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南紀白浜空港利活用による経済波及効果推計

研究部長  澤ア 喜英

はじめに

少子高齢化・人口減少の進行や長期化する景気低迷などの厳しい社会経済情勢下において、地域に活力を与え、地域経済の活性化を推進する新たな方策として観光産業が注目されています。

国においては、国内経済・雇用・地域活性化に大きな影響を及ぼすものとして「観光」を21世紀のリーディング産業と位置付け、平成20年に設置された観光庁を中心に観光立国推進基本計画に基づき総合的・計画的な観光施策を実施しているところです。

和歌山県においても、平成19年7月以降、毎年度「和歌山県観光振興アクションプログラム」(平成22年度から「和歌山県観光振興実施行動計画」に改称)を策定のうえ(社)和歌山県観光連盟との両輪体制により観光振興に取り組むとともに、平成22年4月から和歌山県観光立県推進条例を施行し、県民総参加による観光振興に向けた取組を推進しています。

(財)和歌山社会経済研究所においては、平成21年度から、社会的に関心度が高くタイムリーな事案に関する経済波及効果の調査測定を行っています。国・県における観光振興推進の現状や、平成22年度以降も鞄本航空による東京⇔白浜間の定期航空便が継続運航されることとなった経緯から、今年度のテーマとして「南紀白浜空港利活用促進」を取り上げ、搭乗客にアンケート調査を実施のうえ空港利活用促進による経済波及効果を推計しました。調査結果に基づく経済波及効果推計等について、以下のとおり報告します。

1 アンケート調査実施内容

調 査 日 8月8日(日) 8月11日(水) 8月18日(水) 8月21日(土)
調 査 地 東京国際空港及び南紀白浜空港
調 査 便 東京→白浜12便(各日全便) 白浜→東京12便(各日全便) 計24便
調査件数 配布件数:1,190件 回収件数:1,022件 (回収率85.9%)

2 経済波及効果推計に使用した関係指標

(1)アンケート調査票回収結果

調査日毎の搭乗客数及びアンケート調査票回収結果(2空港の計)は下表のとおり。

調査票回収結果
表中の数値は四捨五入しているため、内訳と合計が一致しない場合があります。以下同じ。

(2)今回の旅行に係る搭乗客の予算額

調査結果による搭乗目的別の搭乗客1人当たりの総予算額の計は下表のとおり。

搭乗客の予算額

  • ビジネス及びその他の搭乗目的客は、観光客に含めた。
  • 帰省客は、宿泊費用を必要としないものと判断して日帰り観光旅行(@+B)として整理のうえ、観光消費区分を下記A表のとおり算出した。

(3)経済波及効果の推計方法
  1. 観光消費総額については、アンケート調査の回答結果による搭乗客総予算額(前記A表)を基礎として当該金額を調査実施日の全搭乗者数(1,597人)に換算のうえ前記B表のとおり総額として算出した。
  2. 経済波及効果推計にあたっては、今回の調査対象が主として観光消費によるものであるため、国土交通省総合政策局観光部が作成した「観光消費による経済波及効果推計システム」に基づき、必要な数値を算入し推計した。
  3. 観光消費額の内訳については、和歌山県観光統計調査報告書(平成21年3月)の観光客現地調査による一人当たり観光消費額(下表)の割合により按分して算出した。

和歌山県観光統計調査報告書

上記a〜kの比率により、アンケート調査結果による一人当たりの観光消費額の消費項目の合計額を算出した場合、下表のとおりとなります。

観光消費額の消費項目の合計額

3 経済波及効果推計

アンケート調査結果に基づく経済波及効果について、以下のとおり推計します。

3−(1)アンケート調査結果による推計

アンケート調査結果に基づき、4日間の全搭乗客(1,597人)の観光消費額から推計した経済波及効果は下表のとおりとなります。

アンケート調査結果による推計

3−(2)年間利用を前提条件とした推計

アンケート調査結果及び過去3年間の平均搭乗者率から1年間の搭乗者数を算出のうえ推計した経済波及効果は下表のとおりとなります。

年間利用を前提条件とした推計

3−(3)2便増便・年間利用を前提条件とした推計

3−(2)の指標をもとに、1日3往復を4往復に増便のうえ推計した経済波及効果は下表のとおりとなります。

2便増便・年間利用を前提条件とした推計

それぞれの主な算出基礎については、以下に記載。

3−(1)の算出基礎

国土交通省「観光消費による経済波及効果推計システム」に投入した結果は以下のとおり

3−(1)の算出基礎

3−(2)の算出基礎

今回の調査実施は4日間でしたが、調査結果を過去の搭乗実績に基づき1年間にわたるものとして経済波及効果額を推計します。

前提条件

  1. 4日間の調査実績を1ケ月間に置換し、さらに平成19年度〜21年度の搭乗実績に基づき、1年間の搭乗者数を推計(第1表)。
  2. 調査実績比率により観光消費額を算出(第2表)。消費内訳額の算出按分については、【2−(3)−3】の算出計算方法のとおり。

3−(2)の算出基礎
(国土交通省「観光消費による経済波及効果推計システム」表は掲載省略)

3−(3)の算出基礎

現在1日3往復(6便)の運航を4往復(8便)に増便した場合の経済波及効果を推計します。

前提条件

  1. 年間観光客数:第1表
  2. 観光消費額:第2表 消費内訳額の算出按分については、【2−(3)−3】の算出計算方法のとおり。

3−(3)の算出基礎
(国土交通省「観光消費による経済波及効果推計システム」表は掲載省略)

4 アンケート調査結果の主な内容

(1)調査属性
調査属性(表) 調査属性(グラフ)
(2)搭乗目的及び滞在日程等
アンケート調査による搭乗目的については、次のグラフのとおり観光客が最も多く52.8%であり、次いで帰省客22.2%、ビジネス客13.9%となっています。
年齢階層別による搭乗目的についても、各年代を通じて観光目的が最も多い割合となっています。
滞在日数は、下表のとおり2泊3日が44.3%で最も多く、次いで4〜6日30.3%となっています。調査結果による平均宿泊数は2.78泊で、和歌山県観光統計調査結果(平成21年3月)による平均宿泊数(1.45泊)の2倍近くとなっています。
搭乗目的及び滞在日程等(表) 搭乗目的及び滞在日程等(グラフ)
搭乗目的と滞在日数のクロス集計結果は次のグラフのとおりであり、2日〜6日間の旅行日程では観光目的が最も多い結果となっています。
滞在日数別搭乗目的
(3)観光地別行先区分
観光目的の場合の主な訪問先(複数回答)は下表のとおりであり、南紀白浜空港の所在する白浜町内が上位を占めているものの、熊野古道、那智勝浦温泉及び高野山など非常に広いエリアに広がっていることが分かります。
また、観光以外の目的では温泉地における休養、海水浴、ウオーキングを目的としている人が多く見られます。
観光地別行先区分

おわりに

和歌山県が毎年実施している観光客動態調査結果によれば、白浜温泉及び椿温泉を訪れる宿泊客は平成19年以降では毎年200万人を越えているものの、徐々に減少傾向にあり、日帰り客も120万人台にとどまっています。

一方、今回の調査により推計した南紀白浜空港便搭乗客の観光消費による経済波及効果については、観光産業における飲食費及び人件費等の県内調達度が高い事情もあるものの、倍率(乗数効果)は2.23と高い結果となり、また回収調査票のうち、約36%の方々から運賃の改善や空港施設の充実等多方面にわたるご意見を戴き、利用客の関心度も高いことが判明しました。

その反面、南紀白浜航空便の個人別利用頻度は非常に低く、観光目的の場合でも初めての利用が8割近い状態であるため、今後ともインバウンド観光客誘致に向け、首都圏を含めた関東エリアにおけるより一層の空港PRが必要と考えられます。

また、20歳以下の利用率が全体の14.7%、同じく60歳以上は11.1%にとどまっているため、若者層や高齢層にも魅力のある観光・旅行プランの検討が必要と思われます。

南紀白浜空港定期航空便については、平成22年4月より乗客規模が約1/2の小型機に変更となったものの、鞄本航空が引き続き通年3往復体制の定期便を運航することとなり、東京⇔白浜を約1時間で結ぶ便利さと併せた場合、インターネット活用やPRエリア拡大などによる観光客へのアピール度を高めるとともに、特割3の適用期間の拡大などの要望に応える企業努力により、年間を通じて搭乗率を高めることは十分可能であると考えます。

また、今回の調査で非常に幅広い観光地等を訪問する空港利用実態が判明したため、それぞれの受入れ観光地においても空港所在地を核として名所旧跡等の観光ポイントを面的に拡大する広域観光推進に取り組み、新たな着地型観光プランとして全国に向け情報発信すればさらに地域経済に与える効果は増大するものと考えます。

最後になりましたが、今回の調査にご協力・ご教示いただきました県、関係機関、関係企業の皆様に厚くお礼申し上げます。

(2011.1)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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