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地方自治体のBCP(業務継続計画)策定支援及び訓練・検証支援のご案内

業務企画室長 兼 研究部長  塩路 慎一

はじめに

当研究所は、新たな業務分野として「地方自治体のBCP(業務継続計画)策定支援」を開始して5年目を迎え、その間の策定実績としては、3市町村となっています。業務開始にあたっては、県下の各自治体に対して個別訪問を実施し紹介してきましたが、少し時間が経過しましたので、改めて紙面にて紹介させていただきます。

1.和歌山県下での市町村におけるBCP策定状況

平成29(2017)年1月17日紀伊民報の記事によると、BCP(業務継続計画)<以下「BCP」>を策定しているのは、印南町以南12市町村で白浜町と上富田町の2町のみとなっており、策定が遅れている背景として、自治体が防災関係のさまざまな計画づくりに追われている実態や、他の優先すべき取組みがあり、なかなか手が回らない実情があげられています。

平成30(2018)年7月に実施した当研究所のBCPアンケートでは、県下30市町村のうち半数の15市町村が策定済との回答がありました。しかし、その計画が「十分に機能する」との回答はなく、またその計画に基づいての訓練は半数以上の市町村で実施されておらず、動くことが困難な計画となっている実態が分かりました。

【 計画は機能するか 】

「十分機能する」と回答した市町村は無く、
「一部機能するが不十分」と回答した市町村が90%以上となっている。


【 計画に基づく訓練 】

「策定したBCPに基づいて訓練しているかどうか」の設問では、
半数以上の市町村が訓練をしていないという回答となっている。


さらに、地域別の策定状況は次の図の通りです。南海トラフ沿いの大規模地震が発生すれば被害が大きいと予想されている「西牟婁振興局内」と「東牟婁振興局内」の市町村の策定率が他の地域に比べて低いことが分かりました。

【 BCP策定率(振興局管内別)】 平成30(2018)年7月現在
BCP策定率
「※地図はCraftMAP(http://www.craftmap.box-i.net/ken.php)の素材を使用」

2.行政におけるBCPとは

行政のBCPは、民間企業の商品・製品の供給をどうするのではなく、「災害対応業務」と「住民サービス」をどうしていくのか、ということを計画するということであり、「発災時緊急対応を計画する」ということです。

発災後、緊急対策本部をいち早く立ち上げ、被害を最小限に抑える対応や被害者への態勢整備を開始することが重要となります。発災時緊急対応計画(BCP)を策定し、それを機能できるようにすることは、役場の最重要業務を事前に決めておき、それをいち早く立ち上げることを主眼とし、その後は事前に計画していた地域防災計画の実行へと移行していくイメージとなります。

地域防災計画は、災害予防から復旧・復興対策について実施すべき事項が網羅されていますが、一方、BCPは発災後の優先すべき組織(人)の動きを予め決めておく計画です。

いったん災害が発生すれば、住民がまず頼るべきところは、生活する地元の役場となります。そういうことからも、行政(役場)のBCP策定は「有事の際に動ける組織づくり」を目指すものであり、事前対策として、とても重要なものと言えます。

行政のBCPのイメージを図で表すと次の通りです。

【行政のBCPのイメージ図】
行政のBCPのイメージ図

3.策定支援(例)

膨大なマニュアルを作成するのではなく、危機発生時に誰もが共通の目標に向かうことができるシンブルかつスリムな形(タイムライン及びチェックリストを主体とした)の計画を策定します。

策定にあたっては、簡易な形(標準:平日の昼間を想定)で策定し、その後に繰り返し実施する「訓練及び検証」により、想定を変更しながら、計画をブラッシュアップさせていくことを前提とします。

(策定支援の前提)

  • 策定期間は、3〜5ヵ月
  • キックオフセミナー1回、策定ワークショップ2回、訓練及び検証1回の全4回
  • 防災担当責任者を含む各課からの職員参加(各課横断型)
  • 策定後は、年2回(6ヵ月毎)の訓練及び検証を行うことが前提

(1)キックオフセミナー

BCPについての基本的なセミナー(1時間程度)で基礎的な部分を理解していただき、その後、大規模地震対応模擬訓練<シナリオ提示型訓練>(3時間程度)で、BCPの必要性を感じてもらうことを目的とします。

(2)策定ワークショップ

全課から数名ずつ参加し、重要業務の洗い出し、目標対応時間等を決定し、タイムライン及びチェックリストを作成します。

(3)計画検証訓練

出来上がった優先業務の「タイムライン」及び「チェックリスト」が機能するのかを机上訓練にて検証し、不具合があれば修正することを目的とします。

4.訓練・検証支援

策定したBCPの訓練・検証支援についても当研究所は実施しています。

策定した計画は、「木の幹」であり、その計画が「実り多い」ものへとしていくためには、「訓練・検証」作業が必要です。計画は、策定しただけでは役に立ちません。計画が実際に機能するかを「訓練⇒検証⇒計画の修正」といったPDCAサイクルを回すことにより、計画がブラッシュアップされ、より実践的なものとなっていきます。また、人事異動による組織内での人員の入れ替わりもあり、訓練を繰り返すことにより、組織への計画の定着化を図ることができます。

そのような意図から、計画策定後も半年毎に訓練を実施し計画をブラッシュアップさせていくことが必要です。

おわりに

震災(東日本大震災・熊本地震等)発生後、一部の市町村の中で「初期対応の遅れ」、「り災証明書発行の遅れ」が見られ、さらには「役場自体が機能不全状態」となりました。また、台風及び集中豪雨による水害においても同様です。そのような事態に陥る可能性を低減するために地方自治体のBCP策定及び訓練の必要性が高まっています。

和歌山県は、特に、東海・東南海・南海3連動や南海トラフ巨大地震の発生により甚大な被害が予想されています。また、地震だけでなく、近年において、台風や集中豪雨による河川の氾濫や土砂災害への警戒も脅威となっています。

そのような中で、「有事の際に動ける組織づくり」を目指し、BCP(業務継続計画)策定や計画の訓練・検証に積極的に取り組んでいただき、地域災害対応力向上に繋げていただきたいと考えます。

(2021.8)
(執筆者の所属、役職等は発表当時のものです)

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