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定額給付金による県内への経済波及効果推計

研究部長  澤ア 喜英

1 はじめに

政府は、平成20年度第二次補正予算による追加経済対策の中で、金融危機や景気後退に対応し、国民の生活支援と地域経済浮揚をねらいとして、総額約2兆円規模の予算により定額給付金事業を実施することとし、平成21年3月下旬以降、全国1,797市区町村において順次給付されています。

総務省(定額給付金室)による平成21年10月2日付け報道発表資料によれば、9月28日現在、全国対象世帯の94.9%に対し、これまでに1兆9,076億円(対政府予算割合97.5%)が給付され、同時点で和歌山県内においても対象世帯の内97.6%の世帯に給付が終了している状況です。

当研究所においては、平成21年度自主研究11テーマ(他機関との共同研究を含む)の一つとして、社会的に関心度が高い事案に関する経済波及効果について調査分析することとしていますが、その初回調査対象として定額給付金を取り上げ、アンケート調査結果に基づき経済効果測定を行いました。以下その内容等について報告します。

2 地域振興券との比較

今回の定額給付金と同様の趣旨で実施された例として、今から約10年前の平成11年度上半期の6ケ月間、当時の小渕内閣において、緊急経済対策の一環として実施された地域振興券をご記憶の方も多いと思われます。

平成3年初頭以降のバブル崩壊後、景気浮揚を目的とした数回の減税は実施されたものの、減税効果は貯蓄に回ることとなり、政策のねらいである消費拡大目的が果たせない結果となっていたため、直接的には貯蓄に回せない商品券という形で消費を喚起しようとした施策です。

当時の経済企画庁が、平成11年6月から7月にかけて、全国約9,000の交付対象世帯に対して利用実態等のアンケート調査を行い、同年8月に発表した消費喚起効果としては、GDP個人消費を0.1%程度押し上げる効果があったと推定しています。定額給付金との主な比較については、下表のとおりです。

定額給付金 地域振興券
直接予算額 1兆9,570億円 7,000億円
個人給付金額 ・12,000円
・20,000円(15歳以下、65歳以上)
20,000円
給付対象 ・住民基本台帳に記録された個人
・外国人登録者(短期滞在者除外)
・15歳以下の子どものいる世帯主
・老齢福祉年金受給者等

3 アンケート調査内容

和歌山県内で支給された定額給付金のうち、県内消費による経済波及効果を測定することを目的として、県内在住の方々にご協力をいただき、定額給付金に関するアンケート調査を実施しました。調査内容等は次のとおりです。

(1)アンケート調査対象

県内1,650世帯の方々に対し、郵送により調査を実施しました。調査対象とさせていただいた方々は次のとおりです。

  • ・無作為抽出:電話帳による単純無作為抽出により県内各市町村世帯数により比例配分のうえ、1,500世帯に発送。
  • ・有意抽出:当研究所職員の県内在住知人等に対し、同様の比例配分により150世帯に発送。
  • ・調査期間:平成21年5月11日〜5月25日 無記名回答
(2)主なアンケート調査項目
  • 1.在住市町村名
  • 2.世帯当たりの合計給付金額及び金額別内訳人数
  • 3.使途区分
  •    ・家族全員分をまとめて使用
  •    ・家族1人ひとりが各自それぞれ使用
  •    ・全額を貯蓄
  •    ・全額を家計に算入
  • 4.具体的使途内容別使用金額及び使用場所(居住市町村内、県内、県外)
  • 5.自由意見の記載

4 アンケート調査結果

(1)回答件数

360世帯の方々から有効回答をいただきました。
(発送数に対する有効回答率:21.8%)

(2)使途区分に係る集計結果は次のとおりです。
使  用  区  分 世帯数 世帯割合 給付金額(円) 金額割合
家族まとめて使用 132 36.7% 6,364,000 39.8%
家族1人ひとりが使用 77 21.4% 3,424,000 21.4%
全額貯蓄に回す 34 9.4% 1,292,000 8.1%
全額家計に算入 117 32.5% 4,896,000 30.6%
合     計 360 100.0% 15,976,000 100.0%

※表中の比率は小数点第2位を四捨五入して表示しているため、内訳を合計しても100%に合致しない場合があります。以下同じ。

(3)使途区分のうち、家族全部の定額給付金をまとめて1つあるいは複数の目的に使用した世帯に係る使途内容は次のとおりです。

金額単位:円

使い道区分 県内使用額 県外使用額 使用額計 金額割合
買物(衣料・服飾等) 451,200 0 451,200 2.5%
買物(趣味・文化・スポーツ等) 85,000 86,000 171,000 1.0%
買物(家具・家電等) 3,023,000 0 3,023,000 16.8%
買物(食品等) 355,000 0 355,000 2.0%
買物(その他) 327,000 0 327,000 1.8%
レジャー(カラオケ・ゲーム等) 95,000 42,000 137,000 0.8%
旅行 728,000 1,945,400 2,673,400 14.9%
飲食 162,000 84,480 246,480 1.4%
貯蓄 1,290,000 0 1,290,000 7.2%
家計に算入 5,079,120 0 5,079,120 28.3%
その他 4,199,800 0 4,199,800 23.4%
合     計 15,795,120 2,157,880 17,953,000 100.0%
(4)世帯単位ではなく、家族それぞれが個々に使い道を決めた世帯の使途区分は次のとおりです。

金額単位:円

使い道区分 県内使用額 県外使用額 使用額計 金額割合
買物(衣料・服飾等) 699,800 155,000 854,800 21.7%
買物(趣味・文化・スポーツ等) 417,730 36,000 453,730 11.5%
買物(家具・家電等) 172,000 12,000 184,000 4.7%
買物(食品等) 136,600 0 136,600 3.5%
買物(その他) 314,000 10,000 324,000 8.2%
レジャー(カラオケ・ゲーム等) 203,000 12,000 215,000 5.5%
旅行 201,000 257,000 458,000 11.6%
飲食 588,860 12,000 600,860 15.3%
貯蓄 184,000 0 184,000 4.7%
家計に算入 87,000 0 87,000 2.2%
その他 345,100 93,000 438,100 11.1%
合     計 3,349,090 587,000 3,936,090 100.0%

上記(3)及び(4)について、買い物使途をまとめて1項目とし、かつ(3)と(4)の使用額を区分別に合算のうえ作成した金額割合をグラフ表示すると、それぞれの占める割合は次のとおりとなります。

アンケート調査による使途区分別金額割合

上記グラフによれば、直接には具体的な消費につながらないと推測される貯蓄と家計算入の合計割合は30.3%にとどまり、残りの約70%は何らかの目的で使用される結果となっており、一定の消費効果が発生したと考えられます。

「その他」が21.2%となっていますが、具体的内訳として5世帯が自宅修理に計3,506,000円支出し、この内給付金以外に3,210,000円を上乗せして出費した結果が含まれ、定額給付金を契機とした高額な消費も発生しています。

また、(3)と(4)の合計使用額は21,889,090円となりますが、この内定額給付金額は15,976,000円であり、上述の3,210,000円を含め、差額5,913,090円が全体上乗せ額であり、給付金額に対して37%が全体として上乗せされ、何らかの使途につながる相乗効果が発生しています。

5 定額給付金の県内消費による経済波及効果

経済波及効果とは、例えば何らかの原因により、ある産業の生産に新たな需要が生じたとき、その需要に応えるための生産活動が発生し、それを原因として当該生産に必要な原材料供給のための新たな生産活動が生まれ、それが他の産業間にも次々と波及していく効果のことをいい、この効果の算出には一般的に「産業連関表」が使われています。

産業連関表は、1年間に県内で行われた産業相互間及び産業と消費者などとの間における物やサービスの取引状況などの経済活動を表にまとめたものです。和歌山県では現在、平成12年版が使用されています。

経済波及効果

上記4-(3)及び4-(4)記載の使用金額のうち、県内使用額を対象とし、かつ消費効果が発生しない使途区分としての貯蓄、家計算入及びその他区分の中の納税額を控除し、残額を県内消費額として合算整理した金額が下表のA欄記載額であり、当該金額を本県への定額給付金総支給額約16,052百万円に置き換えて算出した県内全体の消費推計額はB欄記載額となります。

金額単位:円

定額給付金の使い道区分 アンケート調査に
よる県内消費額
(A)
左記に基づく
県内消費推計額
(B)
B欄
金額割合
買物(衣料・服飾等) 1,151,000 1,156,475,463 9.4%
買物(趣味・文化・スポーツ等) 502,730 505,121,555 4.1%
買物(家具・家電等) 3,195,000 3,210,199,049 26.1%
買物(食品等) 491,600 493,938,608 4.0%
買物(その他) 641,000 644,049,324 5.2%
レジャー(カラオケ・ゲーム等) 298,000 299,417,626 2.4%
旅行 929,000 933,419,379 7.6%
飲食 750,860 754,431,943 6.1%
その他 4,273,800 4,294,131,047 34.9%
合計 12,232,990 12,291,183,994 100.0%

上記B欄記載金額を需要額とし、「平成12年和歌山県産業連関表(32部門分類)」を使用のうえ算出した結果、本県における定額給付金支給により発生する県内消費に伴う経済波及効果は101億4千9百万円(倍率0.83)と推計され、一定の消費拡大効果が発生していると推計されます。

また、当該経済波及効果推計額を上記産業連関表・県内生産額で除算したところ、0.15%となり、本県においては、県内GDPを0.15%押し上げる効果が発生したと推計されます。

6 おわりに

今回の定額給付金に関するアンケート調査においては、3点の特徴があったと思われます。

第1に、前回の地域振興券と異なり現金給付であるため、相当割合で貯蓄に回るのではないかと推測していたが、有効回答のうち件数割合で9.4%、金額割合で8.1%と、いずれも10%未満の貯蓄性向にとどまり、大部分が何らかの形で使用する旨の回答であったこと。

第2に、消費金額の内、県内消費が81.7%であり、県内消費効果率が非常に高く、地元における消費拡大効果につながったのではと考えられること。

第3に、自由意見欄への何らかの記載をいただいた方が、有効回答360件の内251件(69.7%)とほぼ7割近くの方からご意見を戴く結果となり、県民の皆様にとって非常に関心度が高い施策であることが改めて確認されたこと。

自由意見欄には、さまざまなご意見を記載していただいていますが、その内、給付金に賛成する内容の意見が73人(約30%)、反対する旨の意見が81人(約32%)、賛否以外の内容の意見が97人(約38%)と、ほぼ均等に分かれ、一時的な消費喚起効果と併せて持続的な消費拡大政策の必要性も求められているのではと推測します。

今回、経済波及効果推計の第1回対象として定額給付金を取り上げ、アンケート調査結果を踏まえた効果推計を行いましたが、当研究所としては、今後とも県内において発生する社会経済事象をタイムリーに取り上げ、種々の角度から分析のうえ付加価値の高い地域情報の提供に努め、尚一層オピニオンリーダーとしての使命を果たしていくこととしています。

(2009.10)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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