこ)のアジェンダ21」フォーラムの地球環境の取り組みの一つとして、「京都自転車観光プロジェクト」自転車タスクチームで制作されたものです。京都に来た観光客をCO2の削減も兼ねて自転車を利用してもらおうという環境保全と自転車利用の促進を目的にしたマップです。

マップの特徴は、4つのモデルコースが設定されていて、自転車で観光するルートの所要時間や「花の名所」「車椅子OK」「自然食のレストラン」などのアイコン表示があります。

京都自転車ルートマップ
京都自転車ルートマップ
京都自転車ルートマップ:モデルコースの一部
京都自転車ルートマップ:モデルコースの一部
(2)せたがやグリーンマップ

せたがやグリーンマップは、地域単位での資源や労働の循環、あるいは人々の交流の輪がめぐるというイメージ「まちづくり」をキーワードとして始められました。

ワークショップの様子
ワークショップの様子

ここに描かれている世田谷は単に今の姿を伝えるだけではなく、未来の世田谷のまちづくりを示す道しるべを表しています。

また、グリーンマップは、時間と空間を共有できるまちづくりのためのツールとしての役割をしています。

マップづくりのワークショップでは参加者の人たちがまちを歩き、情報を収集し、発見したことをまとめていきます。

マップの特徴は自分たちが収集したその情報が既存のアイコンの分類に該当しない場合、地域の実状に合わない場合、自分たちが主張したい事柄があった場合には、新しい独自のアイコン(ローカルアイコン)を提案する事ができます。

せたがやグリーンマップ
せたがやグリーンマップ
せたがやグリーンマップ独自アイコン
せたがやグリーンマップ独自アイコン

5.わかうらグリーンマップのコンセプト

(1)資源の豊富なわかうらの情報を共有・発信

和歌の浦の地域には、歴史的なもの、自然、食べ物、人や活動団体などたくさんの魅力的な資源があります。グリーンマップは、今まで見過ごしていたこれらの色々な情報をお互いに共有・活用し、広く他地域に発信していくためのツールです。

(2)観光マップではない地域情報マップ

一般的な観光マップではなく、地域の人しか知らない情報や、また実際その場所を訪れて気づく魅力など、感じたこと・思ったことを掲載する地域情報マップです。

(3)「和み」をキーワードに環境のgood・badの再発見

「和み」をキーワードにgood(良いところ)の情報ばかりを掲載するのではなく、bad(悪いところ)の情報も発信し、地域の環境に対する認識を共有しようというものです。

6.わかうらグリーンマップづくり

(1)地域探訪
台風の被害にあった海水浴場
台風の被害にあった海水浴場

わかうらグリーンマップは市民の方々との協働により海辺や自然と親しむことのできる港湾空間の再発見を目的としたマップです。住民の人たちから情報を入手したり、実際の現場を調査したり、活動団体の催事に参加し情報を得ることができました。写真にある海水浴場では、海の家の業務用冷蔵庫が飛ばされるなど海辺に近いこの地域では、昨年度に台風の被害を多く受けました。こうした状況も自治会長や地元の人たちから詳しく説明していただき、貴重な資料となりました。

(2)まち再発見ゼミ

グリーンマップづくりの取り組みには、地域における小・中・高・大学生ら、若い世代によるマップづくりも行われました。大人では気づかない様々な視点からの地域資産の再発見を試みました。

ここでは、地元の和歌山工業高校生、和歌山大学生らによる「まち再発見」と題したグリーンマップづくりの様子を報告します。

マップづくりの主な作業は次のようなものです。

 1.オリエンテーションワークショップ

グリーンマップのテーマを決め、フィールドワークに備えて、各チームに別れ、調査場所の決定やそれぞれの場所について下調べを行い、行動計画を立てました。

 2.フィールドワーク

オリエンテーションワークショップで計画した調査場所に行き、実際に肌で感じたことー良いところ・悪いところーなど地域の情報を収集し、これらの発見をグループでまとめました。

ワークショップの様子
ワークショップの様子
フィールドワークの様子
フィールドワークの様子
 3.マップの作成
マップ作りの風景
マップ作りの風景

地域の地図を作成し、その上に、発見した情報、写真やみんなの意見をまとめていきました。

 4.感想

今まで知らなかったところ、行ったことのないところなど、実際に調査をして、和歌山にはいいところや魅力がたくさんあると感じ、改めて地域に興味を持ち、環境保全の必要性を痛感しました。

また、このすばらしい地域の財産を地域住民の人が再認識すると同時に、より多くの人たちに知ってもらうことが重要なことだと感じました。

7.わかうらグリーンマップの目指すもの

わかうらグリーンマップは、地域コミュニティの中に隠れている情報を発見し,それを人々の間で共有できるようにする「情報デザイン」の基盤です。この制作を通して、私たちは、今までは地域内で行われていた様々な領域の活動(まちづくり、ビジネス、教育、福祉・・・等々)を通し、コラボレーション(協働)の可能性を試し、未来の和歌の浦をデザインしていくための「結節点」を目指していきます。

参考資料

「グリーンマップ アクティビティ ガイド」
  特定非営利活動法人グリーンマップジャパン

「グリーンマップ・アトラス 第一巻(アジア・北米編)」 Green Map System.Inc
  http://www.greenatlas.org/jp/

「グリーンマップ ジャパン」
  http://greenmap.jp/

「京都自転車ルートマップ」
  京(みやこ)のアジェンダ21フォーラム
  http://ma21f.jp/

「せたがやグリーンマップ」

「禁無断転載。グリーンマップ・システム・アイコン及びロゴ版権:c Green Map System,Inc.2005」

(2005.11)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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