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超小型電気自動車の導入による地域社会への影響と可能性

スモールモビリティプロジェクトチーム

高野山で超小型電気自動車のレンタカー事業「EVこうやくん」が始まったのは夏の盛りのことであった。

白いボディの前面に高野町観光・広報大使「こうやくん」が描かれた3台の車両は、8月5日に安全祈願祭と記念式典が一般社団法人高野山観光協会の主催で執り行われ、翌日から一般に貸し出されている。

軽自動車未満の電気自動車が導入されたのは試乗会や業務利用を除き県内初めてで、同協会では「山内の聖域を守る交通渋滞解消や空気清浄化を目指す試み」と位置付けており、観光面や環境に与える効果が期待されている。

EVこうやくん
EVこうやくん

1.環境整備と2次交通対策

公共交通ネットワークが十分でない地域では、訪問者の地域内での回遊性・周遊性の向上(2次交通[*1] 対策)が課題となり、自動車集中に伴う渋滞の発生や環境負荷の増大は、地域住民の日常生活に影響を及ぼすこととなる。

2015年旅行・観光消費動向調査[*2] によると、国内旅行時に利用される交通機関は自家用車が宿泊旅行、日帰り旅行ともに最も多い。

京都市や鎌倉市などでは流入する車両がもたらす交通渋滞により緊急車両やバスの運行障害など市民生活に影響が出ており、観光渋滞対策としてエリアプライシング(マイカー観光課金)制度の導入なども検討されている。

観光地では、交通渋滞や駐車場対策などの交通環境対策、排気ガスや騒音などの環境対策の観点からも、「観光まちづくり」として住環境整備を併せた2次交通対策が急がれるところである。

2.超小型モビリティ導入の背景と効果

日本では、CO2総排出量の約15%が自動車から排出されていることから、交通分野のCO2削減や省エネルギー化は、政府のエネルギー・環境戦略上重要な柱となっており、地域交通のグリーン化に向け電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等「次世代自動車(次世代環境対応車)」の開発・普及を促進していくこととしている。

超小型モビリティとは、国土交通省がCO2排出量の削減を目指すことを目的に、軽自動車に次ぐ新たなカテゴリーとして導入を模索している車両区分で、「交通の抜本的な省エネルギー化に資するとともに、高齢者を含むあらゆる世代に新たな地域の手軽な足を提供し、生活・移動の質の向上をもたらす、省エネ・少子高齢化時代の新たなカテゴリーの乗り物」と規定しており、平成24年6月に策定した「超小型モビリティ導入に向けたガイドライン」では、次のように定義されている。

自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人〜2人乗り程度の車両。

また、国土交通省の超小型モビリティの認定制度では、コンパクトで小回りが利き、地域の手軽な移動の足となる軽自動車よりも小さい2人乗り程度の3・4輪自動車を「超小型モビリティ」とし、以下の4要件を全て満たすものを制度の対象としている。

  1. 長さ、幅及び高さがそれぞれ軽自動車の規格内のもの
  2. 乗車定員2人以下のもの又は運転者席及び2個の年少者用補助乗車装置(チャイルドシート)を装備しているもの
  3. 定格出力8kW以下(内燃機関の場合は125cc以下)のもの
  4. 高速道路等を運行せず、地方公共団体等によって交通の安全と円滑が図られている場所において運行するもの

軽自動車の区分の中でこの定義に適合した車両を超小型モビリティと認定し、認定された車両は設備やサイズなどに関わる従来の規制が緩和されるといった制度となっている。

この制度では、内燃機関(50cc超〜125cc以下)を持つ自動車も対象となり、「超小型モビリティ」と「超小型電気自動車」はイコールではないが、環境性能の観点から見ても電気自動車を前提とした記述となっており、内燃機関を搭載した被検車は登場していない。

超小型モビリティは、交通の省エネルギー化に資するとともに、高齢者・子育て層の移動支援、観光振興など多くの社会的便益を生み出すものとして、また、新たなカテゴリーの乗り物としての市場創出、蓄電池市場の拡大によるコスト低減や新たな投資の誘発などの経済効果も期待されている。

道路運送車両法に基づく超小型モビリティの位置づけ
道路運送車両法に基づく超小型モビリティの位置づけ

3.超小型電気自動車の導入事例

超小型モビリティの6年間にわたる実証実験及び導入促進事業は平成27年度をもって終了[*3] した。

その総括として平成28年3月に開催されたシンポジウムでは、需要性や有用性など一定の成果は得たものの、導入の課題として、手続きの煩雑さとカーシェアリング・レンタカー事業の採算性などとともに、事業コストの低減化や車両価格と車両性能・快適性のバランス、車両に対する理解度や認知度の向上など、制度の運用・利用方法等の改善だけでは解消できない課題も提起されている。

導入促進事業41件62例の内訳は、観光利用が27例、公共交通の補完など地域住民の日常利用が14例、業務利用が21例であった。

近畿では神戸市六甲山のウリボーライド(平成25〜27年度)と奈良県明日香村・橿原市・高取町のMICHIMO(平成26年度〜)の2件2例で、いずれも観光利用のレンタカー事業である。

(1)MICHIMO ― 明日香村・橿原市・高取町

MICHIMOは前後2人乗りの超小型モビリティで、貸出返却窓口は駅前に設置されており、パークアンドライド駐車場を備え、1次交通との接続は良好で、ラッピングが施された車両には観光ナビとして運転時以外も携帯して活用できる専用アプリを搭載したタブレット端末が装備されている。

MICHIMO
MICHIMO

明日香村を中心とする地域は、年間約80万人の観光客が訪れる人気観光エリアであるが、歴史文化遺産や国営公園などの観光スポットは、広域に点在しており、徒歩や自転車での移動は困難である。また、それら観光スポットを結ぶ道路は狭隘であり、かつ公共交通機関も観光客のニーズを満たすような頻度・ルートを運行しているとは言い難い。

これら地域内の交通課題を克服することにより観光利便性を高め、観光地としての魅力を高めることで観光客数を増やすことを目指している。

(2)Easy Ramble ― 有馬温泉街

有馬温泉地区では、観光の足として送迎や来訪者利用のため、スピードは必要なく、街中を散策するのに乗り降りのしやすい車が欲しいという思いから超小型モビリティの導入を検討したが、認定に伴う協議会の立ち上げの煩わしさ、車両維持費の高さ(車検・税等)、乗車定員の制限(2名)などから断念し、3輪の電気自動車である光岡自動車のLike-T3に着目した。

Like-T3は、家庭用の100V電源で充電でき、市販車であることから認可や認定協議会設置は不要で、軽二輪車区分のため車検は無く、税も軽自動車である超小型モビリティより安い。

また、Like-T3のオリジナルモデルは2人乗りであるが、後部荷台にシートを設置し4人乗りに構造変更できることなどから導入を決めたという。

Easy Rambleとは「気軽にそぞろ歩き」という意味で、この車を使う事で、坂の多い町やちょっと離れた場所で気軽に街の魅力を見るそぞろ歩きを楽しみましょうという思いを込めて名付けられた。

Easy Ramble
Easy Ramble

有馬温泉は日本三古湯に数えられる名実とも日本を代表する温泉地で、六甲山北側の山峡に位置する温泉街は、周辺に歴史的な寺院・神社や人気スポットなどが多く存在し、年間170万人以上が来訪する観光地である。

温泉街では、混雑緩和を「規制」という来訪者や住民に我慢や無理を強いる施策に頼るのではなく、まちづくりの視点から捉えており、情緒あるまちなみづくりや楽しく歩ける歩道の確保、商店や飲食店の魅力づくりなど、「まちの楽しさを増す」ことによりその工夫を重ねている。

また、自然の恵みを源とする温泉地として、環境保全の観点からCO2排出量削減を意識した渋滞緩和については、電気自動車やバイオディーゼル燃料を使用する車両で送迎するパークアンドライドなど新たな価値創出を念頭に住民や関係者の合意形成を図りながら様々な形で導入されている。

4.超小型電気自動車の可能性

観光面における超小型電気自動車の導入については、事例で見たように渋滞や2次交通対策としてまた車両自体をアピールすることにより観光資源として活用されている。

都市部では駐車場対策を兼ね合わせたカーシェアリングなども検証・検討されているところである。

一方、公共交通機関が十分でなく、主たる交通機関が自家用車であるような地方ではどうか。

移動制約に係る交通弱者問題はまちづくりの課題の一つとされ、交通網の弱体化は買い物難民を生み出す要因の一つとなっており、ガソリンスタンドの減少による所謂ガソリン難民の問題もある。

こういった地方が抱える交通に関する様々な課題の解決に、非常時には蓄電池としての利用が期待できる超小型電気自動車を活用する余地はないだろうか。

エアコン等車内環境を優先しオールマイティな使用を考えるならば軽自動車に軍配が上がるであろう。

しかし、超小型電気自動車を新たな交通システムまたはライフスタイルを提案する新たな手段と捉え、地域社会の様々な課題に照らし合わせて見た場合、利活用できるシーンが浮かび上がって来るのではないだろうか。

冒頭で紹介した高野山での取組は有馬温泉街の事例を参考にしたもので、今後はパークアンドライドの導入も検討していくという。

原動機付自転車以上軽自動車未満の電気を動力とする車両が持つメリットを活かし、地域社会における一つのツールとしてどのような使い方ができるか、農作業用や高齢者の生活改善、豊かさの指標などを踏まえながら新しい目、新しいパースペクティブでその可能性を考えていきたい。

参考情報

  • [*1]
    一般的には複数の交通機関を使用する場合の2種類目の交通機関のことであるが、観光においては、特に空港や鉄道の駅、港などの交通拠点から観光目的地までの交通のことを指す。

  • [*2]
    観光庁「旅行・観光産業の経済効果に関する調査研究」(平成29年3月)

  • [*3]
    平成28年度以降は「地域交通グリーン化事業」の一環として継続

(2017.12)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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