ホーム | サイトマップ | リンク

ホーム > レポート > 産業 > ファーマーズ・マーケットを基軸としたJAの地産地消の取り組み

ファーマーズ・マーケットを基軸としたJAの地産地消の取り組み

研究部長  則藤 正文

はじめに

わが国の2008年度の食料自給率は前年から1ポイント上昇し41%となり、2年連続の上昇となったものの、海外に依存した食料に対する国民の不安はますます広がり、将来の食料安全保障は危ぶまれるようになっている。

こうしたなか、相次ぐ食品偽装や農薬入り中国製冷凍食品事件をきっかけに、消費者の農産物に対する安全・安心志向が強まり、その視線は国産に、さらにはより安心して食べれるということで地場産にと向けられるなど、いわゆる地産地消への関心と期待はきわめて高くなってきている。また食育の観点から地場産農産物の活用を明記した学校給食法の改正や地域経済活性化のための農商工連携促進等、地産地消へのフォローの風が強まっている。

「地域で生産されたものをその地域で消費する」という地産地消への取り組みが本格化したのは今世紀に入ってからで、その中心的活動拠点となったのがファーマーズ・マーケット(農産物直売所)である。

消費者にとってファーマーズ・マーケットは、新鮮な農産物を安価で購入できることに加えて、生産者との交流のなかで顔の見える関係が成立し、より安全・安心を実感できる場でもある。

いっぽう生産者にとっては、流通経費や手間が相対的に少なくてすむうえ、何といっても自分たちで納得できる価格が設定できるということが大きな利点である。さらには消費者との会話を通し消費者ニーズを敏感に感じながら、消費者への情報発信もしやすくなり信頼の輪が広がる。また、女性や高齢者、小規模な農家も参加しやすく、特に高齢者にとって存在感が増し、生きがいを実感できる場でもある。

このようにファーマーズ・マーケットは消費者と生産者の距離を縮め、地域住民も加わりコミュニケーションを図れることから、地域全体が連帯感を取り戻し、元気になるとともに、農業体験交流や商品開発また地域おこしなど、さまざまな取り組みに発展する可能性をもっている。

そこで今回、県内のJAが運営するファーマーズ・マーケットの活動を軸とした、地域に新たな活力を呼び起こす取り組みの一端を紹介する。

1.「愛菜てまりっこ」(JAわかやま)

愛菜てまりっこ
愛菜てまりっこ

平成8年に1号店を開設して以来、現在までに和歌山市内に5店舗を設置、230名の生産者が出荷登録を行い、小型店舗(売り場面積100〜300u)ながら、年間40万人の来店者があり、地元密着型のファーマーズ・マーケットとして認知されている。

組合員や地域住民の健全な食生活と健康づくりをJAの使命として、「愛菜てまりっこ」を活動拠点に食農教育に力を入れており、学校給食では和歌山市、同市教育委員会などと連携をはかり、今年度から月に1回、管内の公立小学校全校52校に食材の供給を始めるとともに、店舗に近い小学校を中心にバケツ稲作りやコンテナ野菜作りの指導も行っている。さらに、農業体験では参加者を募集し、店舗近くの圃場で生産者の協力のもと、とうもろこしなどの収穫体験を実施している。

また、管内産米の米粉を店頭販売し、米粉を使用した調理講習会を開催するとともに、学校給食への米粉パンの供給も計画している。

2.「とれたて広場」(JAながみね)

とれたて広場
とれたて広場

生産者、地域住民の要望に応え、平成18年10月に地域密着型のファーマーズ・マーケットとして海南市にオープンした。8,400uの敷地に180台の駐車場を擁し、連日多くの消費者や生産者で賑わっている。地域の食料供給拠点をめざすとともに、各種イベントを通じて「農」についての理解と地域社会の活性化・共生を図っている。出荷登録者数は790名、平成20年度の来店者数は39万人、販売金額は7億5千万円となっている。

地産地消を推進するため、学校給食へのみかん等特産品の納入や地元業務用筋への食材供給、地場産原料で加工した金山寺味噌・ちりめん山椒などの販売にも力を入れている。

また、地元幼稚園・小学校と連携し、体験農園による食育や地元産を使用した、おにぎり、味噌汁を提供するなど食農教育にも積極的に取り組んでいる。

今後はさらに、生産指導の充実と生産拡大を図り、地場産率の向上をめざすとともに、夫婦や家族で楽しめる場とするために軽食コーナー等の設置も検討中である。

3.「めっけもん広場」(JA紀の里)

めっけもん広場
めっけもん広場

平成12年11月に生産者と消費者の新たな交流拠点として紀の川市にオープンした 県内では最初の大型店である。出荷登録者数は1,570名を数え、地場産率は80%、平成20年度の来店者数は80万人(県外客割合55%)を超え、販売金額は26億4千万円で、青果物では全国一の取扱高を誇っている。

販売金額もさることながら地産地消を理念とし、学校給食や病院・介護施設等への供給に積極的に取り組むとともに、農商工連携による地場産を原料とした加工品の開発にも力を注いでいる。

また、毎月19日の「食育の日」をはじめとした年間約60回の各種イベントに加え、平成16年にJAで作成した都市と農村の交流拠点構想に基づき、本年新たに地場産農産物を使った軽食コーナー「イーテン」と農家との交流を楽しめる体験交流施設「楽農クラブハウス」をオープンさせ、旬の地場農産物の消費拡大や食農教育活動のさらなる強化を図っている。

4.「やっちょん広場」(JA紀北かわかみ)

やっちょん広場
やっちょん広場

「地産地消」と「消費者との共生」を基本理念に、平成15年10月、橋本市にオープンした。

「やっちょん広場」というネーミングは、地元に古くから伝わる大衆踊り「やっちょんまかせ」に由来し、自由に楽しく踊る「やっちょんまかせ」のように、出荷する農家から、買い物に来るお客まで、だれもが楽しめる店舗になってほしいという願いが込められている。出荷登録者数は年々増加、1,200人を超え、8割が地場産品となっている。県外からの来店者が多く、年間来店者数53万人のうち約6割を占める。当初8億円だった年間販売額も11億円を上回るまでに伸びてきている。

生産者と消費者の交流の場づくりを大切に、7月の「桃まつり」、10月の「柿まつり」をはじめとしたイベントでは、食育ソムリエに認定された7名の職員が、旬の地域農産物の紹介や料理を提案するなど、食農教育活動に取り組んでいる。

これからも生産対策を一層強化し、安全で高品質な農産物の安定供給に努めるとともに、将来的には食農教育の中で学校給食への食材供給、また売り場の活性化と地域農産物のPRを目的とした農家レストランの開設も検討する。

5.「紀菜柑」(JA紀南)

紀菜柑
紀菜柑

地元でできた農産物や加工品を地元の方々に消費してもらおうという地産地消の拠点施設として平成19年3月、田辺市にオープンした。出荷登録会員は1,100名で、地場産品率は70%を上回る。年間30万人以上の来店者があり、販売金額は4億円である。地元密着型の店といえるが、週末には県外からの車やバスも入り大いに賑わう。

世界遺産・熊野古道のエリアからは、たくさんの新鮮な野菜、果実、花、そして味噌やコンニャクから備長炭製品まで特産加工品が集まってくる。もちろん名産の梅干し特設コーナーも設置されている。紀伊山地で育ったイノシシやシカの精肉類もそろっている。

一方、学校給食や地元業務用先への食材供給にも積極的に取り組み、特に学校給食については納品地域が広がっており、順調に拡大している。

また本年度より、生産者と消費者の交流を深める取り組みとして、紀菜柑の消費者らに農業・農産物の生産現場を見てもらおうと、毎月1回「探検隊」と銘打って出荷登録会員の園地で見学会を行っている。「農家とじかに話ができ、農産物に一層興味がわく」と好評である。今後益々、こうした交流活動や食農教育の充実が期待される。

5.おわりに

ファーマーズ・マーケット(農産物直売所)は、今や全国で大小13,000箇所を超え、これからは競争が激しさを増すことが予想される中で、今回紹介したファーマーズ・マーケットは、地産地消という理念のもと、それぞれ具体的な目的、目標が明確にされており、一歩一歩着実に実行されている。土地施設の確保や生産品目・生産量の拡大といった課題はあるが、県内の店舗間連携もしっかりと、また国内産地との連携もうまく行われているようである。

はじめに述べたようにファーマーズ・マーケットは、消費者と生産者の顔が見え、話ができる関係づくりを基本とした取り組みであることから、JAにとっても、色々な活動を通して、組合員・地域住民・消費者とのつながりをつくるうえで非常に有効な取り組みである。よって今後も「地域のプラットホーム」としての場をめざし、生産者だけではなく、地域を挙げて支えられる地産地消型のファーマーズ・マーケットづくりが一層重要となる。

(2009.10)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

このページのトップへ